技術ブランディングとは?基礎知識やメリット、成功事例などを徹底解説
最終更新日:2023/10/26
日本には世界に誇る技術力を持つ企業が多く存在しますが、その技術力を軸としたブランディング活動が「技術ブランディング」という手法です。効果的に技術ブランディングを進めていくことができれば、 競合他社と自社商品をはっきりと差別化することができるほか、市場における競争優位性を確保できる 可能性が高まります。最終的には自社の発展・利益拡大にもつながるでしょう。
本記事では技術ブランディングについて、基礎知識からメリット、目的や進め方まで網羅的にわかりやすく解説します。最終章では具体的な成功事例も紹介していますので、ぜひ最後までお付き合いいただけますと幸いです。
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目次
技術ブランディングとは?
「技術ブランディング」とは、 企業や製品が持つ技術や部材を、ブランド価値として顧客に訴求するブランディング手法 を指します。
通常のブランディングのように完成された商品ではなく、「技術の価値」をアピールすることで差別化や競争優位性を生み出すのが特徴です。技術力はエンドユーザーに認知されにくいという課題があり、それを解決するのが技術ブランディングともいえます。
自社の技術を商品やブランド名と一緒にアピールする「ブランディング」を行うことで、技術力に優れていることを認知してもらえれば、ユーザーは「その技術が搭載されているかどうか」という基準で商品を選定・購入します。
優れた技術やその技術を活用した商品は、顧客からの信頼や評価を得られるため、メーカーは積極的にその技術を取り入れるようになり、市場における競争優位性の確保や高価格での取引につながるのです。
ではなぜ現在、技術ブランディングの重要性が高まっているのでしょうか?
技術ブランディングの重要性
テクノロジーの進化やグローバル化、オンライン化など、急速に変化する現代において、新たな価値の創出や商品・サービスの差別化、市場における競争は激化しています。
そんな状況の中で、企業が健全且つ安定した経営を行うには 「差別化」「競争優位性」、さらには「継続的な技術革新」「技術力の維持・強化」 が求められており、全てを実現できる「技術ブランディング」の重要性が高まっているのです。
技術力に優れた企業や商品は高い評価を得られるため、企業価値の向上にもつながり、あらゆる業界・業種のマーケティング戦略において必要不可欠な手法とされています。
「技術ブランド」が確立できれば、それぞれの商品のブランド化を図るよりも少ないコストで大きな利益を得る可能性も高まるため、中小企業にも有効な手法として導入が進んでいるのです。
技術ブランディングの目的
技術ブランディングの目的について、さらに詳しく解説します。
商品価値の向上
技術ブランディングの目的として、まず 「商品価値の向上」 が挙げられます。
公的機関での実証実験や大学との共同研究による権威付けや、広告宣伝に使えるデータ取得を行って商品の技術的な裏付けをすることで、 商品の価値として「技術」をブランド化 することができ、 メーカーや顧客に対して理論的に商品をアピール していくことが可能になります。
そうすることで商品の持つ魅力の正確な把握や深い理解へとつながり、商品価値の向上が見込まれるのです。また、新たな技術による付加価値の創出も実現できます。
商品の差別化
商品価値を高めることができれば、自ずと 「商品の差別化」 へとつながります。
技術をアピールして技術自体の価値を認めてもらえれば、顧客は「商品のメーカーがどこであるか」よりも、「その技術が活用されているか否か」を基準に商品を選ぶようになり、自社商品を購入してもらえる可能性が高まります。
また「継続的なブランド名の使用」も可能になり、長期的な視点から見ても競合他社との差別化を図れます。
企業イメージの向上
優れた技術やその技術を活用した商品の提供は、 顧客から高い信頼度や満足度、評価を得られるため、 企業イメージの向上 にもつながります。
向上することでメーカーは積極的にその技術を取り入れるようになる上、高価格での取引が実現する可能性も高まり、利益の拡大や自社の発展にも大きな影響を与えるはずです。
ライセンス収入の獲得
「ライセンス収入の獲得」 も、技術ブランディングを行う目的の一つです。
「技術ブランド」が確立しているということは、企業が固有技術を持っていることの象徴であり、技術に対する強い信頼があることを示しています。そのため、異業種・異分野の企業と提携する機会も増えるでしょう。
