「Salesforce World Tour Tokyo 2019」レポート 第二回 セッション「Activist CEO ポスト資本主義時代のリーダーの条件」
最終更新日:2023/11/20
2019年9月25日(水)、26日(水)の2日間、ザ・プリンスパ-クタワー東京/東京プリンスホテルにおいて、セールスフォース・ドットコムが主催するイベント「Salesforce World Tour Tokyo」が開催されました。このイベントは毎年開催されており、セールスフォース・ドットコム主催のイベントとしては国内最大規模となります。
「エムタメ!」では、当日の様子からマーケター向けの情報を厳選し、数回にわたりレポートしていきます。
第二回は、SDGsなど企業に求められる社会貢献度が上がっている現代におけるリーダーの役割についてパネルディスカッション形式で行われたセッション「Activist CEO ポスト資本主義時代のリーダーの条件」の模様をお送りします。
「Salesforce World Tour Tokyo 2019」イベントレポート
社会貢献活動でリーダーシップをとる3人の経営者が登壇
セールスフォース・ドットコムでは、「ビジネスは社会変革を実現する最良のプラットフォーム」を理念としてビジネス以外にも社会をより良くするためのさまざまな活動を行っているといいます。
第四次産業革命の只中であるいま、企業と社会、人と人との関わり方が変化するなかで、企業経営者に求められる役割が変化しているのではないかという問題定義から、Forbes JAPAN の副編集長を務める谷本 有香氏をモデレーターに、経営者であり、日本におけるActivist CEOともいえる3名がパネラーに招かれ、ディスカッションが展開されました。
【登壇者】
モレデーター:
Forbes JAPAN 副編集長
谷本 有香氏
谷本 有香氏(Forbes JAPAN 副編集長)
パネリスト:
マネックスグループ株式会社代表執行役社長 CEO マネックス証券株式会社 代表取締役会長
松本 大氏
◆国際的な人権保護のNGOでNPOの「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(Human Rights Watch)」の国際理事会のバイス・チェアマン(副理事長)を2011年より務める。
松本 大氏(マネックスグループ株式会社代表執行役社長 CEO マネックス証券株式会社 代表取締役会長)
READYFOR株式会社 代表取締役CEO
米良 はるか氏
◆日本初のクラウドファンディングを立ち上げ、特にソーシャルや地域を重視して新しいお金の流れを作る事業を行う。
米良 はるか氏(READYFOR株式会社 代表取締役CEO)
株式会社カヤック 代表取締役CEO
柳澤 大輔氏
◆「面白法人」のキャッチコピーでデジタルコンテンツ制作を事業の中心としながら、移住支援、地域在勤者向けの「まちの保育園」「まちの社員食堂」を立ち上げ、「地域資本主義」を提唱する。
柳澤 大輔氏(株式会社カヤック 代表取締役CEO)
まず冒頭で、谷本氏より「Activist CEO」の定義がなされました。
企業の利益だけを求めるのではなく、社会課題にも声を挙げることができるリーダーを「Activist CEO」とよぶそう。まだ日本ではあまりなじみのない言葉ですが、アメリカではすでに浸透してきており、Forbes JAPANでも2019年8月号で特集されています。パネリストの柳澤氏も取り上げられているといいます。
また、2018年7月号では、セールスフォース・ドットコムの創業者であるマーク・ベニオフ氏が表紙を飾り、企業の利益にとどまらない社会課題や政治問題などに取り組む代表的な「CEO Activists」の一人として紹介されています。
画像引用元:当日の登壇資料より引用
マーク・ベニオフ氏がさまざまな社会貢献活動に取り組んできたなかで有名なのが、株式と利益、社員の時間の1%を社会貢献に費やすという「1-1-1モデル」。利益が出てから社会貢献に取り組むのではなく、創業当初から経営戦略のDNAに社会貢献モデルを組み込んだ点に言及しました。
(以下、敬称略)
「Activist CEO」が求められている時代背景とは?
画像引用元:当日の登壇資料より引用
谷本:そもそも、日本において「Activist CEO」は必要なのでしょうか?これを考えるにあたり、まずはその背景となる時代の変化について、どうお考えですか?
