ファクトリーオートメーション(FA)とは?メリット・デメリットや導入方法を解説
最終更新日:2023/10/27
ファクトリーオートメーションとは、工場における生産工程を自動化するシステム全般のことです。コンピューター制御や産業ロボット、IT技術などを活用して、生産ラインの自動化・効率化を目指します。
ファクトリーオートメーションは、生産性や品質の向上、安全性の確保など、多くのメリットをもたらすため、少子高齢化が進み、人手不足が深刻化している製造業において、競争力を高めるには欠かせないシステムといえるでしょう。
そこで本コラムでは、ファクトリーオートメーションのメリット・デメリット、導入ステップなど、基本情報を解説します。導入を検討されている方はぜひお役立てください。
【この記事を読んでいる方におすすめな無料資料もご紹介】
製造業デジタルマーケティングの人気資料3点がまとめてダウンロードできます!ご興味がありましたら、以下よりお気軽にお申し込みください!
>製造業向けデジタルマーケティング資料3点セットをダウンロードする
「デジタルマーケティングの基礎」を知りたい方はこちらがおすすめです!
合計300ページ弱のデジタルマーケティング関連資料が無料で読めます!
> デジタルマーケティング入門書を今すぐダウンロード
目次
ファクトリーオートメーションとは
ファクトリーオートメーション(Factory Automation:以下FA)とは、工場の生産工程を自動化するための技術やシステムのことです。いままで人間が行っていた加工、組み立て、出荷作業などに産業用ロボットやデジタル技術を活用して、生産性の向上などを図ります。
似ている取り組みとして「スマートファクトリー」がありますが、こちらはFAをさらに進化させたシステムのことをいいます。製造工程を自動化するFAに対して、スマートファクトリーはIoTやAIなどの最先端技術を活用して、工程全体を最適化するシステムです。
ファクトリーオートメーションの歴史
国内におけるFAの歴史は、1950年代に製鉄企業を中心に発展しました。金属を板状に伸ばす連続式圧延機「ストリップミル」などが登場し、圧延や鋳造の工程を連続化して大量生産が可能となりました。
さらに1960年代には、ICが登場して産業用ロボットが実用化。高度経済成長期に突入し、急速にFAが発達しました。
1970年から1980年代には、工作機械のコンピューター接続や、計器類のデジタル化が進み、さらに現在のFAに近づきます。作業工程を数値情報で指示する「NC工作機械」など、いまでも使われている次世代ロボットの登場で高度な制御が可能に。ネットワークで制御装置を接続した分散型制御システムが主流となりました。
1990年代には、設計製図・製造支援システムのCADやCAMなどが普及。2020年以降はICT、IoT、AIなどの最先端技術が導入され、情報・ネットワークを利用したさらなる製造業の自動システム化が進められています。
ファクトリーオートメーションが重要視されている背景
なぜ製造業ではFAが普及したのでしょうか。ここからは、企業がFAに注力している背景について詳しくみていきましょう。
少子高齢化による労働力不足
製造業の人手不足は深刻化しています。製造業の就業者数は、約20年で157万人の減少。少子高齢化の影響を受けて、労働者不足は年々進んでおり、とくに若者の製造業離れが続いています。製造業における若年層の就業者数は、2002年から2021年までで121万の減少となっています。(参考:2022年版ものづくり白書)
日本の少子高齢化は続いており、出生率も回復の兆しがありません。そのため、製造工程を見直して自動化を増やすといった労働力不足の改善が急がれています。
【関連記事】
製造業が人材不足になる原因とは?データからわかる実態や課題、解決策を解説
グローバル化による競争の激化
中国をはじめとしたアジア諸国の新興メーカーの台頭により、日本の製造業はグローバル競争で厳しい状況に直面。低価格で高品質な製品が登場し、大きな脅威となっています。グローバル競争に打ち勝つため、日本の製造業でも高いレベルの製品を低コストで提供する生産システムが必要です。その手段として、コスト削減、品質向上を実現できるFA技術が重要視されています。
環境への意識の高まり
SDGsなど社会貢献活動の推進が、世界的に注目されています。日本の企業も、省エネルギーやCO2の排出削減など、環境への配慮を求められることが多くなりました。そのため製造業でも、FAシステムを導入してエネルギー消費量を削減したり、廃棄物の発生を抑えるなど、持続可能な社会への取り組みが必要となっています。
ファクトリーオートメーションのメリット
FAの導入でさまざまなメリットが期待できます。ここでは、4つのメリットについて解説します。
人件費の削減
人件費の削減は、FA技術を導入する大きなメリットのひとつです。かつては、中国や東南アジアに工場を作り、安い労働力でコスト削減を図りました。しかし、最近ではアジア諸国の人件費が高騰し、海外生産のメリットが得られなくなっています。