今までその技術が使われていなかった分野に事業を水平展開し、ビジネスの規模を拡大するチャンスも増えることが期待でき、新たな収入源の確保やさらなる利益拡大につながります。技術が確立しているため、ライセンシング戦略が容易になるというメリットもあります。
技術ブランディングのメリット
技術ブランディングを行うことで得られるメリットについて、主な3つのポイントを紹介します。
第一想起してもらえる
技術ブランディングを行なうことで、顧客が商品を比較検討する際に、 自社の商品やサービスを第一想起してもらえる というメリットがあります。
また「技術」という価値を覚えてもらっているので、何らかの技術課題が発生した際にも、解決手段として思い浮かべてもらいやすくなります。
第一想起してもらえればいち早く顧客との接点を持つことができ、競合他社より優位に立って商談を進められるため、営業効率の向上と利益の拡大が見込めるはずです。
技術の利用用途が拡大する
技術の利用用途が拡大する という点も、技術ブランディングを行うことで享受できるメリットの一つです。
多くの人に自社の技術を認知してもらえるようブランディングを行うことで、これまで関わりのなかった様々な分野の技術者にも知ってもらえる可能性が高まります。技術の利用用途が広がれば、未開拓の分野における商品に技術を利用してもらえるなど、新しい進路の開拓につながります。
技術を活用してもらえる市場や分野が増えるほど、大きな利益の拡大、そして最終的には自社のさらなる発展やビジネスの規模を拡大するチャンスを得られるため、大きなメリットであるといえます。
技術をより高い値段で買ってもらえる
技術ブランドを確立できれば、 競合他社よりも高い値段で技術を買ってもらえる可能性が高まる という利点もあります。
これは同じような機能を持つ技術であっても、技術ブランディングによって高められた認知度や信頼度、それに伴う情緒的価値を、付加価値として価格に転嫁することができるためです。
また商品を販売するメーカーの立場にも、技術のブランド力を利用することで「販売価格を上げられる」というメリットをもたらします。
技術ブランディングの進め方
技術ブランディングを実施するには、 「技術の認知度向上」 と 「技術の利用用途の広がり」 の2つのポイントが大切です。「技術の認知度が向上することで、新たな利用用途が拡大し、利用用途が拡大することでさらに認知度が向上する…」という好循環が生まれます。
好循環を生むための2つのポイントについて、それぞれ解説します。
技術の認知度向上
「技術の認知度向上」について詳しく説明します。
情報収集
まずは 自社の目指す技術や開発方針、独自領域などを明確にするために、情報収集を行います。
具体的には、自社の技術者、取引先、販売代理店へのヒアリングやアンケートを実施し、自社の技術の特徴や市場からの評価を得るという方法があります。
また同時に、競合企業の技術やそのアピール方法についても情報を集めると良いでしょう。
ブランドアイデンティティーの明確化
情報収集ができたら、「ブランドアイデンティティー」を明確化します。
「ブランドアイデンティティー」とは、 顧客に伝えたい自社の価値観やメッセージなどを考慮した、自社技術の強みや特徴を伝えるイメージ を指します。具体的には「名称・ロゴ・カラー・キャッチフレーズ・パッケージ・キービジュアル」などの要素を統一させて、訴求力の高いイメージを設定します。
社内におけるブランドへの意識を統一するために、ブランドガイドラインの制作を行うことも大切です。
営業施策との連動
「ブランドアイデンティティー」を明確化したら、 Webサイトや展示会、カタログやPR映像などの営業施策へと落とし込み、連動 させます。
顧客が企業の場合は研究論文やプレスリリースなどの研究成果の発表、展示会への出展、Webサイトでの情報発信を、一般ユーザーの場合はTV、新聞、雑誌、SNSなどの広告宣伝を行うという方法があります。営業担当者と技術者で協力し、ワークショップを実施しても良いでしょう。
社内外認知と活動を行うことで企業全体の組織能力としての差別化も図れます。
商品への取り組み
より多くの商品に技術を搭載してもらい、商品やパッケージにロゴやブランド名を掲載してもらう ことも、認知を拡大するためには非常に重要です。
技術ブランドの場合、商品が普及するにつれて搭載されている技術の認知も拡大しますが、それを直接コントロールすることは困難です。
