コンテンツマーケティングは、オウンドメディアや企業ブログ、SNSなどで顧客へ有益な情報を届けて売上向上につなげる近年注目の手法です。
リターゲティングなどの一方的なインターネット広告やSEOによるコンテンツ制作とは異なり、あくまでもユーザーにとって価値ある情報、ユーザーが求めている情報を発信することが主眼となります。
ただし、中長期的な施策であるがゆえに、効果が現れるまでに時間がかかり、コンテンツ制作のためのコストも必要といったデメリットもあります。
時間もコストもかかりますが、コンテンツの質を重視する近年のGoogleの動向からすると、オウンドメディアを持つ会社に限らず、多くの企業に有効なマーケティング手法だといえます。
本記事では、コンテンツマーケティングに取り組む際のメリットや取り組むべき理由についてご紹介します。
目次
コンテンツマーケティングとは読んで字のごとく、コンテンツを主体としたインバウンドマーケティングのひとつです。
従来のテレビCMやダイレクトメールのようなアウトバウンドマーケティングでは難しくなっている、新規顧客の獲得に有効な手法として注目されています。「伝えたい情報を売り込む」手法から、「ユーザーに情報を見つけてもらう」手法のコンテンツマーケティングに変化しているともいえるでしょう。
コンテンツマーケティングは、優良で一貫性のあるコンテンツを適切なタイミングで届けてることにより、見込み顧客との関係性を構築します。ユーザーが、求めている情報(知りたい情報)を発信して、「悩みが解決できた」「売上が伸びた」といった成功体験を提供することで購買行動につなげます。
コンテンツを継続的に発信していくことでユーザーが優良顧客となり、一時的なものではなく中長期的な収益が得られるのです。
なお、ここでいうコンテンツはオンラインのものに限らず、紙媒体などオフラインのものを含む幅広いメディアを指します。
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なぜコンテンツマーケティングは注目され、さまざまな業界で必要性が高まっているのでしょうか。主な理由は次の3点です。
 
Googleをはじめとする検索エンジンの発達、スマートフォンなどモバイル端末の利用、SNSの普及によって、ユーザーは好きなときに好きな情報を得られるようになりました。多くのユーザーが購入前に自ら情報を集めて比較検討をするため、コンテンツマーケティングを行っていない企業は、製品を認知してもらうことが難しくなっています。
Webでの購買活動の普及と多様化から、各企業は競合優位性を保つことが難しく、顕在的な購買顧客の獲得競争が激化。従来の売り込み型の広告手法が限界を迎えているといわれます。情報があふれる現代では、従来のプッシュ型の広告手法からプル型のコンテンツマーケティングに移行しつつあります。
「Google検索セントラル」には、コンテンツについて次のように記載されています。
「Google の自動ランキング システムは、検索エンジンでのランキングを上げることではなく、ユーザーにメリットをもたらすことを主な目的として作成された、有用で信頼できる情報を検索結果の上位に掲載できるように設計されています。」
 
コンテンツマーケティングを実践して、ユーザーファーストなコンテンツを作成することはGoogleからの高評価にもつながります。
参考記事:
「CONTENT MARKETING DAY 2019」レポート 第一回「基調講演|コンテンツマーケティング2020」
コンテンツマーケティングは、コンテンツそのものを主体とするため広告費がかかりません。ただし、一定の工数と時間、それにともなう制作費・運用費がかかることがデメリットともいえます。
運用開始後は、最低でも3~6ヵ月間は続ける必要があります。Content Marketing Instituteの創設者であるJoe Pulizzi氏は、顧客との永続的な関係性を築くには最低でも18ヵ月以上実施することを推奨しています。
また、オリジナリティのあるバズコンテンツに定評のあるライター・ヨッピー氏は、メディア事業単体でマネタイズ(収益化)するには3年間は続けなければならない、とコメントしています。
コンテンツマーケティングは、顧客との関係を構築し、最終的に購買行動へとつなげるといった性質上、一朝一夕にアプローチできるものではありません。良質なコンテンツの作成と発信を積み重ねることが重要であり、そのためには中長期的な運用が求められます。
コンテンツ作成の工数の大半を占める「記事作成」を外注した場合の費用は、発注先にもよりますが、月間で数万円程度から50万円程度といわれています。運営すべてを任せる場合は、50万円以上のコストがかかるでしょう。
 
戦略的な部分も外注する場合は、アクセス解析やCMSの設置などのサービスを含むため、発注先は制作会社やCMSベンダーになることが一般的です。
 
前出のライター・ヨッピー氏は、黒字化を目指したメディア運営には最低でも月間300万円×3年間で総額1億800万円は必要である、と一例を挙げています。そもそも「コストがかからないから」という短絡的な発想で自社メディア運営に手を出すことはおすすめできないといいます。
 
