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カスタマーサクセス立ち上げ支援会社に聞いた、成果を出せるCS組織の作り方

記事公開日:2021/05/24
最終更新日:2023/11/10
カスタマーサクセス立ち上げ支援会社に聞いた、成果を出せるCS組織の作り方

SaaSベンダー界隈では、すでに定着した感のある「カスタマーサクセス」。米国発の営業プロセスの一つとして日本で紹介された書籍として有名なのは『THE MODEL(ザ・モデル)』ですが、「カスタマーサクセスのバイブル」とよばれ、カスタマーサクセスを学ぶなら必読といわれているのが「青本」こと、『カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』。

同書を翻訳したのが、コンサルティング・テクノロジー・アウトソーシングのサービスを提供するバーチャレクス・コンサルティング株式会社です。 同社では、同書を手がけたのを機に、日本においてカスタマーサクセスに関するコンサルティングや啓蒙活動を行っているといいます。

今回は、同社のコンサルタント4名に、カスタマーサクセスの組織づくりや運営上のポイントについて伺いました。

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プロフィール

  • Profile
  • 森田 智史さん
  • バーチャレクス・コンサルティング株式会社 常務執行役員
    ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長


    2013年に中途で入社。前職よりCRM関連に限らず、新規事業策定・戦略立案案件や、システム構築案件など、幅広いテーマのコンサルティング案件に従事。現在は、コンサルティング案件全般を所管するとともに、自社デジタルマーケティング領域の事業拡大のほか、RPAソリューション等新規事業開発にも従事。2018年6月に出版した『カスタマーサクセス―サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の訳者であり、カスタマーサクセスに関するコンサルティングや講演なども行っている。

  • Profile
  • 金井 昴さん
  • バーチャレクス・コンサルティング株式会社
    ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント


    新卒で入社以降、顧客の保有する膨大なデータを一元管理し、BIツールでの可視化/活用から経営課題を解決するITコンサルティングプロジェクト及び、複数メーカーのIoT戦略方向性検討支援や事業戦略立案支援を行うコンサルティングプロジェクトに従事。現在は、カスタマーサクセスを活用した顧客の事業改革支援も推進中。

  • Profile
  • 祢津 邦賢さん
  • バーチャレクス・コンサルティング株式会社
    ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント


    新卒入社以降、ITを活用した業務効率化のコンサルティング案件に従事。RPA導入というバズワードから始まることで視野が狭くなりがちな業務効率化施策を、RPA活用の観点だけでなく、それ以外のテクノロジー活用、業務オペレーション変更、現場のマインドセット変革まで含めゴールシークにプロジェクトを推進してきた。現在は最適化ソリューションのサービス企画に従事。

    執筆記事

    「カスタマーサクセス」ってググったけど、結局わからなくて自分でまとめることにした件

  • Profile
  • 加藤 一樹さん
  • バーチャレクス・コンサルティング株式会社
    ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント


    新卒で入社以降、ITヘルプデスクの課題解決プロジェクトに参画。自社アウトソーシング部門と協業し、顧客視点に立ったサービス改善および現場オペレーション改善を支援。現在は継続的な顧客接点の最適化を目標としたヘルプデスク運営の委託化・自立運営に向けた企画および実行支援を行っている。

カスタマーサクセスを啓蒙するバーチャレクス・コンサルティングとは?

まず、バーチャレクス・コンサルティング株式会社(以下、バーチャレクス)について教えてください。

エムタメ!
編集部

バーチャレクス
森田様

弊社では、コンサルティング部門とテクノロジー部門、アウトソーシング部門3つの部門があり、この3つを融合させながらお客様に価値を提供しています。これが弊社の特長であり、ほかの多くのコンサルティング会社にはない強みです。コンサルティングを提供しながらSIerでもあり、コールセンター向けCRMのパッケージも自社開発提供しつつ、アウトソーシングの部隊も持っているというワンストップ力を強みとしています。

さらに、当コンサルティング部門の強みを一言でいうと「変革力」です。これを3つに分解すると「コンサルティング力」「IT力」「カスタマーサクセス力」になります。

「コンサルティング力」については、創業から22年、CRM領域を中心に構想・企画といった上流のレイヤーから、実際の業務オペレーション、IT等の下流レイヤーまでコンサルティングを提供してきました。

