「Salesforce World Tour Tokyo 2019」レポート 第一回 セッション「女性がもたらす企業の成長と持続可能な社会の実現」
最終更新日:2023/11/20
2019年9月25日(水)、26日(水)の2日間、ザ・プリンスパ-クタワー東京/東京プリンスホテルにおいて、セールスフォース・ドットコムが主催するイベント「Salesforce World Tour Tokyo」が開催されました。このイベントは毎年開催されており、セールスフォース・ドットコム主催のイベントとしては国内最大規模となります。
「エムタメ!」では、当日の様子からマーケター向けの情報を厳選し、数回にわたりレポートしていきます。
第一回は、セッション「女性がもたらす企業の成長と持続可能な社会の実現」の模様をお送りします。
「Salesforce World Tour Tokyo 2019」イベントレポート
- 第二回「Activist CEO ポスト資本主義時代のリーダーの条件」
- 第三回「IBMのSalesforce 製造業インダストリーソリューション」
- 第四回「競争を勝ち抜くための効果的なデジタルマーケティングとは」
男性の育児休業取得 日本と海外の差
左からリンダ・アイエロ氏(米国セールスフォース・ドットコム SVP, International Employee Success)、松川 るい氏(参議院議員)、大門 小百合氏(株式会社ジャパンタイムズ 執行役員 論説室論説委員)
このセッションは、女性の活躍をテーマにパネルディスカッション形式で進められました。
そのなかでも、ライフステージにおいてもキャリアプランのなかでも大きなイベントである出産に関連して、男性の育児休業取得についての部分をハイライトしてお届けします。
大門:子育てのなかで男性が関わることは重要ですが、日本で育児休業を取得する男性はまだまだマイノリティです。それを変えようと、松川さんが頑張っていらっしゃいます。
大門 小百合氏(株式会社ジャパンタイムズ 執行役員 論説室論説委員)
松川:男性の育児休業取得に、いま追い風が吹いていると感じています。これまでの経験や話を聞くなかで、男性と女性では時間の使い方が大きく違うという点を痛感してきました。これは、男性にとっても女性にとっても不利益なことだし、幸福度を著しく下げる要因になっています。
誰にとっても1日は24時間しかないということが人間の究極の資産だと思っています。このなかで日本の女性は、働く女性も含め、男性の7倍の時間を育児と家事に使っているというデータがあります。フィンランドなど育児分担が進んでいる国でも女性の方が男性よりも多いのですが、日本の場合、このあまりにも差が大きい。これが、女性がキャリアを追求する余裕をなくしています。
赤ちゃんが生まれたタイミングで男性が育児休業を取得して家事と育児をシェアし、夫婦で一緒に家族をスタートアップすれば、赤ちゃんが1才になるまでは、ベビーシッターなどの家事・育児のアウトソーシングを利用しなくても家庭で育てられると考えています。
実は、日本の育児休業制度は北欧よりも手厚いのです。制度はあるが利用されていないという状況です。
私が男性の育児休業取得を推進している理由は、育児休業を機に家事・育児をシェアすることで習慣化が期待できるからです。育児休業制度ができてから20年以上が経ちますが、男性の取得率は1.5%から6%に微増しているにとどまります。日本の育児休業制度では、赤ちゃんが生まれてから夫婦それぞれが6ヵ月ずつ取得すれば1年間は休業前の給与の8割がカバーされます。海外の育児休業制度を調べましたが、これほど手厚い制度のある国はありません。
これほどの良い制度がなぜ利用されないかというと、一つは「男のくせに育休を取るのか。子どもが生まれたのだから、もっと働かないと」というカルチャーがあるからです。ただ、若い男性の8割が育児休業を希望しているというデータもあり、意識は変わってきています。
もう一つの原因は、仕事がモジュール化されていないため、属人的になってしまっていることです。「彼がいなくなったら、お得意先と話ができる人がいない」という状況です。
そこで、私は男性に育児休業取得の義務化を提唱しています。取得する側ではなく雇用する側に取得させる義務を負わせるというものです。
ちょうど、小泉環境大臣のお子さんが来年1月に生まれる予定ですので、3日でも良いから育児休業を取得して、「子どもが生まれたら、育児と家事をシェアするものだ」という姿勢を見せてくれることを期待しています。それがカルチャーを変えるきっかけになるのではないかと。
男性が育児休業を取得することで、女性の活躍と男性の働き方改革や幸福度アップ、保育士不足の解消、離婚率の低下など、いくつもの課題解決につながると考えています。
松川 るい氏(参議院議員)
大門:たしかに、カルチャーを変えるだけでかなり改善が進みそうですね。
海外の状況を、ニューヨーク生まれで現在はオランダにお住まいのリンダさんに伺います。
アイエロ:北欧の国では、社会の標準、文化として育児休業の取得が認められ、推進されています。オランダでは、子どもが生まれると父母ともに育児休業を取得します。法的に求められているのは3日間だけですが、これでは不十分。セールスフォース・ドットコムでは、男性も3ヵ月間の育児休業が認められます。仕事に復帰すると、男性も女性もそれまでの8割の勤務時間にし、残りの時間は家庭で過ごします。
オランダでは、父親が子どもを2人、抱っことおんぶで背負ったまま買い物などに行く姿がよく見られます。このような若い男性の姿が、スウェーデンやノルウェー、デンマークなどで増えてきています。
政策としても、夫婦での育児のシェアリングが促されているので、男性はパートナーが妊娠したら、まず子どもが生まれることを職場に伝え、生まれた後は、女性が育児休業を取得し、仕事に復帰したら、「今度は、自分が家にいたい」と職場に伝えます。こうしたことが許可される気風が重要です。
日本のように育児休業の取得率が低い国では、リーダーがきちんと社員と話し、許可すると明確に伝えることが大切です。経営幹部の中でも育児休業を取得した男性はいます。これから取得予定のEBPの男性は、みんなの前で「これから子供が生まれるので育児休業を取得する」ということを話しました。子どもとちゃんとつながって密な関係を取りたいから育休を取るのだと。彼は2人の娘のために育児休業を取得しました。彼の奥さんはコンサルタントで、育児休業を2年取得しましたが、それでも彼は育児休業を取得したのです。
このように、社員の前できちんと話をすることが重要で、育児休業を取得することが良いことなのだと情報共有することにより取得が推進されます。
リンダ・アイエロ氏(米国セールスフォース・ドットコム SVP, International Employee Success)