費用については、BtoC向けなのかBtoB向けなのか、娯楽要素が強いのか業務時間中に見てもらう必要があるのかなど、オウンドメディアの性質によっても異なります。
 
一定の時間がかかることと、それに耐えられる予算とリソースが自社にあるかどうかで、コンテンツマーケティングの取り組み方を検討すると良いでしょう。
参考記事
オウンドメディア運用に“気合い”入ってる? ライター・ヨッピー氏が編集側に声を大にして伝えたいこと
先ほど、コンテンツマーケティングは最低でも18ヵ月以上続けることが大切であるとお伝えしましたが、成果が出るまでに必要な記事本数は、インタビューなどの読み物型記事で166本以上、データなどを掲載した情報ノウハウ型記事で59本以上であるという調査結果が出ています。
 
週に平均2本ずつ記事を公開するとして、読み物型記事では約21ヵ月(83週)、情報ノウハウ型では7.5ヵ月(30週)の期間が必要となります。記事の企画や制作期間もふまえながら、長期的な計画を立てることが大切です。
 
データ参照元
B2Bサイトにおけるコンテンツマーケティングのあるべき姿についての提言(WACULテクノロジー&マーケティングラボ)
それだけの時間とお金を投資してまで、コンテンツマーケティングに取り組む意味があるのでしょうか。従来のWeb広告手法に比べると、次のようなメリットが挙げられます。
オウンドメディアのブログやメールマガジンでも始めることができ、コンテンツ制作などを社内で行う場合は人的コストのみでのスタートが可能です。SNSなら公式アカウントを開設するだけで運用できます。初期導入時のハードルが低いことは大きなメリットといえるでしょう。
Web広告のように時間的・費用的な制約を受けずにすむこともメリットのひとつです。効果測定をしながら、自社の都合で運用期間(掲載期間)や発信のタイミングを見極めることができます。トレンドやターゲットのニーズに合わせて、定期的にコンテンツを改善しながら続ければ、高い成果が得られるでしょう。
Web広告は掲載期間が終了すれば消滅してしまいますが、コンテンツは時間が経過しても価値が下がりにくく、発信したものはすべて企業の資産として残ります。徐々にコンテンツの数を増やしていけば、オウンドメディアやSNSアカウントを大きく成長させられます。
コンテンツの制作と運営を自社内で行えば、そのノウハウも資産になるでしょう。
参考記事
さらに、コンテンツマーケティングを継続的に実践すれば、次のようなメリットも見込めるでしょう。
自社の専門分野に関する資料や、社内に蓄積されたノウハウをオウンドメディアのブログなどで発信し続ければ、一定のコンテンツ量を貯めることができます。
そのコンテンツに固定ファンがつけば、「このサイトを見れば欲しい情報が手に入る」と評価されるようになるでしょう。
マーケティング用語としてのオピニオンリーダーは、「顧客の購買行動に大きな影響力のある意見や感想を提供する人々」を指しますが、コンテンツマーケティングの実践によって特定の分野のオピニオンリーダーになることは、新規顧客の信頼を得ること、ひいては自社のブランディング効果アップにつながります。
参考記事
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配信したコンテンツが、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで上位表示されるようになれば、広告を使わずに高い集客が得られます。どのキーワードから流入しているのかを調べて、ニーズに応じたコンテンツ作成を目指しましょう。
なお、コンテンツマーケティングはコンテンツSEOと混同されることがありますが、本質的な目的はSEOではありません。コンテンツマーケティングにおいてのSEOは、あくまでも副産物的なものと捉えると良いでしょう。
株式会社日本SPセンターの代表取締役社長である渡邉 一男氏によると、2014~2015年のGoogleの検索アルゴリズムの変化で、コンテンツの質を重視したサイトが優位になったことから「コンテンツSEO」という言葉が発生し、コンテンツマーケティングの目的がSEOであると捉えられてしまったそうです。
参考記事
【SEO対策のやり方】キーワード・コンテンツ・リンク・定点観察の4STEPで対策しよう!
米Googleは、ユーザーのプライバシー強化などの観点から「Chrome」でのサードパーティーCookieの段階的廃止を決定しており、2024年後半にはすべてのユーザーに適用すると発表しています。
「Cookie」とは、Webサイトの訪問回数やIDなど、訪れたユーザー情報を一時的に保存しておく仕組みのことです。ECサイトで買い物かごに入れた商品が、再訪したときも残っていたという経験はないでしょうか。そのシステムには「Cookie」が使われています。ネットバンキングの利用やID・パスワード入力の省略など、Web利用を便利にするために「Cookie」が利用されています。
今回話題となっている「サードパーティCookie」とは、「ユーザーが訪問しているWebサイト以外のドメインから発行されたCookie」のことを指します。「第3者のドメインから付与される」ということが大きな特徴です。
サードパーティーCookieは、ターゲティング広告のために利用されることが多く、使用できなくなるとデジタル広告業界は大きな影響を受けます。
いずれ使えなくなることを見越して、最近はファーストパーティー・データ(ファーストパーティーCookieにより取得したデータ)の活用が注目されています。自社メディアの構築によって顧客情報を収集することが重要視され、コンテンツマーケティングがデジタル広告分野を支配するであろうといわれているのです。
