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人工知能(A.I)を駆使したWebマーケティングの最新実用例を公開! Rakuten Marketing JP「“Empowers Marketers” Vol.2 」レポート記事 第一回

記事公開日:2018/07/20
最終更新日:2023/11/21
人工知能(A.I)を駆使したWebマーケティングの最新実用例を公開! Rakuten Marketing JP「“Empowers Marketers” Vol.2 」レポート記事 第一回

2018年7月18日(水)、楽天マーケティングジャパンが主催するワークショップ「“Empowers Marketers” Vol.2 」がTHE SODOH HIGASHIYAMA KYOTOで行われ、A.Iを駆使したWebマーケティングの最新情報や実用例が公開された。

特に、リスティング広告を自動的に最適化するサービス「FINCH」やコンバージョン率の最適化を図るソリューション「Sentient Ascend」の実用例が語られるなど、Webマーケターにとって刺激的な内容になった。

石渕久生教授/Risto Miikkulainen氏

エムタメ!では、このワークショップの模様を3回に分けてお届けする。

初回は、南方科技大学 計算機科学工学科の石渕久生教授による特別講演A「人工知能、その最新学術研究とは?」と、Sentient社のCTO・Risto Miikkulainen氏による特別講演B「進化論的アルゴリズムが、なぜWebマーケティングに有用なのか」という、Webマーケティングを知る上で重要な基礎知識についての講演である。

1.特別講義A「人工知能、その最新学術研究とは?」

中国の深セン市にある南方科技大学で教鞭を取り、A.I関連でもっとも重要な国際会議「GECCO」などで計算知能分野の賞を多数受賞している石渕久生氏。

石渕久生氏

▲南方科技大学 計算機科学工学科で教授を務める石渕久生氏

石渕氏によると、現在、一般的に語られている「人工知能」とは第3次ブームの人工知能にあたり、かつて1960年代に第1次ブーム、1980年代に第2次ブームが存在したという。

“Empowers Marketers” Vol.2の様子

▲“Empowers Marketers” Vol.2の様子

第1次ブームでは、一部の研究者がコンピュータを利用し始め、さまざまなアイディアが生まれた。例えば、NASAがロケットを月まで飛ばす際に使用した軌道計算などである。そして、そのアイデアが実用化されたのが第2次ブームだ。人間が持つ専門知識を利用したコンピュータシステム「エキスパートシステム」が中心となり、医者や法律家などの専門家の代わりにコンピュータを使用するという動きが生まれた。

その後、人工知能ブームは息を潜めたが、2010年代に入ると大手IT企業が膨大な計算機資源を持ち、コンピュータでそれらのデータを扱えるようになり、現在の第3次ブームに至った。

2.現在の人工知能の大半は「エキスパートシステム」で動いている

“人工知能の中身、エキスパートシステムについて

▲人工知能の中身、エキスパートシステムについて

エキスパートシステムについて、石渕氏はこう語る。

「エキスパートシステムは「もし〇〇ならば〇〇である」というIf-Thenルールをコンピュータに膨大に記憶させておくことで、条件に合う結論を導き出すシステムです。文字認識であれば、手書き文字のいくつの事例を登録し、コンピュータによって一般化させておけば、それに近しい文字を導き出すことができます。現在の多くの人工知能はこのエキスパートシステムで動いています。」

しかし、エキスパートシステムには課題もあるという。

「今はまさにビックデータの時代。1/10~1/100秒単位で変動する全てのデータを記憶し、検索するのは簡単ではありません。また、過去のデータには不適切なものも存在し、それを一つずつ削除する作業は人間の手では補いきれません。」

これらの問題を解決するためには人間ではなく人工知能自らが学習し、ルールを生成する必要がある。そこで開発されたのが、人間の脳細胞(ニューロン)間の情報処理を模した「ニューラルネットワーク」で、その学習手法の一つが「ディープラーニング」だ。

3.ディープラーニングの実用例

文字認識の画像を人工知能(ニューラルネットワーク)に見せると信号が伝わり判断する

▲文字認識の画像を人工知能(ニューラルネットワーク)に見せると信号が伝わり判断する

中国の深セン市ではディープラーニングの技術が実用されている。その一つが自動運転の公共バスで、世界初の試みだそうだ。そして、道路横断者の名前と顔を割り出すシステムも設置されており、これもディープラーニングの技術により生まれた。

ディープラーニングを代表とする機械学習には、最終的な答えから途中の道筋の良し悪しを得る「強化学習」や生物のように交配を重ね優秀なものだけを継承していく「進化学習」があり、それぞれで人工知能として最適化を進めている。

4.人工知能の将来について

人工知能はこれからどう変わっていくのか?今後の展開について石渕氏は語る。

「問題ごとに最適な人工知能に作って、利用しようというのが今後の動きです。さらにその次の展開としては、自分で進化する人工知能が出てくる時代が来るかもしれません。」

人工知能はどう進化し、我々の生活に生かされるのか。今まさに、人工知能は新たな局面を迎えているのかもしれない。その動向に目が離せない。

5.特別講演B「進化論的アルゴリズムが、なぜWebマーケティングに有用なのか」

次の登壇者であるRisto Miikkulainen氏(以下、リスト氏)は、これまでニューラルネットワークと進化的計算の学術研究を行ってきた。そして、3年前に大学の仕事を休み、Sentient社に入社。リスト氏が目指しているのは「これまで研究してきた技術を持って世界を変えること」だそうだ。

