製造業でもカスタマーサクセスが必須の時代に!?その背景をまとめました
最終更新日:2023/10/27
カスタマーサクセスは主にSaaSなどのサブスクリプション型(以下:サブスク)のビジネスで多く用いられていますが、日本の製造業においてもカスタマーサクセスが注目を集めているのはご存知でしょうか。
海外の製造業ではすでにカスタマーサクセスを導入する動きが出てきており、ドイツの大手製造業メーカーでは、カスタマーサクセスの求人を1000件以上(グローバル規模)も掲載、アメリカの大手電気電子機器メーカーでも100件以上の求人募集が行われています。
この動きは「顧客の課題解決を支援し、成功に導きたい」というカスタマーサクセスの考えが製造業にも取り入れられていることの表れであり、これまで製品の機能や性能を重視してきた製造業界のビジネススタイルに変化が出ていることが伺えます。
そこで本記事ではカスタマーサクセスの用語解説をはじめ、製造業でカスタマーサクセスが注目されている理由やおすすめ書籍などについて解説します。
目次
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセス(Customer Success)とは、自社製品やサービスの利用を通して顧客を成功に導き、それを自社の利益につなげる取り組み、あるいはその担当部門を指します。SaaS(サース)をはじめとするサブスクリプションモデルの台頭に伴い注目された概念で、LTV(顧客生涯価値:Life Time Value)の最大化を目的にしています。
なぜサブスクリプションモデルとあわせて広まった概念なのかというと、サブスク型企業の経営課題の多くはサービスの解約率の改善と継続率の向上にあるからです。新規顧客をいくら獲得しても、解約率が高ければ利益に結びつかず、安定的な収益を得ることはできません。
そこでカスタマーサクセスの考え方や組織体制を取り入れることで、既存顧客との良好な関係を築き、解約の阻止や継続率の維持・向上を図ることが可能です。現在、多くのSaaSサービスが提供されており、競争は日々激化しています。顧客が課題解決などの効果を実感できなければ、製品・サービスを長く継続するのは困難です。SaaSビジネスの成功には、顧客の満足度を高めるカスタマーサクセスの存在が欠かせません。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスのよく混同されやすいワードに、顧客の契約・購入後のフォローを行うカスタマーサポートがあります。カスタマーサポートとカスタマーサクセスは顧客を支援するという意味合いでは同じものの、果たすべき役割や顧客とのコミュニケーション方法などさまざまな点で異なります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについて、「使命(ミッション)」、「コミュニケーション」、「機能」の3つの観点をもとに下記図表にまとめました。
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
---|---|---|
使命 | 顧客の成功体験を作る | 顧客満足度の向上 |
コミュニケーション | 能動的 | 受動的 |
機能 | 活用支援(オンボーディング)、 アップセル・クロスセル | 操作支援(ヘルプデスク) |
図表の通り、カスタマーサクセスの最大の使命は、顧客の成功体験を作ることです。顧客が「成功」している状態とは、顧客が自社製品やサービスを利用することで、期待した成果を得られたり、解決したい課題を達成できたときの状態を表します。
そのため顧客からの問い合わせの有無にかかわらず、企業側から顧客に対して積極的にアプローチします。アプローチ内容は顧客が利用する製品やサービスの使用方法の説明から、サービス開始後のアフターフォローまで多岐にわたります。製品やサービスを契約したら終わりではなく、利用開始後も定期的に顧客の利用状況を確認し、顧客の課題解決から成功体験の獲得までをサポートするのがカスタマーサクセスのミッションです。顧客との良好な関係を維持することで、SaaSの解約防止のみならずアップセル・クロスセルの提案ができ、さらなる利益の創出が可能になります。
一方で、カスタマーサポートは主にコールセンターなどで顧客からの問い合わせにメール・電話・チャットなどで対応し、解決に導きます。顧客からの問い合わせというアクションによってはじめて対応し、製品・サービス購入後に顧客が抱えるさまざまな問題や要望をスムーズに解決することで、顧客満足度の向上を目的にしています。
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製造業でカスタマーサクセスが注目される理由
SaaSの台頭とともに広がりを見せたカスタマーサクセスですが、いま国内外の製造業から強い関心を集めています。その理由を4つの観点から解説します。
