【#野望宣言】マーケと営業の垣根をなくす!CSO直下にマーケと営業を配置することで「顧客視点」と「指名買い」を実現する組織に
最終更新日:2025/10/16

【この記事の要約】
ナイル株式会社の土居氏へのインタビュー後編です。オウンドメディアを事業として成功させるための組織論とKPI設計について、具体的なノウハウが語られています。
オウンドメディアは、単なる記事制作チームではなく、「編集」「Webマーケ(SEO/分析)」「セールス」の3つの機能が連携する、一つの事業体として捉えるべきだと説かれています。そして、その成果を正しく評価するために、PV数だけでなく、最終的な売上(KGI)に繋がる中間指標(KPI)を、各部門の役割に応じて設定することの重要性が強調されています。事業貢献度を可視化し、組織としてPDCAを回す仕組みを作ることが、オウンドメディアを成功に導く鍵です。
【よくある質問と回答】
Q1. SEOで成果を出すために、最も重要な考え方は何ですか?
A1. テクニカルな手法も重要ですが、最も大切なのは「顧客の課題解決」という視点です。検索キーワードの裏側にある顧客の状況や感情といった「検索意図」を深く理解し、その顧客が本当に求めている情報、さらには期待を超えるような価値あるコンテンツを提供し続けることが、SEO成功の本質です。
Q2. 成功するオウンドメディアと、そうでないメディアの違いは何ですか?
A2. 成功するオウンドメディアは、単に記事を更新するだけでなく、「事業に貢献する」という明確な目的と戦略を持っています。どのような顧客に、どのような価値を提供し、どうビジネスの成果に繋げるのかが設計されています。目的が曖昧なまま運営されているメディアは、成果を出すのが難しくなります。
Q3. コンテンツの「質」を高め、他社と差別化するにはどうすれば良いですか?
A3. 読者の期待を超える「WOW!体験」を提供することが重要です。そのためには、一次情報(独自調査や専門家へのインタビューなど)を取り入れ、情報の信頼性と独自性を担保することが有効です。他サイトの情報をまとめただけではない、そのページでしか得られない深い知見や具体的な解決策を提示することが、Googleからの評価と読者の信頼の両方を獲得する鍵となります。
【ここから本文】
Web業界にいて「ナイル」の社名を知らない人はいないといっても過言ではないほど、SEOで確固たる地位を築いているナイル株式会社 。
日頃、「ナイルのSEO相談室 (旧:SEO HACKS)」「Content Hub 」のメディアからノウハウを得ているという方も少なくないでしょう。
そんな同社が2020年10月1日付けで事業CSO(Chief Sales Officer)を新設し、新卒入社後8年間デジタルマーケティング事業部の成長に貢献してきた岸 穂太佳氏(@hoda_Nyle)が就任。
セールスと広報PR、マーケティング、インサイドセールスを束ねる岸氏に、組織体制変更の狙いやCSOとしての野望について、話を伺いました。
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>【#成功のバトン】SEOで有名なナイルは社員全員でメディアを運用する体制を構築している

- Profile
- 岸 穂太佳さん
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デジタルマーケティング事業部 事業CSO(Cheif Sales Officer)
ナイル入社後、新卒からコンサルを経験し200社以上の実績を作り、営業にジョブチェンジ。2018年にマネージャーに昇格。マネージャー就任後、営業体制を改革、SFAを駆使して営業の効率化を実現、受注率を約3倍に引き上げた実績を持つ。現在は事業CSOとして、広報PR、マーケティング、インサイドセールス、セールスを一貫してマネジメントしながら、主にBtoBの企業に向け提案活動を行う。
(Twitter:@hoda_Nyle )
【ナイル株式会社 デジタルマーケティング事業部が運営するメディア】
●ナイルのSEO相談室:https://www.seohacks.net/
●Content hub:https://cont-hub.com/
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1.CSO立ち上げの背景には「マーケティング部門と営業部門の垣根をなくすため」「顧客体験の向上」「事業の活性化」が

ナイル株式会社 デジタルマーケティング事業部 事業CSO 岸 穂太佳様
マーケティング部門と営業部門の垣根をなくす

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編集部

ナイル
岸さん
一つ目が「マーケティング(PR)と営業の垣根をなくすこと」。
いままでマーケと営業が別のユニットで連携が取れていなかったので、今回フィールドセールスを行う「セールスユニット」、広報PR、マーケティング、インサイドセールスを行う「PRユニット」をまとめて、CSOの私が見ています。

