BtoB企業が『事例取材』を内製化する方法
最終更新日:2022/06/01

どんなに優れた宣伝広告よりも、実際に自社の商品・サービスを使ってくれた人のナマの声の方がずっと信ぴょう性が高いもの。
それが、いわゆる「お客様の声」です。「導入事例」と呼ばれることもあります。
「あった方が良いことはなんとなくわかってるけど、いざ作ろうと思っても、経験もノウハウもないし、ハードルが高い…。かといって、外注すると高くつきそうだし。そもそも、事例なんて載せて本当に効果があるのかな…?」
こんなふうにグルグルと悩んで踏み出せていない企業様も多いのではないかと思います。
今回は、事例コンテンツの意義と、自社で事例取材~コンテンツ化までを内製する方法を、特にBtoB商材を扱う企業様向けにお話ししたいと思います。
ダウンロードして使える「概要シート」「ヒアリングシート」「事例原稿のフォーマット」もご紹介します。
ヒアリングシートのダウンロードはこちら▼
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>記事作成ガイドライン
すでに始めているよ!という企業様もブラッシュアップのために、ぜひ以下の内容をチェックしてみてください。
BtoBにおける「事例コンテンツ」の意義とは?
BtoCとBtoBの購買における大きな違い
BtoCの商品・サービスを買う際に口コミサイトが支持を集めていることからもわかるように、「実際に購入して使ってみて効果があった」という体験談は、購入を検討している人にとって、商品のスペックや性能データと並び、参考になる重要な情報のひとつとなります。
BtoBでも同じことがいえます。
ただし、BtoCとBtoBの購買には決定的に大きな違いがあるのです。
BtoC
・購入の意思決定者は自分ひとりであることが多い
・商品・サービスの使用者は、購入者本人や家族内などの狭い範囲
・買い物に失敗しても比較的ダメージが少ない
・検討期間が短い
BtoB
・購入の意思決定者と使用者、管理者が別であるケースが多い
・商品・サービスの使用者は、自社スタッフのみならず、グループ企業やエンドユーザーなど、広範囲にわたるケースが多い
・購入した商品・サービスに欠陥があった場合、契約問題から賠償責任に発展する場合もある
・検討期間が長い
個人の消費行動においては「衝動買い」もよく見られますし、その結果、失敗したとしても、単にその商品代金分の損をするくらいで済みます。
一方、企業などである商品やサービスを導入する場合は、「購入金額が桁違いに大きいから、その分、損失が大きい」といった単純なダメージだけでなく、導入した商品・サービスに付加価値をつけて、さらに先のユーザーに提供する場合があります。したがって、被害の規模は格段に大きくなります。もし、エンドユーザーが企業であれば、契約問題にもなり、最悪の場合、裁判沙汰にもなりかねません。
たとえ、そこまで大きな欠陥がなく、使用範囲も自社内のみだったとしても、使い勝手が悪い、メンテナンスがしづらい、などの文句は購入を決めた担当者に集中することになります。
ちなみに、購入決定者(例:総務部)と使用者(例:営業部)、管理者(例:情報システム部)、決裁者(例:社長)がそれぞれ別であるのもBtoBの大きな特徴ですね。
BtoBにおける購買プロセスでは、こういった「失敗できない」背景から、十分な検討が行われることになります。
検討事項の例
・導入によって、問題・課題は解決されるのか?
・自社で運用していけるのか?
・ランニングコストは高くつかないか?
・過去の導入での失敗を繰り返さずに済むか?
「BtoBの検討フェーズは長い」からこそ、事例コンテンツが有用
その結果、検討期間はBtoCと比べて長くなり、検討材料として、すでに導入した企業の実績や事例が重視されるのです。これが、BtoBにおいて「事例コンテンツ」が必要な理由です。
したがって「事例コンテンツ」では、購入検討者が実際に購入したらたどることになる「購入決定→決済→使用→メンテナンス」までの具体的かつ客観的なエピソードを見せることが大切になってきます。
一度作成した「事例コンテンツ」は、商品・サービスサイトやコ-ポレートサイトだけでなく、パンフレットやオウンドメディアに掲載しても営業ツールとして使えるほか、新入社員の教育にも転用できるという優れモノ。
ぜひ、この機会に事例取材に取り組んで活用してください。
「事例コンテンツ」作成のためには、お客様への取材が必要です。さらに、取材内容を文章にまとめる必要も出てきます。
このため、「外注できるライターを探さなくては…」と考える方もいるかもしれませんが、その必要はありません。導入検討者の目線に立った具体的なヒアリングができれば良いので、自社製品について熟知していて、お客様の商材や商流、ターゲットを把握できている社員がいれば取材は可能です。
逆に、そういった知識を持たない社員や外注ライターが取材を行う場合は、事前準備として上記の情報共有をしっかり行っておくことが重要です。
以下で、事例記事の具体的な作成方法をご紹介していきます。
まずは、取材の流れを把握しておこう!
