【#成功のバトン】社会課題の解決を目指す「LIFULL(ライフル)」は、オウンドメディア「LIFULL STORIES」で企業ブランディング向上を成功させている
最終更新日:2025/10/16

【この記事の要約】
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営する、株式会社LIFULLのブランディング戦略に関するインタビュー記事です。
同社は、単なる物件情報サイトではなく、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージの下、人々が抱える社会課題の解決を目指す企業としてのブランドを確立しようとしています。空き家問題や介護など、事業領域を広げる中で、一貫したブランドイメージを社内外に浸透させるための苦労や、その過程で生まれた「しなやかで、強い」ブランドの思想が語られています。企業の成長と共に、ブランドをいかに再定義し、進化させていくかという、実践的な学びが得られる事例です。
【よくある質問と回答】
Q1. LIFULLはなぜオウンドメディア「LIFULL STORIES」を立ち上げたのですか?
A1. 2017年に「ネクスト」から「LIFULL」へ社名変更した際のリブランディング戦略の一環です。社名は認知されても「何の会社か分からない」という課題を解決するため、「あらゆるLIFEを、FULLに。」という企業理念を社会に伝え、LIFULLという会社の存在意義を知ってもらうことを目的として立ち上げられました。
Q2. 「LIFULL STORIES」の運営において、どのような目標(KPI)を重視していますか?
A2. 立ち上げ当初は、LIFULLの社名と事業(LIFULL HOME'S)を両方知っている人の割合である「確実認知」をKPIとしていました。しかし、現在はより広い認知度拡大を目指し、「広告流入以外のセッション数」を重視しています。これは、過去のデータ分析からセッション数と企業認知度に相関関係が見られたためです。
Q3. オウンドメディアのコンテンツは、自社事業に直結する内容であるべきですか?
A3. 必ずしもそうではありません。「LIFULL STORIES」では、「しなきゃ、なんてない。」というコンセプトに基づき、読者の価値観を広げるような人物インタビューなどを中心に発信しており、直接的な事業内容の紹介はしていません。ただし、最近では「地方創生」や「住まい」といった自社事業とゆるやかに関連するテーマも扱うことで、コンテンツの幅を広げています。
【ここから本文】
3大住宅・不動産ポータルサイトの一つである「LIFULL HOME’S(旧HOME’S)」を運営しているのが、株式会社LIFULL(ライフル)です。
前身である株式会社ネクストで住宅・不動産ポータルサイトから事業をスタートした同社は、地方創生のための空き家情報のプラットフォームや高齢者向け介護施設のポータルサイト、「花の定期便(サブスクリプション)」のサービスなど、次々に新規事業を展開し、2017年にはネクストからLIFULLへと社名変更を行いました。
「LIFULL」とは、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージに由来しています。
同社では、自分らしい人生へ踏み出す人を応援する「LIFULL STORIES」、LIFULLのデザインポートフォリオサイト「LIFULL DESIGN」、LIFULLに関するさまざまな情報を発信するLIFULL公式noteなど、LIFULLという企業ブランディングにつながるメディアを運営しています。
今回は、「LIFULL STORIES」を運営するクリエイティブ本部 ブランドユニットの畠山様と田中様に、オウンドメディアを企業ブランディングに活用する具体的な手法や、コンテンツづくりのベースとなる考え方などについて伺いました。
- Profile
- 畠山 大樹さん
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株式会社LIFULL クリエイティブ本部 ブランドユニット 統合コミュニケーショングループ 兼 未来デザイン推進ユニット
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- Profile
- 田中 めぐみさん
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株式会社LIFULL クリエイティブ本部 ブランドユニット コンテンツスタジオグループ
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1.社名変更に伴うリブランディングの一環として「LIFULL STORIES 」を立ち上げ
オウンドメディア:LIFULL STORIES