「IT力」については、「描いたものを形にする力」とも言い換えられます。昨今、課題解決の手段として「テクノロジー」は避けて通れません。弊社では、コンサルタントが自分の手でRPAやAI-OCRなどを作り込むことができます。別部門にエンジニアはいますが、顧客から見ればコンサルタントとエンジニアという棲み分けに意味はなく、課題解決を早く、余計な負担なく達成することこそが顧客にとっての我々の存在価値になりますので、今後は、この部分でもっとボーダレス化・マルチ化していきたいと考えています。

「カスタマーサクセス力」については、弊社はタグラインとして「Succession with You」を掲げているのですが、これは「お客様の継続的な成功に寄り添い続ける」という意味です。一言でいうと「カスタマーサクセス」であり、顧客の成功を「描いて終わり」ではなく、「実行」「完了」まで担います。たとえば、システムなら、作って終わりではなく、運用からお客様の達成したい「ゴール」まで伴走することを前提としています。

日本のカスタマーサクセスの現状とは?

カスタマーサクセスの日本における認知率は、まだ3.5%

顧客からバーチャレクスに寄せられるカスタマーサクセスの課題はどんなものが多いですか?

エムタメ!
編集部

執行役員 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長 森田 智史さん

バーチャレクス
森田様

組織論やKPI、ツールはどれを使うかといったご相談や、現状の診断などです。 「カスタマーサクセス」自体が新しいジャンルのため、「そもそも、カスタマーサクセスとは何か?」「何から始めれば良いのか?」といった段階からのご相談もあります。
また、自社で実践している企業様でも相談できる相手がいないため、「現状の取り組みが正しいのかどうかを見て欲しい」といった要望もあります。

常務執行役員 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長 森田 智史さん

カスタマーサクセス組織立ち上げに関する相談と、運用がスタートした後の改善に関する相談では、どちらの割合の方が多いのでしょうか?

エムタメ!
編集部

執行役員 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長 森田 智史さん

バーチャレクス
森田様

半々くらいですが、立ち上げる前段階も含めると、前者の方が多いでしょうか。
2019年に、カスタマーサクセスに関する初めての調査を行いましたが、カスタマーサクセスの認知率自体が3%ほどでした。2020年の調査で3.5%に上がった程度なので、まだまだ世の中的には認知されていないんです。
ただ、よくよく話を聞いてみると、明確に「カスタマーサクセス」と銘打った部門がなくても、サポート部門やサービス部門、営業部門で近しいことをやっているところもあるので、カスタマーサクセス的な要素を持った施策を実践している企業様は、実数値はもう少し多いと思います。
マーケティングオートメーション(MA)の認知率が7%ぐらいなので、それを考えると、まだまだカスタマーサクセスも認知の段階なんですね。

エムタメ!
編集部

執行役員 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長 森田 智史さん

バーチャレクス
森田様

そうですね。MAが日本に上陸したのが2013年頃で、そこから7年かかっているので、カスタマーサクセスについても、今後5~10年くらいかかるのかなと思います。ただ、MAは特定領域のツールですが、カスタマーサクセスは普遍的な概念なので、もう少し早く広がるかもしれません。

これからカスタマーサクセスに取り組む企業が知っておきたい話

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント 金井 昴さん

御社の考えるカスタマーサクセスの理想的な組織図や体制は、どのようなものですか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

企業の規模や志向性、どういったサービスを提供するのかなど、その企業の特徴によって大きく異なってきます。

たとえば、立ち上げ時期は専任の担当者が1人いるくらいだったり、少人数で立ち上げようとする企業が多いです。このような組織の場合はオンボーディングや契約更新といった業務をすべてカスタマーサクセス部門が担っていくので、一気通貫でできるというメリットはある反面、組織が大きくなっていくと、すべての業務をこなさなくてはならないので、スケーラビリティがなくなるという課題が出てきます。

