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「Inside Sales Conference 2019」レポート 第三回 セッション「成長する組織とは?人を活かし事業を育てるインサイドセールス現場のリアル」

記事公開日:2019/09/11
「Inside Sales Conference 2019」レポート 第三回 セッション「成長する組織とは?人を活かし事業を育てるインサイドセールス現場のリアル」

欧米では営業職の40%が専業でインサイドセールスに従事しているといわれています。日本でも近年、インサイドセールス部門を立ち上げる企業が増えてきており、いずれは日本でも当たり前の営業手法になっていくと考えられます。

人材領域を中心にインターネットサービスを展開している株式会社ビズリーチは、インサイドセールスのイベント「Inside Sales Conference」を主催しています。2018年12月に開催された第一回につづき、2019年6月5日(水)に二回目となる「Inside Sales Conference 2019」が虎ノ門ヒルズにおいて開催されました。
エムタメ!では、三回にわたり、当日のセッション内容をレポートしていきます。

第三回は、セッション「成長する組織とは?人を活かし事業を育てるインサイドセールス現場のリアル」の模様をお届けいたします。

 

「Inside Sales Conference 2019」レポート

1.登壇者の自己紹介

左から、米田 光雄氏(株式会社エムエム総研 ビジネストランスフォーメーションDiv. 執行役員)、一方井 辰典氏(Sansan株式会社 セールスディベロップメント部 マネージャー)、長田 典久氏(株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長)、江成 充氏(株式会社LiB リクルーティングアンドエンゲージメント事業部 営業部長)

左から、米田 光雄氏(株式会社エムエム総研 ビジネストランスフォーメーションDiv. 執行役員)、
一方井 辰典氏(Sansan株式会社 セールスディベロップメント部 マネージャー)、
長田 典久氏(株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長)、
江成 充氏(株式会社LiB リクルーティングアンドエンゲージメント事業部 営業部長)

セッションはパネルディスカッション形式で行われました。

モレデーター 株式会社エムエム総研
ビジネストランスフォーメーションDiv. 執行役員 米田 光雄
登壇者 Sansan株式会社
セールスディベロップメント部 マネージャー 一方井 辰典
株式会社ビズリーチ
インサイドセールス部 部長 長田 典久
株式会社LiB
リクルーティングアンドエンゲージメント事業部 営業部長 江成 充

1-1.ISの人材育成や内製化支援サービスを提供(株式会社エムエム総研)

米田:当社ではBtoBに特化したコールセンターを20年ほど提供しているのですが、そこへ派遣スタッフとして入社し、このときBtoBへのアウトバンド経験をしました。その後、社員になり、BtoBのアウトバンドを中心としたサービスのマネージャーを務め、2017年からは、インサイドセールス(IS)の内製化支援を行う事業部の執行役員を務めています。

この事業のなかで、ISスタッフやマーケターを養成する機関「BtoBマーケティングアカデミー」を立ち上げ、未経験人材を含めて正社員採用を行い、育成までして企業の提供を行っています。

また、個人的に、ISのコミュニティ「インサイドセールスの未来を創ろう“ConnectFesta!”」の発起人兼運営を行い、IS実務に関わる方たちの情報共有などを促進しています。

エムエム総研は20年来、BtoBアウトバンド支援を行っており、これまで数百プロジェクトに携わってきました。法人営業支援自体は30年間行っており、近年はマーケティング支援も手がけています。

IS人材育成では70名を採用・育成・輩出、ISの内製化支援では1年半で30社以上の内製化の支援実績があります。

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画像引用元: 当日の登壇資料より引用

「どうすればISがうまく回っていくだろうか?」「どうしたらIS人材が育ち、もっと生き生きと働けるようになるだろうか?」といった問いに、まだ明確な答えが出ていません。本日は、登壇各位の話を伺いながらヒントを持ち帰りたいと思っております。

1-2.3年前にIS組織を営業組織から独立(Sansan株式会社)

一方井 辰典氏(Sansan株式会社 セールスディベロップメント部 マネージャー)

一方井 辰典氏(Sansan株式会社 セールスディベロップメント部 マネージャー)

一方井:私はもともと、大手インターネット広告代理店に営業職として勤務していました。その後、Sansanへ入社し、営業職としてプレイヤーとマネージャー-の両方を経験しています。3年前にIS組織を営業組織から独立させることになり、その推進を経験しました。
現在は、ISのなかでも地方企業担当と、全体企画の責任者を務めています。