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編集部
ライフル
畠山さん
当社は、すでに「HOME'S」という住宅情報サービスのほか、いくつかのサービスをさまざまな名称で提供していたのですが、これらを統合し、「LIFULL」としてリブランディングしようということで、当時、大々的にCMなども打ちました。
ある程度の社名認知度は獲得したものの、一定ラインに到達してからは伸び悩み始めました。詳細を分析してみると「結局、LIFULLって何の会社だかわからない」といった消費者からの声が多いことに気が付きました。さらに認知度を高めるには、単に社名・サービス名を知ってもらうだけでは限界があるという結論になりました。
そこで、LIFULLが社会に対してどのように価値提供できるのか、当社の存在意義をしっかりと議論した上でコミュニケーションしていこうということになったんです。
なので、CMのマスメディアでLIFULLを知ってもらい、どんな会社なのかもっと知りたいと思ってもらえたユーザーの受け皿として「LIFULL STORIES」を立ち上げました。
2.「あらゆるLIFEを、FULLに。」を実現するための「しなきゃ、なんてない。」というメディアコンセプト

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編集部
ライフル
田中さん
「無限の可能性がある」といっても、私たちは知らず知らずのうちに世の中の既成概念などから「やってはいけない」「できない」という思い込みで判断してしまうことがあると思うんです。たとえば、女性だったら「結婚したら仕事をセーブしないといけない」というような。そういった思い込みを取り払って0ベースで考えたら、本当に自分のやりたいことに気付くことができる。「しなきゃ、なんてない。」という言葉が後押しになったら良いなと思っています。
3.幅を広げつつ、事業にもゆるく関連するようなテーマ選びへと変化

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編集部
ライフル
畠山さん
途中から、体制が変わったこともありますが、必ずしもタレントばかりではなく、もう少し身近な方、たとえばインフルエンサーなど、アマチュアで影響力の大きい方も光を当てていくようにしました。かつ、当社のサービスである「地方創生」や「住まい」などに関連の深い方も紹介していくようにシフト。2019年5月以降ぐらいからです。
ただ、あまり事業に寄せ過ぎると、もともとメディアが目指していた「あらゆる生き方の可能性」が打ち出せなくなってしまいます。たとえば「LIFULL HOME’S」で扱う「家」なら、「住まい」でもあり「家族」とも密接に関わるものです。すると「家族」がテーマに加わり、たとえば、選択的夫婦別氏制度や養子縁組なども範疇に入ってきます。なので、幅を広げつつ事業にもゆるく関連するようなテーマ選びへと変わっていきました。
4.「量より質」だが、まずは「量」の確保が必要

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編集部
ライフル
畠山さん
※確実認知…社名もLIFULLのサービスも両方を知っている認知のこと。
ただ、質というのは急激に上がるものではありません。そこがなかなか難しいのと、戦略的な観点でみると、ある程度、認知のボリュームがないと、質にも貢献しないんです。だから、認知度を高めていかないとファネル的にも次のフェーズに進まない。
そこで現在は、「社名だけは知っている」という層も含めてまず認知度の拡大が目的になってきています。
それに伴い、「LIFULL STORIES」も、「メディアとしてどうあるべきか?」という根幹の部分が変化してきています。また、当初の指標は、「PV」の目標値を設定していましたが、現在は「広告流入以外のセッション数」を見ています。オーガニックとリファラルの総数を見ています。

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編集部
ライフル
畠山さん

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編集部
ライフル
畠山さん
「広告流入以外のセッション数」が上昇した翌月には、3つの属性の割合も向上しやすいという傾向が見られました。そこでまず、この3つの指標は認知と相関性があることがわかりました。
「LIFULL STORIES」の記事にはいろいろなテーマがありますが、メディアの特性として、たとえばインタビュー記事にランディングして読み、その後、続けてほかの記事もたくさん読むかといえば、そういうものでもないんです。ただ、読んだ記事が面白ければ、再訪もあり得る。そこで、PVよりもセッションの方が適しているのではないかと考えたんです。

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編集部
ライフル
畠山さん
5.運営メンバー全員が、認知から逆算したセッション数を指標として追う


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編集部
ライフル
畠山さん

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編集部
ライフル
畠山さん
ちなみに、田中はオーガニックでのセッション数を追っています。コンテンツの質や更新頻度を上げたり、過去記事のリライトを行ったりしています。
基本的に4名とも共通で認知から逆算したセッション数を追っていて、さらにそれぞれの指標を追っています。僕はLIFULLという企業ブランド認知もSTORESというメディア自体の認知もそれぞれ指標として追っています。