プロダクトにカスタマイズがあまり必要なかったり、導入負荷がかからない商材を持つ企業の場合、そこまで顧客との接点が発生しないので、営業部門の中にカスタマーサクセスを置いているというケースもあります。そうすることで営業部隊が新規を取りに行き、カスタマーサクセス部隊は、更新やアップセルに注力できるようになるのです。

逆に、プロダクトが複雑だったりカスタマイズが多かったりすると、カスタマーサクセスのサービス機能や顧客のフェーズごとに担当チームを分けているお客様も多いです。具体的にはオンボーディング専門、トレーニング専門、契約更新専門、といったように、それぞれ責任者とスペシャリストを配置するところが多いですね。

カスタマーサクセス組織のミッション「LTVの最大化」実現のための目標設定は段階的に

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

カスタマーサクセス組織を立ち上げて、最初に指標や目標を立てるかと思います。カスタマーサクセスが追うべき指標は、お客様とどのように設定されていますか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

バーチャレクス
加藤様

カスタマーサクセスのミッションとして「LTVの最大化」「紹介案件の創出」「プロダクトへのフィードバック」の3つがあると考えています。

たとえば、「LTVの最大化」の場合、チャーンの削減や追加受注(アップセル、クロスセル)といった、KGIとするべき成果指標があります。さらに、これを達成するために追うべき行動指標として、ログイン数やアクティブアカウント数といったヘルススコアや、顧客の状況などがあります。定量的なヘルススコア管理だけでなく、アンケート調査やヒアリング調査で顧客の声を聞き状態を把握することもカスタマーサクセス部門の役割の一つです。

たとえば、インサイドセールス部門だと、本来はステータスアップ数などを指標に置くべきところ、「アポ数」を置いてしまい、テレアポ部隊化してしまうといった失敗に陥りがちですが、カスタマーサクセスでも同じようなことがあったりしますか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

バーチャレクス
加藤様

そうですね。たとえば、先ほどお話したように、最終的には、チャーンの削減や追加受注を達成すべきなのですが、カスタマーサクセス部門の立ち上げ当初から、いきなりそこを目指そうとすると難しいと思っています。そこで、組織の状態に合わせて段階的に指標を設定すべきだと考えています。
「組織の状態」というのは、具体的にどのように分類するのですか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

バーチャレクス
加藤様

「カスタマーサクセス0.0」「カスタマーサクセス1.0」「カスタマーサクセス2.0」という言葉があるのですが、たとえば、顧客の状態がまったくわからないでは、何をゴールに置けば良いのかわかりません。ですから、むやみやたらに「リテンションレートはどうする?」といった議論をしても意味がありません。

まず、自分たちがカスタマーサクセスを実践する上でのKGI、KPIを明らかにするというフェーズ(カスタマーサクセス0.0)があり、自分たちの状況が明らかになった上で次にカスタマ―サクセス1.0として「解約を阻止しよう」となります。 もしそこで、自分たちの打ち手に対してきちんと解約率が下がり、リテンションできていることがわかれば、「カスタマーサクセス1.0」は終了となり、より積極的にアップセルやクロスセルを取りに行く「カスタマーサクセス2.0」のフェーズへ進めるようになります。

カスタマーサクセス2.0

このように、自分たちの実力値をきちんと見極めて、今はどこにフォーカスすべきなのかを考えなければいけないと思っています。仮に、リソースが潤沢にあれば「カスタマーサクセス1.0」「カスタマーサクセス2.0」を同時に進めるといったこともできるかもしれませんが、そういった組織はなかなかないと思います。まずは優先順位を見極めて、リソースをそこへ集中投下していく必要があるということです。

御社がお客様のカスタマーサクセス立ち上げ支援を行うにあたって「カスタマーサクセス0.0」としてKGIやKPIを明らかにしていく際は、あらかじめテンプレート化されている基本的なKGI・KPIを試して推移を確認して調整するといったスタイルなのか、それとも、最初から一社ずつヒアリングを行って、最適なKGI・KPIを設定していくのか、どちらなのでしょうか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