リカーリングモデルへのシフト
リカーリングモデルとは、継続収益をあげることで安定的な売上を維持するビジネスモデルのことです。「Recurring(リカーリング)」は「繰り返す」という意味で、顧客に製品やサービスを何度も購入してもらう収益構造を表しています。
リカーリングモデルを導入することで、安定的な収益確保による生産性向上や継続購入によって蓄積されるデータを分析・調査し、顧客のロイヤリティ(企業やブランドに対する顧客の愛着、信頼度を表す言葉)の向上を図るなどさまざまなメリットを得られます。
製造業においてリカーリングモデルが普及した理由はいくつかありますが、最たる要因としては従来の製品売り切り型のビジネスモデルが限界を迎え、世界規模でビジネスモデルが「所有から利用へ」シフトしていることが挙げられます。背景にはインターネットの普及やシェアリングエコノミーの発展が大きく、顧客は製品やサービスの機能や性能のみならず、これらを利用することで得られる体験に価値を見出すようになりました。
ゆえに単に製品やサービスを提供するだけではなく、顧客の成功体験を作るカスタマーサクセスがこれまで以上に重要視されているのです。
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サービタイゼーションの進行
またもうひとつの要因としては、サービタイゼーションの進行です。サービタイゼーションとは「製造業のサービス化」を意味し、製品とサービスを掛け合わせ、新たな付加価値を提供するビジネスモデルのことです。従来の製造業のビジネスモデルでは「製品を売ること」をゴールにしていましたが、サービタイゼーションは製品販売後のサポートやメンテナンス、アフターフォローまでのプロセスを「技術力」として販売し、販売後も取引の継続を目指します。
製造業でのサービス化が重視されている理由には、製品そのものの収益性が低下したことが挙げられます。テクノロジーの進化によって、東南アジアをはじめとする新興国企業が高品質製品を安価で販売するようになり、日本の製造業の強みである製品の品質による差別化が難しくなってきています。そこで企業が新たな活路を見出したのが、サービタイゼーションです。
大手タイヤメーカーのブリヂストンでは、バス・トラック事業者向けサービスとして、IoTによるセンサーでタイヤの内圧を遠隔モニタリングするデジタルソリューション「Tirematics(タイヤマティクス)」を提供しています。ホイールに設置された専用の内圧警報装置が内圧情報を定期的に計測し、異常を検知するとクラウドを通じて顧客に通知されます。「Tirematics」によって事故を未然に防ぎ、車両稼働の最大化を実現しています。
ブリヂストンのような良質なサービスを提供するためには、自社製品を活用した顧客の成功体験づくりが重要です。ただ製品を売って終わりではなく、サービスとして中長期的なフォローアップが必要になります。そのためにもカスタマーサクセスは欠かせない存在だといえるでしょう。
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データの取得と活用
製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)とカスタマーサクセスを組み合わせることで、新たな利益を生み出すことができます。具体的にはAIやIoT(Internet of Things、あらゆるモノをインターネットに接続する技術のこと)の導入によるデータの取得と活用です。
たとえば生産現場にIoTを取り入れることで、生産設備の異常や故障を事前に検知するだけでなく、生産現場の稼働状況をデータとして把握することが可能です。これらのデータをもとに、カスタマーサクセスによる生産設備の新しい機器導入の提案やメンテナンスサービスといったフォローアップによって、既存顧客からの売上を創出することができます。
これまで製造業においてデータ活用はあまり行われておらず、また製品販売後のアフターフォローに関しては、主に機器の故障予防のための定期メンテナンスがメインでした。定期メンテナンスなどは現場作業を伴うため、ロケーションの観点から地域の代理店や販売子会社にアフターサービスを業務に委託、あるいは販売からアフターサービスまでを一貫して委託する企業が大半を占めていました。ゆえに製品販売後の顧客動向は分かりづらく、アフターサービスによるマネタイズ化は難しいのが実情でした。
しかし、AIやIoTなどのデジタル技術の発達により、企業側がダイレクトに機械設備の稼働状況などをデータで管理できるようになったため、従来のメンテナンスサービスに加え、機械設備のオプション提案、または機械設備の新規導入提案といった積極的なセールスアプローチが実現し、アフターサービスのマネタイズ化に成功しています。
