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「サブスクサミット2019」レポート 第三回 セッション2「サブスクモデルにおける広告戦略」

記事公開日:2019/12/16
最終更新日:2023/11/14
「サブスクサミット2019」レポート 第三回 セッション2「サブスクモデルにおける広告戦略」

2019年10月31日(木)、TRUNK HOTEL(東京都渋谷区)において「サブスクサミット2019」が開催されました。
同イベントは、「マーケティングにおける課題を共有し、より良い未来を創出する」をテーマに、「サブスクサービス」に取り組む各業界のリーディングカンパニーから参加した登壇者が、さまざまなテーマでトークセッションを繰り広げました。

主催は、ソーシャルテクノロジーによるマーケティング支援事業を行うアライドアーキテクツ株式会社。
「エムタメ!」では、当日の様子からマーケター向けの情報を厳選し、数回にわたりレポートしていきます。

第三回は、「サブスクモデルにおける広告戦略」をテーマにパネルディスカッション形式で行われたセッション2の様子をお届けします。

「サブスクサミット2019」レポート

第一回 セッション「サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント~BtoC編~」

第二回 セッション「マーケティング成果に繋げる顧客体験の設計」

第四回 セッション「顧客とのコミュニケーション戦略」

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各社の広告施策のリアル

各社の広告施策のリアル

左から、村岡 弥真人氏(アライドアーキテクツ株式会社 CPO兼上級執行役員、松尾 慎治氏(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ オンラインラーニング事業推進室 マーケティング部 部長)、澤田 昌紀氏(ストライプインターナショナル株式会社 グローバルファッションEC本部メチャカリ部 部長)、斎藤 竜太氏(BASE FOOD Inc. CMO)、馬場 康次氏(株式会社お金のデザイン 執行役員CMO)

セッション2では、サブスクリプションモデルにおける広告成果を最大限に発揮するための戦略設計について、短期・中期それぞれの視点から議論されました。

【登壇者】

モレデーター:

村岡 弥真人氏(アライドアーキテクツ株式会社 CPO兼上級執行役員)

村岡 弥真人氏

パネリスト:

松尾 慎治氏(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ オンラインラーニング事業推進室 マーケティング部 部長)

松尾 慎治氏

2006年にリクルート入社。じゃらん、SUUMO、Hotpepperなどのメディアの運営・集客に携わったのち、スタディサプリのサービス立ち上げから参画。
「2011年、スタディサプリのサービス立ち上げから参画し、新規会員の獲得をミッションにマーケティングに取り組んでいます」

スタディサプリ…月額980円のサブスクリプション型オンラインの学習サービス。サービス開始当初は1講座5,000円の買い切り型で販売。
もともと高校生の大学受験向けに作られたサービスだが、現在は、小学校4年生~中学生向けの講座、社会人もターゲットに含む英会話講座も展開。有料会員数:84万人(国内)。BtoBtoCでは、高校2,500校(全高校の約半数)のほか、企業が語学研修で契約。「ドラゴン桜 2」でも取り上げられた。
メインターゲットは、大学受験をしようとしている高校生のうち、予備校に通っていない層。

澤田 昌紀氏(ストライプインターナショナル株式会社 グローバルファッションEC本部メチャカリ部 部長)

澤田 昌紀氏

アパレル企業のノーウェアにて、「A BATHING APE」の販売・企画・生産に関わったのち、ゴルフダイジェスト・オンラインへ。2013年、ストライプインターナショナルに入社。
「2015年にファッションサブスクリプションサービス「メチャカリ」を立ち上げ、責任者として運営に当たっています」

メチャカリ…月額5,800円で新品の洋服が借り放題になるファッションサブスクリプションサービスで、返却のタイミングは自由。常時手元に3着の服をキープできる。一度貸し出した洋服は二次流通市場に回すため、ユーザーは毎回、新品の服のみを借りられる。約150の取り扱いブランドのうち、自社ブランドは20ほど。
メインターゲットは、当初、ファッション好きの若年層を想定しており、既存ユーザーとのカニバリ利ゼーションも懸念していたが、実際には洋服を選ぶのが面倒な人、ミニマリスト、時間のない働く女性や子育て世代などに支持されており、新たな顧客層開拓につながった。

斎藤 竜太氏(BASE FOOD Inc. CMO)

斎藤 竜太氏

日用品メーカーや小売でのマーケティング担当などを経てBASE FOOD Inc.の創業にCMOとして参画。
「Webサイト運営から広告宣伝、CRM、PR、外部とのアライアンスなど、事業成長のためのマーケティング活動を統括しています」

