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「中国EC最大手アリババ「独身の日」最新データ&トレンド事例から学ぶ越境EC必勝法と今からやるべき2020年W11売上アップ術」レポート 第二回 「2019年天猫(Tmall) W11最新情報・事例のご紹介と中国越境ECの必勝法」

記事公開日:2020/01/08
最終更新日:2023/11/17
「中国EC最大手アリババ「独身の日」最新データ&トレンド事例から学ぶ越境EC必勝法と今からやるべき2020年W11売上アップ術」レポート 第二回 「2019年天猫(Tmall) W11最新情報・事例のご紹介と中国越境ECの必勝法」

2019年11月11日(月)、中国でEC最大手のアリババグループが2009年に開始した「独身の日セール(W11)」は、11年目を迎え、開始から1分で取扱高が65億元(約1,000億円)を、16時間半で昨年の流通総額で過去最高だった2,135億元を突破し、最終的に2,684億元(約4.16兆円)を記録し、約26%の伸びとなりました。

同セールの輸入額で首位の日本からは、美容器具のヤーマン、紙おむつのムーニーなどがブランドベスト10入りしました。国内での販売が伸び悩むなか、小売最大手のイオンの取扱高の半年分をわずか1日で記録した同セールの影響力は無視できません。

この独身の日セールをテーマとするセミナーが2019年11月27日(水)、ソーシャルテクノロジーによるマーケティング支援事業を行うアライドアーキテクツ株式会社の主催で開催されました。

「エムタメ!」では、当日の様子を数回にわたりレポートしていきます。第二回は、日本と中国でネット通販事業に特化したコンサルティング・運営支援を手がける株式会社エフカフェの取締役 高岡 正人氏が登壇した「2019年天猫(Tmall) W11最新情報・事例のご紹介と中国越境ECの必勝法」の模様をお届けします。

※本コラムでは、1元=15.5円で計算しています。

「中国EC最大手アリババ「独身の日」最新データ&トレンド事例から学ぶ越境EC必勝法と今からやるべき2020年W11売上アップ術」レポート

第一回「ここでしか聞けない!W11を支えたアリババクラウドから解説する独身の日(W11)最速レポート」

■第二回「2019年天猫(Tmall) W11最新情報・事例のご紹介と中国越境ECの必勝法」【※本記事】

第三回「2019年W11最新プロモーション事例の解説と今から始める2020年W11に向けた必勝ロードマップ」

メディアにまだ報道されていない中国国内EC 越境ECの事実

高岡 正人氏

高岡 正人氏(株式会社エフカフェ 取締役)

冒頭で、株式会社エフカフェについての紹介がなされました。同社は、2003年から日本のEC支援を、2010年からは中国のEC支援も行っています。
取締役を務める高岡氏は、ここ10年で中国における越境ECが大きく変化しているのを感じており、特にこの1年では1ヵ月単位で大きな変化が起きているといいます。
変化の対象は中国の法律改正や販売手法のトレンドなど多岐にわたり、メディアで取り上げられる頃には、すでに古い情報となり実用的ではなくなっていることも少なくないといい、本セミナーではリアルな話をしたいと述べました。

同社の実績紹介につづき、まだメディアに報道されていない中国国内EC・越境ECに関する事実を中心に話が展開されました。

中国ではネット通販の流通総額が急増中

メディアにまだ報道されていない事実

画像引用元:当日の登壇資料より引用

まず、中国向けの越境ECは盛り下がっているというイメージを持つ日本人が多いが、実際には、日本まで行かなくても日本製品が購入できるメリットからネット通販の流通総額は急増しているとの主張がありました。

背景には、中国の法律改正により個人代行による販売に規制がかかったことがあり、それまでは、日本へ来てドラッグストアなどで安く大量に購入した商品を中国で店舗やネットで販売していた代行業者が2018年末頃から激減し、現在はほぼ0になっていることがあるといいます。
いわゆる「爆買い」には、こうした個人代行業者による購入も含まれており、個人代行業が衰退した結果、インバウンドによる日本企業の売り上げも落ち込んでいるそうです。