本日は、当社の経験を上の立場から教えるよりも、会場の皆さんのご質問への回答を中心に行っていきたいと考えています。

1-3.IS組織を立ち上げて約2年(株式会社ビズリーチ)

長田 典久氏(株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長)

長田 典久氏(株式会社ビズリーチ インサイドセールス部 部長)

長田:営業組織の管理職を8年経験し、うち1年半がISでのマネジメントです。どちらかというと私自身のスペシャリティは、ISに特化したものというより組織のマネジメントや事業をグロースさせることにあると思っています。
どうしたらIS組織がより価値を生み出せるのか、どうしたらISメンバーが生き生きと働き輝けるかといったことに悩みながら走ってきた1年半でした。

会場にお越しの皆様はきっと、ISのきれいな部分だけではなくリアルな話が聞きたいのではないかと思うので、本日はその辺りもどんどんお伝えしていきたいと思っています。

1-4.IS組織を立ち上げて8ヵ月(株式会社LiB)

江成 充氏(株式会社LiB リクルーティングアンドエンゲージメント事業部 営業部長)

江成 充氏(株式会社LiB リクルーティングアンドエンゲージメント事業部 営業部長)

江成:私は、リーマンショック前の人材会社に新卒で入社し、ISの概念がまったくない時代にプレイヤーとして過ごしてきました。その後、AIベンチャーへ転職した際に、IS立ち上げを希望したのですが、衝突して実現できなかったという経緯を持ちます。

2018年にLiBへ入社して営業責任者に就任し、10月にやっと念願のIS組織を立ち上げることができました。
まだ、立ち上げたばかりなので、ご来場の皆様と同じ目線でISについて語れたら良いなと思っています。

2.各社の企業概要とIS概要、取り組み紹介

米田:各社のIS組織の概要や取り組みについて教えてください。

一方井:当社は、名刺管理を事業の柱としているため、ターゲットが業界業態を問わないうえに、全部門が対象となります。法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」と個人向けの名刺アプリ「Eight」の2つのサービスを提供していますが、私が所属するのはSansanの方です。

SansanにおけるISの立ち位置は、スライドの通りです。

Sansan InsideSalesの現状

画像引用元: 当日の登壇資料より引用

プロダクト開発部、営業部、CS部といった並びの中にSD部があり、これがISです。なかには中小企業を担当する「SDR」、大手企業を担当する「ADR」、地方の企業を担当する「RDR」、全体戦略とオペレーション改善を行う「SD企画」の4つのグループがあります。「SD企画」が特徴的な組織で、ナーチャリングの施策を企画したり、ツールで使用する項目を検討したりといったことを担当しています。

SansanのISには8年の歴史があります。スタートは、2011年にテレアポのプレセールス担当とし専任者1名を採用したところです。

Sansan InsideSalesの歴史

画像引用元: 当日の登壇資料より引用

そこから2014年まではフィールドセールス(FS)のなかにISがあり、テレアポの数が取れたメンバーからFSに上がっていくというFSの登竜門としての役割を持っていました。

2016年にISを独立させ、このときに役割もただ商談を創出するだけでなく戦術的な組織へと変化しました。具体的には、マーケやFSと目線を合わせて、生み出す商談をコントロールする調整弁の役割を持たせました。

現在は、加えてマーケティングの要素が加わり、「顧客体験を最大化させる」というミッションも担っています。

長田:ビズリーチは「インターネットの力で、世の中の選択肢と可能性を広げていく」というミッションのもと、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」をはじめ、人材領域を中心としたインターネットサービスを提供して、今年で10周年を迎えます。
社会のなかでこのミッションを果たしていくために、さまざまな事業を立ち上げていくに当たり、ISが後押ししてきたという経緯があります。

現時点でのIS組織の状況はスライドにある通りです。

ビズリーチ社におけるIS部のポジショニングと役割1

画像引用元: 当日の登壇資料より引用

マーケティングチームと協力しながら、ISグループとして、ビズリーチとHRMOS(ハーモス)採用の2つの事業の成長支援を行っています。

当社では、マーケティングファネルに合わせて部署ごとの役割分担を明確に決めているので、マーケティングチームで獲得したリードはISがアプローチし、商談を獲得してFSにパスします。一部、FSが訪問できないエリアのリードに対しては、ISがオンラインセールスでクロージングまでを行います。

