D2C(Direct to Consumer)とは?意味、成功事例、ブランド一覧をご紹介!
最終更新日:2023/10/26
D2C(Direct to Consumer)とは、企業や個人が製品の企画・製造・販売を一貫して行うビジネスモデルのことです。
とくに、ECサイトを中心とした通信販売のビジネスで、自社で企画・製造した商品を自社のチャネルを通して消費者に直接販売するモデルを指しています。
コロナ禍による通信販売需要の高まりもあり、近年、注目を集めるこのD2Cについて、意味・成功事例・ブランド事例などをわかりやすくまとめてご紹介します。
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D2Cの意味は?わかりやすく解説
D2C(Direct to Consumer)とは、企業や個人が製品の企画・製造・販売を一貫して行い、代理店や流通、小売店等を介さずに消費者に直接的に販売するビジネスモデルのことを指します。
読み方は「ダイレクト・トゥ・コンシューマー」と読み、DtoCと書かれる場合もあります。
D2Cのビジネスモデルの特徴は、商品を企画・開発する段階で、開発者が消費者の意見や要望に直接耳を傾け、これまでにない独自性の高い商品を作り上げるという点にあります。
このような企画・開発背景を持つ商品は「D2Cブランド」として独自のブランドを構築することを目指しており、大量生産・大量消費を前提とした量産品と一線を画すジャンルとなっています。
また、D2Cに似た紛らわしい言葉として「B2B(BtoB)」「B2C(BtoC)」は、多くの方によく知られていると思います。
企業が企業に対して商品・サービスを提供するB2BとD2Cの違いは明らかですが、どちらも(一般消費者)との直接取引を指すB2CとD2Cの違いはどんなところにあるのでしょうか?
次の項目で解説します。
D2CとB2Cの違い
B2C(BtoC)は、企業が一般消費者に直接、商品やサービスを提供するビジネスモデルのことを言います。
B2BやB2Cが「誰と誰」のビジネスかをわかりやすく分類する言葉としてビジネス全般に使われるのに対し、D2Cは主に商品開発や通信販売分野の用語として、どのように商品を企画・製造・販売するかを表す言葉として使われています。
同じように商品の企画・製造販売・販売手法の違いを表す言葉として、もうひとつD2Cの比較対象となるのは「メーカー」です。
メーカーは、D2Cの場合と同様に自社で商品の企画・製造を行いますが、販売経路は代理店・流通・小売店なども含まれます。
コンシューマーに直接商品を届けることに特化しているかどうかに二者の大きな違いがあります。
D2CとECの違い
さらに似た言葉として「EC」があります。ECはElectronic Commerceの略で、インターネットなどのネットワークを介して商品・サービスの売買を行う取り引き全般を意味します。
また、インターネット上で商品を売買するWEBサイトは一般的に「ECサイト」と呼ばれています。
D2Cのビジネスモデルで開発された商品のほとんどは、商品を開発・製造した会社が運営するECサイトで販売されており、D2CブランドにとってECはもっとも重要な販売チャネルと言えます。
なぜ代理店を介さないで販売するの?
では、なぜD2Cという代理店や小売店を介さないビジネスモデルが注目を集めているのでしょうか?
近年の市場の変化と背景から、その理由を紐解きます。
B2Cブランドが増加する市場背景
SNSの普及
SNSの爆発的な普及により、企業は消費者と直接的なコミュニケーションを取ることが可能になりました。
これにより、商品やサービスを開発する会社は、消費者の声を商品開発に活かすことが容易になりました。
また、SNS広告などを中心としたアドテクの進化により、商品のターゲットとなる層を細かくセグメントし、価値を感じてもらえる層にダイレクトにアピールすることもできるようにもなりました。
さらにSNSは、購入者が自ら感想や評判を拡散してくれる効果もあります。ユニークなD2C商品の購入体験はシェアされやすく、UGCの促進にも役立ちます。
感染症対策としてステイホームが推進されて以降、人々のインターネット利用時間、通信販売需要は増加傾向にあります。
このような外的要因も後押しし、開発会社はオンライン上でのよりユニークな買い物体験で、新たな市場を築くことを目指しています。
消費者ニーズの多様化
スマートフォンが普及し、あらゆる情報にいつでもアクセスできる時代、消費者の行動やニーズも大きく変化しています。
例えば、商品やサービスをすでに購入した人の口コミや評判は、購入検討の判断規準を大きく変えました。
この背景には、自分のこだわりを反映した商品やサービスの体験談をSNS等を通じて共有することを楽しむ人が増えていることもあります。
サブスクリプション型サービスの一般化により、商品を「所有する」のではなく、「利用する」という価値観も広がりました。
消費者が、自身のニーズに合った商品やサービスを、「探す」「見つける」「出会う」「選ぶ」「購入する」「利用する」ことが縦横無尽にできる時代。
