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「サブスクサミット2019」レポート 第一回 基調講演「サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント~BtoC編~」

記事公開日:2019/12/16
最終更新日:2023/11/17
「サブスクサミット2019」レポート 第一回 基調講演「サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント~BtoC編~」

2019年10月31日(木)、TRUNK HOTEL(東京都渋谷区)において「サブスクサミット2019」が開催されました。
同イベントは、「マーケティングにおける課題を共有し、より良い未来を創出する」をテーマに、サブスクリプションサービスに取り組む各業界のリーディングカンパニーから参加した登壇者が、さまざまなテーマでトークセッションを繰り広げました。

主催は、ソーシャルテクノロジーによるマーケティング支援事業を行うアライドアーキテクツ株式会社です。
「エムタメ!」では、当日の様子からマーケター向けの情報を厳選し、数回にわたりレポートしていきます。

第一回は、同イベントのスポンサーを務め、サブスクリプションビジネスの収益向上のを支援を手がけるZuora Japan株式会社の代表取締役社長 桑野 順一郎氏が登壇した基調講演「サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント~BtoC編~」の模様をお届けします。

「サブスクサミット2019」レポート

第二回 セッション「マーケティング成果に繋げる顧客体験の設計」

第三回 セッション「サブスクモデルにおける広告戦略」

第四回 セッション「顧客とのコミュニケーション戦略」

オープニング挨拶

アライドアーキテクツ株式会社 Chief Product Officer

村岡 弥真人氏(アライドアーキテクツ株式会社 Chief Product Officer)

オープニングで、主催のアライドアーキテクツ株式会社 CPO兼上級執行役員 村岡 弥真人氏から挨拶がありました。

挨拶のなかで村岡氏は、生活者を取り巻く情報が多様化する中で、企業のマーケティングはその変化に追いつけなくなってきた現状を課題と捉え、ソリューションとして同社がソーシャルテクノロジーを活用したマーケティング支援を提供していること、同時に、多様化するニーズがサブスクリプションビジネスの成長を後押ししていることに言及し、サブスクリプションビジネス市場が拡大するにつれ、マーケティングも複雑かつ困難になるだろうと予測。

従来のビジネスモデルが「完成版の商品を売ること」を最終ゴールとしてきたのに対し、サブスクリプションビジネスにおいては、顧客との関係を継続することが目的となるため、マーケティンが重視すべきものも「なるべく多くの人にリーチすること」から「生活者との関係を基に細かなPDCAを回し続けること」に変化してきているといい、それが今回のイベント開催の背景になっていると述べました。

サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント

サブスクリプションビジネス収益化成功のポイント

画像引用元:当日の登壇資料より引用

基調講演には、サブスクリプションビジネスの収益向上を支援を手がけるZuora Japan株式会社の代表取締役社長 桑野 順一郎氏が登壇しました。

桑野氏は冒頭で、近年、サブスクリプションビジネスが増加しているなかで収益性が疑問視されるようなビジネスも目立つと指摘。これを背景に、本セッションでは特にBtoC業界においてサブスクを成功させるポイントを紹介すると述べました。

サブスクリプションビジネスが拡大する2大理由

Zuora Japan株式会社 代表取締役社長

桑野 順一郎氏(Zuora Japan株式会社 代表取締役社長)

最初に、サブスクリプションビジネスが拡大している理由として、ニーズが「所有」から「利用」、「モノ」から「コト」へシフトしているという顧客視点の理由プロダクト販売モデルでの成長の限界という企業視点の理由の2点があると述べ、ビジネス変革が求められた結果、すべての業界においてサブスクリプションビジネスを採用する企業が増えたと主張しました。

サブスクリプションビジネスの動向

サブスクリプションビジネスの動向

画像引用元:当日の登壇資料より引用

「サブスクリプション元年」とよばれる2015年、定額制の動画・音楽配信サービスが登場し現在ではレンタルショップでDVDやCDを借りる人が少なくなっていると指摘。このように、サブスクリプションビジネスには、拡大のスピードが非常に速いという特徴があるといいます。

ソフトウェア業界でも同様のことが起きており、いち早くサブスクリプションモデルに切り替えたベンダーが大成功を収め、今やサブスクリプションにしないとユーザーに選ばれないという事態にまで発展してきていると説明しました。

旅客業界の事例

サブスクリプションビジネスの動向を示す事例として、旅客業界が挙げられました。「モノ」として車を販売する自動車メーカーがモビリティサービスを提供するサービス事業者へ転換している例(フォード/Ford)や、定額で自家用ジェット機に乗り放題のサービスを提供する航空会社Surf Airの例、フランス国鉄が提供する16~27歳向けの定額乗り放題サービスTGV maxの例が紹介されました。

旅客業界の事例

画像引用元:当日の登壇資料より引用

旅客業界の事例

画像引用元:当日の登壇資料より引用

BtoC/DtoCの事例

BtoC/DtoCの事例

画像引用元:当日の登壇資料より引用

つづいて、BtoC/DtoCの事例が紹介されました。

フェンダー(Fender Musical Instruments Corporation)

フェンダー

画像引用元:フェンダー

エレキギターを中心とする楽器メーカーのフェンダーでは、ギター購入者の9割が購入から3~6ヵ月以内に演奏技術が難しいことを理由に習得を断念してしまうという課題を抱えていたそうです。

これが機会損失につながりLTV向上を阻害していると判断した同社は、トレーニング用の動画を制作し、会員向けにサブスクリプションによるストリーミング配信を提供することでデジタルトランスフォーメーションを実現したといいます。