松本:アメリカで起きている、CEOが社会的な問題に対して意見を出すことは、ポスト資本主義というよりも、資本主義が行き過ぎて大企業に富や信用が偏ってしまった現状があり、社会問題に取り組まないと逆風を避けられないと判断した結果の修正行動のように感じています。
このため、アメリカでいま起きているCEO Activismと、今後の日本におけるCEO Activismでは、背景が異なるのではないかと思います。
米良:私は現在31才ですが、生まれてからこれまでに経済成長を感じたことがあまりありません。そのためか、同世代の企業家は、上の世代の企業家と比べると、お金を稼ぐためというよりも、何らかの課題を見つけ、それを解決するために事業を行う傾向が強いと感じます。
テクノロジーが進歩してAIなどが登場し、人が必要とされにくい世の中になって人がどんどん暇になっていると考えると、一度切りの人生のなかで自分が何をすることが世の中にとって価値があるのかを考えて生きていかなければならなくなったのではないでしょうか。
日本は、課題先進国とよばれるほど顕著な社会課題を持っている国なので、若者がクリエイティブなアイデアで事業をつくり、SNSやクラウドファンディングなどのテクノロジーを利用して多くの人たちの共感を集めて、課題に対してアプローチしていくことが可能な時代になったのだと。
Activistと聞くと、大きな課題に果敢に立ち向かっていくようなイメージがありますが、どちらかというと、見つけた課題に共感する仲間を集めて、みんなで解決していこうよというのが実態ではないかと思います。
柳澤:時代背景については、先のお二人が話してくれた通りだと思います。
起業家は、もともと、何か社会貢献がしたくて事業を起こしているものだと思います。スタートがそうでない場合も、何かしらの社会貢献をしなくては会社が潰れます。当社も、自分たちが面白がるという意味と、面白がってくれる人を増やそうという社会貢献の意味を持って「面白法人」のコピーを掲げています。
「利益は、目的ではなく世の中を良くするための手段だ」という論理がありますが、私はそれに賛同できないんです。結局、利益を出すゲームは面白くなってくるものだからです。それが行き過ぎたという話は松本さんからあった通りです。
会社をスタートさせるときに「法人」という堅いものに、「面白さ」を組み合わせて血の通うものにしたら、行き過ぎることはないだろうとの思いがありました。最近、組織を生き物のように捉える「ティール組織」がトレンドになって、私と同じような考えで会社を作りたいと考える人が増えてきたのを肌で感じています。
去年、「地域資本主義」という言葉を発信しました。これも、「面白法人」と同じように「資本主義」というグローバルで効率を求めるものと、正反対の「地域」を組み合わせての言葉です。この言葉を発信し始めてから、入社を希望する人材の質がまったく変わりました。お金の稼ぎ方にこだわりたいという人が集まるようになりました。
アメリカのActivist CEOと日本のActivist CEOの違いとは?
谷本:松本さんにぜひお伺いしたいのですが、金融という資本主義の象徴のような世界にでは、公益性や社会性とは正反対にある「効率」を追求することが正だと思うのです。そうした金融業界においても、社会貢献活動は重視されてきていますか?
松本:微妙な論点だと思います。資本主義にはいろいろと問題があるものの、社会全体の成長や富を考えたときに、仕組みとして優秀です。ただ、資本主義が拡大した結果、比例して問題の方も大きくなってきたということだと思います。ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)もこの流れの一つでしょう。
気をつけなければならないのが、アメリカでは投資家でenvironment(環境)系のActivistが、たとえばCO2排出企業の株をから売りしたうえで、企業に対して働きかけをして、株価を下げて儲けようとするケースが出てきています。課題解決活動は、一歩間違えると悪用されることもあるので、注意する必要もあります。
マスターカードの社外取締役を務めるなかで感じるのが、アメリカ企業規模は日本企業とはくらべものにならないほど大きくて、利益も大きく、地方公共団体よりも力があります。そのため、富の再分配なども政府に頼らず、自分たちでやらなければ間に合わないという側面もあります。金融機関も例外ではなく、この流れに入ってきています。
柳澤:「お金儲けが行き過ぎると世の中が悪くなってしまうから、お金のある人にルールを課す」というふうにすると、結局、利益を出す人ほど社会貢献をしやすくなるので、さらに利益を追求することになり、構造が変わりません。
だから、稼ぎ方の質をどう変え、その違いをどう可視化するかという方向性にもっていくことがポスト資本主義なのだと思います。
日本で、事業と関連しない分野での社会貢献を行うActivist CEOは出て来るか?