参考記事
Google、Chromeで2年以内にサードパーティCookieを完全に廃止する計画を発表
コンテンツマーケティングによる集客は、企業側が売り込むのではなく、ユーザーが情報収集の一環として自発的にアクセスしてくれるため効率的な手法といえます。
また、実際にアクセスしてくるのは興味・関心の高いユーザーに絞り込まれるため、優良顧客になる可能性の高いユーザーをピンポイントで狙うことができて無駄がありません。
ターゲットに当てはまる見込み顧客には、悩みに共感して解決策を提供するコンテンツや専門性の高いコンテンツを提供してファン化を狙うと良いでしょう。
製品を認知していない潜在層に対しては、気軽に参加できる「チェックリスト」などで潜在ニーズを喚起する方法もあります。
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コンテンツマーケティングは、SNSと相性が良いといわれています。「自社のコンテンツが有益なものである」とユーザーに評価されれば、FacebookやInstagramなどで拡散してくれるため高い宣伝効果が期待できます。
とくに、オウンドメディアのブログ記事や動画コンテンツなどは、SNS投稿により拡散されることで、広く情報をユーザーへ届けられます。
顧客により投稿されたコンテンツが、新たな読者の目に留まり、さらに拡散されると広告を使わずに優良顧客やリピーターを獲得し続けることが可能です。
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一方、コンテンツマーケティングには以下のようなデメリットもあります。
コンテンツマーケティングは、定期的に更新し続けることで集客効果が高まります。配信の間隔が空いてしまうと、ユーザーは離れてしまうかもしれません。成果を高めるには、コンテンツを継続して配信することが必要です。
ただし、更新頻度を高めることに集中してしまうと、本来の目的を見失ってしまう恐れがあります。更新することが目的となり、成果につながらないままコンテンツ作成ばかりに時間を取られてしまいます。
本質を見失わないためには、常に効果測定を行いながらPDCAサイクルを回すことが大切です。成果を確認しながら、コンテンツの更新を続けましょう。
コンテンツマーケティングで成果を出したいあまりに、製品のアピールばかりをしていませんか。自社製品の優れている点だけを紹介していると、企業目線に偏ってしまいます。自分たちが作りたいコンテンツではなく、顧客目線に立って興味を持ってくれるようなコンテンツを配信することが大切です。
コンテンツの偏りを防ぐためには、ターゲットのニーズを確認することはもちろん、ほかの部署など周囲からヒントをもらうのもひとつの方法です。最近では、ChatGPTなどのAIサービスを活用して、記事のネタ探しをすることもできるので積極的に利用してみましょう。
コンテンツマーケティングは、BtoBビジネスの特性に適しているといわれています。その理由は大きく2つ挙げられます。
BtoBの製品は単価が高いため、購入に至るまでの検討期間が長いといった特徴があります。ユーザー自らで企業や製品についての情報収集を行い、時間をかけて比較検討します。
Webサイトに関する調査などを提供している株式会社トライベック・ブランド戦略研究所の「BtoBサイト調査 2023」によると、商品・サービスを購入する際の情報源として65.1%の企業がWebサイトを挙げています。
つまり、コンテンツマーケティングで自社製品の魅力を発信すれば、情報収集の期間に想起してもらいやすくなります。購入プロセスを引き上げるためには、ただ待っているだけではなく、有益な情報を提供し続けることが不可欠といえるでしょう。
BtoB商材は、どんなに魅力的なものでも1度のアプローチでは購入に至らないケースがほとんどです。その特性から、BtoB企業は継続して接点を持つことで信頼関係を築き、商談化につなげていきます。定期的にコミュニケーションがとれるコンテンツマーケティングは、そのような見込み顧客の育成(リードナーチャリング)にとても有効です。
メール配信やオウンドメディアなどを使って、客観的に製品のメリットを提示し、決裁権のある人に納得してもらえれば購入へと近づきます。また、専門知識や業界動向などを共有することで、企業を専門家と認識してもらえれば信頼度も向上するでしょう。
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コンテンツマーケティングは、従来のプッシュ型のアウトバウンドマーケティングの効果が薄れるにつれ、プル型のインバウンドマーケティングとして主流となりつつあります。
興味・関心度の高い顕在的な顧客だけでなく、潜在層にもアプローチでき、広告以上の集客効果も期待できます。専門性の高いコンテンツやオリジナリティあふれるブログ記事を作成して、SNSでの拡散を目指すことも可能です。
ただし、ユーザーのニーズを見極めてコンテンツの質を高めるためには、それなりのコストと工数がかかります。成果もすぐに見えるわけではありません。長期的な視野が必要であり、成果を出すにはユーザーにとって価値あるコンテンツを一つひとつ積み重ねていくことに尽きます。
マーケティング担当者は、時間とコストをかける価値が明確にわかるようにプレゼンを実施し、上層部を納得させることが重要です。
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