取材の流れは、取材前後の関連事項も含めると、以下のようになります。
取材の流れ
1. お客様の選定
2. 概要シートの送付と取材アポの獲得
3. ヒアリングシートの送付・返送
4. 取材準備
5. 取材・撮影
6. 原稿作成・校正
7. お客様側でのチェック
8. 修正・掲載
それぞれについて見ていきましょう。
1. お客様の選定
まずは、取材に応じてくれて、なおかつ事例として良い内容の記事ができそうなお客様を選び出します。
具体的には、以下のような特徴のあるお客様が良いでしょう。
【例】
・導入から十分な期間が経っていて効果が出ているお客様
・多面的な使い方をしているお客様
・導入によって、社内の体制や営業フローなどに変化があったお客様
2. 概要シートの送付と取材アポの獲得
取材先を選定できたら、お客様に連絡を取って取材許可を取り付け、取材日時を確定します。
取材を承諾してもらうために、取材の意図と、掲載する媒体についての説明をします。このとき、取材を受けることでお客様がどんな利益を得られるかという部分にも触れると許可を得やすくなります。
以下に概要シートのテンプレートを載せますので、必要に応じてアレンジしてお使いください。
許可が取れたら、取材日時を決定します。取材は、撮影を含めて1時間半程度かかると考えてください。
3. ヒアリングシートの送付・返送
ここからは、取材に向けての準備です。
まず、いきなり取材をしても、回答をまとめたり、担当者も導入時の記憶をたぐりよせるのに時間がかかってしまったりして、内容の濃いインタビューにならないことが多いので、事前にヒアリングシートを送って、できれば、回答したものを返送してもらったうえで取材に臨みます。
ヒアリングシートを送ることで、取材を受ける側はインタビュー全体の流れを理解できますし、協力的な方なら、当時の資料を探しておいてくれることもあります。取材を受ける大勢を作っておいてもらえるのはヒアリングシートを送るメリットです。
取材する側としても、事前にヒアリングシートからの回答を得たうえでインタビューできれば、より深く具体的なことを質問できます。
また、1からヒアリングシートを作れば、質問の構成を組み立てる過程で頭が整理され、記事の仕上がりイメージを再確認できるというメリットもあります。
後で詳しく説明しますが、最終的に作成する事例記事は、
お客様の紹介+サービスの導入に関して時系列(過去→現在→未来)で記載
という形になるので、これに沿って質問を用意するのが基本になります。
以下に、ヒアリングシートのテンプレートを載せますので、必要に応じてアレンジしてお使いください。
ヒアリングシート作成時の注意点としては、ヒアリングシートに掲載する質問数はあまり多くしないということがあります。おおまかなものにしぼり、細かい点は取材時に直接インタビューしましょう。
4. 取材準備
お客様から回答済みのヒアリングシートが戻ってきたら、さらに取材準備を深めます。
インタビュー前の予備知識として回答の内容を頭に入れつつ、さらに深堀するためにどんな質問を組み立てるかを考えていきます。
このとき、導入を検討している潜在顧客が気にする点に軸をおきます。たとえば、導入にあたりネックになる点をどのように解消したか?といったことを押さえておくと、内容の濃い事例記事になります。
また、撮影の準備もしておきましょう。
一般的に、事例記事で使われる写真は、
①取材中の話しているカット
②社名ロゴなどを背景にした正面写真
の2パターンです。
このほか、適宜、必要なカットを撮影して追加します。
記事内にどんな構図の写真が欲しいか具体的なイメージを持ち、それをお客様にも共有できるようにイメージと近い写真をネット上から印刷しておき「ポーズ集」として持参するとスムーズです。
5. 取材・撮影
実際にお客様先へ出向いて、取材と写真撮影を行います。
事前に概要シートを送っていますが、改めて取材の主旨と流れを簡単に説明してから取材に移ります。
取材についての詳細は次項以降で詳しく説明します。
撮影については、カメラマンや撮影担当のスタッフを同行させられれば、実際のインタビュー中に撮影し、取材・撮影を単独で行わなければならない場合は、インタビュー後にお客様側に同士で会話してもらっているところを撮影すると良いでしょう。