このようにAIやIoTによるデータ活用とカスタマーサクセスは相性がよく、新しいビジネスモデルを生み出せることから注目を集めています。
カスタマーエクスペリエンスへの関心の高まり
カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience:CX)とは、日本語で「顧客体験」や「顧客体験価値」を意味します。商品やサービスそのものだけでなく、顧客が商品・サービスを購入するまでの過程や、購入後のアフターフォローまでを含んだ体験の総称を指します。
このCXが重要だと言われ始めて久しいですが、製造業ももちろん例外ではありません。製造業においても製品のコモディティ化が進み、製品の性能や機能だけで利益拡大を図るのが厳しくなっていることから、CX施策を取り入れ製品の付加価値を高める動きが広がっています。満足度の高いCXは顧客満足度を向上させ、自社製品のリピーターやファンの増大、ブランディング強化などさまざまなメリットを得ることができます。企業が安定した収益をあげていくためにも、CX施策はとても重要な項目です。
優れたCX体験を提供するには顧客への適切なフォローアップと成功(サクセス)が不可欠です。CX戦略の一環として、顧客の成功体験づくりをサポートするカスタマーサクセスに関心を寄せる製造業が増えています。
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カスタマーサクセスの導入を阻む壁
LTVの向上や解約率の低減、プロダクトやサービスの改善や自社ブランドのファン化など、企業に利益をもたらすカスタマーサクセスですが、さまざまな要因により導入をためらう企業が存在するのも事実です。今回はカスタマーサクセスの導入を阻む3つの壁について解説します。
ROIが見えにくい
ROIとは「Return on Investment」の略称で、投資費用に対してどれだけの効果や利益があったのかを示す指標 です。カスタマーサクセスの成果は顧客が自社製品・サービスを利用し、成功を収めることで初めて得られます。ゆえに短期間で成果を出すことは難しく、成果を得られるのは最短でも1年はかかってしまうため、ROIが見えにくく、他部署などから「カスタマーサクセスの成果が出ていない」と判断されるケースがあります。
また部署の立ち上げに時間やコストがかかるというデメリットもあります。カスタマーサクセスは最低でも3つの部門・部隊を作ります。1つ目が実際にカスタマーサクセスの業務をする部門、2つ目がCHS(カスタマーヘルスコア、顧客が自社サービスを継続利用するかどうかを数値化したもの)を定期的に管理する部門、3つ目がVOC(顧客の声)収集による顧客要望をサービスに反映させる開発部隊です。サービス内容が複雑であれば、カスタマーサクセス部隊からの問い合わせや質問に対応する部門も必要になります。
そのほかにもCHSを確認するためのCRMツール(顧客管理システム)の導入や顧客要望をフィードバックできる体制の構築が求められるため、カスタマーサクセス組織の立ち上げから組織化まで一定の時間とコストが掛かることが想定されます。「カスタマーサクセスを設立しても、先行投資に見合っただけの利益を回収できるのだろうか?」と企業が懐疑的になってしまい、導入に躊躇してしまう側面があります。
目的が不明瞭
導入を阻む2つ目の壁として、カスタマーサクセスの重要性や目的を社内共通で認識できていないことが挙げられます。特に企業の意思決定スタイルがトップダウン型の場合に生じやすく、トップ層からの明確なビジョンやミッションが社内で共有されないことが原因とされています。トップとその下の組織に認識のズレがあると、活動の方向性に誤りが生じたり、思ったような成果が出ず、失敗に終わる可能性が高くなります。新規部署の立ち上げなど新しい取り組みを行う際は、その目的や意義を社内全体で理解し、ミッション遂行のために同じ意識を持つことが成功への近道です。
何から始めたらよいかわからない
カスタマーサクセスは比較的新しい職種のため、「社内で導入したいけど手順がわからない」「体制を構築したいがノウハウがない」と悩む企業も少なくありません。カスタマーサクセスの業務は広範囲にわたり、目的や目標のないままにやみくもに始めてしまうと、結果に結びつくまでに長い時間がかかってしまいます。カスタマーサクセスの活動を早期に軌道に乗せるためには、既存のノウハウの活用やツールを導入するのが有効です。具体的には以下3つのポイントを意識すると良いでしょう。
・カスタマーサクセスの目標を明確化する
活動を始める前に、自社の製品・サービスの現状と目指したい姿との間にどんなギャップがあるのかを整理し、分析することをおすすめします。カスタマーサクセスの活動の主な目的は、「サービスやサブスク製品の継続利用」や「アップセル・クロスセルによるLTVの最大化」、「顧客満足度の向上」の3つになると思います。自社の置かれている状況や目標によって、取り組むべき活動の優先順位は変わります。まずはカスタマーサクセスの目標をしっかりと定め、取り組みを開始しましょう。