ベースフード…「主食をイノベーションして健康を当たり前に」をミッションに2016年にサービスをスタート。一食に必要な栄養素が全部摂れる完全栄養食としての主食(パンと麺)を1ヵ月に20食分自宅に配送するサブスクリプションサービス。自然素材をパンや麺に練り込んで製造している。
メインターゲットは、栄養・健康に課題を感じているが多忙なビジネスパーソン。

馬場 康次氏(株式会社お金のデザイン 執行役員CMO)

馬場 康次氏

日本HP、イオン、マイクロソフト、グーグルで、マーケティング、ブランディング活動を牽引。
「2015年、お金のデザインに入社し、ロボアドバイザー「THEO(テオ)」を立ち上げ、2018年4月に執行役員CMOに就任し、現在に至ります」

THEO(テオ)…ユーザーから資金を預かり、買い付けから売却までをロボアドバイザー(一部AI)が自動で行うサービス。手数料は年額の1%で、サブスクリプションモデルではないが、ユーザーの7割が積み立てで運用しており、サブスクに近しい要素も多い。
メインターゲットは、投資に手間暇をかけず仕事に集中したい多忙なビジネスパーソン。

(以下、敬称略)

ディスカッションに先立ち、各社がこれまでに取り組んできた各広告媒体に対する評価をまとめた表がスクリーンに投影されました。

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

続いて、アジェンダの1つ目である「各社の広告試作のリアル」について、議論が交わされました。

スタディサプリ:古くて新しいTVCMで利用意向を促進

村岡:さまざまな広告媒体・手法がありますが、予算配分として投資しているジャンルはどれでしょうか?

松尾:スタディサプリでは、マス広告です。古くて新しいTVCMに予算をかけています。
高校生向けの施策の全体像がスライドのようになっています。

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

ブランド認知に始まり、利用意向、サイト来訪/アプリダウンロード、有料会員登録、課金継続という流れのなかで、さまざまな広告施策を行っていますが、費用対効果が一番大きいのがTVCMでした。

村岡:先ほど、予備校に行かない高校生が7割とお聞きしましたが、「じゃあ、Webサービスを使おう」とはなかなか想起しないような気がします。不信感をどんなコミュニケーションで払拭していますか?

松尾:サービスを立ち上げた際、プロダクト自体は良いものだと自負していましたが認知がなく、まずは認知率を上げようとさまざまな施策を行いました。しかし、認知率は上がっても会員は増えずという状態が数年続きました。結局、オンラインで学ぶというカテゴリ自体を良いと思ってもらえなければ会員にはなってもらえません。そのために一番、役立ったのがTVCMでした。

村岡:認知施策の際に使用されているメッセージは、どのようなものですか?

松尾:最初、広告代理店に相談したところ「認知にはインパクトが大事です。とにかく面白いCMを作りましょう」と言われて、やってみたのですがダメでしたね。
次に、サービスの説明を入れ、こんな人向けだという内容を盛り込んで論理的に伝えたところ、会員数はまあまあ増えたのですが、CPAがありませんでした。
第三段階として、プロダクトの一番の魅力である「カリスマ先生の神授業が定額で見放題」という訴求をしました。百聞は一見に如かずということで、授業をそのまま見せようという趣旨でした。これで会員数が2~3倍に爆増し、CPAも1/2~1/3に減りました。

スタディサプリの広告の考え方が次のスライドの通りで、「広告利益=CV(獲得会員数)×(LTV-CPA)」です。サブスクリプションモデルによくある方程式ではありますが、当社の場合、TVCMでCPAを下げながらCVを上げることに注力しています。

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

「スマホで勉強する」というスタイル自体が新しいため、ニーズは潜在的です。サブスクリプションによる新しい顧客体験の良さを伝えるためにTVCMを活用しています。教育系の場合、SEOを考えるとキーワードも限られているため、Webではなくマスを選択しているという理由もあります。

一般的にCMは認知獲得を目的として出稿しますが、スタディサプリが重視しているのは利用意向で、認知はCMの投下量でコントロールしています。「CM15秒を見たらすぐに欲しくなる」というレスポンス型を目指し、KPIは利用意向率やCPAになっています。

村岡:利用意向率はどのように計測しているのですか?