多様なニーズのそれぞれにスポットを宛て、独自性のある商品を企画していくアプローチがD2Cにつながっています。
海外メーカーの成功
日本市場においては、マーケティング先進国である欧米の成功事例も大きく影響します。
欧米では、2010年頃からD2Cのビジネスモデルで成功するブランドが出てきており、アパレル・化粧品・寝具など、さまざまな分野で個性的なB2Cブランドが誕生。
日本でも2010年代半ばから、スタートアップ企業を中心に独自の商品づくりに取り組む企業が増え、近年では大手企業が従来型のメーカー業と並行して、一事業部門としてD2Cのビジネスモデルの取り組む事例も出てきています。
これらのD2Cブランドの成功事例については、後ほど詳しくご紹介します。
モールビジネスの台頭
従来、商品の企画・開発はマス市場をターゲットとしていたため、そのマーケティングや商品開発には莫大なコストがかかりました。
また、流通や小売店との強力なコネクションがなければ有力な販売網を確保することができない、不特定多数の消費者に商品を認知してもらうためには高額な広告費がかかるなどの課題もありました。
これらの背景は、大手メーカーが量産品を多くの消費者に届ける仕組みとして成り立ってきましたが、現在は状況が異なります。
スマートフォンやSNSの普及により、メーカーが消費者の声を集めたり、双方向のコミュニケーションを取ることは非常に簡単になりました。
販売チャネルも、自社でECサイトを立ち上げることはすぐにできます。広告も、WEB広告のテクノロジーの進化によって、セグメントされたターゲットに少額から、効率よく出せるようになりました。
このような背景から、限定された市場をターゲットとし、デジタルマーケティングの利点を駆使するD2Cのビジネスモデルは参入障壁が低くなっており、多くのスタートアップ企業がチャレンジしている状況があります。
D2Cの市場規模
では、D2Cのビジネスモデルを活用した市場規模は、現在どの程度になっているのでしょうか。
株式会社売れるネット広告社が調査した、デジタルD2Cの市場動向調査によると、日本の2020年のデジタルD2C市場は2兆2,200億円に達する見通しであり、2025年には3兆円に達すると予測されています(※1)。
経済産業省が発表する「電子商取引に関する市場調査」によると、2019年度の物販系分野のBtoC-EC市場規模は19.4兆円(※2)であり、全体の消費者向け電子商取引全体の約10%をD2C分野の取り引きが占めていることが読み取れます。
2020年度は新型コロナウィルスの影響により、さらにEC市場規模が拡大していることが予想されることもあり、今後の伸びしろに注目です。
※2出典:経済産業省・2019年度電子商取引に関する市場調査より(2020年7月発表)
D2Cの主な人気ブランド一覧
では、すでに展開されているD2Cの人気ブランドにはどのようなものがあるのでしょうか。
海外・国内の事例を業界別に分けてラインナップします。
海外の事例
アパレル
化粧品・シャンプー
寝具
食品・飲料
サプリメント
ペット関連
日本の事例
アパレル
化粧品・シャンプー
●PHOEBE BEAUTY UP(フィービー・ビューティーアップ)
画像引用:PHOEBE BEAUTY UP(フィービー・ビューティーアップ)
美容に関するオウンドメディからスタートしたコスメブランド。
食品・飲料
サプリメント
ペット関連
>各ブランドの詳細はこちらの記事もチェックしてください。
関連リンク
D2Cの主な人気ブランド一覧まとめました!日本・海外をそれぞれの業界にわけてご紹介
D2Cの成功事例
上記のなかから、とくに注目すべきD2Cの代表的な成功事例をピックアップしてご紹介します。
アイウェアブランド / Warby Parker
画像引用:Warby Parker
ニューヨーク発のメガネブランド、Warby Parker(ワービー・パーカー)は、世界で初めてD2Cのビジネスモデルで成功したと言われるブランドです。高価なメガネが主流だった米国において、自社でデザイン・製造した低価格で質の高い商品を販売することで、消費者の支持を得ました。また、SNSを駆使したPR戦略にも長けていました。同社では商品を自宅に郵送して試着できるサービスを実施しており、顧客が試着画像にハッシュタグを付けてSNSに公開すると、ブランドがアドバイスくれるサービスを実施しました。このように顧客とSNS上でコミュニケーションをすることが、マーケティングやブランド認知につながったと言われています。同社は2015年、革新的なビジネスにフォーカスした米国メディア「Fast Company」誌上で、「世界で最もイノベーティブな会社」として選ばれています。
寝具ブランド / Casper
画像引用:Casper