谷本:日本のソーシャルなCEOやActivist CEOは、事業をピボットできるようなかたちで社会貢献する傾向があるように思います。
一方、アメリカでは、たとえば、LGBTから、生まれもった性のトイレしか使用でいないのはおかしいという声が上がり、それに賛同する人が増えて、法案が通ったというようなケースも起きており、こうした声を挙げる人も「Activist」と呼ばれています。このようなタイプのActivist CEOは、日本でも今後、現れるでしょうか?
松本:日本は民主主義のようでいてお役所が非常に強く、「こんな発言をしたら、後でどんな不利益を被るだろう?」と躊躇してしまうのだと思います。
アメリカの場合、政府も企業もメディアも公の場で激しく言い合うけれど、後で政府が発言者へ制裁を加えることはないので、発言することに安心感があるのでしょう。
日本では、大企業になるほど、政府に握られているものも大きくなってしまうので、言いづらくなる風潮はあると思います。民主主義の不完全さのようなものを感じます。
谷本:これから日本でActivist CEOを数多く輩出するためにはどのようにしたら良いと思いますか。
米良:企業するときの仲間の集め方が昔と今では変わってきていると感じます。今は、やりたいことを発信すると共感する仲間が集まってくるというスタイルが主流で、発信者の哲学に基づく「アイデア」や「想い」を世の中にうまく伝える力がそのまま人を集める力となる。
そうした力のある人が起業家になっていて、顧客もそのスタイルで集めているので、事業とは関係のないことであっても「こんなことをしたい」と仲間に発信することはいまの若い起業家にとっては当たり前のことになっているのではないかと思います。
柳澤:いまの米良さんの話に関連して、一つ疑問が沸いたのですが、自社の事業に直結する社会課題に進んで取り組む場合に賛同する仲間が集まってくるのはわかりますが、そうでない課題に取り組むとActivist CEOが発信した場合、集まってくる仲間の質はどうなるんでしょうか?アメリカではどうですか?
松本:日本では「出る杭は打たれる」ので。最近、この傾向は弱まってきましたが、それでもアメリカのダイバーシティに対する許容度の高さにはまったく及びません。アメリカでは、誰かが変わったことを言ったら、それに共感できなくても「面白い」と認める風潮があります。
リーダーが社会貢献活動に取り組む意義 求められる役割
谷本:弊誌で取り上げたActivist CEOには起業家が多く、いわゆるサラリーマン経営者の方は少なかったのですが、今後は起業家以外のActivist CEOも活躍していくんでしょうか?
松本:社会が良くならないと経営は良くならないので、経営者にとって「社会を良くしていく」ことは大きなミッションだと思います。
さまざまなかたちで「発言」をしていかないと何も変わらないので、いくら発言したら足を引っ張られるといっても、日本でももっと発言する人が増えていくだろうと思います。
日本では、特に年齢の高い人達にとってメディアでの扱われ方は大きな影響を持つので、放っておくと「メディアの声が一番大きい声」のように思われてしまう。実際は、そうではないことも多いですよね。そういった意味でも、実際にビジネスの現場にいる人たちがもっと声を発していくべきだと思います。
柳澤:私が本格的にボランティア活動に関わるようになって8年が経ちます。資本主義ではお金を稼ぐために活動しますが、ボランティア活動では経済的には何も増えません。
ということは、「人より多い・少ない」といった評価から解放されるということなんです。それがどれだけ心の安定につながることなのかを実感しました。誰もがボランティア活動をすれば、社会全体で幸福度が上がると思います。
特に、人生の大半を経済活動に捧げている経営者がボランティア活動に関わることで、異質なエッセンスを取り込めるメリットがあると感じたので、本業とは異なる分野で社会貢献をする理由が理解できました。
柳澤 大輔氏(株式会社カヤック 代表取締役CEO)
米良:先ほどの「1-1-1モデル」のように、アメリカだと従業員も含めた社会貢献活動が盛んですが、日本だとまだ従業員にもボランティア活動のチャンスを与えるという企業は少ないと感じます。「みんなでやろう」と発言することが日本におけるリーダーの役割なのだと思います。
「人生100年時代」といわれるようになって、65歳で引退した後、35年間もあって、まだまだ体力・気力も衰えていないことを考えたときに、65歳で急にそれまで人生をかけてきたコミュニティから外れてしまうことがどれほど大きな変化なのか。実は、私自身、2年前にガンを患い、半年間、経営から離れた時期がありました。一時的でも、経営者というアイデンティティと、会社というコミュニティを失ったことが、ガンを宣告されるよりもつらいことでした。この経験から、帰属できるコミュニティを複数持つことの大切さを感じました。
クラウドファンディングもそうですが、社会貢献して感謝されることで、自分が必要とされ、そのコミュニティの一員であることを実感できるので、そうしたコミュニティが複数あることは、安全な社会をつくるためにも重要だと思います。このため、日本でも社会貢献活動がもっと広がって欲しいと思っています。
米良 はるか氏(READYFOR株式会社 代表取締役CEO)
企業として社会貢献活動に取り組むための求心力は?
