製造業マーケティングにおけるコンテンツの大切さと「4つの不」の話
最終更新日:2025/11/05

【この記事の要約】
製造業のデジタルマーケティングにおいて、コンテンツは「市場」のニーズを捉え、「関係」を構築するための最重要要素です。従来の対面営業に加え、Webサイト上の情報発信が購買プロセスに大きく影響しており、情報が不足しているだけで候補から除外されるリスクもあります。コンテンツは、課題認識前の潜在顧客へのアプローチから、既存顧客との関係維持まで、幅広く活用されます。
効果的なコンテンツを設計するには、顧客が購買に至る各フェーズで必要な情報を提供することが求められます。まず最低限揃えるべきコンテンツの考え方として、顧客の心理的障壁である「4つの不」を解消することが有効です。具体的には、企業の信頼性を示す「不信」の解消(実績、会社概要)、製品の必要性を訴求する「不要」の解消(導入事例)、自社製品が最適であると示す「不適」の解消(機能比較)、そして今すぐ導入すべき理由を示す「不急」の解消(導入効果)に対応するコンテンツを体系的に整備することが、デジタルマーケティング成功の鍵となります。
【よくある質問と回答】
製造業のWebサイトには、なぜ多くのコンテンツが必要なのですか?
顧客の購買行動が変化し、情報収集の多くをWebサイトで行うようになったためです。ある調査では、Webサイトに十分な情報がなかったためにサプライヤー候補から外した経験がある人が36%もいました。技術力があっても、それがWeb上で伝わらなければ機会損失につながるため、コンテンツの充実は不可欠です。
コンテンツを作成する上で重要な「4つの不」とは何ですか?
顧客が購入を決断する際に感じる4つの心理的障壁、「不信(この会社は信頼できるか)」「不要(この製品は必要か)」「不適(他社製品や既存の方法で十分ではないか)」「不急(今すぐ導入する必要があるか)」のことです。これらの疑問や不安を解消するコンテンツを揃えることが重要です。
「不信」を解消するためには、具体的にどのようなコンテンツが有効ですか?
企業の信頼性を示すコンテンツが有効です。例えば、豊富な「導入実績」や「お客様の声」、企業の「沿革」や「理念」、取得している「認証」や「特許情報」などを掲載することで、初めて接点を持つ顧客にも安心感を与え、信頼関係の構築につながります。
【ここから本文】
製造業のデジタルマーケティングにおいて「コンテンツ」は最重要要素と言っても過言ではありません。この記事をお読みになっている皆様も、いかにしてコンテンツを増やしていくかに悩まれている方が多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、製造業マーケティングに置けるコンテンツ制作の重要性を改めて解説し、最低限のコンテンツを揃えるための「4つの不」という考え方についてご紹介します。
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目次
製造業のマーケティングにおける市場と関係
コンテンツの重要性をお伝えするうえで改めておさらいしておきたいのが、「製造業(生産財)マーケティング」についてです。コンテンツ制作はデジタルマーケティングの施策の1つとして捉えられがちですが、そもそもマーケティング活動の中に含まれるものなので、上位概念を理解した上で「コンテンツ」の役割を理解したほうが、効率的に施策を回すことができます。
「生産財マーケティング 高嶋 克義 (著), 南 知惠子 (著)」によると、生産財(※)マーケティングには「市場」と「関係」の2つの視点があります。
※商品や製品の生産に必要な材料や部品・装置などの総称を差します。
「市場」とは、市場調査などを通して顧客のニーズを知り、計画を立て、どのように実行していくのかを考えます。一方で「関係」とは顧客との関係構築をしていくことでニーズを把握したり、相互作用を効果的に働かせたりすることを目指します。
新規の顧客が不要で限られたターゲットのみを狙っていく場合は、後者の「関係」の比重が重くなっていきます。ですが、近年では新規の顧客獲得も合わせて重要視されているケースが多く、「市場」に対してのアプローチが必要になります。
「市場」と「関係」からみるデジタルマーケティング
マーケティング活動の手段として「デジタルマーケティング」を活用するのが当たり前となりつつあります。ただ、施策も多岐にわたりデジタル人材も社内にいないため、「難しそう」「何から始めればいいのか」と、本腰を入れて取り組めていない方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、マーケティング活動がデジタルに置き換わっても本質は変わらず、手段がデジタルに置き換わっただけと考えてよいでしょう。例えば先述の「市場」に関しては、アナログで実施していたユーザーインタビューやアンケートがデジタルに置き換わったり(今でもアナログで実施されていますが)、統計データの集計などがデジタルで行われるようになりました。