「天猫(Tmall)」での2019年のW112019年における独身の日セールの解説を前に、中国最大のBtoC ECプラットフォーム「天猫(Tmall)」の概要が紹介されました。天猫は中国のBtoC ECプラットフォーム別シェアで52.5%を占め、登録会員数は7億人以上、1日当たりの訪問数が8,000万人以上、掲載点数が10億点以上、出展店舗数が5万店舗以上、日系企業が140社以上だそうです。

2019年の独身の日セールでは、開始から2時間で全売上の半分を達成しましたが、この理由として、事前にカートに入れておいた商品を購入したためと、時間限定での高割引率セールやクーポンの配布を実施したためであると解説しました。
また、同セール終了の1~2時間前でも売上が急角度で伸びており、これは、これまでの購入総額に応じたクーポンを発行したためだといいます。

越境ECのおもな購買層は90年代生まれの若い世代

購買層を見ていくと、58%が90年代生まれの若い世代であり、海外旅行を好み、グローバルな視点から海外のコスメ、ベビー用品、健康食品、アパレルなどを欲しがっているという特徴があるといいます。
つまり、「日本の商品が欲しい」のではなく「日本の商品を含めた海外の商品が欲しい」と考えているため、越境ECを開始する際は、競合は国内企業ではなく世界のグローバル企業である点を意識しなくてはならないと高岡氏は忠告しました。

また、今年、同セールで1億元以上売り上げた企業299社のうち、日本企業は21社と昨年の約2倍で、化粧品、美容用品、家電において日本企業のブランケットが高まり、マーケットシェアが拡大しているといいます。具体的な商品では、ユニクロのヒートテック タートルネックT長袖、P&GのSK-IIピテラ エッセンス スターターキットなどが好調だといいます。

化粧品では、昨年は単品商品が売れていたが、今年はキットタイプがよく売れており、ブランド認知の次の段階としてお得感のあるキットが売れる傾向があるといい、これはメーカー側にとっても顧客単価増のチャンスだといいます。

中国でのインフルエンサー、KOLの動き

独身の日セールでは、インフルエンサーやKOLも活躍したといいます。中国では、インフルエンサーやKOL(Key Opinion Leader/キーオピニオンリーダー…販売促進に大きな影響力を持つ専門家)の存在が大きく、トップインフルエンサーは1日で27億元以上も売り上げるといいます。販売方法としては生放送が多く、かつては著名な専門家が多くを占めていたKOLも企業の担当者レベルにまで一般化が進んでいるといいます。

クーポンや割引で利益は出にくい独身の日セール

独身の日セールの終了前1~2時間では、それまでの購入金額に応じたクーポンが、店舗ではなくアリババグループから発行され、それを使った買い物で売り上げに急激な伸びが生じたそうです。同セールで天猫が売り上げた2,684億元のうち、約1/4がクーポンだったといい、中国はまだまだ値段訴求が大きい市場だといいます。独身の日セールで利益を出している企業はほとんどなく、企業によっては同セールへの参加を見合わせるところも出ているといいます。

これをふまえ、独身の日セールへの出店目的は「販売実績作りを行ってトレンド入りするため」と割り切り、12月のクリスマスキャンペーンなど、その後のキャンペーンへの参加枠を確保したり、優遇を受けて参加できる有利な状態を作るという戦略が必要になってくるのだそうです。

値段以外の訴求方法としては、生放送を使ったコンテンツ訴求があるといい、たとえば同セールの2週間前から毎日3時間の生放送を15日間続けることで、検索からの流入(SEO)、生放送からのカテゴリー集客が見込めるといいます。エフカフェの顧客事例では、化粧品の使用前後の変化を放映したことが紹介されました。

組織規模と目的に合った越境ECを

高岡 正人氏

高岡 正人氏(株式会社エフカフェ 取締役)

日本からの越境EC 出展するならどの方法?