・目標にあわせてKPIやKGIを設定
目標を設定したら、進捗状況や達成状況を適切に把握するためにKGIやKPIを設定することをおすすめします。数値で課題を見える化することで、自社の課題の把握や解決策の検討をスムーズに進めることができます。
・デジタルツールを活用し効率化を図る
CRMツールやカスタマーサクセスツールを利用することで、顧客の行動履歴や継続利用率などのデータを一元管理でき、必要な情報をすぐに取り出せるメリットがあります。顧客ごとにあわせたアクションも可能になるため、効率的にカスタマーサクセスの業務を行うことができます。
製造業なら知っておきたい「カスタマーサクセス2.0」
「カスタマーサクセス2.0」とは2018年にコンサル会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した概念です。従来のカスタマーサクセス1.0では、主にBtoBのSaaSを中心とするサブスク型ビジネスを展開する企業が行う取り組みであると考えられていました。しかし「カスタマーサクセス2.0」は対象を限定せず、BtoCやサブスク型ビジネス以外の幅広い業界に適用できます。
また従来のカスタマーサクセスのメイン業務はSaaS型サービスの更新時における解約防止でしたが、「カスタマーサクセス2.0」では更新時に限らず、顧客の購買から利用ライフサイクル全体を通じて、顧客の成功体験づくりをサポートします。継続的なアプローチによって顧客に製品を長く使用してもらうだけでなく、他製品の良さも知ってもらえるようになるため、アップセルやクロスセルの機会を創出します。
すでに「カスタマーサクセス2.0」は日本企業でも実践されており、シャープ株式会社が販売する水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」の事例では、購買後の顧客の利用ライフサイクルにフォーカスしたサービスを提供しています。具体的にはウェブサイトでコミュニティーサイトを作り、ホットクックのレシピ投稿や閲覧から、ユーザー同士の情報交換ができるトークページを設け、ホットクックを活用した楽しい料理体験を提供し、既存顧客の満足度を高めています。結果、販売台数は2015年度の約3万台から大きく伸び、2019年には累計30万台の販売を記録しています。
この事例のように、本来は売り切り型製品でLTVの向上が難しい商品であっても、カスタマーサクセスの取り組みによって利益を最大化することが可能です。「カスタマーサクセス2.0」は解約の防止に留まらず、カスタマーライフサイクル全体の最適化まで実現しています。
製造業のカスタマーサクセスのおすすめ書籍
最後に製造業向けカスタマーサクセスをテーマにした書籍を2冊ご紹介します。
『製造業DX カスタマーサクセス編』
著:天野 眞也 出版:Team Cross FA(2020年9月発行)
■本書の特徴と構成
製造業DXの第一人者である著者が記した、『製造業DX』シリーズ3冊目の著書。製造業DXに関する基礎知識を解説した『入門編』、製造業DXを実践するためのノウハウを説いた『実践編』に続く本書では、製造業の顧客に「機器」「ソフト」「サービス」などの提供を行い、DX実現を支援するカスタマーサクセスの在り方について、実例や提言を交えながら、顧客の製造業DX実現と自社サービスを結びつけるために必要な支援や考え方を紹介しています。
またカスタマーサクセスのみならず、「サプライチェーン」や「エンジニアリングチェーン」、「デジタルファクトリー」などの製造業DXに欠かせない用語の説明から、製造業DXの必要性、製造業DXを担う人材についてまで網羅されており、「製造業DXとはなにか?」といった知識もあわせて得られます。「製造業DXを本格的に行ってみたい」「製造業でカスタマーサクセスを取り入れたい」という悩みを持つ企業担当者の方におすすめの良書です。
【目次】
第Ⅰ章 製造業DXとは
1 サプライチェーンのDX
2 エンジニアリングチェーンのDX
3 商品化業務プロセス改革
第Ⅱ章 デジタルファクトリーの構築
1 生産シミュレーション
2 動作シミュレーション
3 デジタルファクトリーの実現
第Ⅲ章 製造業DXの必要性と社会環境
1 価値の変容と不確実性
2 生産者余剰と消費者余剰
3 企業の競争力と新ビジネス
4 Society 5.0と製造業DX
5 Society 4.0と5.0の違い
第Ⅳ章 日本製造業の勝ち筋
1 マインドセットとグランドデザイン
2 スペック・アセット・スループット
3 投資対効果の数値化
4 SDGsの実現
第Ⅴ章 製造業DXを担う人材
1 DXエンジニア・デジタルファクトリーエンジニア
2 ゲーミフィケーション
3 働き方改革
4 誇れる日本を引き継ぐ
第Ⅵ章 製造業DXのQ&A
Q1 既存工場でも実現可能か?