会員対象をフェンダーのギター購入者に限定しなかったことで、他メーカーのギター購入者も取り込むことができ、機会損失を防ぐ以上の効果が得られたそう。

さらに、同サービスを開始するまでは、卸売業者や販売代理店、楽器店を通して販売を行っていたため、お客さん 誰なのかを把握できていなかったところから、サービス開始でエンドユーザーとの接点を持てるようになるというメリットも得られたといいます。
動画を難易度別にし、多数の楽曲を取り揃えることで、ユーザーの閲覧傾向から各ユーザーのスキルレベルや好みのミュージシャンをも把握できているそうです。

この例から導き出されるサブスクリプションビジネスの大きなメリットがエンドユーザーと直接の接点を持てる点だといいます。その理由として、変化し続けるユーザーニーズをリアルタイムに捉え続けるためには直接つながりを持っている必要があることが挙げられました。

サブスクリプションモデルを単なる課金形態の一つだと誤解している人もいるが、そうではなく、変化するユーザーのニーズに合わせて常に価値を提供するモデルがサブスクリプションなのだと強調しました。

graze

graze

画像引用元:graze

grazeは、イギリスでスナック菓子の好きなメンバーが「ヘルシーなスナック菓子」を提供しようと立ち上げた企業で、市場調査は一切行わなかったそうです。

その代わり、Webサイトから申し込みがあると、1ヵ月に1回、スナック菓子4種をアソートで箱に詰めて発送し「どのスナック菓子が好みか、どのスナック菓子が嫌いで、どうなら良かったのか」というフィードバックを徹底して得るようにしたそう。

これにより、個々のユーザーの好みを把握できるようになると、好みのスナック菓子だけでなく、少しバリエーションを広げ、好みに近いさまざまな種類のスナック菓子を提供することで、ユーザーは好みのタイプの新しい味に出会えるといいます。
ユーザーは、毎月のスナック菓子の到着が待ち遠しくなり、ワクワクする。この体験を価値として提供しているのだそうです。

通常は、テストマーケティングを行った結果に基づいて新商品開発を行い、生産して在庫を抱え、売れるかどうかわからないままに発売し、10種類の新商品のうち1種類が売れるかどうか、という博打を打つような方法で行われているスナック菓子メーカーのビジネスを、サブスクリプションにすることでテストマーケティングなしで在庫も持たないモデルへ変換して成功していると総括しました。

このほか、アップルやトヨタ、ソニーもサブスクリプションモデルを取り入れて業績が向上していることがスライドで紹介されました。

graze

画像引用元:当日の登壇資料より引用

サブスクリプションモデルで成功するために大切な2つのポイント

Zuora Japan株式会社 代表取締役社長

桑野 順一郎氏(Zuora Japan株式会社 代表取締役社長)

サブスクリプションモデルを正しく理解する

サブスクリプションビジネスをスタートして多くの企業が陥る失敗が、サブスクリプションを従来のプロダクト販売の延長線上で捉え、課金形態のみを製品代金を12分割した月額制にてスタートしてしまうことだと桑野氏は忠告します。

サブスクリプションモデルを正しく理解する

画像引用元:当日の登壇資料より引用

従来のプロダクト販売モデルでは良いプロダクトを作ることがもっとも重要であり、売れるまでが勝負だったのに対し、サブスクリプションモデルではサブスクライバー(顧客側)が中心となり企業が直接、ニーズを拾って製品・サービスに反映し、価値を提供し続けることで「永遠のベータ版」となり、売れてからが勝負になるのだといいます。

【ポイント1】顧客とつながる

サブスクリプションビジネスで成功するためには、2つのポイントがあるのだそう。
一つ目は、顧客とつながることで、これにより、ビジネスの原点ともいえる「顧客の声を製品・サービスにフィードバックする」ことが可能になるといいます。

起業からまもなくは自社で販売していた企業も、少し売れるようになると販路拡大のために代理店を使うようになり、その結果、売上は増え、顧客との接点を失います。モノが売れる時代はそれでも良かったが、モノが売れなくなり、デジタルツールにより顧客の声を拾うことが可能になった現代においては、個々の顧客とつながり「究極の御用聞き」になることが重要だといいます。

【ポイント2】「価格」に見合った「価値」を提供する

二つ目は、「価格」に見合った「価値」を提供することで、これが逆転すれば解約につながると忠告します。

ここで、両者のバランスを取るための考え方として顧客生涯価値(LTV)が紹介されました。

「価格」に見合った「価値」を提供する

画像引用元:当日の登壇資料より引用

横軸が「時間」、縦軸が「金額」となり、横軸を限りなく伸ばしつつ縦軸を上げられればサブスクリプションビジネスとして成功となりますが、どちらがより重要かといえば、横軸だといいます。

桑野氏が代表取締役を務めるZuora Japanの顧客を例に挙げた解説によると、典型的なユーザーの例は、利用開始後、一定期間の後でアップグレードしたりオプションを追加するなどして縦軸が伸び、休止や再開を経て利用を継続するうち、契約内容の限度まで活用しきれなくなってくるケースもあるといいます。

このとき、そのままのプランで継続しているとユーザーは解約を検討し始めるため、多少は金額が落ちても継続を重視してダウングレードを提案することが大切だそう。これにより、顧客にとっての価値を提供し続け、収益化のチャンスを継続するのだといいます。

この一連の流れを同社では「サブスクリプション・ジャーニー」と呼んでいるそうです。

最後に、改めて既存の「プロダクト販売モデル」と新たな「サブスクリプションモデル」の相違点が紹介され、基調講演は幕を閉じました。

「価格」に見合った「価値」を提供する

画像引用元:当日の登壇資料より引用

「サブスクサミット2019」レポート

第二回 セッション「マーケティング成果に繋げる顧客体験の設計」

第三回 セッション「サブスクモデルにおける広告戦略」

第四回 セッション「顧客とのコミュニケーション戦略」


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