ビズリーチ社におけるIS部のポジショニングと役割2

画像引用元: 当日の登壇資料より引用

これに加え、各メンバーがアウトバンドによる商談創出も行っており、割合は、6:4でアウトバンドの方が少ないです。将来的には分業する可能性もあります。

江成:LiBは「『生きる』をもっとポジティブに。」をミッションに掲げ、「Life」と「Business」の両軸で理想の「i=私」でいてもらいたいと、BtoBtoCの「キャリア事業領域」とBtoBの「データプラットフォーム事業領域」の大きく2つの事業を手がけています。

当社がISを立ち上げたのは前者の事業内のリクルーティングアンドエンゲージメント事業部で、人材を採用するだけではなく定着・活躍を見越した採用を提案する「LiBzCAREER」というダイレクトリクルーティングサービスを提供しています。
組織図としては、営業部のなかに営業企画、IS、FSがあります。現在、ISの組織の内訳は、マーケティング接続担当2名、SDR担当2名、ナーチャリング担当2名、アライアンス担当1名となっています。
この中に当社のことをご存じの方はどれぐらいいらっしゃいますか?挙手をお願いします。…やはりまだ少ないですよね。そんな創業5年目の企業なので、当社のことを知ってもらいながらお客様のことも知ることがISの役割になっています。

実は、現在の組織になるまでに一度、IS立ち上げを失敗しています。私が入社する前のことですが、当時、FSのトップ営業マンをISに据えるのがベストだという説に従い、2名のトップ営業マンでISを立ち上げたのですが、うまくいきませんでした。

ISの歴史

画像引用元: 当日の登壇資料より引用

その後、再度立ち上げようと全社的に採用を加速し、IS人員も4名、8名へと拡充しました。
そのなかでKPIも、「顧客接点数」「訪問獲得数」「商談獲得数」と変化してきており、いずれは「受注貢献数」にしたいと考えています。

3.各社のIS組織が持つ目的・ミッションとは?

米田:ディスカッションテーマである「組織」についてお話いただく前に、各社のISの目的やミッションについて教えていただきます。

一方井:先ほども少しお話しましたが、一番のミッションは顧客体験を最大化することです。よく聞く「ISはアポが取れれば良い」という考え方も個人的には間違っていないと思うのですが、会社としては「顧客体験の最大化」を掲げています。

その背景には、当社のサービスが業種・業態を選ばないということと、サブスクリプションモデルで提供されていることです。1ヵ月だけご利用いただいてその後、解約されてしまっては意味がないので、継続的に使ってもらうことを重視しています。
ISは、アポを取るだけではなく、セミナーに誘導したり、資料を送ったりしながら顧客体験の最大化を目指します。

もう一つのミッションである「戦術コントロール」については、当社事業部の下に事業戦略という組織があり、ここで作った戦略に基づいて各領域のマネージャーが戦術を策定します。この戦略をISのマネージャーが事業戦略とともに策定することも特徴的な取り組みです。

米田:アポを取るまでではなく、受注した後のカスタマーサクセス(CS)まで視野に入れているんですね。

一方井:KPIは「受注創出」なので、自分たちがパスした案件が最終的に売り上げにどう貢献したのかという点を評価しているのですが、むやみに商談件数を追うのではなく、お客様に寄り添うことが最終的な受注創出につながるという考え方です。

長田:ビズリーチのISのミッションは「BtoB領域のマーケティング&セールスモデルの最適化」です。ISが単独で成り立っているわけではなく、FSやマーケ、CSとも連携しています。このつながりを効率化・最適化して、事業成長を支援するということです。

具体的には商談の獲得ですが、商談の質を見極めることで、FSの生産性を高めたり、受注率を上げるという視点を持って取り組んでいます。

マーケティング費用に見合った成果につながっているか、ROIを正しくチェックするところにISが入り、リードが最終的にどのような受注につながったのか、マーケティング効果を確認することで、ROI改善につなげるという役割も担っています。

まとめると「売上の最大化」+「ROIの最適化」=「BtoB領域のマーケティング&セールスモデルの最適化」となります。

米田:ISが入ることで、どの広告から流入があって、結果がどうなったということがデータとして蓄積・可視化できるからROI改善につなげられるということですか?