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編集部
ライフル
畠山さん
6.記事の目的によって、内容だけでなく「発注先」も分けて運用

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編集部
ライフル
田中さん

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編集部
ライフル
田中さん
ライフル
畠山さん
他社さんのメディアでも、記事によって「SEO用」と「クオリティを高める用」で記事を分けているかと思うのですが、うちもそんな感じで、用途によって記事を発注する取引先を分けています。1社だけだと取材が滞ってしまうこともあるので、リスク分散という意味でも複数社を併用するスタイルを取っています。
また、過去記事の見直しということで、新規の記事がSEOで伸びるかどうかというのは、未来のことだからわかりませんが、過去の記事で流入が上がっていれば、リライトすることでさらに上がる可能性が高い。「塵も積もれば山となる」の原理で、そこにゲタを履かせて上げていく手法も実践していこうということを始めました。比較的、最近のことです。

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編集部
ライフル
田中さん
7.記事テーマは、「人生の節目」×「世の中の関心事」でピックアップした中から選ぶ

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編集部
ライフル
田中さん

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編集部
ライフル
田中さん
ライフル
畠山さん
また、クリエイティブ本部の社内チャットツール経由で、メンバーからの推薦もあったりします。社員の感度が意外と高く、推薦経由でインタビュー記事を掲載後で、ほかのメディアで取り上げられるようになった人も多いんですよ。みんなでアンテナを張っている感じです。社内告知にも力を入れ始めてから、全社的に情報提供をしてくれる人が増えた印象ですね。
8.メディアの目的はあくまでも「企業ブランド認知向上」なので、コンバージョンポイントは設けない


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編集部
ライフル
畠山さん
もちろん、オウンドメディアとしてのROIも見ており、その最適な配分は、中長期的な戦略と共に、仮説を立て、検証中です。
ただ、事業に関連度の高い記事には、各事業のWebサイトへの導線はバナーを張っています。
また、当社の代表を始め、各サービスを推進しているメンバーにもメディアに出てもらう取り組みを行っていて、「しなきゃ、なんてない。」をテーマに事業の立ち上げについて語ってもらうインタビュー記事を掲載しています。
サービス認知として「LIFULL HOME'S」が先行している中、「LIFULL STORIES」ユーザーでは、ほかのサービスも認知している人が多い傾向があります。
9.メディアとして「質」と「量」を担保するために実践している工夫とは?

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編集部
ライフル
田中さん

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編集部
ライフル
田中さん
ライフル
畠山さん
ライフル
田中さん
また、できるだけ、その人の情報発信が一方的なものではなく、ユーザーとのつながりを大切にしている方、主張と行動が伴っている方にインタビューをお願いしています。これは、記事の質を上げるために気を付けていることです。

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編集部
ライフル
田中さん
ライフル
畠山さん
10.LIFULLの企業ブランディングの実現+社会課題に貢献できるメディアに

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編集部
ライフル
畠山さん
もう一つは、企業ブランディング活動のハブとして、「LIFULL STORIES」に出てくださった方と何か新しい取り組みを継続的に行うことをしてみたいと思っています。たとえば、セミナー講師になっていただくなど。そうなれば、「LIFULL STORIES」にまた別の役割が生まれることになるでしょう。

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編集部
ライフル
畠山さん
また、当社の事業展開についても、まだ一部しか見せられていないと思うので、すべての事業について理解を深めてもらえるように、たとえば、社員のインタビューを増やしたり、サービス群を見せられるようなコンテンツなどを掲載していきたいと考えています。
ライフル
田中さん
ライフル
畠山さん

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編集部
【English summary】
This article is an interview about the branding strategy of LIFULL Co., Ltd., the company that operates the real estate and housing information site "LIFULL HOME'S."
The company is striving to establish its brand not just as a property information site, but as a company that aims to solve social issues people face, under the corporate message "Make every LIFE FULL." The article discusses the struggles of instilling a consistent brand image internally and externally while expanding business areas into issues like vacant homes and nursing care, and the philosophy of a "flexible yet strong" brand that emerged from the process. It is a case study that offers practical lessons on how to redefine and evolve a brand in line with corporate growth.





