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敵だった母親を味方につけた任天堂の凄さ。利用シーンを革新させた「Wii」と「Switch」

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2018/01/29
敵だった母親を味方につけた任天堂の凄さ。利用シーンを革新させた「Wii」と「Switch」

任天堂といえば、スーパーマリオやポケモンなどのゲームで世界的に有名で、100億円以上の資本金を持つ、言わずと知れた大企業。アメリカやフランス、韓国などに拠点を持つグローバル企業でもあります。

間違いなく成功している企業のひとつとして数えられますが、もちろん任天堂にだけ外的・内的環境変化が訪れなかったわけでもなければ、時代に合わせたイノベーションを迫られなかったわけでもありません。

今回は、任天堂の「Wii」と「Switch」が生まれた背景にスポットを当てながら、どんな企業にも求められる「ビジネス戦略のイノベーションのあり方」について探ってみましょう。

任天堂のターゲットは子ども、敵は母親だった

任天堂が初めて家庭用ゲーム機を発売したのは1977年、「テレビゲーム15」「テレビゲーム6」でしたが、その4年前に、業務用レジャー・システムとして「レーザークレー射撃システム」を開発しています。

その後、任天堂の名を世界に知らしめるきっかけとなった「ファミリーコンピューター」(1983年発売)を筆頭に、携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」(1989年発売)、スーパーファミコン(1990年発売)、NINTENDO64(1996年発売)…と、任天堂は数々のゲーム機と対応ソフトをヒットさせ、時代ごとに子どもたちのハートを掴んできました。

ただし、子どもたちが夢中になればなるほど、子どもの母親たちは良い顔をしなくなります。 「ゲームばかりしていないで、勉強しなさい!」と怒られてゲーム機を取り上げられた経験があるという人も少なくないのではないでしょうか。

敵だった母親を味方につけた「Wii」

そんな世の母親たちの心情に、任天堂側も気づかないわけではありませんでした。 当時の社長である故・岩田 聡は、ゲーム機「Revolution」(仮称。のちにWiiとして発売)の発表の場で、次のような発言をしたといいます。

「母親を敵にした状態で、新しいゲーム機がどれだけ普及するのか疑問。Revolutionは、家族全員に受け入れてもらえるようにしたい」

その言葉通りWii(ウィー)は、テレビゲームながら体を使って遊べ、母親にも許容してもらいやすい「Wii Sports(ウィー・スポーツ)」を始め、ゲーム初心者である「母親」を含めた家族全員で楽しめる難易度の低いミニゲームを数多く収録した「Wii Party(ウィー・パーティ)」などのソフトで、これまで「敵」であった「母親」層を取り込むことに成功しました。

知育として受け入れられる「Swich」

任天堂はその後も「母親を敵にしない」ゲーム機をテーマに開発を続けています。

2017年3月に発売されたNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)は、据え置き型家庭用ゲーム機ながら携帯ゲーム機としても遊べるハイブリッッド機で、予約受付開始と同時に申し込みが殺到し、発売後も品薄状態が続きました。

Nintendo Switchは、本体(タブレット端末)と左右に取り付ける着脱可能なコントローラー「Joy-Con(ジョイコン)」、電源・HDMI出力機能を備えたスタンド「Nintendo Switch ドック」で構成されています。 注目したいのがこのJoy-Conで、本体に装着して遊ぶほか、Joy-Conグリップに装着して遊べたり、友達と分け合って遊ぶテーブルモードで遊ぶこともできます。

ただ、Joy-Conの凄さは、これだけにとどまりません。 2018年1月18日、任天堂はJoy-Conの周辺機器として「Nintendo Labo(ニンテンドーラボ)」を発表しました。 これは、ソフトと再帰性反射材シートや段ボールシート、輪ゴム、ヒモなどがセットになったキットで、組み立てるとピアノやリモコンカー、全身を使って画面の中のロボットを動かして遊ぶゲームを作ることができるのです。

主な素材が段ボールなので、ユーザーである子どもたちは、好きなように着色することもできます。 「工作」×「ゲーム」という子どもが好きな要素と、母親が子どもに与えたい知育玩具や、体験させたいクリエイティブな要素がうまく組み合わせられ、子どもから取り上げるどころかむしろ買い与えたいと母親に思わせるような商品に仕上がっています。

さらには、キットを組み立てた子どもが「自分が作ったものがどうしてそんな動きをしたり音が出たりするのか?」と興味を持つことで、観察力や想像力、科学的な知識なども身に付く可能性が期待できます。

ビジネス戦略のイノベーションのあり方

任天堂は、主力製品であるゲーム機やゲームソフトのさらなる売上拡大のために障壁となる存在=家庭の母親を、敵のままにするのではなく味方に引き込むことでイノベーションを成功させたといえます。

そもそも、任天堂は、ゲーム機メーカーではありませんでした。 1989年の創業当初は花札を製造しており、日本で初めてトランプを製造した企業でもあります。現代では家族でカードゲームをする風習は廃れてきていますが、昔はトランプといえば家族団らんのなかで行われる代表的な遊びのひとつでした。こうした系譜をみると、任天堂がゲーム機を、子どもや青年のみをターゲットしたものから家族で遊べるものへと転換したのも、あながち突飛なシフトチェンジではなく、原点回帰だったのかもしれないと推察されます。

「母親を敵にしない」ゲーム機の開発を進めた故・岩田前社長は、新事業として「QOL事業」の立ち上げも行っています。 任天堂は、自社の立ち位置を「娯楽企業」として玩具やコンピューターゲームの開発・発売を手がけてきましたが、2014年以降、「娯楽」を「QOL(Quality of Life、生活の質)を楽しく向上させるもの」と再定義しました。 「QOLセンサー」を用いて睡眠や疲労状態に関するデータを集め、その分析結果に基づいてQOL改善のための提案をするという健康分野へも進出しています。

まとめ

ビジネスの拡大において障壁となるもの、敵とみなされるものに対しては、「排除する」「打ち負かす」といった発想で対処法を検討するケースが多いでしょうが、任天堂の事例では、「取り込む」「味方にする」ためにはどうしたら良いか?という発想でイノベーションが成功しています。

いずれの方法も簡単な道のりではありませんが、味方が多い方が長きにわたりビジネスを続けていくためには、自社もステークホルダーもともに利益の多いWin-Winの関係性を築くことを考えた方が良い方法なのかもしれません。

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