長田:そうです。

米田:FSが受注した後の分析だけでなく、そのずっと手前のマーケティングのフェーズから効果測定を行っているんですね。

長田:場合によっては、マーケからパスされたリードをISが徹底的にフォローすることによって、そのリードが成果として正しかったのかどうかを判定してフィードバックするということも行っています。また、ISもFSからのフィードバックを受けています。商談を獲得することがゴールではなく、契約の受注/売上創出につながっているかの責任を持っているためです

米田:最後に、LiBさんお願いします。

江成:まだ当社やサービスの知名度は高くないため、当社について広めていくことをISのファーストミッションに掲げています。こういうと「テレアポとどう違うのか?」という疑問を持たれがちですが、顧客アプローチも大切にしつつ、お客様を理解することもミッションになっています。

業務内容に「顧客の生態系を知る」とありますが、これはIS立ち上げ当初、私たちのことも知られていないし、私たちもお客様のことを知らないという状態だったので、人事部署や人事担当者にまつわる仮説を立てて検証することもミッションの一つとしていました。

今月から、商談を獲得してFSにパスする際に、ISが獲得したトークの録音も併せて共有するという試みをスタートしています。

米田:ISは市場と直接コミュニケーションを取る機会が一番多い職種ですよね。お客様と接するなかで得たインサイトを共有するということですね。

4.各社のIS組織のかたちとその背景

 

米田:ここで、私が個人的に気になっている疑問をぶつけたいと思います。当社のお客様を見ていても、さまざまなタイプのISができあがっていると感じます。「組織」というテーマで見たときにISをFSの下に置くか、それとも同列に置くかなど、いくつかのパターンが出てきます。各社の現在の立ち位置を改めて伺い、その経緯や背景も教えてください。

一方井:SansanのISは独立してマーケやFSと同列にあります。独立している背景は先ほども少しお話しましたが、もともとISはFSのなかにあり、業務を請け負う役割でした。ISで成績の良いメンバーはFSに上がれるのでモチベーションが保てるのですが、なかなか上がれないメンバーのモチベーションが下がってしまいました。また、成績に関わらずISのキャリアを極めたいと希望するメンバーも少なからずいたんですね。

もう一つは、マーケティングからスタートして最終的にFSでクロージングするまでの間にそのリードに関する大量の情報が入ってきますが、フェーズによって同じ情報でも見え方が変わってきます。情報をしっかり蓄積して事業の推進に活用していこうという方針ができ、そのために部門を独立させたという背景もあります。

長田:当社も現状ではSansanさんと同じようにISとして独立しています。
よく、IS組織をFSにつけるのか、マーケにつけるのか、どちらが良いかという質問をいただくのですが、その時々で変えて良いと思っています。どんな状況でもISはFSとマーケの双方と連携していくことに変わりはありません。その前提で、事業成長をより加速させるために、どちらの部門との連携をより強めなければならないのか、ボトルネックはどこなのか、その時々の課題に合わせて変えることが重要です。

「組織は戦略に従う」という言葉通り、どんな課題を解決したいかによって体制は柔軟に変えていけば良いのではないかと思います。
体制も大事ですが、同じ指標・目標を追い、同じ目線で議論することが連携強化において必要です。

米田:長田さんがマネジメントをするなかで、現状のISのモチベーションはどこにあると思いますか?

長田:難しいところではありますが、まだどの企業においてもISの正解を模索している最中で、ともすれば、社内でもISについての理解を深めている途中という状況のなかで、「自分たちでISのあるべき姿や未来を作っていくんだ」という使命感が大きいと思います。絶対の正解がないからこそ、ビズリーチらしいISのモデルを作ることは非常に難易度が高く、そして、やりがいもあると考えています。ただ、難易度が高い分、メンバーは大変な思いもしていると思うので、メンバーが部門連携をスムーズにできるような社内調整は意識しています。

米田:LiBさんは、いままさにIS組織を作っている最中だと思うので、今後、どのような考え方でどのような位置づけにしていきたいかという観点でお聞かせください。

江成:当社では現在、営業部の中にISとFSを並列にに位置づけています。マーケティング予算が潤沢ではないため、失注してしまったお客様との関係性をどう継続していくかということもまたISの役割の一つとなっています。このため、FSに近いところで業務を行う必要性から、このような組織図となりました。

もう一つ、マネジメント人員が不足していることが背景にあります。IS人員を増強したこともあり、多忙なマーケ側で未経験からの人材を育成まで行うのは難しく、営業側に置いた方が良いという判断からです。

ただ、組織図も手段の一つなので、受注貢献数をKPIにできるようになればマーケ側とも統合したいと考えています。

5.【質疑応答】ISに向いている人材とは?ISは内製化すべき?

