DMUとは?製造業などのBtoBマーケティングにおける意思決定者や、購買プロセスについて解説!
最終更新日:2023/10/27
DMUとは、顧客サイドの意思決定者のことです。とくにBtoBビジネスで利益をあげていくうえでは、必ず知っておくべきファクターです。
企業は顧客の課題を解決するために自社ソリューションを提案しますが、このとき顧客の購買意欲に対して受注が比例しない場合は、DMUを的確に分析できていないのかもしれません。
とくにBtoBマーケティングでは、DMUが複雑になるのが特徴です。顧客企業のDMU(意思決定者)がどのような体系になっていて、どのような購買プロセスをたどるのかを理解することで、制約への精度をあげることができます。
本稿では、DMUはどのようなメンバーで構成されるのか、DMUをするためのDMUマップについても詳しく解説していきます。
目次
DMUとは
DMUは「意思決定者」「意思決定関与者」を意味するマーケティング用語です。Decision Making Unit(デシジョン・メイキング・ユニット)の略称で、直訳すると、「意思を決定する集団」という意味になります。
顧客企業に自社の製品やサービスを購入してもらうには、かならずこれを決定する人物がいますが、ここに適切なアプローチができることで成約率をあげていくことができます。
ただBtoBマーケティングにおいては、担当者がそのまま決済者になるということは少なく、多くの場合で上司に判断を仰いだり、社内稟議を通したりする必要が出てきます。そこで顧客のDMUを正しく分析し、的確なアプローチをすることで営業活動を活性化するDMU分析に多くの注目が集まっているのです。
なぜBtoBビジネスにおいてDMU分析が重要なのか
BtoBビジネスにおいても、どのような顧客に販売するのかを具体的にしておくことは重要なプロセスになります。そのため、すでにペルソナを設計してターゲティングをおこなっているという企業も多いはずです。
BtoBの取引では、「担当者=購買の意思決定ができる」とは限りません。BtoBでのターゲティングは、対個人でのマーケティングに対してより複雑になります。そのため企業と個人、2つの方向性からペルソナを考える必要があります。
そこで役立つのが「DMU」の考え方です。個人ペルソナは、直接やりとりをする窓口担当者だけでなく、現場担当者から決裁権のある人物までそれぞれ設定し、関連性を把握することで、顧客の全体像を理解できるようになります。
意思決定者は1人とはかぎらない
顧客企業の意思決定者は、複数人存在することがほとんどです。
たとえば、米CEB社が、アメリカのBtoB企業における5,000人以上のステークホルダーを対象におこなった調査では、購買において平均5.4人の承認が必要となることがわかっています。
法人企業における意思決定関与者は複数いるということを念頭に置いて、どのような意思決定者がいるのかを正しく把握することが大切です。
取引規模によってDMUは増える
BtoBで取引される商材は高額となるものも少なくありません。そのため、BtoCでひとりの顧客が数千円の商品を購入するのとは異なり、関わる意思決定者の数が増えるのも特徴です。
決裁権限の金額は、肩書きごとに段階があることも多いです。たとえば係長は5万円まで、課長は10万円まで、部長は50万円まで、本部長は100万円まで、専務は500万円まで…など、企業によって権限のある金額は異なる場合があります。
30万円の決済稟議を想定した場合には、「担当者・係長・課長・部長」という4段階のDMUを考える必要があることがわかります。
取引内容によってDMUはさらに増える
また購買する商材によっても、さらに意思決定関与者は増える可能性があります。
さきほど例にあげた30万円の決済内容が、たとえばCMSツールの導入・今のWebサイトからの移行にかかる費用だとします。こういったツールの導入はIT導入補助金にも関わるため、経理部とのすり合わせや承認が必要になることもあります。
現場担当者のニーズ
さらにさきほどの例でいえば、CMSツールを導入する際に窓口担当者は選定するだけで、実際につかう現場担当者は異なることも少なくありません。