バーチャレクス
加藤様

ケースバイケースですが、感覚的には、その中間ぐらいですね。もともと正解があるわけではないので、顧客ごとに異なります。弊社のノウハウをベースにしつつ、顧客の状態をヒアリングして、どうしたら良いのかを検討するかたちです。あまり頭でっかちにいわゆる模範的なKGI・KPIを設定しても、運用がうまく行かず後から変更が出るものですし、どちらかというと実際に測定してみた結果を元に、ボトルネック解消のためのPDCAサイクルの周期を短くしていく方がスループットを高められるので。これは、カスタマーサクセスに限った話ではありませんが、 「一番弱いところを、どう叩いていくのか」という考え方が大切です。

カスタマーサクセスの人事評価は、達成度と進捗度の2軸で

カスタマーサクセス担当者のモチベーション管理については、いかがでしょうか。メンバーにとっての働く意義にもなりますし、周囲からの反応とも関わる部分だと思いますが。

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

しっかり評価をして称賛してあげることだと思います。まだ日本国内ではカスタマーサクセスという職種に就いている人も、本格的に取り組んでいる企業も少ないですが、今後、ますます必要とされていくはずなので、組織の中でカスタマーサクセスをしっかり評価して、成果を出したら称賛してあげること。その組織に所属している価値や意味を実感してもらうことが重要なのではないかと思います。
カスタマーサクセスの人事評価も難しいかと思うのですが、フェーズや担当業務ごとに、どのような評価をするのが良いのでしょうか。

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

カスタマーサクセスとして設定しているKPIやKGIの達成度合いを測る指標と、成果に対しての進捗状況を確認する指標という2軸での評価をアドバイスしています。
達成度は明確な数値として出てきますが、進捗度はどういったところを見れば良いのでしょうか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

お客様によっても変わってきますが、カスタマーサクセスはデータドリブンなので、カスタマーサクセス担当者がデータからどれだけ事前に予測してアクションを起こせているか、たとえば、ログイン率やメール開封率、必要に応じたトレーニングサポートの回数など、成果につながる具体的な行動指標をサブKPIとして立てて、数値を見ます。
執行役員 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長 森田 智史さん

バーチャレクス
森田様

別の視点でいうと、組織における個と個の向き合い方にもかかってくると思います。たとえばOne On OneやOKRを導入している企業など、もともと従業員と向き合っている企業では、最終的な人事評価に対する納得度も高いというように、従業員のエンゲージメントに寄ってしまう部分でもあると思います。

先ほど出たような「達成度」「進捗度」を、上司がどれだけ見てサポートしているかという部分とも比例するかと思いますし、普段からどれだけコミュニケーションが取れているかにかかってくるでしょう。

従来のMBO(Management By Objective)型のマネジメントを行っている企業に対しては、コミュニケーションに関するアドバイスを行うこともあります。
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

そこも組織づくりになってくると思いますが、マーケティング部門が単独でKPI・KGIを立てていたらうまくいかないですし、営業部門も単独で指標を決めていたら意味がありません。マーケティング部門と営業部門、カスタマーサクセス部門が連携した上で、自社にとって最適なKPI・KGIを設定することが大切です。それに基づいて正しい評価を行えば自ずと成果が出てくるはずなので、まずは組織づくりですね。まずは、経営層にカスタマーサクセスを実践する上での組織づくりの重要性を理解してもらうことからスタートしています。
「称賛」については、どのようなアドバイスをされているんですか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

カスタマーサクセス自体が、エンプロイーサクセスやプロダクトサクセスを含んだ概念なので、ピアボーナスやピアメッセージなどで、従業員同士で称賞賛し合う文化をまず醸成することが大事だと思います。
なるほど。カスタマーサクセス部門だけでなく、会社全体の話になってくるんですね。

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

顧客起点で捉えた、組織全体で大きく取り組む会社の理念・経営方針としてのカスタマーサクセス(大きなカスタマーサクセス)と、業務としてのカスタマーサクセス(小さなカスタマーサクセス)とでは、レベル感が大きく異なります。前者については、カスタマーサクセス部門だけではなく、全社全部門が顧客と向き合い、カスタマーサクセスの意識を持つ必要があります。全社心をひとつにして顧客と向き合うということを考えた時、社内の横のつながりは非常に重要であり、そういった文化の醸成が必須となってくるのです。