Q2 人の仕事が無くなるのでは?
Q3 人手作業が多いと無理なのでは?
Q4 中小企業でも実現は可能か?引用:Amazon
『B2Bのサービス化戦略: 製造業のチャレンジ』
著:C.コワルコウスキー、W.ウラガ 、 戸谷 圭子、 持丸 正明 出版:東洋経済新報社
■本書の特徴と構成
『B2Bのサービス化戦略: 製造業のチャレンジ』はBtoB企業を対象に、欧米・日本企業の調査と事例から、製造業のサービス化戦略と戦術を体系的にまとめた実践書です。「日本の製造業・メーカーが進むべき道筋は、サービス化の実現へと企業文化を変換させることにある」と説き、なぜサービス化が必要なのか?といった理由から、サービス化に必要なマインドセットや組織マネジメントまでわかりやすく解説しています。
本書の特徴としては、コマツ、ダイキン工業、ゼロックス、トヨタ自動車などの日本の製造業1,000社の調査データが掲載されている点です。各企業のサービス有償化の状況や経営者のマネジメント・スタイル、シーズ志向に関する調査データなど、さまざまな観点からサービス化に関する日本の製造業の最新動向を把握することができます。
人々の価値観がモノの機能面のみならず、モノとサービスの統合から生まれる経験の価値を重視するようになった今、製造業もまた製品中心からサービスおよびソリューション中心の企業へと変革していくことが求められています。グローバル市場で日本の製造業が勝ち抜くためには、製品中心の思考を打破し、製造業のサービス化による新しいビジネスモデルの創出が必要不可欠であると述べられています。サービス成長戦略を設計して実装したいと考えている製造業BtoBのマーケティング担当者や経営者にとって、非常に役立つ一冊です。
【目次】
第Ⅰ部 サービス経済化する世界
第1章 サービス経済化する世界とその課題
第2章 なぜサービスなのか?
第Ⅱ部 サービス化戦略
第3章 真のサービス文化の構築のためのマイルストーン
第4章 組織目標との整合性
第5章 組織変革に向けたビジョンとリーダーシップ
第6章 サービス組織デザイン
第Ⅲ部 サービス化への準備
第7章 サービス化の6つのハードルと4つのサービス・カテゴリー
第8章 サービス化に必要なリソースと能力第9章 4つのサービス・カテゴリーの価値と価格
第Ⅳ部 サービス化戦術
第10章 サービス設計と生産性
第11章 サービス・セールス部隊の変革
第12章 チャネル・パートナーのマネジメント
第13章 サービス・イノベーションのための方法論引用:Amazon
まとめ
本記事では製造業におけるカスタマーサクセスの重要性や国内外で注目される理由、おすすめの書籍などについて紹介しました。
近年ではグローバル化によって世界中の企業で同じような製品を作ることが可能になりました。斬新な機能を搭載しても、すぐに似た製品が他社からリリースされてしまい、製品の特長による市場の優位性ができにくいのが製造業を取り巻く現状です。そこで他社製品との差別化の手段としてカスタマーサクセスによる付加価値が求められています。モノからコトへの転換が進んでいる製造業において、今後カスタマーサクセスはますます重要視される分野であり、製造業のビジネスモデルの主流になるといっても過言ではないでしょう。ぜひ自社のビジネス成長のヒントとして、参考にしてみてください。
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【製造業のデジタル化特集を公開中】
製造業のデジタル化に特化した特殊ページを公開中です!以下のリンクからご確認ください。
- 製造業のマーケティング成果をご紹介!
- Webサイトを活用した製造業の成果事例インタビュー集
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クラウドサーカスではこれまで、2,200社以上のWeb制作に携わってきました。その中でも特に多いのがBtoB企業であり、製造業の方々への支援です。この事例インタビュー集では、BlueMonkeyを導入してWeb制作を実施し、成果に繋がった製造業の企業様の声を掲載しています。
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- この記事を書いた人
- エムタメ!編集部
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クラウドサーカス株式会社 マーケティング課
- プロフィール :
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2006年よりWeb制作事業を展開し、これまでBtoB企業を中心に2,300社以上のデジタルマーケティング支援をしてきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。53,000以上のユーザーを抱える「Cloud CIRCUS」も保有し、そこから得たデータを元にマーケティング活動も行う。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意。
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