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日本の企業文化に合わせたインサイドセールス組織の進め方とは?

記事公開日:2019/07/23
日本の企業文化に合わせたインサイドセールス組織の進め方とは?

マーケティングとフィールドセールスの橋渡しをする役割として、近年、注目を集める「インサイドセールス」。

今回の記事では、そんなインサイドセールスの最新の事例とノウハウを解説した『インサイドセールス究極の営業術』の著者であり、グローバルインサイト合同会社代表である水嶋 玲以仁氏への取材記事「インサイドセールス究極の営業術」の水嶋氏とMAベンダーが考える、インサイドセールスを成功させる秘訣」の中から、一部のテーマを抜粋してまとめました。

水嶋 玲以仁氏インタビュー

インタビューのテーマ別抜粋記事

水嶋 玲以仁氏 プロフィール

水嶋 玲以仁氏
  • Profile
  • 水嶋 玲以仁氏
  • グローバルインサイト合同会社 代表

    水嶋 玲以仁氏は、デルコンピュータ コンシューマー部ジェネラル・マネージャーを経て、以降インサイドセールスの実務全般について20年以上の経験を持っています。その後、マイクロソフト、Googleなど、世界有数のIT企業でインサイドセールスや営業チームの管理に携わり、いずれも売り上げ目標を上回る成果を達成。近年では、スタートアップ系企業の営業チームの再編成にコンサルタントとしてかかわり、シナジーを生み出した経験を豊富に持っています。
    2018年ダイヤモンド社より出版された著書『インサイドセールス究極の営業術』は、昨今、インサイドセールスが注目されていながら、ケーススタディや日本の最先端のモデルケースに関する情報が少ないことがきっかけとなり、執筆されました。著書のなかでは、株式会社ユーザベースのISチームの成長ヒストリーや、セールスフォース・ドットコム、マルケト、ベルフェイスなどベンダー会社のインタビューも掲載されています。

    参考リンク:水嶋氏の書籍紹介サイト(amazon)

なぜ日本企業はインサイドセールスの導入が難しいのか

会社を独立して、コンサルティング会社を立ち上げたのち、水嶋氏は、日本の中小企業にインサイドセールスのノウハウを普及できないかと考えたことがあるそうです。しかし現実には、それはとても難しいことだったといいます。

水嶋氏:日本の企業には、マーケティングの知識が圧倒的に不足しています。そのような組織にインサイドセールスの必要性を説いても、なかなか理解してもらえませんでした。
かろうじて、マーケティングの部署がある会社で、マーケティング担当には理解してもらえても、フィールドセールス(従来の外勤型の営業部門)に、ホットリードの重要性を理解してもらうハードルは非常に高いです。
そのため現在は、柔軟な考えを持つスタートアップ企業や、エンタープライズ系の大手企業から見本になるような事例を作ることに注力しています。著書で取り上げた株式会社ユーザベースも、「日本の営業やマーケティングを変えていかなければ」という意識が高いため、快く掲載に応じてくれました。

きちんとメリットを理解してもらうことが大事

さまざまな企業に対し、インサイドセールス部門立ち上げのコンサルティングを行うなかで、水嶋氏はその企業の制度や、関わる人の立場よって言い方を変え、メリットを伝えることを大切にしているそうです。

水嶋氏:よく、マーケティングが渡したリードを、フィールドセールスが無視するという問題がありますが、フィールドセールスも、リードを追ってみてダメだった経験があるのだと思います。そのため、フィールドセールス部門には、インサイドセールスが機能することで、「成約率の高い案件に注力し、ムダな案件を追わなくていい状況が作れる」と伝えると、より響くのではないかと思います。
また、マーケ部門には、ISチームが日々ヒアリングしている顧客の「生の声」は、マーケが考える新しい施策やコンテンツ企画のヒントにもなると伝えています。考えてみれば、マーケティング部門が企画する顧客へのテストやインタビューのようなことを、ISチームは毎日、高速でPDCAを回しているわけです。このような考え方は、UXなどデザイン思考を好む会社にも響きます。

フィールドセールスへの効果的な伝え方

組織にインサイドセールスを根付かせるには、とくにフィールドセールス部門の理解が非常に重要になります。水嶋氏は、フィールドセールス部門に、インサイドセールスのメリットを説得するためのロジックを次のように提案しています。

水嶋氏:よく「2・6・2の法則(※)」などといいますが、営業部門の2割の成績トップ層は、まじめに長くやっている人ほど、売り上げをさらに1.5倍~2倍にするのは難しいと感じています。また、2割のローパフォーマーを、なんの施策もなく、いきなり好成績にするのは無理があります。しかし、マーケティングのリードやインサイドセールスの仕組みをうまく使えば、組織全体の数字を1.2~1.3倍にすることはできると思っています。
それは、インサイドセールスがホットリードを営業に渡せば、営業は「成約率(=勝率)」の高い案件に集中できるからです。
従来のような営業をする場合、その商談が契約につながるものだったか、ムダなものだったかは、あくまで結果でしかわかりません。営業としてアサインされたときは、アツいと思っていても、実はそうでもなかったということもよくあると思います。 しかし、インサイドセールスがアツい・サムい⇒冷たいをわかっていて、それを営業に伝えることができれば、ムダな工数を減らし、営業の生産性を高めることができます。
また、確度の高い商談なら、クロスセル・アップセルの提案をできる可能性も高まります。「成約率」と「案件金額」を上げ、かけ算していけば、組織全体の売り上げを伸ばせる可能性はずっと高まると思います。

※2・6・2の法則:組織や集団のなかで、成果の構成比が自然に上位2割・中位6割・下位2割になるという考え方。

成約率×案件金額で組織全体の利益を上げる

※図1:PowerPoint

成約率の高低がわかると、営業の生産性が高まる

※図2:PowerPoint

日本企業でインサイドセールスがマッチする条件とは

インサイドセールスの効果の出し方をこのような方程式で考えると、日本企業のなかで、インサイドセールスが向いている条件が見えてきます。

水嶋氏:私のお客様のなかには、現状のターゲットからの売り上げに限界が生じ、ターゲットをスライドさせて現状のサービスや商品を既存のコンタクト先からアップセル、クロスセルをして新たな商談を生み出すという課題を抱えている企業がいます。このような場合、既存のお客様と同じ会社でも、違う部署へのアプローチが必要となり、インサイドセールスの役割が生きてきます。同じ状況は、市場が成熟した日本では、他の企業にも多く当てはまると思います。

まずは既存顧客の新規商談を創出するところから始めよう

また、インサイドセールスでは、通常の営業活動で見逃されがちな見込み顧客を育て、新規商談を増やすことが役割とされていますが、それは完全に新規の顧客である必要はないと水嶋氏はいいます。

水嶋氏:日本のBtoB市場は、そもそも会社数が限られるため、パイの奪い合いです。本当に「ど新規」の営業先はほとんどなく、かつてお付き合いのあった会社がほとんどではないでしょうか。そのため、ある程度企業規模があるところは、「新規顧客の新規商談」を増やすことをめざすのではなく、休眠など「既存顧客の新規商談」を創出する方が早いと思います。「新規顧客」と「新規商談」を分けて考え、既存顧客の会社のなかでのシェアを高めていく考え方も必要ですね。

まとめ

今回のインタビューでは、さまざまな企業のインサイドセールス部門の立ち上げに携わる水嶋氏のお話から、日本企業へISチームを定着させるための難しさや、その攻略ポイントを考察することができました。
エムタメ!では、今後も日本の企業のマーケティング施策やインサイドセールス部門運営のヒントになる情報を発信していきます。


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