自社のWebサイトリニューアルが関わってくるため、自社Webサイトを活用しているのが「事業部」「広報部」「マーケティング部」など部署をまたいでいる場合は、それぞれの部署においても承認を得る必要がでてきます。
顧客企業のDMUをできるかぎり正確に把握して、それぞれのニーズをキャッチできれば、より成約率を高めることができるのです。
BtoBにおいてDMUと購買プロセスが複雑になる理由
BtoBマーケティングにおいてDMUが増えやすい特徴があることはお伝えしました。
顧客企業では、企業ごとに起案・稟議承認・執行と、購買までのプロセスが設定されているケースがほとんどです。そのためtoCの購買行動に比べ、もともと期間が長くなる傾向があるうえ、さらに決裁までに複数の部門が関与するため、それぞれの工程に時間がかかります。
このようなBtoBマーケティングで成約までの確度を高めていくには、企業ごとのDMUと購買プロセスを明らかにするため、適切なデータを集めることが必要です。
DMUのタイプ
DMU(購買意思決定者)には、さまざまなタイプがあり、ここでは6つに分けてご説明します。購買プロセスのステップを把握するのにもお役立てください。
ゲートキーパー(窓口担当)
顧客企業の「窓口」となるのがゲートキーパーで、商談で直接交渉する相手といえます。
規模の小さい企業では窓口担当者=社長などの決裁者であることも稀にありますが、基本的には直接的な決裁権をもたない人物であることが多いです。
ゲートキーパーと良好な関係を築くことで、DMUごとのニーズを引き出すことができ、顧客企業に寄り添ったソリューションを提案できます。またゲートキーパーは、使用者や承認者に自社の情報を取り次いでくれる存在であり、ゲートキーパー本人が意思決定にどの程度関与しているのかを把握しておくことも大切です。
ユーザー(使用者)
ユーザーは、購買した製品やサービスを現場で使用する、現場担当者です。ユーザーは、「システムを導入してほしい」といった起案者であることも多いです。
たとえばITシステムひとつとっても、会計システムであれば経理部、SFAシステムであれば営業部など、実際に活用する部門は違います。工場の生産ラインに機械を導入するのであれば、現場に従事する事業部や作業スタッフかもしれません。
顧客企業がこのような製品やサービスを導入する場合、現場からのニーズが大きな導入理由であることが少なくないため、現場からのヒアリングは欠かせません。
インフルエンサー(影響者)
購買プロセスにおいて、アドバイスをしたり、相談にのったりする役目を担うのがインフルエンサーです。
購買を直接判断するポジションではないものの、窓口担当者にアドバイスをおこない、それが重要な判断材料となることも多くあります。インフルエンサーは、情報システム部や製品設計部など、専門性の高い部署であることも多いです。
またたとえば営業部であっても、前職でツール運用をしていてITシステムに詳しいメンバーがいるなど、個人ごとにインフルエンサーにあたるケースもあるため、担当者とのやりとりのなかで把握しておきたいポイントです。
ディサイダー(決定者)
ディサイダーはその言葉のとおり、購買の最終決定をする人物です。最終決定だから社長、というわけではなく、決裁金額によってディサイダーはそれぞれ変わることがほとんどです。
実際には現場の業務にそこまで携わっていない、専門知識を持っているわけではなくとも、最終的に判断を下す役割をこなします。そのため事前に窓口担当者からディサイダーについての情報を収集しておくことも、BtoBにおける成約には重要なパートです。
どれだけ担当者が導入したいと思っていても、ディサイダーがNOと言えば通らないのがBtoB商材の難しいところです。
バイヤー(購買者)
最終的に製品やサービスを購入するのがバイヤーです。予算や費用対効果などを厳しく精査し、直接条件を交渉するのもバイヤーの仕事です。
DMUマップの規模が大きく複雑になるほど、その役割は細分化されるため、購買部門を設けている企業では部署担当者が加わることもあります。
チェッカー(確認者)
購買予定の製品やサービスの内容、見積もり、予算などをあらためて確認するのがチェッカーの役割です。