5-1.ISに向いている人材とは?

米田:ISの「キャリアパス」「採用・育成」についての質問が届いています。「ISに向いている人材とは?」という究極の質問です。

一方井:正解はないと思いますが、Sansanでいうと、ミッションに共感していることは前提とし、「新しいものを創っていく」というパッションを持っている人、自分自身の人生のPDCAを回せる強さを持っていることを一つの採用基準にしています。

当社では、入社するとエニアグラムという性格テストを行っているのですが、9つのタイプのうちISで1番多いのがタイプ2の「助ける人」で30%強、2番がタイプ7の「楽しんで挑戦できる人」で30%弱、3番目がタイプ5の「情報収集して分析する人」で25%でした。一般的にFSに向いている人材とは傾向が異なるようです。

江成:LiBもまったく同じで、入社前にスカウターという不適正検査を実施するのですが、協調性が高い人が多いです。これは一つの目安にしています。あと、当社ではMiiTel(クラウドIP電話)を導入しているのですが、成績の良いメンバーの声は130Hz帯域に収まるなど、いくつか見えてきているものもあります。お客様がたくさんの営業電話を受けたなかで印象に残り、話の内容をきちんと届けられる声質なのだと理解しています。

一方井:採用シーンで「協調性の高さ」を見抜くために質問していることなどありますか?

江成:ハードルの高い質問ですね(笑)。一つ目は、「今までもっとも多い人数でした仕事は何ですか?そのなかでのあなたならではのバリューポイントは何ですか?」です。男性の回答では、自分のリーダー経験について話しがちです。女性の場合は、最初は謙遜しているのですが、掘り下げて聞いてみるとリーダーを経験していることが多いですね。

もう一つは、「あなたが所属する一番親しいコミュニティのなかで他己紹介するとしたら、あなたはどんな役割だといわれますか?」。こういった回答から協調性を探っています。

米田:長田さんは面接で人材を選ぶ際にどんな質問をしていますか?

長田:IS限定ではないのですが、私が採用で一番ポイントを置いているのは、候補者の方が困難にぶつかったときにそれをどう捉え、どう改善してきたかという点です。回答のなかで、環境要因や他責傾向ではなく、「自分に正しく矢印を向けられる人か」を重点に質問するよう心がけています。

先ほども出てきましたが、ISはまだ正解が見えないなかで、他責にしようと思えば何にでも転嫁できます。「やりがいを見いだせない。自分が何を目標にしているかわからない」と悩んだときに、自分自身で困難を乗り越えられるようなエンジンの大きい人でないとISは務まらないからです。

逆に、それさえあれば、スキルは後からついてきます。最終面接で長いときは2時間ぐらいかかってしまうこともあります。面接官としても1日1件対応するだけでかなりのパワーを使いますが、採用が組織長として一番重要な仕事だと考えています。

米田:納得です。今のお話は職種に関わらず必要な素養だと思いますが、営業職だと特に、商材、市場など自分ではコントロールできない要素が多いので、自分に矛先を向けられる人材でないと、パフォーマンスを発揮できないだろうと思います。

長田:「価値を創造する」という意味でいえば、当社のISの場合「商談の獲得」を設定しているがゆえに、最終的に受注できてもお客様から直接「ありがとう」と言ってもらう機会はなかなかないのが実態です。そのなかで、自らの仕事の価値を見出す・高めることができるかは重要ですね。

5-2.ISは内製化すべきか?代行会社に外注すべきか?

米田:次の質問です。「ISをいきなり内製化するか、代行会社に外注するか迷っています」。本日登壇の3社は内製化されていますが、過去に代行会社を使った経験はありますか?

一方井:ないです。

長田:ないですね。

江成:うちもありません。

米田:検討したこともないですか?