松尾:定点で調査を行っています。

マス広告業界では、クリエイターの感性でCMの内容が決められてしまうケースが多いです。認知率だけを考えればインパクトのあるカッコイイCMを作れば良いのでこの方法で良いですが、利用意向を考えると博打を打つようなものです。

そこで、スタディサプリではTVCMの改善にWebの発想を取り入れ、ABテストを繰り返し①クリエイティブの決定、②強いシーン・要素を分析、③動画の改善という3ステップで取り組んでいます

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

サブスクリプションには新しい顧客体験を提供するサービスが多いので、TVCMはマッチするのではないかと思います。

メチャカリ:39円キャンペーンを広告し、新規顧客が10倍に

澤田:メチャカリでもTVCMを運用しています。11月16日から「月額費用39円」のキャンペーン開始に合わせ、認知を目的としています。松尾さんがおっしゃったように「服を借りる」という新しい文化をどう受け入れてもらえるかがカギになると考えています。

「ファッション・レンタル」というカテゴリと、「メチャカリ」のサービス名の認知を指標としており、前回のCM放映後の調査では、関東在住のF1層の認知率が10%でした。認知度を高めていかないと、CMを打っても嘘くさく捉えられてしまい、CPAが下がりません

TVCMと並行し、別のクリエイティブでWeb上でも動画広告を出稿していますが、こちらはサービス説明を目的としています。TVCMで認知させ、Web広告で説明し、バナー広告とSNSで刈り取るというマーケティングフローで回しています。

村岡:バナー広告やSNSでの訴求内容はどういったものにしていますか?

澤田:TVCMやWeb広告よりも価格寄りにしています。

村岡:CPAのジャッジは、TVCMからSNSまでトータルでのコストで見ているのですか?

澤田:ええ、そうです。

村岡:39円キャンペーンの効果はありそうですか?

澤田:メチャカリでは、有料会員数を重要指標としていますが、デイリーで、キャンペーン告知の前後で10倍ほど増加しています。

村岡:39円キャンペーンで獲得したユーザーがキャンペーン終了後にどのくらい継続してくれるかは、会場の皆さんにも大きな関心事ではないかと思います。

澤田:データとして、4ヵ月目以降の継続率が急激に落ちるというものがあり、その対策として考案したのが今回の39円キャンペーンです。このキャンペーンでは3ヵ月間の利用料金が39円となっており、わずかな金額でも継続して費用を支払うことに慣れてもらうことが狙いでした。

以前は、最初の1ヵ月間の利用料無料というキャンペーンを行っていましたが、開始当初は効果が出たものの、時間の経過とともに薄れてきてしまったという経緯があります。

村岡:たしかに、少しでも自分のお財布からお金を出すという習慣を作ることが広告戦略としても大切になりますね。

ベースフード:新規顧客のチュートリアルを重視し、SNSで公開チュートリアルを実施

村岡:ベースフードさんは「マス」の欄が×になっていますが、これは、実施されていらっしゃらないという意味でしょうか。

斎藤:そうです。

斎藤 竜太氏

斎藤 竜太氏(BASE FOOD Inc. CMO)

村岡:事業がかなり急速に伸びていますが、PRではどんな施策に取り組まれていますか?

斎藤:予算配分としては、SNS広告とインフルエンサーマーケティングに全体の7割をさいています
注意しているのは、結局、継続してくれないユーザーを広告で取り込んでも意味がないので、獲得のタイミングで離脱要因をぬぐうような施策を実施しています。

まず、離脱要因として「食べ方がわからない」「効果を実感できない」「価格が高い」というものがあります
これに対し、SNS上で1ヵ月間の公開チュートリアルを行いました。ベースフードのパンや麺を単体で提供するのではなく、当社の公式コメントや管理栄養士からのアドバイスなどをセットで提供する「BASE FOOD CAMP」を実施しました。

その結果、ダイエット食品ではなくダイエットプログラムとして価格比較されるようになり、ハッシュタグで大量のレシピが投稿されて食べ方のバリエーションが広がるなどさまざまな効果が生まれました
定期購入の新規顧客獲得ではチュートリアルを行うことが重要であると考え、最初の1ヵ月間の体験をデザインして獲得することを心がけています

サブスクリプションサービスは体験型LPの相性が良くCVRが高いので、体験型LPと広告も連動させています。

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

オフラインでのタッチポイントも重視しています。ポップアップストアを開店したり、有名ラーメン店やハンバーガーショップとコラボしたり、BtoBtoCの手法を採用しています。

また、広告手法ではないのですが、法人向けに設置型社食サービスとして「BASE FOOD STAND」を開始しました。サブスクリプションモデルに限らず、CPAを下げるためにはバイラルによる獲得が必要なため、その施策の一つです。