そのため、いまはFAで製造工程を自動化して、人的コストを抑えています。FAの導入で従業員の採用や教育も不要になるため、人を雇う際にかかるコストもカットできるでしょう。
人手不足の解消
FAで製造工程の自動化が実現すれば、人手不足が解消されて生産性が安定します。とくに近年の製造業は、人材確保が難しい状況です。産業用ロボットによる生産向上だけでなく、部品の運搬作業、納品物の管理など、人手の足りないさまざまな業務をFA化でフォローできます。今後、人口減少が予想されている日本では、FA化が人手不足解消に欠かせないシステムとなるでしょう。
生産性の向上
生産ラインを自動化すれば、365日24時間の稼働も可能になります。人間が作業するときのように、集中力の低下や体調不良などで作業効率が落ちることもありません。部品の在庫管理を自動化できれば、欠品で生産が遅れてしまうといったタイムロスも防げます。
このように、機械やロボットを導入することで作業効率が高まり、飛躍的な生産性の向上が期待できるでしょう。
【関連記事】
製造業における生産性向上について、製造・営業の両視点から取り組むべき施策や事例などを紹介!
品質の安定化
ものづくり大国といわれてきた日本では、いままで「職人の技」によって高い精度と品質を保ってきました。しかし、少子高齢化が続き、若い技術者の不足で、その技術伝承も困難になっています。日本製の高品質を維持するためにも、生産システムを構築して製品の標準化が求められています。
ベテランの技術をデータベース化できれば、品質にばらつきが出ることはありません。商品の標準化が整い、人為的なミスによる不良品も防げます。また、機械化は製造工程だけでなく、製品検査にも有効です。機械は1秒間に数百個のチェックができ、短時間で精度の高い検査が実現します。
ファクトリーオートメーションのデメリット
一方、FAによって起こり得るデメリットはどのようなことがあるのでしょうか。2つのデメリットについてご説明していきます。
設備にコストがかかる
FAの最大のデメリットはコストがかかる点です。導入する機械にもよりますが、数百万〜数千万円かかるケースもあります。導入コストだけでなく、ランニングコストも必要です。メンテナンス費用や電気代のほか、専門知識をもつ人材の確保や育成にもコストがかかります。また、機械の故障で生産がストップしてしまう可能性も。生産性がゼロになるリスクも注意しなければなりません。
一方で、ものづくり補助金や IT導入補助金2023など、国の補助金を利用する方法もあります。さまざまな支援を上手に活用しながら、導入を検討してみましょう。
仕事がなくなる不安感
生産ラインの自動化やロボットの導入と聞くと、「自分の仕事が奪われるのではないか」と不安になる従業員も多いのではないでしょうか。たしかに工程が自動化されると、一部の業務はなくなる可能性があります。
しかし、FAで業務にゆとりが生まれたことで、新たな商品・サービスが開発されるかもしれません。別のプロジェクトを任されることもあるでしょう。経営者側は、社員の不安を和らげるためにも、FA計画時には丁寧な説明が必要です。
ファクトリーオートメーションの未来
2011年にインダストリー4.0(第4次産業革命)と呼ばれる産業政策が、ドイツで発表されました。インダストリー4.0とは、IoTやAI、ビッグデータなどを取り入れて製造プロセスの革新を目指すことです。
これを受けて、FAでもIoTやAIなどを取り入れた進化が続くと考えられています。産業用ロボットがネットワークとつながることで、データ収集・分析が可能になり、生産ラインの効率化や品質の安定化が図れます。AIにより自立した判断・行動で、より高度な自動化が実現するでしょう。
また、これからのFAには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も大きく影響してきます。DXとは、デジタル技術を活用して、企業のビジネスモデルを変革すること。新製品の開発や顧客とのコミュニケーションの改善など、製造業に多くのメリットをもたらすとして導入が進められています。
DXで顧客のニーズをリアルタイムに把握して、その分析を製造・販売に生かしていくことで製造業の競争力強化につながります。さらに、FAと相互に連携させて、工場・企業全体を最適化すれば持続的な成長が期待できるでしょう。
【関連記事】
インダストリー5.0とは?「次世代の自動化製造」に取り組むメリットや課題、各国の取り組みや歴史的背景を解説
製造業DXの重要性とは?メリットや取り組み事例をご紹介
ファクトリーオートメーションを実現する最新技術
ここからは、製造工程を自動化してくれる最新鋭のFA技術についてご紹介します。
協働ロボット