以前は、代表取締役がPRユニットを見ていましたが、今後、インサイドセールスにも注力する中でセールスユニットとの連携を強めしたいという展望が前提にあり、インサイドセールスがリードをセールスにトスアップする際もこの間の垣根はない方が得策だと考え、CSOの管轄にセールスユニットだけでなくPRユニットも組み込みました。

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編集部

ナイル
岸さん
対面で商談するセールスとは違い、インサイドセールスの場合はWeb上のユーザー行動に理解がある人が電話をかけた方が良いと考えているので、PRユニットにいたマーケティングの知識がある人をインサイドセールスに当てています。
顧客体験の向上

ナイル
岸さん
これまでは、お問い合わせのあったリードに対して、フィールドセールスが訪問していたのですが、決して低額の商材ではないため、お問い合わせボタンを押すのにもけっこうなハードルがありました。
だから、お問い合わせに至る前のリードにアプローチすることで検討ハードルを下げることを考えました。
今まで、お問い合わせ後のお客様だけに接していても、お問い合わせするまでにお客様側が社内説得などでどれだけ頑張ってくれているか、といったことが見えにくかった。
たとえば、「これから取り組みたいが、上司にどうやってSEOの価値を伝えたら良いかわからない」とか「どう社内を説得して稟議を通して実施したら良いかわからない」というお客様が、実はすごく多いんです。 そこで、この段階のお客様にアプローチして、一度話を聞いてみよう、と。
私としても、そういったお客様にアプローチした経験がなかったので、お客様のニーズを知りたい気持ちがすごく強かったんですね。この段階のお客様のニーズをフィールドセールスへフィードバックする意義も大きいですし、比較検討を行う前の段階のお客様にアドバイスすることで信頼を獲得していき、お問い合わせフォームを通さずともインサイドセールスへつなげてプランニングを行っていこうという戦略を考えました。


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編集部

ナイル
岸さん
事前にお客様のビジネスに関連するSEO調査をして、どのぐらいの伸び代があるかを確認してお伝えもしています。SEOのプロの目から見て、どのくらい伸び代があるかを分析してもらうことは、お客様の一つ判断軸になると思うので。

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編集部

ナイル
岸さん
今後のTo Doを明確にアドバイスし、資料提供なども行いながら社内説得を進めてもらって、「方向性が決まったらまたご相談に乗ります」と伝えるのみです。

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編集部

ナイル
岸さん

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編集部

ナイル
岸さん
事業の活性化

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編集部

ナイル
岸さん
新組織体制になって、中間ラインであるユニットリーダーから運用面(COO)・セールス面(CSO)・事業戦略面(CEO)の3人の間で事業の成長戦略・方向性を固められるようになり、戦略立て~実施までのスピード感が格段に向上しました。
あと、当社の売上構成として、新規顧客開拓と既存顧客からのアップセルの2軸でやっているのですが、新規はセールスユニットが担っていますが、既存からのアップセルは運用(コンサルティング)の方がメインで担保しています。なので、組織変更前まで「売上をつくる」対応はセールス・コンサルで謎の垣根がありました。
ただ、今回、私がCSOに立ったことで運用側のCOOとも密にコミュニケーションが取れるようになり、事業部として「売上をつくる工夫」を図れるようになりました。これで、事業全体の売上向上を考えられるようになったんです。

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編集部

ナイル
岸さん
ただ、コンサルタントだと、営業経験のないメンバーもいるため「売れそうなタイミング」を感じ取ることが難しい面があります。
わかりやすい例でいうと、決算が近づいているお客様がいたときに、どのタイミングで提案すれば今期、または次期の予算に組み込んでもらえるかといった思考を持てるかも営業力なので、その辺りのアドバイスをCSOとして行っています。
今後は、もっとセールスメンバーをコンサルメンバーと組ませてシナジーを生んでいくこともやっていきたいですね。
ところで、クロスセルというと、どんな商材があるのですか?

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編集部

ナイル
岸さん
いわゆる「集客」についてはSEOで担保できますが、集客したユーザーをコンバージョンまでつなげないと、結果的な事業インパクトは小さく、リターンも少ないため、SEOだけ行っていると、結果的にSEO自体の費用対効果も悪く見えます。
そこで当社では、流入してきたユーザーの転換率を上げるために、分析を専門に行うアナリスト部隊が、お客様の流入状況やサイトのパフォーマンスを定量的・定性的に分析を行う提案をします。
当社では、SEOの集客面だけでなく最終コンバージョンを増やすところまで考え、トータルサポートできることがWebマーケティングのコンサルにおいて本質だと考えております。