高品質な寝具やマットレスを販売するCasper(キャスパー)もニューヨーク発のブランドです。2年間で約100億円の驚異的な売り上げを達成、2020年にD2C企業初の株式上場を果たしたことで注目を集めました。同社は、デジタル戦略に力を入れており、睡眠トラッカーアプリや睡眠をサポートするチャットボットなどを開発し、睡眠全般に関する情報で顧客とつながることを重視しています。この他にも、選びやすいミニマムな商品展開、インフルエンサーを活用したおしゃれなイメージの訴求、100日間返品無料など、さまざまなテクニックを駆使した販売戦略で、短期間で大きな成果を挙げています。
メンズコスメ / BULK HOMME
画像引用:BULK HOMME
BULK HOMME(バルクオム)は、日本においてD2Cという言葉がまだ浸透していなかった頃から展開されている、日本のデジタルD2Cの代表的な成功例です。デザイン性が高く、高品質な洗顔料・乳液・化粧水などを販売し、ブランドイメージを構築。インフルエンサーを活用したマーケティングを積極的に展開し、認知を高めました。D2Cのビジネスモデルから始まった同ブランドですが、現在は小売店にも商品を展開し、テレビCMなどのマスマーケティングも行っています。
D2C企業代表のSNSアカウント
前述のように、D2Cのビジネスモデルは、スモールスタートが可能なため、インフルエンサーやカリスマ性のある起業家など、一定数のファン層・フォロワーを持つ個人が、自身がプロデュースした商品でD2Cブランド・会社を立ち上げることもあります。
この項目では、D2Cのビジネスモデルで商品を販売するインフルエンサーや、D2C企業を運営する代表のSNSアカウントを一覧でご紹介します。
企業の中の人は、デジタルマーケティング戦略や、商品戦略、コミュニケーション戦略をどのように考えているのか…?SNSをまとめてチェックしたい時にご活用ください。
D2Cを成功させるためには?
これまでまとめてきたように、D2Cのビジネスモデルは「自社で開発した商品を、自社で売る」という点では、以前からあるものであり、さほど珍しいビジネスではありません。
しかし、現代の消費者のニーズに合った戦略を、デジタルマーケティングを駆使して実行することで、より新しい形のビジネスが生まれてきているように見えます。
現在活躍しているD2Cブランドの事業から、現代のデジタルD2Cの成功のヒントを読み解きました。
共感を生むストーリーがある
現在活躍しているD2Cブランドは「創業者の想いが先にあり、それを実現する手段を突き詰めたら結果的にD2Cのビジネスモデルに当てはまった」という場合と、「D2Cビジネスを戦略的に立ち上げ、どのようなブランドを構築するか考えた」という場合があるようです。
いずれにしても、ものづくりの背景や商品の利用シーンに何か新しいストーリーや、作り手の想いが感じられることは重要であり、商品やブランドへの共感が「語りたくなる」連鎖を生んでいることがポイントです。
データドリブンである
近年のD2Cのビジネスモデルは、ECやデジタルマーケティングを主戦場としており、データに基づいた戦略立案に強いスタートアップが成功をつかんでいる印象です。
例えば、SNSでの顧客とのコミュニケーションで得られる市場データ。
Amazonや楽天市場のような総合モールではなく、自社ECサイトだからこそ多くのデータが得られる顧客情報など、自社ですべてのデータを把握できるからこそ、データを読み解き、活用する能力がカギになります。
顧客体験を重視する
大手企業もD2C市場に参戦するなか、これまでの大手メーカーの商品開発と、D2Cブランドのものづくりの立ち位置を分けるのは「顧客体験」の追求にあるようです。
顧客体験とは、消費者が商品を選び、購入し、活用するなかでの一連の体験のことを指します。
実店舗での体験は「購入する」段階で途切れてしまうのに対し、インターネット上での販売は検討から購入後まで、消費者の体験を一貫してフォローすることができます。
例えば、生産者の想いや原材料の品質を伝えるコンテンツ、自分に合った商品が購入できる緻密なラインナップ、購入後の丁寧なアフターケアなど、量産品を購入したときには味わえない体験がD2C商品の価値を高めています。
高速なPDCAが回せる
D2Cの事業の多くはスタートアップ企業や大手企業の一事業部門など、比較的小規模な組織で運営されています。
コンパクトな組織の利点を活かし、スピード感を持って分析や改善を繰り返すことは、消費者のニーズにフィットした施策をスピーディに展開するのに役立ちます。
また、ECやデジタルマーケティングをベースにデータに基づいたPDCAサイクルを回すことも、成功への近道と言えるでしょう。
まとめ
これまでご紹介してきたように、D2Cは、開発会社が製品の企画・製造・販売を一貫して行い、消費者に直接的に販売するビジネスモデルとして市場を広げています。
その背景には、消費者ニーズの多様化があり、SNS等によって多様化するニーズを汲み取ったり、商品を直接消費者に届けたりすることがしやすくなっている時流がありました。
感染症の影響により、外出を控えなければいけない昨今。
ECサイトを通じて、付加価値の高い買い物体験ができるD2C商品は、これからますます増えていきそうです。