「bellFace User Meetup #14 BestPracticeを探求せよ!実践企業から学ぶInsideSalesの仕組みづくり」レポート 第一回 SESSION #1 特別講演「THE MODEL-マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス-」
最終更新日:2020/11/19
2019年4月17日(水)、ベルサール東京日本橋において、オンライン商談システム「bellFace(ベルフェイス)」を開発・提供しているベルフェイス株式会社のイベント「bellFace User Meetup #14 BestPracticeを探求せよ!実践企業から学ぶInsideSalesの仕組みづくり」が開催されました。
「エムタメ!」では、当日の様子を数回にわたりレポートしていきます。
第一回は、著書『THE MODEL(ザ・モデル)』で、Saas時代の成長戦略としてマーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセスについて具体的に解説したアドビ システムズ 株式会社 専務執行役員 マルケト事業統括の福田 康隆氏の特別講演「THE MODEL -マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス-」の模様をお送りします。
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1.『THE MODEL(ザ・モデル)』を執筆した意図とは?
福田 康隆氏
(アドビ システムズ 株式会社 専務執行役員 マルケト事業統括)
福田氏の著書『THE MODEL(ザ・モデル)』に出てくる概念図は、福田がアメリカで「営業を科学する」方法論に出会った衝撃から始まったといいます。2005年にアメリカから帰国したあと、日本でもマーケティングからインサイドセールス、営業へとつながるオペレーションを実践してみようとビジネスに取り組んできたことが原型です。
福田氏が同書を執筆した意図は、以下の4点であり、これが注意点ともなっているといいます。
【THE MODELで伝えたかったこと】
- THE MODELの根幹は顧客ステージ設計。
- 役割ありきで考えてはいけない。プロセスと必要性を考える。
- 各部門のKPIにこだわると個別最適になる。「共業」の仕組みを作ること。
- BtoB Saasだけではなく、あらゆる企業がレベニューモデルを考えるべき。
特に、分業が進むなかで、各部門のモチベーションのあり方に注意を払わないと、洗練されたオペレーション=「共業」ではなく、個別最適に始終してしまうといいます。マネジメントや競争環境により「ともに働く」という意識作りを整えることがカギになると述べられました。
福田氏が、営業プロセスマネジメントに興味を持つきっかけとなったのは、米国での就業経験でした。エンジニアとして社会人生活をスタートした福田氏にとって、営業は畑違いの分野でしたが、赴任先の同僚に「日本人はあれほど生産管理を緻密に行うのに、なぜ、営業に関してはファジーなのか?」と疑問を投げかけられて初めて「営業プロセスにも管理が必要なのだ」と気づいたといいます。
2002年当時は折しも、日本で『The Goal(ザ・ゴール)』が発刊された時期でした。同書は、工場におけるプロセスの最適化についてストーリー仕立てで解説したものですが、同書の内容に衝撃を受け「この発想を営業プロセスに落とし込んだら大きな差別化につながるのではないか?」と考えたのが福田氏の現在の仕事の原点になっているといいます。
2.『THE MODEL(ザ・モデル)』の原型の完成
福田氏は、『THE MODEL(ザ・モデル)』の構想として「PLAY BOOK」をイメージしていたといいます。アメリカン・フットボールの世界では、どんなときにどのフォーメーションで誰がどのように動くか、チームの役割としてどう動いていくかということをまとめた作戦指令書のようなものがあります。ビジネスにおいても自身の部門、役割だけという縦割り意識のようなものを持たず、「全体を見る」と意識を持ち、「分業」ではなく「共業」というバランス感覚を養うことが大切であることに気づいたそうです。
そして、マーケティング、インサイドセールス、カスタマーサクセスといった営業の一通りの流れを経験させてもらい、まとめたのが『THE MODEL(ザ・モデル)』の原型となるチャートだったといいます。
リードを獲得して受注に至るプロセスの中心となる機能は、マーケティング、インサイドセールス、営業(フィールドセールス)、カスタマーサクセスの4つ。これらが共業する一連の流れを作りたいと考えました。
3.営業プロセスの肝は顧客ステージ設計
当日の登壇資料『THE MODEL』より引用
営業プロセスの工程管理を行うためには、顧客ステージへの遷移の判断基準となる指標を明確に決めておく必要があると福田氏はいいます。どの企業も指標より先に施策から入りがちだが、指標を達成するために最適なチャネル・有効な施策は何か?という順序で考えるべきと述べました。
また、旧来の営業ではステージ遷移の判断を個人の感覚に頼るしかなかったところ、デジタルツールからデータを取れるようになった現代では、指標の達成が可視化できるようになったという点にも言及しました。
まずは、自社の顧客についてのステージ設計を行ったうえで、それに合わせて営業組織を作っていくという順番で進めることが大切であるといいます。
当日の登壇資料『THE MODEL』より引用
BtoBやはSaaSビジネスなど限られた業界、企業規模向けのように思われることもありますが、THE MODELはそれぞれの企業の現状に合わせた新たなプロセス、再現性ある営業の「型」、成長戦略であると福田氏はいいます。自社のターゲットやセグメント、販売チャネル、価格帯、成長ステージに合わせて顧客ステージ設計 を行うことがもっとも重要だとのことです。
4.自社のベストプラクティスを探るうえでの注意点
当日の登壇資料より
実際にこの概念を自社の営業プロセスで活用しようとする際に気をつけなければならないのが、方程式のように事業計画通りにビジネスが回ると錯覚してしまうことだそう。
受注率や商談か率から逆算したリード数を確保すれば、売上目標を達成しつづけられるものと考えてしまいがちですが、この計画で実際にうまくいくのは最初の1~2期目ぐらいまでだといいます。
なぜかというと、目標額を上げながら受注率を維持するためには、営業人員を増強する必要があり、退職者を補うための採用や新人教育といった負担がかかってくることが一つ(結果的に、受注率は低下)。もう一つは、一通りリードを刈り取った後には、それまでより関心度の低い層しか残っていないため、商談化率が下がっていくためだといいます。
当日の登壇資料より
このように、商談化率、受注率が下がっていけば、その分、目標達成のために必要なリード数が増えます。しかし、目標売上以上にマーケティング予算を投下することはできず、伸びは鈍化します。商談化率、受注率の改善には限界があるということです。
ここで、注目したいのが、リードのうち未受注・未商談の層で、新たな集客コストをかけずに受注を獲得できる可能性を秘めています。
当日の登壇資料より
MA(マーケティングオートメーション)を活用してこの層をフォローすること(リサイクル)がビジネスを伸ばすコツで、未着手の企業は多いと福田氏はいいます。
結論として、営業プロセスはフローだけではなく未商談・未受注の残高も管理し、ボトルネックを特定・改善していくことが重要とのことでした。
最後に改めて、本に書かれている内容をそのまま当てはめようとせずに、自社に合わせてチューニングすることが大切で、そのチューニングの過程で得られた何百何千の意思決定が、ビジネス環境や条件の変化にも対応できる「再現性」をもたらすことが強調され、「本当にこれがベストなやり方なのか疑問を持ち続けることが大切である」と締めくくり、特別講演は幕を閉じました。
当日の登壇資料より