ベースフードは、既存顧客に口コミで紹介してもらうのが難しい商品だと考えています。なんとなく怪しく思われてしまうため勧めにくいという心理的ハードルがあります。そこで、「それは何?」と聞いてもらえるような状況を作り出し、それに答えるかたちで紹介してもらうことを考えました。社内では「BtoCtoB」と呼んでいるスタイルです。

既存の数万人の会員のなかにはファンになってくれている熱量の高い方もいらっしゃいます。その方たちに会社での採用を勧めてもらうことで、本来は煩雑になりがちな法人導入のハードルを下げようというのが狙いです。
実際に、プレスリリースを出して会員にメール通知してから5営業日で、すでに50社が導入を決めてくれました。
また、アンバサダーの力が強いケースでは、所属組織の大半が定期会員化されることもありました。

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

村岡:先進的な取り組みですね。アンバサダーへは個別アプローチで依頼したのですか?

斎藤:いえ、会員全員にサービス開始の告知を一斉メールで配信しただけです。すると「もともとオフィスで食べていたので、オフィスにスタンドがあればうれしい」と反応があり、広めていただけました。

当社では、毎月の試食会や三ヵ月に一度の定期購入者イベントなどを開催しているのですが、参加者には役職者など会社に影響力を持つ方が多いのです。このことからこういった施策を企画しました。

村岡:主食の概念を変える商品ということで、BtoCとはいえ新規顧客獲得は難しいと思いますが、広告メッセージとしてはどんなものを使われていますか?

斎藤:これまでの成果としてCPAが一番良かったのは、PR風のクリエイティブです。新規顧客からの反応も高かったですね。
また、ユーザーのSNS投稿をそのまま活用したクリエイティブも安定的に成果を出してくれます。

THEO(テオ):経済紙でのPRやシンクタンクの設立で信頼感を醸成

経済紙でのPRやシンクタンクの設立で信頼感を醸成

澤田 昌紀氏(ストライプインターナショナル株式会社 グローバルファッションEC本部メチャカリ部 部長)、斎藤 竜太氏(BASE FOOD Inc. CMO)、馬場 康次氏(株式会社お金のデザイン 執行役員CMO)

村岡:THEOではどんな施策をされていますか?

馬場:当社の広告予算の9割はデジタル広告です。そこに残り1割でPRやSNSを絡めています。先ほどメチャカリさんのお話にもありましたが、デジタル広告だけを頑張っていてもCPAには限界があり、どこかのタイミングでTVCMなどを打つ必要が出てくるのですが、当社はベンチャー企業で広告に投下できる予算も限られているので、TVCMのような高額な広告の代わりにどのような仕掛けが使えるかを念頭に置いています。

そもそも、前提条件として日本で資産運用をしている層は全体の20%程度しかいません。多くの人にとって体験のない投資をサービスにしているため、カテゴリー創造の難しさがあります。

そこで行ったのが、①ブランドを作る、②コンテンツを作る、③マーケットを作る、の3つの施策です。

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

「②コンテンツを作る」では、「私の資産公開」という企画を実施しました。当社の社員が実際にTHEOを使って行っている資産運用状況を、毎月どのぐらい積み立て、どのような値動きをしているのかまで、すべて公開しました。こうした企画は既存の金融機関ではできないコンテンツで、すべてをオープンにする公正さや正直さといったイメージを訴求できたのではないかと思います。
その甲斐あってか、サービス開始から3年半で約7万7,000人のユーザーにご利用いただいています。

ただ、「スマホで誰でも1万円から投資できる」というメッセージを使用したため、次の課題として、投資初心者しか取り込めず、投資金額も少額であるということが上がってきました。投資を始めること自体は素晴らしいことですが、ある程度の金額を運用していただかないとユーザーにとっての良い体験にもつながりません
そこで、新たに、金融資産のうちTHEOに預けていただける金額の多いロイヤル顧客に対する施策を開始しました。
また、解約したユーザーへのインタビューを行い、何が本当にユーザーにとって価値のあることなのかを徹底的に分析しました。

分析結果を活かした施策が「お金の健康診断」です。投資はなかなか勇気のいることなので、テクノロジーの力だけでなく人間のアドバイスが欲しいという意見を反映したものです。お金の相談をしたい人とフィナンシャルプランナーを結び付けるサービスで、子会社を通して提供しています。ゆくゆくは、フィナンシャルプランナーからTHEOの顧客が上がってくるようになるといいなと考えています。

サブスクサミット

画像引用元:当日の登壇資料より引用

村岡:資産運用をAIに任せるという新しい価値にメリットを感じていただくという最初のハードルを越えると、次に、サービス利用を開始したものの人に相談できないと不安だというハードルが待っているということですね。そうしたカスタマージャーニーに対し、どんな広告コミュニケーションを工夫されていますか?

