Google、Chromeで2年以内にサードパーティCookieを完全に廃止する計画を発表
最終更新日:2023/11/14
2020年1月14日、米GoogleはChrome(クローム)におけるサードパーティCookie(クッキー)のサポートを2022年までに段階的に廃止する予定であると発表しました。
パーティが利用できなくなるとターゲティング広告などのインターネット広告が今までのように配信できなくなる可能性があり、企業が受ける影響は甚大です。
今後はコンテンツマーケティングがデジタル広告を支配するようになるだろうとの見方もあります。サードパーティCookieの廃止でアドテクにどのような影響があるのか、Google の動向に注目してみましょう。
Chromeとは?
Chrome(クローム、正式には「Google Chrome」)は2008年にリリースされたGoogleの公式ブラウザであり、現在ではブラウザシェアの首位に立っています。
シンプルなUIと軽快な操作性により、ほかのブラウザに比べて起動やページの読み込みが速いのが特徴です。
Googleアカウントを用いれば複数の端末でブックマーク・パスワード・履歴などの設定を共有できるという利便性があります。
Cookieとは?
Cookie(クッキー)とは、あるユーザーがWebサイトを閲覧するときに、そのユーザーのスマホやPCの中に自動的に保存される履歴や入力情報などの情報を指し、「訪問管理表」にたとえられることもあります。
Cookieの正体はシンプルなテキストファイルで、サイトを訪れた日時や訪問回数、ログインIDやパスワード、買い物の履歴など、さまざまな内容が記録されています。
会員制のサイトなどでログイン情報を保存し次回ログインの手間を省くなど、もともとはユーザーの利便性向上のために開発されました。Webサイト側としてはユーザーの行動や関心・属性などについて知ることができるため、企業のマーケティング解析に活用されています。
ファーストパーティCookieとサードパーティCookieの違い
Cookieは発行元のドメインによって①と②に分類されます。
① ファーストパーティCookie(1st Party Cookie)⇒ ユーザーが実際に訪問しているドメインが発行・管理
② サードパーティCookie(3rd party Cookie)⇒ それ以外のドメイン(第三者)が発行・管理
たとえばユーザーが天気予報のWebサイトを閲覧したとします。サイドバナーには不動産の広告が表示されています。
この場合、天気予報のWebサイトの運営企業からユーザーのブラウザ宛に発行されるのがファーストパーティCookie、不動産のバナー広告を配信している広告配信事業者から発行されるのがサードパーティCookieです。
このように1つのWebページで2つ以上の企業が情報を配信している場合、Cookieも2つ以上作成されることになります。
なぜサードパーティCookieを廃止するのか?
ユーザーのプライバシーを強化するため
2020年1月、米Googleは「ウェブ上のプライバシーを根本的に強化するための一連のオープンスタンダードを開発するための新しいイニシアチブ(プライバシーサンドボックス)」の一環としてサードパーティCookieを廃止することを発表しました。
サードパーティCookieの仕組みにより、ユーザーは自分の属性やニーズによりマッチした(パーソナライズされた)広告を見られるようになります。
しかし、自分が訪問したサイトとは関係のない企業からCookieを発行・管理され、気づかぬうちにトラッキング(追跡)されることを好ましく思わないユーザーもいることでしょう。
GoogleがサードパーティCookieを廃止する目的は、「Webをユーザーにとってよりプライベートで安全なものにし、パブリッシャーをサポートすること」とされています。
ブラウザ市場による個人情報保護の動き
サードパーティCookieは現在、ユーザーよりも企業側が活用する目的で発行・管理される傾向があります。
ブラウザ市場ではすでに、Cookieで取得されたデータの使用方法の透明性を向上させる動きが起きています。
これは、欧州の一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)や米国のカリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:CCPA)などにより個人情報保護のための規制が強化されつつあることを受けたものです。
2019年、Firefoxは全ユーザーのプライバシー保護のため、追跡Cookieのブロック機能を実装しました。
Safariも2017年から段階的に主にサードパーティCookieの機能に制限を加えていて、2019年にはファーストパーティが実質無効化するアップデートを実施しました。
こうした動きによりユーザーの追跡ができなくなり、大打撃を受けた広告ツールもあるといいます。
Google自身も大規模な広告ビジネスを展開していることから、Cookieの使用を阻止しつつ従来のターゲティング広告に近いものを維持できるのか否か、動向が注目されています。