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編集部

ナイル
岸さん
当社では、月次でのお付き合いがあるお客様に、毎月「SEOニュースレポート」を提供していて、海外国内のSEO情報や社内の研究結果をまとめて配信しております。毎月お付き合いいただいているお客様にも、SEOのノウハウを社内に蓄えられるようにしていて、これも顧客満足度向上施策の一つでもあります。
2.マーケティングとセールスでの指標のギャップと摺り合わせ方
もともとマーケティング側とセールス側で指標のギャップはなかった

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編集部

ナイル
岸さん
一般的に、マーケは「総問い合わせ数」などの指標を置いていて、最終的に「何件のリードを集められたか」を追うと思うのですが、当社の場合はすべて「有効商談」です。マーケ側は次に対応するセールスユニットが求める「有効商談」を置くことで、マーケと営業の溝をあえてなくしています。
当社では、マッチするお客様の条件を設けていて、それに当てはまるものを「有効商談」としています。たとえば、金額感や導入時期、期待値などです。当社としても多くのお客様にご相談いただくことは嬉しい反面、期待値やご予算感で要望の期待に添えない内容もあり、その場合理由をお伝えした上でお断りさせていただくこともあります。
理由は単純で、マッチしない中で無理に契約いただいてもお互いがハッピーになれないからです。

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編集部

ナイル
岸さん
インサイドセールスが対応しているお問い合わせ前のお客様の場合、検討中の段階なので、金額感が変わることはよくあるため、細かいヒアリングはフィールドセールスが行います。
インサイドセールスは、お客様の方から「ナイルさんの商材について、話を聞いてみたい」と言われて初めて有効商談化するので、インサイドセールス側の役割は、ナイルの商材理解と信頼獲得なのです。つまり、アポイントを獲得した段階ではリードになる前段階なので有効商談にはしていません。


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編集部

ナイル
岸さん
実は私自身、昔はナイルでマーケティングのコンサルをやっていたんですよ。本当は、営業をやりたくなくてコンサルとして入社したんですがね(笑)。二転三転して営業に異動になり、営業で成果を残して営業のマネージャーになって、今に至るという(笑)。営業もコンサルも経験しているので、マーケ側の気持ちもすごくよくわかります。
マーケティング部門と営業部門でのギャップは「現場でのコミュニケーション増」で摺り合わせる


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編集部

ナイル
岸さん
今回、マーケ担当者を営業部に配属した背景も、営業メンバーには詳しく伝えてチームを構成しました。マーケのことを理解していることもあり、特にその時に反対する人はいなかったですね。今では、マーケ担当者にも営業部のミーティングに参加してもらったり、営業部からマーケ担当者への要望を伝えたり、逆も行ったりと、現場でのコミュニケーションを増やしてお互いのギャップを埋めてもらすように努めています。

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編集部

ナイル
岸さん
ただ、ナイルでは、当社だけのサービスで完結させようとは考えていなくて、パートナー企業が提供するサービスと連携したりもするので、金額よりも「Webマーケに対してどのくらいの熱量で行えるのか」を見ています。
つまり、SEOといった集客面の改善だけでなく、Web全体を強めていきたいと本気で考えているのか?というところです。そこが、ナイルが一番バリューが発揮できるポイントだからです。
たとえば、BtoBのお客様で「コロナ禍でアナログな営業ができなくなってWeb回りを本当に強めていきたい」というケースも多くあります。その場合、現状の体制や事業状況を確認し、全体でどれくらいマーケ予算として投資いただけるかをヒアリング・交渉した上で熱量を測ります。
もし、お取り組みが可能な場合、Webの強化に必要なソリューションを上流から設計します。Webマーケティングは中長期的にPDCAを回して継続して行うことが条件となるため、短期・中長期で出る効果をフェーズとして分けて設計し、お客様の社内でも「始めたばかりだけどナイルに投資して良かった」と感じてもらえる工夫をしています。
この辺りの「有効商談の定義」は2021年からマーケティングの知見を活かして、もっと定量的に分析できるように準備しているので、またどこかでお話できればと思います。
CSOを立ち上げられてから、営業側での改善点はありましたか?