馬場:よく知らないベンチャー企業に自分の大切なお金を預けることは、なかなかできないと思うので、たとえば日経新聞のような権威のあるメディアに取り上げてもらったり、影響力のある人物にサービスの魅力を伝えてもらうような施策を行っています。
今年6月には「お金のデザイン研究所」を立ち上げ、資産運用におけるAIの活用を研究・情報発信しています。このように複合的に信頼感を醸成しているところです。

村岡:既存の権威などから信頼を設計してマーケティングに落とし込んでいるということなんですね。

馬場:そうですね。信頼が一番大切だと考えていて、必ずしも既存の権威がユーザーにとって信頼できるものではないこともあるので、今までにない本当にユーザーに寄り添ったサービスであるということをいかにして伝えるかをいろいろ試しているところです。

【質疑応答】

村岡:KPI設計や組織作りについても伺いたかったのですが、時間がなくなってきたので、会場からの質問を2点に絞りました。
①LTVを考えたときに、CPAをどういうロジックで決定すれば良いですか?
②新規顧客獲得用の施策と、継続利用を促すための既存顧客向けの施策では、どのような予算配分で投下していますか?

村岡 弥真人氏

村岡 弥真人氏(アライドアーキテクツ株式会社 CPO兼上級執行役員)

松尾:①は、フェーズにもよりますが、スケールさせる段階なら「LTV=CPA」といえるぐらい、許容できる限界までCPAをLTVに近づけてスケールさせます。施策ごとのCPAを見ると費用対効果が見合わないこともあるでしょうが、トータルで見て「LTV=CPA」になっていれば良しとします。

②は、既存顧客への施策はCRMに当たるかと思いますが、こちらもフェーズによります。スタディサプリの場合、ターゲットが卒業・入学してしまうのであまり既存顧客向けの施策はないのですが、スタディサプリENGLISHの場合、解約したりまた利用をスタートしたりということがあるので、休眠顧客をどうリテンションするか、ダウングレードさせるかといった施策を行います。

澤田:私は、CPAはそこまで細かくは見ていません。事業自体が黒字化されれば良いという考えだからです。そして、事業を黒字化するには圧倒的な会員数しかないわけです。もちろん、マーケティング担当者は一つひとつの細かい指標を追っていますが、黒字であれば、会員数増加のために広告宣伝費を使う方針です。

既存顧客への施策については、MAやCRMを強化しています。DMPも入れていて、服の借り換えがあれば継続率も伸びることはわかっているので、どうやって借り換えてもらうかを考えています。たとえば、2週間、借り換えていないユーザーにはアプリのプッシュ通知で借り換えを促進するような施策を行っています。

松尾 慎治氏

松尾 慎治氏(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ オンラインラーニング事業推進室 マーケティング部 部長)、澤田 昌紀氏(ストライプインターナショナル株式会社 グローバルファッションEC本部メチャカリ部 部長)、斎藤 竜太氏(BASE FOOD Inc. CMO)

斎藤:CPAについては、当社もスタディサプリさんと似ていて、LTVがCPAを下回らないように上限CPAを設定して投資しています。

既存顧客と新規顧客への予算配分については、当社は顧客既存にも投資を行っている方だと思います。定期購入者には、同梱で月替わりでソースを付けたり、定期購入者向けのイベント開催にも費用をかけています。

また、サービス開始から2年たち、ある程度、累計で解約者が増えてきたので、その層に対する復帰の施策にも予算をかけ始めました。成果として現在、利用を開始したユーザーのうち一割は解約者からの復帰となっています。

馬場:THEOでは、サービス開始直後はオンライン証券など競合他社の口座開設数をベンチマークしてCPAを設定していました。現在は、LTVが正確に測れるようになってきたのでLTVを見ながらCPAを設定しています。
商材の特性からLTVが比較的大きいため、CPAはかなり下回っています

村岡:ありがとうございました。
登壇者の皆さまに拍手をお願いします。

「サブスクサミット2019」レポート

第一回 セッション「サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント~BtoC編~」

第二回 セッション「マーケティング成果に繋げる顧客体験の設計」

第四回 セッション「顧客とのコミュニケーション戦略」


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