バイヤーとやや重複する領域となるため、兼任することもあります。ディサイダーの意思決定に最も大きく影響する立場であることから、社歴の長い経験者が指名されることも多いです。
チェッカーに対しては、自社製品のメリットだけでなく、コストパフォーマンスや顧客企業の求める機能性などポイントを絞ってアピールすると効果的です。中長期的な使用による料金や効果のシミュレーション・他社比較データなども有効になります。
DMUを分析するには:DMUマップ
多様なDMUを適切に分析するには、DMUマップの活用が有効です。
顧客企業のDMU全体像を書き出して、
・影響を及ぼす関係性
・及ぼす影響力の強さ
・各者の関心ごとや優先事項
などを把握して可視化することで、営業活動に役立てることができます。
ここからは、なぜDMUマップをつくるとよいのか、DMUマップの具体例や作りかたについて解説します。
DMUマップの重要性
DMUが把握できていればそれでいいのでは?と考える方も多いかもしれません。DMUをマップとして構成する理由、メリットについてお伝えします。
集合体として把握する
toBでのアプローチをおこなう際には、個々のペルソナももちろん大切ですが、集合体としての理解がより重要になります。
ある企業ではインフルエンサーを攻略することでスムーズにいった、というケースでも、ほかの企業でもおなじとは限らず、DMUの構成やパワーバランス、影響度も企業ごとに異なります。
どのタイミングで、だれにアプローチするかを最適化するためにも、マップに落とし込んで組織全体を把握する必要があります。
DMU同士の関係性を把握する
DMUそれぞれの情報をマップに落とし込むことで、DMU同士の関係性を理解しやすくしてくれます。
たとえば、決定者に最も影響を与えているのはだれか、ユーザーの発言権や、インフルエンサー・バイヤーの影響度はどのくらいか、組織内での関係性も企業ごとにさまざまです。
また購買プロセスからDMUマップを見返すことで、「誰が稟議を起案したか」「決裁までのチェックをおこなうのは誰か」「最も影響力を持っているのはだれか」「誰が決裁したか」を可視化でき、次の戦略に活かすこともできます。
顧客企業について新しい発見がある
DMUマップを作成していくなかで新たな発見をすることは、往往にしてよく起こります。
DMUをマップに起こして見ていくと、実はある部署の人物が影響力を持っていることがわかったり、または窓口担当者の直属の上司に決裁権がそれほどないことがわかったり、顧客が抱える課題を再発見したりすることも。実はアプローチする相手が違っていた、ということも少なくありません。
また顧客企業を体系的に理解できることで、関係構築のうえでもよい影響が期待できるのがDMUマップのメリットともいえます。
DMUマップの具体例
ここでは、ある企業の営業部で、マーケティング活動の一環としてMAツールを導入する際のDMUマップの具体例をご紹介します。
業務用什器などの製造・販売を行っているメーカーを例にあげます。
- ゲートキーパーはユーザーからの要望でMAツールを検討しています。
- ゲートキーパーはMAツールの知識を持つインフルエンサーのアドバイスを受けて比較検討を進めていきます。
- 購買はバイヤーの判断のもとでおこないます。
- 購買する前にチェッカーが最終確認をおこないます。
- 最終的な決定は営業部部長がおこないます。
DMUマップの作り方
DMUマップを作成するには、顧客へのヒアリングが必須となります。以下の作成手順に準じて情報収集ができると、マップづくりがスムーズに進むはずです。
- マップの大枠を作成
- どのような関与者がいるかを書き出す
- 意思決定の流れを書き出す
- マップを細分化する
- 関与者ごとの影響力
- 関与者ごとの関心ごと・優先事項
- 関与者ごとに商談にどのくらい関与しているか
- 仮説・検証
- 実際に営業活動に活用して検証する
- さらに書き込んで改善する
ここではそれぞれのステップごとにもう少し詳しく説明していきます。
マップの大枠作成:担当者と上司の関係性
まずは窓口担当者とその上司など、組織形態を明らかにしていきます。
窓口担当者のまわりにどのような関与者がいるのか、どのような部署や役職があり、どのような意思決定の流れで購買につながるかをヒアリングします。とくに大きな企業になるほど関係性は複雑になるため、決裁に影響力をもつ人物をはずさないよう気をつけましょう。