江成:テレアポのみであれば、代行会社を使ったことがあります。

米田:「ISとテレアポの違いは何ですか?」という質問も来ているので、ちょうど良いですね(笑)。

江成:いまのご時世、採用に困っていない会社はないので、テレアポで強引にアポを取得しようと思えばできないことはありません。ただ、当社の「商談化」の条件は当社のサービスの特長や金額感を理解してもらっていることなど、ルールを明確に定めていることと、たとえ商談化できなかったとしても、断られた際の理由などデータを蓄積することも重視しているので、内製化しておかないと次につなげられないという判断です。

長田:私もまったく同意見で、商談化・アポイントを獲得するだけなら代行会社でも良いかもしれませんが、先ほども申し上げたように当社のISはマーケとFSとの連携を重視しているので、代行会社に依頼したときにそれがどこまでできるか、一枚岩になれるのかというと、難しいだろうと考えて内製化しています。

当社のISは、情報収集もしますが、顧客体験を向上させる役割も担っているので、確実に情報蓄積することを考えると、今のところ代行会社を使うという選択肢はないですね。

一方井:同じです。同様の質問をいただくことが多いのですが、「目的と必要性から判断すべき」というのがすべてです。当社で代行会社を使っているチームもあります。大きなイベントを開催する際に、登録者へのリマインドなど単純作業で使っているようです。誰でもできる作業なら、リソース不足を補うために代行会社を使うという選択も良いと思います。それがISとなると、徹底してデータを残すことや業務の複雑性から代行会社を使って理想を実現するハードルは上がると想定されるので「使わない」という判断をしています。

長田:内製化のコツとしては、立ち上げフェーズでは社内で影響力のある人を立てるのが定石で、ほかの3社も同じ考えだと思います。

米田:実は、当社は20年来、アウトソーシングでテレマやISを提供してきたのですが、一昨年からISの内製化支援事業を立ち上げました。代行会社を使ってISを運用することがNGというわけではなく、立ち上げを担える人材がいなかったり、連携面をクリアできるなど条件面が合えば、活用も可能なのではないかと思います。

ただ、ここ数年で内製化で取り組む企業が増えて来ているのは間違いないと思います。これは、製品・サービスそのものだけで勝つことが難しくなってきているなかでマーケティング・営業プロセスそのものを競争優位性として強化していく必要性に迫られており、その結果として社内に組織や仕組み、ノウハウを持とうとする企業が増えて来ているということだと思います。

5-3.IS立ち上げでは新規採用すべきか?FSからスライドさせるべきか?

米田:次の質問は「新しい人材を採用せずに、いまのFSリソースを使ってISを立ち上げる際の難しさは何ですか?」です。アドバイスがあれば、お聞かせください。

一方井:当社も経験してきたことなのですが、FSから強い営業マンをISにスライドさせる際に気を付けなければならないのが、その人をスライドさせて本当に事業を前進させられるのかを吟味すべきです。

自社の目的が明確化されないなかで、「ISがあった方が良いらしい」と安易に進めてしまうと、後から「結局、売上が下がった」ということにもなりかねません。そこから「やはり彼をFSに戻そう」ということになると、スイッチコストがかかります。

スライドさせることで、たとえば「立ち上げ当初から営業の知見が生かせるから商談数が増やせて売り上げが上がる」など、成功図が描けるなら進めた方が良いですし、逆に描けないのならスライドさせない方が良いという単純な話です。

米田:ビズリーチさんでは、FSをISにスライドさせるのではなく、最初からISスタッフとして採用されましたか?

長田:立ち上げの際は、FSから営業経験者がISに異動しました。FSと連携を取るうえで、FSでの受注の流れがわかっていた方が良いので、スライドさせるメリットは大きいと考えます。

江成:どちらにするかは、経営方針との兼ね合いだと思います。先ほど一方井さんがおっしゃったように「FSのトップをISへ異動させたら、売上全体が落ちた」といった足元の話になりがちで、特に営業部門出身の経営層がそういった発言をする傾向があるかもしれません。「営業の人員が増えたのに、一人当たり生産性が落ちた」と。これは経営の面からみれば正しいジャッジとも思えます。

そうではなくて、「自社のサービスを世の中に認知させるため」「お客様の体験価値を向上させるため」といった目的のためのIS立ち上げ、ということであれば、それを経営層を含め、全社的に理解してもらう必要があるでしょう。

異動や採用も手段の一つです。FSのトップをISにスライドさせて創出した商談を、FSのジュニアメンバーにパスしたときに受注できなかった場合、場の空気が凍ったりしそうですし(笑)。そうならないためにも、どういった商談をパスするか、その辺りのレギュレーションもしっかり決めておく必要があると思います。

5-4.もう一度、最初からやり直せるとしたら?

