「Girls Marketing Collection 2019」レポート 第二回 カンファレンス「キーワードは「共感」。MERYが読み解く今の女の子たち」
最終更新日:2023/11/20

マーケティングに携わっている方なら一度は「F1層、M1層」といったセグメントを耳にしたことがあるでしょう。たとえば、F1層(Female1)は20~34歳の女性、T層(Teenager)は13~19歳の男女を表します。ただ、このセグメント手法は、もう古いともいわれています。
BtoCマーケティングにおいては、インフルエンサーマーケティングをはじめとするSNSを活用したマーケティング手法が一つのトレンドとなっています。そして、SNS上でトレンドのカギを握っているのが、従来のセグメンテーションでは区分できなかった「13~24歳までの女性」という層です。
このセグメントにスポットを当てたマーケティングセミナー「Girls Marketing Collection 2019」(主催:株式会社宣伝会議)が、2019年6月24日(月)、宣伝会議本社セミナールームにて開催されました。
「エムタメ!」では、当セミナーからの二つのカンファレンスの様子をレポートしていきます。
第二回は、大学生~社会人3年目ぐらいまでの「U-25」の女性から圧倒的な支持を得るメディア「MERY(メリー)」を軸に、プロモーションやコンサルティングなどを手がける株式会社MERYのBRAND STUDIO 部長 青木 秀樹氏が登壇したカンファレンス「キーワードは「共感」。MERYが読み解く今の女の子たち」の模様をお送りします。
「Girls Marketing Collection 2019」レポート 第一回 カンファレンス「インフルエンサーと体験コンテンツがもたらす魅力とは」
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「お手本が響かない」時代に、女の子の心を捉えるために私たちができること
MERYは「女の子の毎日をかわいく。」というビジョンを掲げるメディアで、ファッション・ヘアスタイル・美容・ コスメ・おでかけ・恋愛といったテーマの記事を掲載しています。月間PV数:1億4,440万、月間UU数:440万を誇り、SNSフォロワー総数:111.4万人を抱えます(2019年3月時点の数値)。
株式会社MERYでは、メディアを軸にアプリでも情報提供を行い、プロモーションやコンサルティングなども手がけています。
冒頭では、2018年9月に天王洲キャナルイーストのB&C HALLにて開催されたイベント「LUCKY MERY DAY」の様子が紹介されました。同イベントは、MERYユーザーの応募者のなかから1,000組2,000名様が招待され、メイク、カフェ、Instagramとコラボレーションしたフォトスポットなどを体験できるもの。
スポンサーとしてはコスメ・ビューティ系を中心に、フード系、ライフスタイル系の企業が協賛し、顧客に直接インタビューやアンケートを実施できる機会として好評だったといいます。
青木 秀樹氏(株式会社MERY BRAND STUDIO 部長)
青木氏は、現代のトレンドの正体を探るに当たり、時代が変化して「Value(=価値観)が大きく変化する時代」になったことがカギになっていると分析しています。
背景には、テクノロジーの進化による情報の流通の変化や、コミュニケーションのあり方の変化などがあり、かつては、マスから発信されたものが「お手本」としてトレンドになっていたのが、現在は、自分らしさ・好きを追求するなかでSNSなどデジタル上で共感を集めたものがトレンド化する傾向にあるといいます。
当日の登壇資料より引用
実際にMERY上では、「(自分が)どうしたらかわいくなれるか」を切り口とした記事のPV数が伸びる傾向にあるそうです。
ここで、上記のような現象を体現している表現として、日本経済新聞に掲載された「消費トレンドの正体とは、トレンドが消失したことではないか」(出典:日本経済新聞 2019年4月4日 万葉集もあだ花?トレンドが消える「令和」)という言葉が紹介されました。
青木氏の解釈では、トレンドがなくなったというわけではなく、「お手本」が響きづらくなっているがゆえに、トレンドが見えづらくなっているのではないかということです。実際に、SNSなどで支持を集めトレンド化した事柄がマスに拾われ紹介されるという現象も起きていることが根拠となっています。
「お手本が響かない」時代にMERYが大切にしている価値観
当日の登壇資料より引用
MERYには、ユーザー層と同じ目線で「かわいい」を拾い上げることのできる公認ライターが約100名在籍しているそうです。女子大生を中心とする公認ライターは、日々、自分たちが身近で興味・関心のあることをテーマに記事を執筆し、1日に公開される本数は80記事にのぼるといいます。
「自分が表現したい“好き”を明確に持っていること。それを発信するモチベーションを持っていること」を条件に採用された公認ライターたちが、等身大で発信する「好き」「かわいい」にユーザーたちが共感・支持するという構図になっているとのことです。
当日の登壇資料より引用
公認ライターたちは月に1回のペースで一堂に会し、その月にたくさんの支持をあつめたライターの表彰や、ライター同士で自分の「好き」を見つける方法、表現する方法などのナレッジ共有を行っているといいます。
MERYの記事は、「女の子みんな」ではなく「特定の誰か」に届けるために生まれたものであるという点が大きなポイントになっています。 たくさんの等身大の「好き」が、一人ひとりの女の子の心を動かすという構図になっており、だからこそ、公認ライターにモチベーションが生まれやすかったり、セレンディピティ(偶然の発見)が生まれているといいます。
当日の登壇資料より引用
【事例紹介】再現性ある「共感」を生み出す仕組みから
ここで、上記の「共感」の仕組みをソリューションとして提供する組織「MERY BRAND STUDIO」について紹介されました。
当日の登壇資料より引用
広告によるプロモーションも一部、手がけているそうですが、それよりも商品・サービスのコンセプト開発や、イベントの企画・運営、LP(ランディングページ)やWebコンテンツの企画・制作を提供する比率が上がってきているとのことです。
つづいて、同サービスによるプロモーション成功事例が2点紹介されました。
- 小売店の店舗で販促をプロデュース
→来店者数・販売数が数十%向上
- コスメメーカーがリアルイベントに協賛
→顧客から生の声を集め、よりGirlsの共感を得られるプロモーションを模索したところ、売上がアップ
青木 秀樹氏(株式会社MERY BRAND STUDIO 部長)
同サービスでは、商品・サービスの「機能」を「意味」へと置き換える「価値の再定義」を行っているといいます。
事例を交えながら価値の再定義が紹介されました。
いずれも、一般的な価値から、Girlsの文脈で見た価値に置き換えることで彼女たちの共感を引き出すことができている例だといいます。
「N=1」の積み重ねで従来型デジタルマーケティングの限界を乗り越える
「N=1」の積み重ねで従来型デジタルマーケティングの限界を乗り越える
当日の登壇資料より引用
最近よく耳にする課題として、以下のようなものがあると青木氏はいいます。
- 各種KPIは悪くないが、最終的な求める成果につながらない(経営層)
- 細かいExcelデータの羅列を見ても戦略策定が困難(経営層)
- 部門間の連携が取れていない、コミュニケーションが分断されている(ミドル層)
- 各種KPIの間でトレードオフが発生している(ミドル層)
- やっている施策に意義を感じられない(現場メンバー)
デジタルになった途端、冷たいコミュニケーションとなりがちで、その理由として、デジタルマーケティングが扱うデータが「薄いデータ」であるためだと主張しました。
これに対し、同社が扱うデータは「厚いデータ」であり、数値化しづらい特性を持っているといいます。
当日の登壇資料より引用
「N=1」の積み重ねでしか得られない情報があり、それが重要であると結び、カンファレンスは幕を閉じました。