そこで大切になるのが「より多くの商品に技術を採用してもらうこと」と、自社ブランドを可視化するために、 「商品や商品パッケージにロゴやブランド名を掲載してもらう」 取り組みです。
認知度を広めることができれば、より多くのメーカーが採用してくれるほか、エンドユーザー側が「技術」を判断基準として商品を購入してくれるようになるため、高価格でも価値を感じて選んでもらえる可能性が高まり、認知度も確実に向上するでしょう。
技術の利用用途を拡大する
技術の利用用途を拡大するためには、 「自社内で用途仮説を立てる方法」 と、 「他者に新しい用途を見つけてもらう方法」 の2つの方法があります。
自社内で用途仮説を立てる方法
自社内で用途仮説を立てる際にまず重要となるのが、自社技術が利用されている商品について、 「なぜ自社技術が利用されているのか」という課題を明確化すること です。その課題をもとに用途開発ができるようになります。
課題を明確にできたら「同様の課題を持った他社商品を調べる」か、「新しい商品に自社技術を転用できるか調べる」という2種類の方法を通して用途仮説を立てます。
「同様の課題を持った他社商品の調査」では、自社技術が現商品の課題を解決しているのであれば、他社商品の同様の課題を解決できる可能性は非常に高くなるため、技術開発の大きなきっかけになりうるでしょう。
「新しい商品に自社技術を転用できるか調べる」方法について、例えば衣類等で利用している技術を医療分野に転用できそうだと思っても、医療分野における商品の方が精度が高いケースがあり、その場合は商品の課題を解決できなくなってしまいます。
その際はまた別の商品を調べて、用途仮説を立て直す必要があります。
他者に新しい用途を見つけてもらう方法
他者に用途を見つけてもらうためには、 技術をできる限りオープンにして、相手に自社技術の利用価値を見出してもらう ことが重要です。
技術をオープンにすることで、不特定多数のより多くの技術者に認知してもらうことができ、技術の新たな用途や利用価値を見出してくれる可能性が高まります。
現在ではオープンイノベーションという手法も広まりつつあり、今までにない発想や新しい事業を生み出すためにも、これからは外部からの知見や発想を取り入れることがより重要となります。
そのためには誰もが理解できるよう、分かりやすく技術について伝えることが大切です。技術の採用を検討してくれる技術者や企業が、その技術に対する知識を持っているか否かわからないため、 初心者でも理解できるようなコンテンツを用意して、自社技術を知ってもらう ところから始めましょう。
技術ブランディングの成功事例
技術ブランディングに成功した6つの事例を紹介します。
ユニクロ|ヒートテック
ユニクロは 「ヒートテック」をブランディングし、技術ブランドとして確立することに成功 しています。
ヒートテックは、「機能性・デザイン性・コストパフォーマンス」の3要素を重視して開発・商品化された、インナーウェアの一種です。有名人とのコラボレーによるプロモーションやTVやWebを活用した広告宣伝、などで認知度を高め、大きなヒット商品となりました。
「保温性・吸湿性・速乾性」に優れている機能性素材を使用しているのが特徴で、寒い時期でも薄手の衣服だけで防寒対策ができます。
現在では男女兼用やキッズ向けなどのインナーウェアから、手袋や帽子や小物類まで、商品ラインナップが幅広く展開されており、リーズナブルな値段設定も魅力となっています。
インテル|プロセッサー
インテルのマイクロプロセッサー(CPU)がブランド化した事例も、技術ブランディングの成功事例として有名です。
同社は1990年代初頭からインテル・インサイドキャンペーンを展開し、デバイスの外観からは通常見えない部品である マイクロプロセッサーを可視化することで、競合他社のプロセッサーとの差別化 に成功しました。
同キャンペーンでは、今では有名になったインテルのロゴマークとジングルを使ったTV広告の他、「Intel Inside」の文字をパソコンの製品パッケージに掲載することにより、一般消費者への認知度向上を計りました。
また、インテルのマイクロプロセッサー技術は、安定性と信頼性が高いことでも知られており、製品の中にインテルのプロセッサーが搭載されていることを消費者に認知させることで
売上向上も見込めます。
インテルの事例は、 最終製品メーカーを巻き込んだブランディングとマーケティング活動システムを作った成功事例 の一つです。
ロッテ|キシリトール