協働ロボットとは、人間と協力しながら同じ空間で作業ができる産業用ロボットです。いままで使われてきた産業用ロボットは、安全面を配慮して隔離した状態でしか作業できませんでした。しかし、協働ロボットは従来の産業用ロボットより出力が小さく、小型・軽量化されているため省スペースに配置できます。
また従来より安価なものも多く、導入しやすいのが特徴です。今後は製造業だけでなく、研究や介護などさまざまなジャンルでの活用が期待されています。
AGV(無人搬送車)
AGV(Automated Guided Vehicle) とは無人搬送車のことです。人間が運転操作をすることなく、自動で設定したルートを走行。荷物を上に乗せたり、けん引したりして倉庫や工場内で運搬作業を行います。
AGVの走行方法はさまざまです。磁気テープを床に貼るライントレース式や、地面に貼られた二次元マーカーを読み取るランドマーク式、画像やレーザーで認識しながら走行するSLAM式などがあり、現場の環境に応じて選べます。
部品などの運搬作業がなくなるので、従業員の労力軽減、安全性の向上などの多くのメリットが期待できるでしょう。
作業支援カメラ
工場や倉庫などの現場作業を支援するためのカメラで、作業員の動作をモニタリングしたり、作業している場所を撮影したりして、安全性や生産性向上に役立ちます。
具体的には、組み立て作業を画像認識してヒューマンエラーを自動でチェック。必要な部品の過不足がないかわかります。作業状況を把握することで、作業システムの改善や作業員のスキルアップも可能です。組み立て完了後の検査工程もカメラで一括チェックできます。
RFIDソリューション
「RFID(Radio Frequency Identification)」と呼ばれる電波の自動認識技術を使って、ワイヤレスで情報を読み取るシステムです。QRコードやバーコードと違い、遠くからでも読み取り可能で、同時に複数データをスキャンできます。
RFIDソリューションを導入すれば、納品された部品をリアルタイムで自動登録でき、どの倉庫に保管したのかも検索可能になります。伝票をRFID化すれば、ゲートを通過するだけで入出庫管理が完了。一括読み取りできるので、数量を間違えることがなく、人為的な出荷ミスなどの課題も解決できます。
ファクトリーオートメーションで活用されるITシステムとは
これからのFAにはITシステムの導入が不可欠です。ここからはどのようなITシステムがあるのか、「基幹システム」「製造システム」「社外関係者管理システム」の3つに分類してご紹介します。
基幹システム
在庫管理や生産管理など、基幹システムを導入することで業務の効率化が大幅に進みます。
名称 | 内容 |
---|---|
ERP (Enterprise Resource Planning) |
経営の効率化を図るため、ヒト・モノ・カネ・情報といった企業の資源を統合的に管理するシステム |
MES (Manufacturing Execution System) |
製造工程の管理や作業者への指示など、製造現場の管理を行う製造実行システム |
MRP (Materials Requirements Planning) |
生産に必要な原材料や部品を計算して、効率よく在庫を把握する供給計画システム。直訳すると「資材所要量計画」 |
製造システム
さまざまな製造工程をサポートしてくれるのが製造システムです。生産ラインとリンクさせることで、生産性の向上につながります。
名称 | 内容 |
---|---|
APS (Advanced Planning and Schedule) |
受注から出荷まで製品の生産計画を支援するシステム |
CAD (Computer Aided Design) |
コンピューターを用いて設計するツールで、直訳では「コンピューター支援設計」といわれます |
CAM (Computer Aided Manufacturing) |
CADで作成されたデータを入力して自動製造を行うシステム |
CAE (Computer Aided Engineering) |
コンピューターで技術計算・解析を行う工学支援システム |
CAT (Computer Aided Test) |
コンピューターを使ってソフトウェアのテストを行うシステム。CAEとセットで活用 |
PLM (Product Life-cycle Management) |
製品の開発・製造・販売・廃棄までの流れを管理するシステム |
PDM (Product Data Management) |
製造から廃棄までに発生する製品データを一元管理するシステム |
社外関係者管理システム
社外関係者管理システムは、ニーズの把握や商談の把握など、社外にむけて活用するシステムです。うまく活用すれば、製造システムの効率化、ニーズに合わせた製造・在庫管理などにつながるでしょう。
名称 | 内容 |
---|---|
CRM (Customer Relationship Management) |