事例記事のトップにもってくるメインビジュアル用の写真は、お客様の笑顔を撮影することがポイントです。
理由は、笑顔の写真が「お客様が製品・サービスに満足している」という無言のメッセージを発信してくれるから。
談笑しながら自然な笑顔が撮れればベストですが、「ウイスキー、大好きー!」と言ってもらいなが撮影すると、カンタンに笑顔の写真を撮ることができるのでおすすめです。
6. 原稿作成・校正
取材した内容を、原稿に落とし込んでいきます。
完成形のイメージとしてテンプレートをご用意しましたので、ご活用ください。
導入を検討している見込み客が知りたいポイントを網羅した内容を目指して作成していきましょう。
原稿をまとめる際の注意点としては、製品・サービスについてあまり知識のない人が読むということを踏まえ、専門用語はできる限り使わないことです。
※ターゲット層なら必ず知っている業界用語などであればOKです。
7. お客様側でのチェック
原稿ができあがったら、確認のためにお客様へ送ります。
1週間程度先に期限を決めておけば、お互いに本業に追われて忘れてしまった…といった事態も避けられます。
8. 修正・掲載
お客様から修正依頼があれば必要に応じて原稿を修正し、Webサイトに掲載します。
お客様へも、取材協力のお礼とともに公開URLを知らせましょう。
取材時に必要な持ち物は…?
取材に持っていくべきものについて解説していきます。
(名刺や筆記用具などの「ビジネス訪問の基本の持ち物」は省きます)
カメラ
メディアに掲載できるレベルの写真が撮れるということであれば、今どきのスマホのカメラも解像度が高いので、それでも全然問題はないのですが、お客様の手前、「取材している感」を出すためにも、できれば一眼レフがあった方が良いです。
ICレコーダー
基本的には、取材中に重要な部分はメモを取り、メモと記憶から原稿を作成するのが一番効率的ですが、後から「あの名前は何だっけ?あの順番はどっちが先だっけ?」というように、確認したいことが出てくるときもあります。
スマートフォンにも録音機能がついていますが、途中で電話がかかってきたりすると止まってしまうこともあるので、専用のレコーダーがあった方が良いです。
USB端子と録音機能がついてればほかに必要な機能は特にありません。1万円未満でさまざまな機種が選べるので、会社の備品として1台購入しても良いかもしれません。
回答済みのヒアリングシート/質問メモ
お客様から返送された回答済みのヒアリングシートをもとに作成した質問項目を持参します。
印刷物でも良いですし、PCを持ち込む場合はデータでも良いでしょう。取材時は、この質問メモに取材メモを書いていきます。
掲載予定メディアの印刷物
取材の依頼をする際に過去記事のURLを送り、見ておいてもらうと良いのですが、相手が多忙だったりそこまでインタビューに乗り気でなかったりすると、見てもらえないこともありますので、取材前の説明のタイミングで見ていただきます。
※PCやタブレットを持ち込む場合は、実際の画面を見せれば印刷物は持参しなくてOKです。
初対面でも本音を引き出せる!取材のコツ
事例取材の対象者は、多くの場合、インタビュー慣れしていない方ということになります。
そこで、心配なのが、
1. 口数が少ない
2. 本音を話してくれない
3. 話が事例取材の主旨から脱線してしまう
の3点です。
付き合いの長い担当者に取材する場合は問題なくインタビューできるでしょうが、初対面の相手から本音を引き出し、たくさん話してもらうには、工夫が必要です。
特に、取材対象が営業など普段から初対面の相手と話慣れている職種ではなく、たとえばエンジニアなどだったりすると、寡黙でなかなか話を引き出せなかったり、本音を出してもらうことが難しかったり…というケースがよくあります。
アイスブレイクを活用する
そこで活用したいのがアイスブレイクです。営業マンなどが、本題に入る前に相手と打ち解けるために用意しておく雑談のことですが、特に、単に時事ネタなどではなく、相手に関する情報を調べておいて話題にすることをおすすめします。まったく関係のない話から事例取材に切り替えるよりも話の流れでスムーズに入っていくことができるというメリットもあります。