もっと具体的な施策で言えば、Googleの検索エンジンに置ける検索回数やトレンドを元に、市場のニーズを知ることができます。そのニーズに対して、自社が応えられる解決策をWebサイト上に掲載し、閲覧してもらうことで、接点が生まれていきます。これは従来営業マンやエンジニアが対面実施していたことを、Web上で実施しているに等しいです。そしてこういったデータは計画を立てる段階でも役に立ちます。
「関係」に関しても、デジタルマーケティングにおいて重要な要素です。CRMやMAツールなど顧客データベースを自社で保有し、情報を蓄積していくことで、必要な情報を必要なタイミングで届けることができます。興味のないメルマガばかりが届けば関係は崩れてしまいますが、「いつも有益な情報をくれる」と感じてもらうことができたら、顧客との関係は深まっていきます。
また、MAツールを使えば特定のページを閲覧している顧客の抽出が可能です。そのため、営業アプローチの際に閲覧していた技術や製品の情報提供をしたり、商談につなげていくなどの活用ができます。
もちろん従来のような相互作用が働くような関係構築も重要です。そこに加えて、1つのコミュニケーションの手段としてデジタルマーケティングの諸施策があります。
以上のように、「市場」と「関係」が重要であることは今も昔も変わりません。あくまで手段としてデジタルマーケティングのツールや施策があるのであって、目的と手段を入れ替えないように注意が必要です。
そして、そのデジタルマーケティングの施策を回していく上で特に重要なのが「コンテンツ」なのです。前置きが長くなってしまいましたが、この「市場」や「関係」の観点からも、コンテンツ制作は外せない施策となっています。
次章からは、製造業におけるコンテンツの重要性を詳しく述べていきます。
製造業マーケティングにおけるコンテンツの重要性
以下は、古くからある生産財の「購買意思決定プロセス・モデル(Robinson, Faris and Wind (1967)」を図表化したものです。
1967年のものなので半世紀も前ではあるものの、大きな流れは今も同じです。ただ、特にサプライヤー視点で見たときには、「アプローチできるフェーズ」と「コミュニケーションの手段」は変化があります。
例えばこの図によると、問題を認知してから活動が開始されていますが、もっと以前の漠然と課題を抱えている段階においても、アプローチが可能です。普段接点のあるデジタルメディアに情報を掲載したり、ハウスリストに配信して情報提供を行ったりと、問題を認知する手前の「きっかけ」を与えることは可能です。
また、当たり前の話ではありますが、コミュニケーションの手段は大きく変わっています。メールやWebサイトなど、テクノロジーの発展に伴い登場したデジタルツールによって、接点の在り方も大きく変わってきました。
これらを実現するためにも、デジタルツールを駆使し、より広いフェーズの顧客に向けて適切なコンテンツを配信していく必要があります。上記の購買意思決定プロセスモデルの各フェーズにおいて、必要な情報と接点を持ち続けていくことで、サプライヤーとして選択してもらえる確率も高まっていきます。
その接点として欠かせないのが「コンテンツ」なのです。
見込み顧客が問題を認知したときに、課題を解決する方法を検索するかもしれません。もしコンテンツがなければ自社が課題を解決できることを知ってもらえない可能性もありますし、そもそも検索結果にすら出てこないこともあります。
見積もり評価やサプライヤーの選択の際に、Webサイトを見ないこともほとんどない時代です。せっかく技術力はあるのに、コンテンツがないことで正しく情報が伝わらず競合に負けてしまうなんてこともあるかもしれません。
イントリック社が実施した「 【製造業】オンラインでの製品選定における実態調査 」によると、Webサイトに情報が掲載されていなかったことが理由で候補から外したケースが36%もあるそうです。こういったデータからも、製造業におけるコンテンツの重要さが見て取れます。
そして、コンテンツは新規の接点を生み出すだけでなく、関係構築にも転用が可能です。自社が制作したコンテンツ(例えば新製品情報)をメールで配信し、反応があった企業からアプローチするだけでも営業効率は大きく変わります。
またこちらからメール配信等のアプローチをしなくても、MAツール等を入れていれば、どの企業がどのページを見ているかがわかります。自身が担当している企業の方がまだ導入されていない製品のページを見ていたら、アプローチもしやすくなるはずです。
こういった活動をするためにも、コンテンツが必要なのです。配信したり、ユーザーのニーズを把握したりと、多くのメリットがあるからこそ注力する必要があります。
以上、コンテンツの重要性を述べてまいりましたが、ここからは具体的にコンテンツ制作における考え方をお伝えしてまいります。
どのようなコンテンツを作ればいいのか