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ナイル
岸さん
ただ、問い合わせ前のニーズがわかってきたので、早速、マーケ担当者と新商材を開発しました。インサイドセールスでの反応が良かったら、営業からもアプローチしてもらう予定です。

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ナイル
岸さん

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ナイル
岸さん
新しい商材や取り組みは率先して行い、そこでベストプラクティスを私が作って営業メンバーに展開するという方法はこれまでも多かったですね。
あと、少数精鋭の営業メンバーで構成しているのでリソース面も限界があります。なので、新しいことに取り組んでもらうよりも既存の商材の最大化や提案の質を上げることに注力してもらい、売上の最大化を目指しています。
私が永遠にインサイドセールスの現場にいるわけではないので、ノウハウをどんどん引き継いでいって、徐々にインサイドセールスを拡大していけたら良いなと思っています。
3.事業成長のための人事考課づくりは、「能力評価」と「行動評価」の2軸で


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ナイル
岸さん

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ナイル
岸さん
また、結果を評価する際は、短期的(一時的)に成し遂げたものなのか、それとも中長期的に成し遂げられるスキルなのかを見るようにしています。重要なのは後者なので、半期や四半期の行動からどう成長したのか、今後どう活かせるのかを考えます。

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ナイル
岸さん
マーケがインサイドセールスを担うことで、セールスとの垣根もなくなりました。もともと代表取締役が見ていた時代から本質を捉えていたので、商談の質も重視していたのが良かったのだと思います。
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4.【今後の展望】目的は「指名買い」を増やすこと、意識しているのは「顧客視点」

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岸さん

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岸さん
たとえば、コンサルティングを行う上でもクライアントの先のお客様のことまで考え、Webサイトの中身も含めて設計を行い、訪れたユーザーにとって使いやすいWebサイトを作るようにしています。なおかつ、検索されたら上位に表示されやすいものを目指します。なので、ユーザーヒアリングなどは、けっこう泥臭く行いますね。
順位だけでなく、サイト内の顧客体験が良ければ、ユーザーはそのWebサイトのファンになってくれるので、最終的なコンバージョンにもつながりやすくなりますし。
このような顧客視点を持ってコンサルティングを行っている事実についてはあまりうまくPRできていないので、これから打ち出していきたいですね。
最終的には「指名買い」を狙っていくことと、マーケとセールスの掛け算ができる組織に育てたいです。垣根をなくした上で、マーケも営業ができないといけないし、営業もマーケできないといけない組織を作りたいと思っています。

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ナイル
岸さん
当社が扱うのがパッケージ商材ではないため、お客様の課題に合った商材がわかっていないと提案できないんですね。工数はかかりますが、お客様の事業成長に一番合ったソリューションを提供できるので、その価値があると思っています。
また、問い合わせして初めて営業が出てくるのではなく、その前に営業マンを知ってもらっていることで「この営業マンが良い」と指名されるのが理想です。そのためにも、営業も外への発信を強めていきたいと考えています。

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編集部

ナイル
岸さん
運用部門の指標ではありますが、ひいては既存のアップセルにもつながるので、結果的な売上につながってくるわけです。なので、運用側の指標であっても結局は全員が関与しないといけないということですね。
CSOとしてのミッション・指標

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ナイル
岸さん
まずはリードの母数を増やすことに着手しましたが、次はロイヤルカスタマーのヒアリングを行って追加提案の方向性を考え、課題に対して既存アップセルを増やすことに注力したいと考えています。

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ナイル
岸さん
ただ、7割とはいえ、ターゲット層とのマッチ度でいうとまだ満足できない部分もあります。もう一つ強靭なチャネルを持ちたいというのも、広報PRを始めたきっかけの一つです。広報PRはほとんどやってこなかったので伸び代はあると思っています。広報PRでの効果が出てくればオウンドメディアとのシナジーも出てくると期待していて、最終的にどのチャネルから問い合わせが来ても良いと思っています。

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ナイル
岸さん
もちろん「コンペをやりたくない」ということではなく、できることならファンになってくれたお客様とご契約させていただく方がWin-Winだと思っているので、マーケ・広報周りを強化し「ナイルさんでお願いします!」と言ってもらえる状況を早く作りたいです。
広報回りで行っている「Twitter道場」もその一環で、いろんな人にナイルの良さを知ってもらい、最終的には指名してもらうことを目指して運用しています。
株式会社ナイルの関連リンク
ナイル流SEO資料 ダウンロードページ:https://www.seohacks.net/ebook/4377_form/
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【English summary】
This is the second part of an interview with Mr. Doi from Nyle Inc. It details specific know-how on organizational theory and KPI design for making owned media a successful business.
It argues that owned media should not be seen merely as an article production team, but as a business entity where three functions—"Editing," "Web Marketing (SEO/Analysis)," and "Sales"—collaborate. It also emphasizes the importance of setting Key Performance Indicators (KPIs) linked to the final sales (KGI), not just PVs, according to the role of each department, in order to properly evaluate performance. The key to leading owned media to success is to visualize its contribution to the business and create a system for the organization to run a PDCA cycle.