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苦境に立たされたアドテク
アドテクのサードパーティCookieへの依存
インターネットの世界で大きな影響力を持つGoogleがサードパーティCookie廃止の方針を示したことで、アドテク業界は苦境に立たされる形勢となりました。
アドテク(アドテクノロジー)とは、インターネット広告において広告効果を向上させるためのさまざまな技術の総称で「広告テクノロジー」「アドテック」とも呼ばれます。
ネット広告におけるアドテクの発展により、広告主が狙いたい属性に合致するターゲットユーザーに対し、リアルタイムに広告枠の入札が行えるようになりました。そしてオンライン広告主やマーケットリサーチャーは、ユーザーの行動の追跡からターゲットの選定、広告効果の分析までにおいて、およそ四半世紀にわたりサードパーティCookieのデータをよりどころとしてきたのです。
サードパーティCookie廃止の影響とGoogleの見解
米Googleは自社の決定でありながら、また、他のブラウザの前例からも、サードパーティCookieを廃止することはユーザーとWebエコシステムの両方に悪影響を及ぼすという見解を示しています。
そのため、他のブラウザやサイト運営者などの第三者からのフィードバックを積極的に求めています。
ユーザーについては、フィンガープリンティングによるユーザー照合が奨励され、Cookieとは異なりユーザー側では制御不可能である点でプライバシーが損なわれるおそれがあると指摘しています。
Webエコシステムについては、代替案無しでサードパーティCookieを廃止することは広告事業主の主要な資金調達手段を大幅に減少させる(米Googleの2019年8月の発表では広告事業主の資金は平均52%減)ことになると懸念しています。
その影響としてユーザーにとってアクセスしにくいコンテンツが生まれ、Webの将来が活気を欠くものになるだろうとも指摘しています。
出典:Building a more private web(CHROME)
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今後はファーストパーティCookieの活用に注目が集まる
GoogleがChromeにおけるサードパーティーCookieのサポートを廃止することは、コンテンツマーケティングにどのような影響があるのでしょうか。前述の通り、米Googleはユーザーのプライバシーの強化と広告サポートWebサイトのビジネスモデルの両立を目指す考えです。
2020年2月からはChromeにおいて、特に明記のない限りすべてのCookieをデフォルトでファーストパーティとして扱うことにより、安全でないクロスサイトトラッキング(複数のWebサイト間を横断してユーザー行動を追跡・計測すること)を制限することとしました。これによってサードパーティーCookieがより安全になり、ユーザーにはより正確なブラウザCookieコントロールが提供されることを見込んでいます。
なお、自社メディアを持つ企業が取得するファーストパーティCookieのデータについては先述の個人情報保護規制の対象になりません。
広告業界ではすでにこの「ファーストパーティ・データ」、ひいては自社メディア構築によって顧客情報を収集することの重要性が改めて注目されているようです。
今後は特に次のような動向が見られるでしょう。
① デジタル広告においてコンテンツ連動型広告が盛り上がる
② デジタル広告分野をコンテンツマーケティングが支配するようになる
③ ファーストパーティ・データがより重要になる
④ 広告会社はデジタル広告における丈夫な足場の再確認をすることになる
出典:Building a more private web: A path towards making third party cookies obsolete(Chromium Blog)
関連記事:エコーチェンバーによるコンテンツの偏りに注意。検索ファーストから、ユーザーファーストの考えが重要
まとめ
近年の世界的な個人情報保護規制の強化やユーザーの安全性確保の流れを受け、Googleは2022年までにサードパーティーCookieのサポートを段階的に廃止することを発表しました。
Google自身も主に広告によって収益を得ていますが、顧客データの主な収集手段としてはCookie以外を利用しているため、自身によるこの決定に影響を受けないといわれています。
透明性の実現と独占禁止の観点からも、Googleは利害関係者への対応を慎重に進めているようです。
2年という猶予期間内で最適な方法を探ることが期待されます。
今後のデジタル広告業界では「ファーストパーティ・データ」が重視され、広告主は「ユーザーと広告主の双方にとって本当に有益なコンテンツ」を目指す流れとなり、コンテンツマーケティングが台頭すると見られています。
Googleの今回の決定は、現在のデジタル広告のスタンスを根本から見直すと同時にコンテンツ制作の原点に立ち返るきっかけになるのではないでしょうか。
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