インサイドセールスが「辛い」と思うのは組織の問題が大きい
最終更新日:2023/11/21
近年、急激にその需要が増えている「インサイドセールス」。スタートアップ企業や中小企業でも、新たにインサイドセールス部門を設ける企業が多くなってきました。
しかし、日本ではまだまだ新しい職種であり、成功事例も少ないインサイドセールスの部門に携わる人のなかには、「辛い」と感じている人も多いようです。
今回の記事では、インサイドセールスが「辛い」と思われる原因を深掘りします。とくに、営業部門やマーケティング部門のマネジメントを担当する方は必読です!
1.インサイドセールスは「辛い」のか?
マーケティング部門が獲得した潜在顧客の情報(リード)をもとに、電話・メール・チャットなどの内勤型のコミュニケーションで営業を行うインサイドセールス。近年注目を集めている営業手法ですが、Googleで「インサイドセールス」を検索すると、なにやら気になる言葉が目につきます。
「インサイドセールス 辛い」
Googleサジェストに表示されるということは、「インサイドセールス 辛い」というキーワードが、かなりの回数、検索されているということです。
エムタメ!メディアの運営をしている当社も、インサイドセールス部門を設置しているため、そう検索したくなる気持ちはよくわかります。しかし、インサイドセールスが、ただ「辛い」仕事という印象になってしまうのは、マーケティングの普及を勧める私たちとしても残念です。そこで今回は、インサイドセールスの「辛さ」の原因を掘り下げてみたいと思います。
2.インサイドセールスはこれからの営業組織の中核になる存在
まずはじめに、インサイドセールスの需要が増加している背景について、おさらいしておきましょう。
クラウド技術の進化とともに、日本ではクラウド上のソフトウェアを、月額などの定期利用料を払って使用する「サブスクリプション型」のサービスが非常に普及しました。サブスクリプション型のビジネスモデルは、1人のユーザーからの売り上げ単価は安くとも、長く契約を継続してもらうことで、安定した利益を得るものです。また、入会へのハードルを下げるために、基本的なサービスは無料で提供し、高度なサービスで課金する「フリーミアム」の戦略をとっている企業も多くあります。
このようなビジネスモデルでは、「興味を持ったお客様に、まずは無料会員になってもらうこと」や「無料サービスから有料サービスへ移行してもらうこと」などが重要な課題です。インサイドセールスは、このようなビジネス戦略のなかで、顧客と遠隔でコミュニケーションを取ることで、潜在顧客を顕在顧客へと「育てる」役割を担っています。
このような背景から、インサイドセールス部門を立ち上げたいという企業は、いま非常に増えており、インサイドセールスを効率化するためのさまざまなツールも販売されています。
しかし、日本におけるインサイドセールスの成功事例はまだまだ少なく、すでにインサイドセールスを取り入れた企業も、試行錯誤を繰り返している最中です。インサイドセールスに従事する人が「辛い」と感じる理由も、この「正解がわからない」感覚が強いからかもしれません。
3.「辛い」と思わせてしまうのは組織の問題が大きい
インサイドセールスを実践している当社の経験から推測すると、インサイドセールスの「辛さ」の原因は、業務自体ではなく、組織や体制の不安定さからきているのではないかと思います。インサイドセールス部門がうまくまわっていない組織でよくある課題をまとめました。
(1)他部署からの認識が低い
これまでフィールドセールス(外勤型の営業部門)を中心に行っていた企業の場合、インサイドセールス部門がフィールドセールス部門の下位組織とみなされたり、営業部門のためのテレアポ部隊と思われたりすることがよくあります。
他部署からも、営業的な役割だと思い込まれているため、「インサイドセールスの成果=売り上げ」だと誤解されており、フィールドセールスと比べたときにその貢献度を低く見られがちです。
たとえば、他部署からの何気ないこんな言葉が、インサイドセールスを追い込んでいます・・・
「ずっと電話するの、大変だね」(…テレアポ部隊だと思われてる!?)
「ずっと電話してて、えらいね」
「一日中社内にいるのってきつくない?」(…内勤だから下に見られてる!?)!?
(2)KPI・KGIを達成できない
KPI・KGIを達成できないことは、どの部門でも仕事の難しさを感じる原因になりますが、インサイドセールス部門の場合、その仕事の新しさゆえに「そもそも」設定がずれているという問題が潜んでいる場合があります。
●達成できない理由①:そもそも、リードが少ない
インサイドセールス部門は、テレアポ部隊とも、マーケティング部門とも違うため、リードの獲得は仕事ではありません。組織として、そもそも設定したKPI・KGIを達成できるリード数を保有していなければ、インサイドセールスが電話やメールでアプローチできる先も足らず、目標を達成できないのは当然です。もし、リードが足りないのであれば、リード獲得のためのマーケティング予算を割いた方がいいかもしれません。
●達成できない理由②:そもそも、リードタイムが長い商材
そもそも、リードタイムが長い商材であるにもかかわらず、すぐに結果を出すKGIを引いていませんか?