具体的にコンテンツを設計する際には、ある程度型にはめて考えると思考を整理しやすいためおすすめです。
以下は一例ですが、低関心(課題認識前)から成約まで、必要なコンテンツの種類と接触コンテンツについて記載しています。
コンテンツは具体的な課題を認識する前から届けることが可能です。漠然とモヤモヤを抱えている状態に対して、課題の整理や解決策の提案をしていくことで、言語化されていなかった課題が明確化されていくこともあります。実際にはこの時点では接点のみで、別途セミナーや営業現場で明確化していくことの方が多いのですが、いずれにせよコンテンツを届けてきっかけを作ることはできます。
また、検討の早い段階から有益な情報を提供して置くことで、実際に課題認識~検討の際に有利に働いていきます。具体的に検討が始まる以前から「あの会社は質の高い情報を発信している。きっと信頼できる会社に違いない」と印象付けておくことで、競合他社よりも圧倒的に優位な立場で提案が可能になります。
情報収集や比較検討フェーズにまで来たら、自社の強みや導入までの流れ、よくある質問など意思決定に必要なコンテンツが必要になります。
以上のようにフェーズによって必要なコンテンツの種別が異なります。自社の顧客であればどのようなコンテンツを届ける必要があるかを整理して、届けると良いでしょう。
ただ、「じっくりと時間をかけて整理する時間がない」「まずは最低限を整えたい」という考えの方もいらっしゃるかと思います、そこで、コンテンツを最低限揃えるための型として、本記事では「4つの不」というものを紹介します。
「4つの不」とは
「4つの不」とは、「不信・不要・不適・不急」のことで、商品・サービスを購入するときに壁となる顧客心理を表しています。 営業現場で解消すべきものとして紹介されることが多いのですが、実はコンテンツ作りにも役立てる考え方となっています。営業と違い最終的なゴールは「問い合わせ」や「資料ダウンロード」「デモ機の取り寄せ」などになりますが、顧客の背中を押すという観点で言えばやるべきことは基本同じです。
まず元となる営業における4つの不についてそれぞれ簡単に説明いたします。
不信
これは「この会社は信用できるのか?」という心理状態です。 顧客の不信感を払拭するには、どんな企業なのか、自分は何者なのかを理解してもらう必要があります。ここが抜け落ちてしまうと、どれだけ良い提案をしても不信感が勝ってしまい、契約につなげることができません。
不要
「本当に必要なのか?」という心理状態のこと。 他人事と捉えていて「自分にとって本当に必要なものだ」と認識していないだけの場合もあります。提案企業および目の前の担当者にとってなぜ重要なのか、自分事として捉えてもらうための説明努力が必要です。
不適
「自社に合っているのか?」という心理状態です。 どのような企業に向けた、どんなサービスなのかをアピールして、自社に最適な商品であると納得してもらいましょう。とくに他社との違いなどを交えて、自社がぴったりである説得力ある提案が必要です。
不急
不急は「いま必要なの?」という心理状態のこと。 「確かにやった方がいいと思うけど、いますぐ導入しなくても……」と考えている状態なので、あと少し後押しすれば成約につながるかもしれません。今やらないことによる機会損失や、今やることによるメリットを示唆することで、前倒しの契約につなげることができます。
コンテンツ作りにおける「4つの不」
これまで解説してきた4つの不をコンテンツに置き換えて解説します。
「不信」を解消するコンテンツ
不信を解消させるには、 まず実績や自社の技術とともに会社概要を掲載します。さらに、業界情報やノウハウ系のコンテンツを充実させることで、専門性が深まり、企業の信頼もアップするでしょう。
「不要」を解消するコンテンツ
不要という心理に対処するには、「なぜ必要なのか」「どんな問題を解決できるのか」が伝わるコンテンツを用意しましょう。具体的には、サービスの導入事例や利用者の声、活用例などです。 自分と類似したエピソードが見つかれば、ユーザーは商品に関心を持ち、購買意欲が高まります。
「不適」を解消するコンテンツ
「自分に適したサービスなのか」といった疑問に対しては、 事例やユーザーの声にプラスして、商材のコンセプトや強みなどを伝えます。 サービスを利用している状況をイメージさせて、自分たちにぴったりの商品だと認識してもらうことが必要です。
「不急」を解消するコンテンツ
「いま必要なのか」という心理なので、 すぐに契約した方がよいことをイメージしやすくしましょう。 「今月中に購入するとお得!」といったキャンペーンを開催したり、スケジュール管理表をホワイトペーパーに入れ込んで「最低でも6か月はかかるので、早めに着手を」という記載を入れるだけでも効果があるかもしれません。
まとめ
製造業マーケティングにおけるコンテンツの大切さについてお伝えしてきました。これから本格的にデジタルマーケティングに取り組む方はもちろん、今すでに取り組んでいて行き詰っている方も、原点に立ち返り自社のコンテンツを見直してみてはいかがでしょうか。