虫歯の原因となる酸を作らずに砂糖のような甘さを感じられる 「天然甘味料キシリトール」に着目して商品開発に取り組んだロッテ は、技術ブランディングに成功し、日本のガム市場においてトップブランドを確立・維持しています。
歯の健康に役立つ成分「キシリトール」を活用して新たなニーズを開拓した同社は、健康機能食品として97年にキシリトールガムを発売し、翌年にはガム市場のトップブランドとしての地位を築きました。「キシリトール」の登録商標も取得し、現在は100%に近い認知度があります。
商標登録や高い認知度は防御的機能を果たし、競合他社のキシリトールを配合した商品(「XYLISH:明治製菓」や「XYLETS:グリコ)は同名称を利用できず、同市場から撤退したブランドも多く存在します。
ゴアテックス| 防水・透湿繊維
「材料」をブランド化した成功事例 として知られている「ゴア・テックス」は商品名ではなく、繊維技術の名称です。
同素材は「空気を通すが水滴は通さない」機能を持つ防水繊維で、登山用ウェアなどのアウトドア用品やスキーウェア、靴や衣料品など、多くの商品に使用されています。
同素材は、PTFE(テフロン)という素材から作られているのが特徴です。液体の侵入を防ぎながら、微細な孔を通じて水蒸気を透過することができ、「耐久性の高さ」や「使用期間の長さ」に定評があります。
シャープ|プラズマクラスター
シャープ株式会社が開発した 空気洗浄技術「プラズマクラスター」も、技術ブランディングの成功事例 として有名です。
空気中に浮遊する微粒子に加え、床・家具などの表面に付着する有害物質や微生物にも効果的な技術であり、エアコンや冷蔵庫など、様々な用途で利用されています。
具体的には、メーカーなどの企業に向けて、「研究機関との共同研究や、学術論文の発表などの研究結果の発表」を、一般ユーザー向けには「TV・新聞などでの広告宣伝」を展開することで、企業・一般ユーザー双方における認知拡大に成功しました。
デュポン|テフロン加工
アメリカの総合化学メーカー・デュポン社(現在はダウ・デュポン社)は、独自開発した技術のブランド化に早い段階から取り組んでいた企業で、代表的なものに「テフロン加工技術」があります。
同社は技術の認知度を高めるために、 テフロン加工技術をライセンス提供という手法で一般解放したのが特徴 です。
他社へのライセンス供給時には、ロゴやブランド名の使用基準などのルールを設けて遵守することを条件としました。調理器具や衣料品をはじめ、化学工業や医療器具など、様々な分野における企業が同技術を利用できるようになったため、現在も多くの商品が発売されています。
その結果「テフロン加工技術」の認知は飛躍的に拡大し、現在も「くっつかない」「焦げ付かない」加工の代名詞として、ブランドを確立・維持し続けています。
まとめ
本記事では、技術ブランディングについて基礎的な知識から具体的な成功事例まで、網羅的に解説しました。
技術ブランディングは、顧客を満足させられる高い技術を保有していることが大前提ですが、 「技術には自信があってもなかなか社会で評価されない」と感じている企業にとっては、常に大きな可能性を秘めている 手法です。
一般の人には特に「見えにくい・わかりづらい」という課題がある技術を、まずは可視化することから始めてみることをおすすめします。この記事を参考にしながら、ぜひまず一歩を踏み出してみてください。
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- この記事を書いた人
- エムタメ!編集部
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クラウドサーカス株式会社 マーケティング課
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2006年よりWeb制作事業を展開し、これまでBtoB企業を中心に2,300社以上のデジタルマーケティング支援をしてきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。53,000以上のユーザーを抱える「Cloud CIRCUS」も保有し、そこから得たデータを元にマーケティング活動も行う。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意。
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