また、それだけ相手に興味を持っているのだという意思表示にもなり、相手も好意的に応対してくれるようになりますし、インタビュアーとしても相手に関する情報をできるだけ持っておいた方が、より的確な質問の展開の仕方ができるからです。
取材準備の段階で、取材対象者自身の近況や、その人が所属する部署の最近の動向など、ネットやツテを使ってできるだけ情報を集めておきましょう。
話の脱線については、脱線するなかでで本筋にいきるヒントを話してもらえることがあったり、それ自体がアイスブレイクの役割を持つので、ある程度、許容した方がいいと思います。
一区切りついたら、本筋に戻せるよう、ヒアリングシートを元にどこまで話が進んでいるかは常にチェックしておきましょう。
他社や一般論を引き合いに出す
また、お客様の事例との比較材料として、
「一般的にはこういわれていますが、御社の場合はどうですか?」
「当社のお客様のなかには、こういう企業様が多いのですが、御社ではどうですか?」
という具合に、一般論や他社のケースを出すと、インタビュー慣れしていない人も話の糸口をつかみやすくなり、展開を広げやすくなります。
取材の注意点を押さえておこう!
当社でも、自社サービスの事例取材を始め、コンサルティングのお客様の事例取材の同行など、たくさんの事例取材を経験してきました。
そこで得られたノウハウから、事例取材で陥りがちな失敗例と、失敗を回避するためのチェック観点をご紹介します。
ヒアリングにおける注意点
深堀りせず浅い内容しか聞き出せない
お客様に遠慮してしまって突っ込んだ内容まで聞き出せなかったり、聞いた内容をただそのまま鵜呑みにしてしまうと、検討段階にいる潜在顧客にとってかゆいところに手が届くコンテンツにはなりません。
取材で自社製品やサービスをほめられたり話が盛り上がったりすると、取材がうまくいっている気になってしまいますが、表層的な話ばかりに始終していないか自問自答して進めましょう。
→表層的な話になっていないか?をチェック!
先回りしたり知ったかぶる
お客様や商材についての知識が豊富だったり、事例取材に慣れてくるとやってしまいがちな失敗です。
取材では、できるだけお客様自身に話してもらうことが大切。インタビューする側がすでに知っていること、当たり前だと思っていることは、スルーしてしまいがちですが、何も知らない読み手が導入を検討するなかで知りたい部分を深堀りして聞くことを意識してください。
また、商材知識の有無に限らず、話に固有名詞・数値が出てきたときは、間違いのないようにその場でしっかり確認しておきましょう。
→検討段階にいるユーザーが知りたいポイントを深堀りできているか?をチェック!
撮影における注意点
背景がごちゃごちゃしたところで撮影してしまう
写真に関係のない人物や文字などが写り込んでいると読み手は気になってしまうもの。後から社内でレタッチしてもらえる環境があればいいですが、できるだけ工数をかけないためにも、なるべく余計なものが写り込まないように配慮しましょう。白壁など無地の背景を選ぶか単焦点レンズを使って背景をぼかすと良いです。
→背景はうるさくないか?余計な物が写り込んでいないか?をチェック!
被写体が見切れてしまっている
どんなに頑張っても、写っていない部分を後から足すことはできません。
トリミング加工をせずにそのまま使えるショットを撮影するのがベストですが、後からトリミングできるよう横位置で撮影し、余白を広めに取っておくことをおすすめします。
後から変えられないということでいえば、アングルも要注意です。表情がわかるような角度で撮影しましょう。
→被写体が見切れていないか?十分な余白はあるか?をチェック!
以上、事例取材を内製化する方法を解説してきました。
これを読んで「これなら、うちでもできそうだな」と思ってもらえたら幸いです。
最初から完璧を目指す必要はありませんし、回数を重ねていくごとに自社ならではのノウハウが蓄積されていくものだと思うで、まずは、第一歩目の「取材先のお客様選び」からスタートしてみてはいかがでしょうか?
【併せてこちらもどうぞ】
「記事作成ガイドライン」をダウンロードする