顧客のあらゆる情報を一元管理するシステム。基本情報のほか、顧客のアクションを管理することで、ニーズに応じた対応が実現 |
SCM (Supply Chain Management) |
原材料の調達から消費まで、顧客に製品を届けるまでの一連の流れを管理するシステム |
ファクトリーオートメーションの導入ステップ
最後にFAを導入するためのステップを4つのカテゴリーにわけて解説します。ここでは以下のように分類します。
ステップ1:現状を把握する
ステップ2:導入計画を立てる
ステップ3:導入・運用をする
ステップ4:保守・点検を行う
それぞれのステップについて詳しくみていきましょう。
1.現状を把握する
まずは現場の状況を把握することからはじめます。工場の各工程ではどのようなことが課題になっているのか、データなどを確認して正確な状況をつかみましょう。「生産性が低いのか」「安全性に問題があるのか」「人為的ミスが多いのか」、解決すべき問題はさまざまです。課題を抽出して、自動化できるプロセスを洗い出しましょう。
2.導入計画を立てる
自動化する工程が明確になったら、どのようなシステムを導入するのか具体的に検討していきます。どのように設定すれば効率がよいのか、人の配置はどうするのか、あらゆる状況を想定しながらシミュレーションしましょう。
システムにはメリット・デメリットがあります。「高性能だからよい」というわけではありません。導入コストもかかるので、得られるメリットと照らし合わせて費用対効果を検証することも大切です。
3.導入・実装をする
FAシステムを導入したら、データを収集して従業員が理解しやすいように見える化を進めます。その上で、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を行いましょう。 システムやロボットなどを扱うには、最低限の専門知識も必要です。システムの操作方法の教育、活用方法についての社内研修も積極的に行いましょう。
システムがネットワークでつながると、セキュリティも重視しなければなりません。システムを不正に操作されたり、データが盗まれたりする危険性もあるので、いままで以上の注意が必要です。トラブルが発生した際の迅速な対応も従業員に徹底しておきましょう。被害を最小限に抑えるための訓練を行うことが求められます。
4.保守・点検を行う
FA設備やシステムは、定期的にメンテナンスを行い、不具合や故障を未然に防ぐ対策をしましょう。精密機器が含まれるため、保守や点検を怠ると故障トラブルで生産ラインが停止してしまう可能性もあります。設備やシステムの状態をチェックすることはもちろん、早めの改修・更新も生産性を守るために必ず行いましょう。
まとめ
ファクトリーオートメーションのシステムを導入することで、生産性の向上、コスト削減、品質向上、安全性の確保などの多くのメリットがあります。 近年では、IoTやAIなど技術進歩によりFAがさらに進化し、これまでよりも高性能な自動化が期待されています。
製造業にとってFAは、競争力を高め、持続的な成長を実現するための重要な手段です。人手不足を解消する大きな手助けにもなります。今後ますますFAは、製造業にとって欠かせないシステムとなるでしょう。 当社でもFA導入を支援するさまざまなサービスを展開しておりますので、ぜひ導入を検討されている方は無料プランなどをお役立てください。
【関連記事】
製造業DXのカギを握るデジタルファクトリーとは?意味やメリット、構築法や事例まで徹底解説!
【製造業のデジタル化特集を公開中】
製造業のデジタル化に特化した特殊ページを公開中です!以下のリンクからご確認ください。
- 製造業のマーケティング成果をご紹介!
- Webサイトを活用した製造業の成果事例インタビュー集
-
-
クラウドサーカスではこれまで、2,200社以上のWeb制作に携わってきました。その中でも特に多いのがBtoB企業であり、製造業の方々への支援です。この事例インタビュー集では、BlueMonkeyを導入してWeb制作を実施し、成果に繋がった製造業の企業様の声を掲載しています。
-
- この記事を書いた人
- エムタメ!編集部
-
クラウドサーカス株式会社 マーケティング課
- プロフィール :
-
2006年よりWeb制作事業を展開し、これまでBtoB企業を中心に2,300社以上のデジタルマーケティング支援をしてきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。53,000以上のユーザーを抱える「Cloud CIRCUS」も保有し、そこから得たデータを元にマーケティング活動も行う。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意。
メディア概要・運営会社→https://mtame.jp/about/
Twitter→https://twitter.com/m_tame_lab