越境EC化率

画像引用元:当日の登壇資料より引用

中国全体の越境比率をみると、天猫国際(Tmallグローバル)が70%と圧倒的で、次点の京東全球購(JDワールドワイド)が30%以下であることを考えると天猫国際の一人勝ちともいえる状況だといいます。
各モールの特色として、天猫国際はコスメや美容など女性向け商品が強く、京東全球購はガジェット系や髭剃りといった男性向け商品が強いといった傾向の違いはあるそうですが、この違いをふまえても、天猫国際一択だろうと高岡氏は述べました。

中国で越境ECが盛り上がる背景

中国で越境ECが盛り上がる背景には「国内商品への不信感」のほか、これまで中国国内では日本の商品があまり流通していなかったことがあるといいます。

また、インバウンドの需要が減っていくなかで、「待ち」の販売スタイルであるインバウンドから、積極的に顧客接点を作る「攻め」の販売スタイルである越境ECへとシフトしてきているといいます。

さらに、日本の商品にはお得感があって支持されている点、巨大なマーケットがすぐ隣にあるという事実が大きいと強調しました。エフカフェに寄せられる越境EC関連の相談のなかにはインドやASEANをターゲットとした内容もあるが、それらは中国の数百分の1だといいます。

中国人の越境EC利用率は以下のグラフの通り。「紙オムツは日本から、粉ミルクはオーストラリアから」というように品目によって異なる購入先を選ぶ消費者も多く、海外から買い物をすることが一般的になっているそうです。

越境ECの利用化率

画像引用元:当日の登壇資料より引用

越境ECの5つの出店方法とメリット・デメリット

ここで、日本企業(個人)が中国向けの越境ECを展開する方法として5つが紹介されました。

①中国本土の現地ECに出店する

越境ECの出店方法はいくつかあるが、天猫など中国現地のモールに出店する場合、中国法人を設立する必要があったり中国での商標登録が求められるなど、ハードルは高いといいます。

  • 中国法人を設立
  • 中国商標が必要
  • 中国国内銀行で元決済
  • BtoBで通関し、倉庫が必要
  • 税金は中国で支払い
  • 中国の販売許可が必要

→中国本土に法人を設立して本格的に越境ECを行いたい企業向け

②越境ECに自社出店する

一方、天猫国際などにでは中国法人設立の必要がないものの、出店にあたり天猫国際側で行われる審査が厳しいといいます。

  • 日本法人でOK
  • 日本、香港の英語表記商標が必要
  • 日本の銀行で円決済
  • 中国へ個配、保税区
  • 日本の販売許可でOK

→中国法人を設立せず本格的に越境ECを行いたい企業向け

③独自のECサイトを立ち上げて中国向けにプロモーションを行う

三つ目の方法が、独自に越境EC向けのWebサイトを立ち上げて運営し、プロモーションを行うという方法で、たとえばインバウンドで売り上げがあるブランドなどでは、来店時のチラシ配布などで告知し、ECサイトへ誘導してリピート購入を狙う方法があるといいます。
→中国法人を設立せずライトに越境ECを行いたい企業向け

④業務委託販売を活用する

四つ目の方法が、中国向けに販売を行う業務委託販売業者(Tmallグローバル業務委託、JDワールドワイド業務委託など)と契約して商品を卸す方法だといいます。
→マーケティング調査的に中国での販売を行いたい企業向け

⑤中国本土のネットオークションサイトに出品する

最後の方法は個人規模で中国向けの越境ECを行いたい場合で、全日空海淘、JDワールドワイド業務委託といった越境ECを手がける業者に商品を卸販売するか、淘宝網(タオバオ)といった現地のネットオークションサイトに出品する方法だといいます。
ただ、同サイトの出品には偽物が多く、食品や医薬品などは売れにくい傾向があるといいます。
→中国に法人を設立せず、越境ECを低コストで行いたい個人向け

エフカフェ運営サイト

画像引用元:当日の登壇資料より引用

天猫での収益化には、数年スパンでの事業立案が必要

日本で事業の黒字化を目指す際、単月黒字の目安は2年ほどであるのに対し、近年の中国向け越境ECではプロモーションコストが50~70%と大きな負担となりがちなため、3~5年という長めのスパンで収益化を考えた方が良く、この背景には、天猫や天猫国際で売上予算が小さいと退店させられるという事情があるといいます。

最後に高岡氏は、中国越境ECは参入障壁が高いが、それだけにマーケットシェアを取れればその先にブルーオーシャンが広がっているケースが多く、取り組む価値は高いと述べ、「何のために中国越境ECに取り組むのか」という目的を明確にしたうえで、どの方法で出店し、どんな戦略でプロモーションを行うのかを考えて欲しいとまとめ、セッションは幕を閉じました。

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