谷本:Activist CEOというと、どうしても発言する内容に注目が集まりがちですが、社会を良くするための先導者と捉えると、日本のリーダーも変わらなくてはいけないのでしょうね。
これを前提とすると、日本の企業がこれまで株価や利益を追求してきたことに代えて今後、何を理想として活動していけば良いのでしょうか?
松本:企業のあり方も、そこで働く人たちの働き方も、どんどん多様化しています。ダイバーシティを認めることは大切ですが、ある程度はベクトルを揃えないと出力もできません。ベクトルを合わせたうえで、サービスなり利益なり幸福なりを求め、社会や従業員、株主に分配するというのが良いでしょう。
ベクトルを合わせるという話でいえば、最近、当社のグループに入ったコインチェック株式会社のメンバーの話を聞いていると、考え方や、そもそもの出発点が自分とはまったく異なるのです。そこで、意見がぶつかったときに、私も骨組みまでは譲歩できないので、ギリギリの骨組みを残しながら修正しています従来の資本主義をどれだけ修正するかということだと思います。
谷本:具体的には、何を見てどのように修正すれば良いのでしょうか?
松本:結局、誰にとっても、一番気になるのは「自分」だと思うので、評価のされ方、給与、仕事の時間の使い方といった辺りを修正することになると思います。ただ、組織を修正したときに金融業界の組織にあるような分散型にしてしまうと、ベクトルを合わせられなくなるのではないかという危惧はあります。
谷本:柳澤さんと米良さんにぜひお伺いしたいのですが、先ほど松本さんが「出発点が違う」とおっしゃいましたが、出発点さえも多様化するなかで、仲間たち一人ひとりのモチベーション維持のためにどんな薪をくべているんでしょう。何を組織の求心力としていらっしゃいますか?
米良:言われつくしていることではありますが「ビジョン、ミッション」といったことでしょうか。ただ、それは若い起業家に限らず、起業家なら誰でも何らかの課題を見つけて、解決のために動き始めて、収益が上がり、また新しい課題が見つかって…というのを繰り返して大きくなっていると思います。長く続く企業には必ず理念がありますし。
ただ、会社が大きくなって上場したりすると、当初のミッションよりも資本を増やすゲームに入っていってしまうというだけなのではないかと。
私は、起業する前に同世代の起業家たちと交流させていただくなど昔からお世話になっているのですが、本業ですばらしく成功しているだけでなく、ヒューマン・ライツ・ウォッチを始めさまざまなNPO、NGOの活動をサポートされています。年齢や分野に関係なく、チャレンジャーを応援していこうという思いをお持ちの方なんです。
松本さんのように影響力のある人が、新しいチャレンジを支援していく社会が良い社会だということは一つ言えると思います。
柳澤:私は「自分が、どんな組織で働きたいか?」ということ常に考えてきました。社長が常に引っ張っていくスタイルの会社はしんどいなと思ったので、今でも私が全社向けに話をするのは年に一回です。社長というのは一般的に説得が上手いものですが、私自身はあまり得意ではありません。経営者にうまく言いくるめられて乗せられて働くのは嫌だと。
やはり、描いたビジョンをどれだけ実現できるかが求心力になると思います。ただ、「時価総額でNo.1を目指す」というのも一つのビジョンだし、人によってやりがいは違うと思うので、それぞれあって良いと思います。私の場合、やりがいのなかにオリジナリティが含まれるので、他社と似たようなビジョンに掲げている会社では働きたくなかったので「面白法人」を掲げました。
ただ、「面白法人」だけではいずれ求心力が落ちてくるだろうという直観があったため、鎌倉を拠点に選びました。鎌倉で働きたい人は辞めにくいだろうと(笑)。
先ほど、米良さんの話に「人生100年時代」が出ましたが、100年も頭がもたないだろうと思うんです。ある程度、早い段階で多くの人が認知症になるだろうと。認知症になると、人とつながることが難しくなります。それ以降のことを考えると、人以外のものとのつながりを持つことも大事になってきます。
たとえば、海や山に入っていると、自然とつながっている感覚や充足感が得られます。また、ロボットとつながるという未来もあると思います。
