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「インサイドセールス究極の営業術」の水嶋氏とMAベンダーが考える、インサイドセールスを成功させる秘訣

記事公開日:2019/07/23
最終更新日:2021/04/16
「インサイドセールス究極の営業術」の水嶋氏とMAベンダーが考える、インサイドセールスを成功させる秘訣

新たな営業手法のひとつとして、近年、注目を集める「インサイドセールス(IS)」。
一部の大企業や、先進的なスタートアップ企業での取り組みが報じられるものの、日本企業の9割を占める中小企業では、まだまだ事例が少なく、導入のハードルも高いのが現状です。

そこで今回の記事では、書籍『インサイドセールス究極の営業術』の著者であり、多くの企業のインサイドセールス部門立ち上げに関わった経験をもつ、グローバルインサイト合同会社代表・水嶋 玲以仁氏に取材を実施。

国産MAツール「BowNow」を提供するMtame株式会社 MAコンサルティング部 部長 田中 次郎とともに、日本企業でインサイドセールスを成功させる秘訣について、語り合いました。

水嶋 玲以仁 氏インタビュー

インタビューのテーマ別抜粋記事

水嶋 玲以仁 氏 / 田中 次郎プロフィール

水嶋 玲以仁氏
  • Profile
  • 水嶋 玲以仁 氏
  • グローバルインサイト合同会社 代表

    水嶋 玲以仁 氏は、デルコンピュータ コンシューマー部ジェネラル・マネージャーを経て、以降インサイドセールスの実務全般について20年以上の経験を持っています。その後、マイクロソフト、Googleなど、世界有数のIT企業でインサイドセールスや営業チームの管理に携わり、いずれも売り上げ目標を上回る成果を達成。 2018年ダイヤモンド社より出版された著書『インサイドセールス究極の営業術』は、昨今、インサイドセールスが注目されていながら、ケーススタディや日本の最先端のモデルケースに関する情報が少ないことがきっかけとなり、執筆されました。

    参考リンク:水嶋氏の書籍紹介サイト(amazon)

田中 次郎
  • Profile
  • 田中 次郎
  • Mtame株式会社 MAコンサルティング部 部長

    2008年入社後、テレアポを中心とした新規営業チームのマネージャーとして実績を残したのち、自社のマーケティング責任者を経験。現在はマーケティングオートメーションツール「BowNow」のプロダクト責任者兼インサイドセールス部門責任者として活動中。約2年で導入社数2500社を突破。自社で蓄積した「MA×インサイドセールス、オンラインセールス」の知見を活かし、多くの顧客のコンサルティングを行っています。

日本の中小企業でインサイドセールスを成功させるには?

水嶋氏:私も独立をしてから、中小企業へインサイドセールスを普及することを考えたことがあります。しかし、日本の中小企業は、マーケティング知識が少なく、理解を得るのに非常に苦労しました。そのため現在は、柔軟な考えを持つスタートアップ企業や、エンタープライズ系の大手企業から、見本になるような事例を作ることに注力しています。田中さんは、中小企業へマーケティングの重要性を普及する際に、どのように説明していますか?

田中:私たちは、当社自身がもともとプッシュ型のテレアポをする営業会社だったのですが、マーケティングの力を借りて成長してきた経験があります。そのため、日本の中小企業にもマーケティングの仕組みを活用することで、もっと成長してほしいという想いをもっています。
当社が提供するMAツールの「BowNow」は、欧米の高機能・高価格なMAツールとはまったくコンセプトが異なります。私たちの考えでは、日本の中小企業は、そもそもマーケティングに取り組んだ経験のない会社がほとんどなので、最初から、高度な自動化が必要な会社はほぼありません。そのため私たちは、「BowNow」を極力シンプルな機能にしぼりました。そのうえで「アツくない顧客はあっためる」「アツいかもしれない顧客にはちゃんとアプローチ(電話・メールでアポイントを打診)する」。この2点を愚直にやってもらえれば、一定の成果は出ると伝えています。

水嶋氏:日本の組織にインサイドセールスが根付くためのハードルのひとつとして、フィールドセールス(外勤型の従来の営業部門)が強く、理解を得られないということがありますね。「アプローチが重要」という話をすると、フィールドセールスは、ちゃんと動いてくれるものですか?

田中:それには当社も苦労していますが、提案を重ねるなかで、少しずつコツが見えてきました。それは、営業部長さんなど、営業組織のトップの方の理解を得てから、担当者層にまで広めていくことだと考えています。
マーケティングに力を入れたいと考えている企業は、現状に限界を感じ、「新規営業」を増やしたいと考えている企業が多いです。しかし、営業部門からすれば、取れる確約の低い新規営業を、積極的にやりたくないのは当然です。
新規を取っても人事評価に反映されないという問題もありますが、それはすぐに解決できる話ではありません。
そのため、私たちは営業部門のトップの方に、MAやインサイドセールスを活用することで「優秀な営業マンに、数多く、アツい案件(ホットリード)をまわってもらえる」状況をめざそうということをシンプルに伝えています。

水嶋氏:そうですね。インサイドセールスは、大手企業でもテレアポ部隊と思われていることがあります。
しかし私は、ホットリードも諸刃の剣だと思っています。フィールドセールスからすると、ホットリードは「簡単な案件だったから(獲れた)」などといわれ、インサイドセールスの仕事の成果が評価されないときもあるからです。
そのため私は、ISチームを組織に根付かせるために、「ヒーローを作る」というやり方をしています。誰もが納得する難しい案件を、インサイドセールスからフィールドセールスに渡すことが、ISチームを評価し、理解するきっかけになると思っています。