米田:最後の質問です。「もう一度、一からやり直すとしたら、どこに気を付けますか?」。なかなか面白い質問ですね。
もちろん、現在の取り組みを否定するということではないのですが「あの時、こうしていればさらにうまくいっていたのに」とか「もっとスピーディに成長できたのに」とか、「あの人材を失わずに済んだのに」とか、それぞれ振り返っていただくと何かしら出てくるのではないかと思うのですが。

一方井:難しいですね。

米田:「ない」という回答でも良いと思います(笑)。

一方井:そう言いたいところですが(笑)。本日のテーマとは少し外れますが、ISには、お客様とコミュニケーションを取った内容をしっかりデータに残すという役目もあるので、そこを徹底できたら良かったなと。IS立ち上げ当初は、データをきちんと残せる環境がなかったということもあるのですが、FSの下にあった最初の段階から、ISメンバーにその意識付けを徹底できていたら、IS組織はもっと進化していただろうと思います。

長田:先ほどの話ともつながりますが、どんな課題を解決するために、何を実現するためにISを立ち上げるのかという認識を経営層とすり合わせておくこと。もっというと、事業部長と議論を交わすなかで視点を合わせた状態でISをスタートさせることが重要だと思います。

経営層から「ISが流行しているから、うちもやってみようか」と、軽いノリで(笑)立ち上げを任されるケースも少なからずあるかと思いますが、ISは魔法の組織ではないので、できることもあればできないこともあります。

そして、組織全体でISへの協力体制がなければ、実現できないことはたくさんあります。IS単独ではなく会社全体としてISが何を目指していくべきか、組織価値をしっかりすり合わせてスタートすると良いと思います。

江成:私は、人材育成ですね。営業経験や社会人経験のないメンバーが活躍しており、メンバーが自発的に研修プログラムを組んで実践しています。時には社外の方々も巻き込みながらやってくれています。業務から得た気づきが活かされている研修も多いですが、こうした研修をマネジメント側が事前に用意・提供していれば、もっともっと立ち上がりが早かったのではないかと思っています。

米田:ありがとうございます。最後に、会場の皆様へのメッセージをお願いします。

一方井:本日は各社からさまざまな角度から話をさせていただきましたが、共通しているのが「目的と必要性を捉える」ことの重要性だったのではないでしょうか。ここさえ押さえられていれば、スピード感や実現までの道のりは違えど、振り返ったときに「IS立ち上げは失敗だった」という結果に終わることはないはずです。

長田:私自身が過去にさまざまな営業組織のマネジメントを経験してきたなかで、日本におけるモデルが確立しておらず、発展途上であるIS組織を持続的に成長させることは非常に難しいと感じています。ISは非常に効率的で生産的なシステムだと思いますが、人は効率だけでは動きません。ISメンバーをともに働く仲間と認め、一人ひとりがISの仕事に誇りを持てるよう、未来のビジョンを示すことがリーダーには求められるように思います。

これからISを立ち上げようと考えていらっしゃる場合は、その会社らしいISのあるべき姿を考え、追求し続け、そして変わり続けることが必要だと思います。

江成:手段と目的を混在しないことが大事である、ということと、解は顧客が持っている、ということです。
以前、目標まであと一歩のところまで行っているのに届かなかったISメンバーを叱ったことがありました。もちろん、そのメンバーが頑張っていることは知っていたのですが、「目標達成は重要である」ということを教えたかったのです。

すると翌日、実際に私にコールして商談を取って見せてくれといわれました。営業力の強さは自負していたのですが、一緒に3時間コールして1件も商談が取れませんでした。その時、マーケットが変化していること、答えはマーケットやお客様にしかないということを痛感しました。

そのマーケットと一番、接点を持っているのがISです。先ほど、長田さんがおっしゃったように、分業による効率化が大切な一方で「自社の製品サービスの認知やミッションを実現するために分業する」という目的を叶えることも重要で、どちらを優先するかは各社のフェーズ、目的次第だと思います。

米田:ありがとうございます。
今日のセッションのための事前打ち合わせで顔合わせをした際に、皆さん非常に楽しそうに話されていたのが印象的でした。実際に、予定していた1時間の打ち合わせはあっという間に過ぎました。この「楽しい」という要素は非常に重要だと思います。

今後の日本企業の成長においてIS組織は重要です。そして、成長する組織では「人が活かされている」必要があります。ISの施策を実行するうえで困難やつらさもあると思いますが、取り組み自体を「楽しむ」ことも重要なのではないかと思います。そんな「楽しいIS」がこれから日本中に広がっていくように、本日、ご参加の皆様に何か少しでも気づきがあれば幸いです。本日はありがとうございました。


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