売上が大きくてもそれ以上にコストのかかる顧客は「適切な顧客」とは言えない

「適切な顧客」については、ポテンシャルなどをLTVで管理されている企業も多いと思いますが、御社はお客様にどのようにアドバイスされていますか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

バーチャレクス
加藤様

やはり、リテンション率が高く、長く利用してくれる顧客が「正しい顧客」だと思います。ただ、もう一つ重要なのが、長く使ってもらう中で、カスタマイズなどの対応コストがかかってくる顧客も出てきますので、どれだけ基本機能の中で活用してもらえる顧客かという軸も大切です。

以上を前提として、顧客セグメントには3つの軸があって、一つ目が「ライフサイクル(利用期間)」。オンボーディングや更新のタイミングでそれぞれ、担当者が対応することになります。二つ目が「ヘルススコア(顧客の健康状態)」。三つ目が「グレーディング(売上規模や従業員数など)」です。ハイタッチなのかロータッチなのか、それともテックタッチなのかというタッチポイントを決める時に、参考にします。 これら三つの軸を商材の種類や価格帯ごとに組み合わせを変えつつ、さらにフェーズによっても掛け算しながら、セグメント化していく方法を基本としています。

執行役員 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長 森田 智史さん

バーチャレクス
森田様

正しい顧客については青本の中でも出てきますが、LTVの計算式もいろいろあります。本来、売上軸で語られることが多く、通信販売などのように、モノ売りが前提でコストがかからない商流なら良いのですが、BtoBだとサポートに大きなコストがかかります。そういった場合、売上ベースでLTVを算出するのは誤りです。たとえば、年間1億円の売上があっても、要望やクレームが多く、1億5,000万円のコスト(人件費等)がかかっている場合、「マイナス5,000万円の顧客」になります。一方、売上金額が2,000万円だとしても、コストも500万円しかかからず「一緒に成長していきましょう」というスタンスの「1,500万円の顧客」の場合、どちらがLTVが高いかといえば、後者です。カスタマーサクセスを拡大していく時に、先ほど言ったような1億円の売上見込み案件を含めて設計してしまうと、そういった顧客を掴めば掴むほど大赤字ですよね。かかるコストも含め、自社にきちんと利益をもたらしてくれる顧客を見極めるということが非常に大事なのです。
ただ、企業の成長フェーズがまだ浅い段階では、とにかく顧客の数を掴まなければならないので、スケールする前のタイミングで見極める必要があります。
ヘルススコアの項目について、もう少し詳しく教えてください。

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

バーチャレクス
加藤様

扱う商材によって変わってきますが、MAであれば、ログインや、自社から送ったメールの開封率、ウェビナーの参加率など、どれだけユーザがMAを活用できているかを指標にしています。
そうした一般的なヘルススコア指標の中で、「本当に自社にとってクリティカルな指標」を見つけられることがベストで、そこを常に考えることが、カスタマーサクセスに限らず重要です。
なるほど。では、ライフサイクルについては、どのくらい細かく分けていらっしゃいますか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん

バーチャレクス
加藤様

大きくは「導入期」「活用期」「解約・更新」の三つで、さらに細かく切っていくかどうかは、商材によります。 どの目線で語るかによっても変わってくるので難しいですが、たとえば、我々がセールスフォースの導入活用の支援を行い、セールスフォースを活用することで顧客にサクセスしてもらう場合を考えると、「初期構築・オンボーディング」「定着化」「活用」「業務改善」とフェーズがあり、この後、コンサルティングを提供しながらPDCAサイクルを回していくというイメージです。

バーチャレクスがコンサルティングを提供する上で重視するのは「サクセス」をお客様と一緒に目指していくこと

御社では、コンサルティングサービスを提供する際に、カスタマーサクセスフェーズまでのご提案を受け入れてもらうために、どのような工夫をされていますか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

お客様側に、推進者となってくれる方を作ることです。「サクセス」は、我々とお客様と一緒に目指していくことが重要なので、その方と密にコミュニケーションを取って、未来のゴールを描きながらも段階を踏んで一歩ずつ成功体験を積み重ねていけるよう、フェーズを切って取り組んでいきましょうというご提案をしています。
バーチャレクス・コンサルティング株式会社 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント 祢津 邦賢さん