※エムタメ!参考記事:インサイドセールス根付かせる方法は「ヒーロー」をつくること

水嶋 玲以仁氏 / 田中 次郎 インタビュー

インサイドセールスがあると「成約率」の高い案件にフォーカスできる

水嶋氏:営業部長さんを説得するという話がありましたが、私が営業部長さんと話をする際に、もっとも聞きたいのは「個々の営業数字を上げたいのか?組織全体の数字を上げたいのか?」という点です。
よく「2・6・2の法則(※)」などといいますが、2割の成績トップ層は、まじめに長くやっている人ほど、売り上げをさらに1.5倍~2倍にするのは難しいと感じています。また、2割のローパフォーマーを、なんの施策もなく、いきなり好成績にするのは無理があります。
しかし、マーケティングのリードやインサイドセールスの仕組みをうまく使えば、組織全体の数字を1.2~1.3倍にすることはできると思っています。
それは、インサイドセールスがアツいリードを営業に渡せば、営業は「成約率(=勝率)」の高い案件に集中できるからです。なんの前情報もなく、営業がアプローチをする際は、商談を進めてみないとその案件の確度が高いかどうかはわかりません。かなりの時間を費やしてから失注するということもあり、営業がかけたそのぶんの工数はムダになってしまいます。
つまり、ISチームの活動が営業の生産性を高めることにつながるということです。人材が限られるなか、あまりアツくない案件に時間をかけすぎていませんか?という問いかけも響くと思います。

田中:その視点は、私たちはあまり伝えていませんでした。ISチームが顧客のナーチャリングを行うことで、成約率の高い案件を、より多く生み出せるということですね。

水嶋氏:はい、ムダな商談を追わなくていいぶん営業のロスが減りますね。また、確度の高い商談なら、クロスセル・アップセルの提案をできる可能性も高まります。

田中:そうですね。むやみに新規訪問をたくさん入れるのではなく、限られた時間のなかで「営業がいかに効率の良い商談にフォーカスできるか?」という視点の方が、日本の営業現場には合っている場合もありますよね!

※エムタメ!参考記事:日本の企業文化に合わせたインサイドセールス組織の進め方とは?

※2・6・2の法則:組織や集団のなかで、成果の構成比が自然に上位2割・中位6割・下位2割になるという考え方。

「新規顧客」ではなく、「新規商談」を増やす

田中:私たちは、「商談数を増やそう」ということにフォーカスしがちでしたが、成約率や、既存顧客のなかの案件金額に着目するのもいいですね。

水嶋氏:日本のBtoB市場は、そもそも会社数が限られるため、パイの奪い合いです。本当に「ど新規」の営業先はほとんどなく、かつてはお付き合いのあった会社がほとんどではないでしょうか。
そのため「商談数を増やそう」という発想はいいのですが、それが「新規の顧客」だけはなく、既存の休眠顧客なども含めた「新規の商談」を増やして、会社のなかでのシェアを高めていくことをめざす方が、中小企業の営業部門の方も納得度が高い気がします。

田中:それはいいですね! ISチームがLTV(ライフ タイム バリュー/顧客の生涯価値)の高められそうな案件を見極めて営業にパスすることで、それが実現できるということですね。

インサイドセールスはどの部門に所属するのがベスト?

田中:私たちがお客様から相談を受けるなかで、ISチームはどこの部門に所属するのが最適か?という質問をよく受けます。水嶋さんはどうお考えですか?

水嶋氏:明確な答えはありませんが、その会社のステージに合わせるのがいいと思います。一般的に、営業部門の下につく方が、立ち上がりが早い傾向はありますが、前述のように、営業部門の理解が得られずテレアポ部隊化してしまう可能性もあります。
また、ISチームを立ち上げるきっかけは、マーケティング部門で必要性が生じたからであることが多いため、マーケ部門と連動することも多いです。
マーケ部門にとって、ISチームが日々ヒアリングしている顧客の「生の声」は、マーケが考える新しい施策やコンテンツ企画のヒントにもなるというメリットもあります。マーケティング部門が企画する顧客へのテストやインタビューのようなことを、ISチームは毎日、高速でPDCAを回しているからです。
しかし、日本の組織のなかでは、そもそもマーケ部門の人数が少なかったり、立場が弱かったりする場合があります。
フィールドセールス部門が、マーケ部門が供給したリードを活用してくれない…というようなよくある問題も、やってみてダメだった経験があるからだと思います。マーケ部門自身も、もっと精度を上げ、組織のなかで強くならなければなりませんね。

まとめ

欧米諸国に比べて、日本のビジネス界にマーケティングのノウハウが少ないことはよく知られています。しかし、これからの時代は、日本の中小企業にとってもマーケティング施策を取り入れることは必須となってくるでしょう。
今回の対談では、既存の営業組織に、マーケティングやインサイドセールスをどう生かしていくべきかのヒントをたくさん見つけることができました。
これから営業組織を改革していく方や、インサイドセールスを立ち上げようとしている方に、ぜひ参考にしていただければと思います!

最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる

著:水嶋 玲以仁 出版:ダイヤモンド社(2018年12月発刊)

Dell、Microsoft、Googleなどのグローバル企業で20年以上に渡り、インサイドセールスの実務を経験してきた著者が、インサイドセールスの組織の立ち上げから実践にいたるまでのノウハウを解説しています。

同書では、インサイドセールス部門立ち上げ時には、「アジャイル型」(ソフトウェア開発の手法のひとつで、細かくテストと改善を繰り返しながら徐々に完成形に近づけていく方法)の組織運営することを推奨。そのためには、一人ひとりの小さな気付きを、クイックに改善していくことが必要で、一つのチームを少人数で編成し、分け隔てなく意見を交わせる雰囲気づくりをしなければならないと説いています。

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