谷本:お話を伺っていると、アメリカ型のActivist CEOは人種差別や宗教観の違いといったわかりやすい課題があり、そこに対して発言するという手法を取りますが、日本ではまったく異なるようです。課題先進国とはいわれながらも大きな課題がないなかで、喜んでもらえることいったことの方がエネルギー源になりやすく、そこからActivist CEOが生まれるのかもしれませんね。
松本:私は、ヒューマン・ライツ・ウォッチの活動を始めたばかりの頃は、日本には人権問題はないと思っていたんです。世界で起きている人権問題を日本人にも知ってもらい、金銭的な援助などで貢献していこうと考えていました。ところが、しばらく活動を続けるうちに、日本にも数多くの人権問題があることがわかってきました。一見、とても平和なように見えて、差別などがあり、不都合な真実が隠されているのです。
こうした人権侵害について、情報発信していかないと、小さな問題だと捉えられ兼ねない。「アメリカの人種差別は、大きな問題だから取り上げられるんだ」と片付けられてしまう。
だから、みんなで問題をピックアップして、社会に示して、みんなで変えようと声をかけていかないといけないんだと思います。
米良:原体験のなかで差別を受けたりマイノリティになったり、社会に助けてもらわなければならない経験をしたことがないと、課題感を持ちづらいのだと思います。
だからこそ、さまざまな人と出会うチャンスがないと課題を知りえないし、課題感を持っている側の人も発信のしようがない。リーダーは、課題を抱えている現場に行って実際に体験して、発信するべきだと思うし、そのためには、もっと現場にタッチできる場を作る必要があると思います。
松本:私もまったくそう思います。マネックスで、役員や社員に仕事とは関係のないコミュニティに最低1つは関わるようにとよく言っているのですが、実際に現場に行かないとわからないですから。
谷本:同じところにい続けると、課題を発見したり、もう少し小さな違和感をキャッチする感性は、だんだん鈍ってくるものだと思うのですが、皆さんはどんなことに気をつけていらっしゃいますか?
米良:未来に向けて自分たちが出すべき価値を問い続け、方向性を示すのが、会社での自分の役割だと思っているので、課題を見つけたらすぐに動けるように準備しながら現場で一次情報を取れる状態をキープしなくてはならないと考えて実行しています。
松本:私の場合、ヒューマン・ライツ・ウォッチのほかにも、日本のNPO法人「ETIC.(エティック)」の理事もしているので、理事会で報告を聞くだけで新たな課題がどんどん出てくるんです。そういった場で聞いた内容から派生して新たな課題に気づくケースもあります。
谷本:最後に、世の中をより良いものにするために、今後、どのような活動をしていきたいかを伺います。
松本:自分の言うことがすべて正しいわけではないけれど、どんどん意見を言っていかないと何も変わらないので、発信し続けたいと思います。
米良:このセッションのなかでいろいろと考えさせられました。来場者の皆さんも、身近な課題を見つけたら、一歩踏み込んで行って欲しいと思います。リーダーはそれなりに大きな発言権を持っていますが、たとえSNSでフォロワーが少ない方でも本質的な発言をすると一気に拡散されて大きな運動になる可能性を秘めています。すべての一人ひとりが課題を見つけて発信でき、挑戦できるような社会をつくるための働きかけができたらいいなと思います。
柳澤:「人のつながりを可視化して使い方にこだわろう」というテーマでブロックチェーンを活用した地域通貨をつくって実証実験を年内に始める予定です。いままでに「世の中を変えよう」という切り口で発信したことはなく、楽しさや面白さを求めて行動した結果、良くなっているというのが実感です。
谷本:「Activist CEO」という難しいテーマでディスカッションしていただき、ありがとうございました。たくさんの示唆をいただけたと感じています。なかなかまとめも難しいのですが、Activistという言葉の通り、CEOでなくても一人ひとりが課題について思うだけではなく行動することが、たとえ社会のためにならなくても自分自身の一方につながり、それが社会の大きなムーブメントにつながるのではないかと思います。