バーチャレクス
祢津様

具体的には2つのケースがあって、IT導入前にコンサルタントが先行しているケースでは、「課題解決のためにシステムを導入しましょう」となって、導入以降のフェーズについても経営層と合意が取れれば、比較的、予算を確保してもらいやすいです。

一方で、早期フェーズから入り込めていないような、たとえば、導入フェーズから参画する場合は、オンボーディングまでのコンサルティング提案はもちろんしますが、「そんなに予算は取れないよ」と返されれば「わかりました」と引き下がるしかありません。ただ、それで運用に失敗してしまうお客様はけっこう多いですね。

私の場合、小規模なITツール導入案件の担当が多く、提案から実行までずっと関わり続けますので、提案前のネゴシエーションに注力しています。予算まで伺えればシステムに必要な機能の実装とその機能活用のオンボーディングまで含めた計画をお伝えします。必然的にオンボーディングまで計画に含めると実装できる機能が減ってしまうのですが、それに予算をさかずに失敗されたお客様の事例などもお伝えしながら膝を詰めてお話させていただきます。
ご理解いただけないお客様には、残念ながら、そして個人的には悔しくもありますが、敢えて提案を辞退させていただくこともあります。

カスタマーサクセスに取り組む前に、まず全社でCRMが実施できていることが前提

最終的なお客様の成功を思って最初から提案しているわけですもんね。
ちなみに、カスタマーサクセスに関するコンサルティングをトータルでご提案される際に、組織づくりの話もすると思いますが、カスタマーサクセス組織立ち上げの段階で、CRM以外のツールでご提案されるものには何がありますか?

エムタメ!
編集部

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 金井 昴さん

バーチャレクス
金井様

実はカスタマーサクセス以前の問題で、まだまだCRMができていないお客様が多いんです。マーケティングをどうしたら良いのかわからなかったり、営業プロセスも最適化されていなかったりという段階にいらっしゃるので、まずはCRMの観点で顧客との信頼関係を築いたり、企業の財産である顧客情報を最大限活用できるようになることが最優先だと考えています。

CRMができていてカスタマーサクセスに積極的に取り組みたいというお客様は、カスタマーサクセスの老舗であるGainsight(ゲインサイト)社のツールや、国産だと「HiCustomer(ハイカスタマー)」などを導入して本格的に取り組まれると良いと思います。

カスタマーサクセスを始めるなら、まずは「正しい顧客」の見極めを

ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント 祢津 邦賢さん

最後に、これからカスタマーサクセス組織を立ち上げようとしている方にアドバイスをお願いします。

エムタメ!
編集部

バーチャレクス・コンサルティング株式会社 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント 祢津 邦賢さん

バーチャレクス
祢津様

カスタマーサクセスは、これまでのようにワンショットで大きな契約を取るのではなく、長期にわたってお客様とお付き合いをして、Win-Winの関係になるというスタイルにビジネスが変化してきている現状に対し、どうすれば利益をあげていけるのか、その指針になるものだと思います。 これを、一人のスーパースターに頼ることなく、組織的かつ科学的に取り組んでいくのがカスタマーサクセスです。

つまり、まずは新規顧客を増やし、増やした顧客からさらにデータを集め、データを分析することで、現在、自分たちの顧客が求めているのに足りていないものをあぶり出す。そしてサービスをエンハンスしたり、活用のためのアドバイスを行うことで顧客にとっての価値を高めていく、その結果として契約を継続してもらったり追加購入してもらう。データドリブンなのがカスタマーサクセスです。データを得る仕組みを整えることも重要です。

これを実施する上での大前提が、正しい顧客を見極めること。森田が話した通り、いくら売上があがっていてもコストが大きすぎれば利益は出ません。正しい顧客を見極めるためにもまずは、自分たちがどんな顧客のどんな課題を解決したいのか、提供価値を考え、さらにどんな予算感を持った顧客が理想的なのかを考えていく。その上で、正しい顧客を増やすための施策を考えることになります。
なるほど。
正しい顧客の定義ができていないと、成果を出せる組織にはならないのですね。

この度は、貴重なノウハウを聞かせていただき、ありがとうございました!

エムタメ!
編集部

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