今回の講演では、人工知能を駆使したデジタルマーケティングの有効性をSentient社の「Ascend」のテクノロジーとともに語られた。

Sentient社CTOのRisto Miikkulainen氏

▲Sentient社CTOのRisto Miikkulainen氏

6.Sentient社のテクノロジーとは

Sentient社のテクノロジーについてリスト氏はこのように語る。

「今日、汎用されている人工知能の大半が音声認識、画像認識、言語理解といったすでに認知されているものを予測するという点に焦点を当てているのに対して、Sentient社の人工知能は新しいソリューションを作り出すことができます。例えば、Webサイトデザインや新しい広告、商品デザインなどです。」

コンピュータで創造性を生み出す難しさを山登りに例えるリスト氏

▲コンピュータで創造性を生み出す難しさを山登りに例えるリスト氏

人工知能で新しいソリューションを作り出すプロセスは山登りのプロセスと同じだとリスト氏は話す。

「山登りに例えるなら、既存の登板ルートから少しずつ変化を加えて、それを繰り返すことで頂点への最適な登坂ルートを探し出します。しかし、実際は山や丘など数多くの障害物が存在し、ベストソリューションを探すのは困難です。またソリューションの数が多すぎて、全ての可能性を試しきれない。ましてや、ランドスケープが3次元ではなく何百といった他次元であることも考えられます。」

通訳を交えてエキサイティングな話が展開

▲通訳を交えてエキサイティングな話が展開

その課題を解決するのがSentient社による進化計算のテクノロジーだ。進化計算を用いれば、10億次元を持った課題も解決可能で、例えばパフォーマンスとコストの両方を最適化したいなど、複数地点の最適化にも使用できる。

7.進化計算は生物の進化から模された

パフォーマンスの良いものを集中させて、6%以上ものコンバージョンリフトを得る

▲パフォーマンスの良いものを集中させて、6%以上ものコンバージョンリフトを得る

進化計算で導かれる事例を「最適なWebデザインを見つけるという探索行為」で示された。

「さまざまなWebデザインの中から、どのデザインを見せればユーザーが閲覧者から購入者に変わるのか、そういった視点を持って、それぞれのソリューションのパフォーマンスを見ていきます。そして、それぞれのパフォーマンスを評価し、悪いものは捨て、良いものは集団の中に残す。次の段階では掛け合わせや突然変異といった進化オペレーターを使って、前段で「良い」と評価されたものたちから新しい答えを生成します。つまり、生物の進化から得た考え方です。

この手段を用いれば、とんでもない驚くべきソリューションを発見することもありえるのだとか。まさに、クリエイティブな手段と言える。

この手段を実用化したものがSentient社の「Ascend」だ。

8.ABUV Mediaにおける「Ascend」の実用例

実際に「Ascend」を利用した「ABUV Media」のサイトが示された。このサイトで「Ascend」が目指すのは教育プログラムへのサインアップ数の増加だ。

「当社では左側にあるサインアップ用のヴィジェットのデザイン(テキストや色、レイアウトなど)をAscendを使用して最適化しました。ヴィジェット以外のデザインは変更していません。」

既存のデザイン(左)とAscendが生成したベストデザイン(右)

▲既存のデザイン(左)とAscendが生成したベストデザイン(右)

結論としては、Ascendが生成したデザインは既存のデザインよりも30%以上パフォーマンスが良く、ベストデザインに関しては45%もの改善があった。

「ここで注目していただきたいのは、この検証ではサーチスペースに38通りのデザインがあったのですが、実際にAscendの検証ではその中の一部しかテストしていないということです。つまり、進化計算を用いると、テストも良いものを見つけ出すことができるのです。」

そして、リスト氏は最後にこう付け加えた。

「進化計算は人工知能の領域においては新しいディープラーニングです。この進化計算には難しい問題を解決できるポテンシャルがあり、まさに画期的な応用を可能にするテクノロジーです。例えば、ヘルスケア領域であればより良い治療法を導き出したり、農業の分野であれば野菜や穀物がより大きく育つための手段を発見したり、さまざまな分野での応用が見込めます。当社はデジタルマーケティング、広告、メディアといった分野にこの画期的なテクノロジーを持って挑みたいと考えています。」

デジタルマーケティングにおける最適化はWebマーケターにとっては重要な鍵。「Ascend」の技術を有効に活用してはいかがだろうか?

さて、次回はFINCHのCEO、Bjorn Espenes氏による「人工知能がもたらす、Webマーケティングの今後の可能性とは」の講演の様子をお伝えする。

関連リンク

楽天マーケティングジャパン:http://jp.linkshare.com/

Sentient:http://jp.linkshare.com/performance/cro/

FINCH:http://jp.linkshare.com/performance/search/

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