前半では「市場」と「関係」にも触れましたが、時代が変わっても本質は変わりません。時代に合わせた手段を通して、適切なコンテンツを通していくことが重要です。
その1つの型として「4つの不」があります。この他にも様々なフレームが世の中に出回ってはいますが、まず最低限を考える上ではシンプルで使いやすいものなので、ぜひお役立てください。
そして、中長期で継続的にコンテンツを作っていくには、本来であればペルソナやカスタマージャーニーマップを作成し、計画的にコンテンツを制作する必要があります。「4つの不」は確かに便利ですが、もし本格的に取り組む必要があれば、顧客の検討フェーズごとの必要なコンテンツの整理が必要ですし、一次的に外部に頼るのも手段の1つです。
弊社でもそういったコンテンツ戦略~制作の支援は実施しておりますので、もしお困りでしたらお気軽にお問い合わせください。
以上、本記事が皆様のお役に立てていたら幸いです。
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【English summary】
In manufacturing digital marketing, content is the most critical element for capturing "market" needs and building "relationships." In addition to traditional face-to-face sales, information disseminated on websites significantly influences the purchasing process, and a lack of information carries the risk of being excluded from consideration. Content is widely used, from approaching potential customers before they recognize a problem to maintaining relationships with existing customers.
To design effective content, it is necessary to provide the required information at each phase of the customer's journey to purchase. A useful approach to ensure essential content is available is to resolve the "Four 'Fu's'" (Four Negatives), which are customers' psychological barriers. Specifically, systematically developing content that addresses these barriers—resolving "Fushin" (Distrust) by demonstrating reliability (e.g., track record, company profile), "Fuyō" (Unnecessity) by appealing to the product's need (e.g., case studies), "Futeki" (Unsuitability) by showing your product is the best fit (e.g., feature comparisons), and "Fukyū" (Not Urgent) by providing reasons for immediate adoption (e.g., implementation effects)—is key to successful digital marketing.

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2006年よりWeb制作事業を展開し、これまでBtoB企業を中心に2,300社以上のデジタルマーケティング支援をしてきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。53,000以上のユーザーを抱える「Cloud CIRCUS」も保有し、そこから得たデータを元にマーケティング活動も行う。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意。
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