ある程度、関与者の情報が見えてきたら、窓口担当者を中心にマッピングしていきます。
マップを細分化:窓口担当者とつながりが強い部署・おさえるべき意思決定関与者
窓口担当者を中心にある程度マッピングができたら、次は担当者とつながりが強い人物や部署、押さえておくべき関与者を明確にしていきます。
ここで気をつけたいのは、単に組織体制を詮索しようとするのではなく、どのような課題を抱えていて、どのような背景で商談に至ったのか、顧客企業の目的をヒアリングしていくことです。「現場からの要望があって…」「組織体制の変革を目指していて…」など、顧客の状況が見えてきます。
あくまでも顧客の課題に寄り添いながら、意思決定にはどのような人物が関わるのか、どの部署の影響力が強いのか、など情報を細分化してまとめていきましょう。窓口担当部署と連携している部署もおさえておくと、スムーズに商談を進められるはずです。
仮説・検証:さらにそれぞれの関係性を書き込む
作成したDMUマップをもとに、営業活動に活用しましょう。
このとき見えてきた関係性やパワーバランスなどはその都度書き込み、DMUマップをブラッシュアップすることで、成約への確度もあがっていきます。
DMUマップ活用のポイント
DMUマップは複雑そう、作るのがむずかしそうと感じる方もいるかもしれませんが、コツをつかめばDMUマップは誰でも作成・活用することができます。
ここではDMUマップを活用するうえで、知っておくと便利なポイントについてご説明します。
テンプレートを作成してだれでも活用可能に
DMUマップを作成し活用していきたい場合、まずはテンプレートを作成するのがおすすめです。
DMUマップを顧客企業ごとに作成し、ブラッシュアップするのを繰り返していくうちに、ターゲット企業に多いDMUマップの型が見えてきます。これをもとに、自社顧客に使いやすいテンプレートを準備しておけば、作成の手間を大幅に省くことができます。
自社にとって使いやすいDMUマップのテンプレートを共有することで、入社したばかりの新人営業担当者も、DMUマップを活用して営業活動に役立てられます。また社内の顧客企業に対する意識づけとしても有効で、マーケティング手法を社内にもっと浸透させていきたいという場合にも効果的です。
顧客企業に対する共通言語を獲得
DMUマップを作成するのは営業部ですが、商談に関わる営業担当者は、DMUマップを通してまわりの部署との共通言語を獲得でき、社内でもよりスムーズな意思疎通がはかれるようになります。
自社が顧客企業に対してアプローチをするときに複数のDMUが存在するように、自社も1人の担当者が商談に取り組むとも限りません。営業マンは、DMUマップを作成することで、自社内のマーケティング部・事業部・製品設計部などと連携をとりながら話をすすめることができます。顧客企業の理解度が深まることで、社内社外に関わらず齟齬を防ぎ、相手企業に信頼感を与えることもできます。
まとめ
DMUとDMUマップの重要性について解説しました。
DMUマップを作成することで、ターゲット企業の意思決定がどのような構造でおこなわれているのかを理解でき、よりスムーズに受注につなげられるようになります。これまではなんとなくの勘と経験則で顧客企業をとらえていた…という方は、DMUマップを導入することでまったく新しい結果が得られるかもしれません。
まずは気になる取引先企業のDMUマップから作ってみるのがおすすめです。DMUマップを使った営業活動で効果検証を繰り返し、成約率アップを目指していきましょう。
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クラウドサーカスではこれまで、2,200社以上のWeb制作に携わってきました。その中でも特に多いのがBtoB企業であり、製造業の方々への支援です。この事例インタビュー集では、BlueMonkeyを導入してWeb制作を実施し、成果に繋がった製造業の企業様の声を掲載しています。
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