インサイドセールスは、即効性がある施策とはいえません。一般的に、成果が出るまでには少なくとも、半年以上かかるといわれています。まして、リードタイムが長い商材であれば、インサイドセールスが育てる期間も長くなるため、そのぶん成果が出るまでの期間も長くなります。
●達成できない理由③:そもそもKPI・KGIが目的とずれている
アポ獲得数や行動数(コール数、商談)のみをインサイドセールスの指標とすると、担当者は内容や質にかかわらずコール数をこなすことや、アポ獲得に必死になります。その結果、インサイドセールス部門がテレアポ部隊化してしまったり、営業が質の低いアポに振り回され、非効率になったりすることがあります。
インサイドセールスには、本来の「見込み客を育てる」という目的にあった指標が必要です。たとえば「ステータスアップ件数」や「ランクアップ件数」などがそうです。このような指標をアポ数、案件化数、受注数などと合わせ、複数のKPIをバランスよく追うことが大切です。
参考: エムタメ!過去記事「インサイドセールス立ち上げ初期に起きる「テレアポ部隊化してしまう」問題はなぜ生まれるのか?」
(3)施策がコロコロ変わって、正解が見えない
インサイドセールスだけでなく、新規事業部門であればどこも共通する課題ですが、社内にノウハウがない事業を立ち上げる場合、正解が見つかるまでは短いスパンでいろいろと試さなければなりません。
仮説を検証するためには「量」をこなすことも必要ですが、一人で仮設を立て、量をこなすというサイクルをまわさなければいけないのは、非常にタフな精神力が求められる仕事です。
また、社内に情報がなく、外部に情報を求める場合、仲間同士で共感したり、情報交換したりできるというよい面があります。しかし、インサイドセールスはまだまだ黎明期なので、そもそも「成功している」情報が少ないこと、プライベートの時間をかなり使わなければならないという問題もあるのが現実です。
このように、正解が見えないなか「自分がやっていることが本当に正しいのか分からない」というマインドでは、つらく感じてしまうのは当然です。「私が正解を見つけてやる!」という主体的な感覚をもてることが理想ですが、そのためには上司や周囲のサポートが不可欠です。
(4)フィールドセールスとインサイドセールスの人数比率が偏っている
インサイドセールスとフィールドセールスの人数比率があまりに偏っていると、施策を上手く回せない可能性があります。
成功しているインサイドセールスチームをもっているある会社は、フィールドセールスとインサイドセールスを1:1でチームを組ませているそうです。そうすることで、チーム間で日々PDCAを回すことができ、別チームと情報交換することで、成功ノウハウが早くたまるようになったそうです。
部門立ち上げ時は、インサイドセールス担当が1~2人だけという話をよく聞きますが、「1人だから辛い」「人数が少なくて辛い」ということもあるようです。
(5)営業とマーケティング部門の板ばさみ
インサイドセールスは、営業部門とマーケティング部門の橋渡しをして、成果を最大化する部署です。
そのため立ち上げ期は、リードを選別するためのセグメント項目をマーケティング施策と連動させたり、営業と良質なアポ条件や、追客方法のすり合わせをしたりしなければなりません。
しかし、どの部署も自部門の成果を最大化させるために、譲れないと思っていることがあります。インサイドセールスは、中間組織であるため、すり合わせに工数がかかったり、両者の主張に苦しんだりすることも多くなります。
(6)効率化のためのツールが導入されない
一般的に、インサイドセールスにはMA、SFA、オンライン商談などのツールが必要です。
前述のように、立ち上げ期のインサイドセールス部門は、少人数で組織されることがよくありますが、組織の人数が少ないゆえに、効率化のためのツールがなかなか導入されないというケースをよく聞きます。ツールが導入されなければ、いつまでたってもマンパワーで「がんばる」しかなく、効果が出るまでの時間も当然長くなっていきます。
4.解決するには?
上記のようにまとめてみると、「インサイドセールス 辛い」の原因は、なかなか難しい問題であることがわかります。
しかし、新規事業に従事したことがある方であればご存知のように、これらの問題を解決する、もっとも効果的な方法は「成果を挙げる」ことにつきます。
そして、インサイドセールスの担当者が、その成果を確実に挙げていくためには、上司や組織の理解が不可欠です。
そのためには、組織のトップやマネジメント担当者が、インサイドセールスの必要性・重要さをよく理解し、組織全体へ何度も、丁寧に伝え続けることが大切です。
5.まとめ
内勤型のインサイドセールスは、働き方の多様性を広げる観点でも、これからの日本にとって必ず需要のある職種です。
未来あるインサイドセールスに、「辛い」というイメージがついてしまわないよう、ぜひ日本流の成功例がたくさん出てくることを期待しています。
エムタメ!も、インサイドセールスに取り組む皆さまの少しでも役に立てるよう、引き続き、情報を発信していきます!
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