【目標計画】渋沢栄一から学ぶ「道徳と経済」 変化の激しい現代にも役立つビジネスマインドとは?
最終更新日:2023/10/27
2021年NHK大河ドラマ『青天を衝け』で主人公として描かれる渋沢栄一。
2024年から発行される新一万円札の顔としても知られる彼は、約500もの企業の育成に携わり、多くの社会公共事業にも尽力した「日本資本主義の父」と呼ばれる人物です。
渋沢栄一は、幕末から明治、大正にかけて、日本の経済・産業の礎を築いた偉大な功績で知られています。
しかしその偉業だけでなく、渋沢栄一が訴えた「道徳と経済の両立」という考え方も、多くの経営者をはじめ、ビジネス層に支持されています。
大河ドラマの放送を機に、現代のソーシャルマーケティングの考え方にもつながる、渋沢栄一のビジネスマインドとその功績について学んでみましょう。
渋沢栄一の偉業
はじめに、渋沢栄一はどんなことをした人なのか? その経歴や功績を振り返ってみましょう。
1840年(天保11年)、渋沢栄一は現在の埼玉県深谷市で農家の息子として誕生しました。
その後、20代では尊王攘夷思想の影響を受け、幕府を倒す計画を企てましたが、志士活動に行きづまり、のちの徳川慶喜となる一橋慶喜に仕えることとなります。
その後、慶喜が第15代将軍となったことで、意図せず幕臣となった渋沢栄一は、フランス・パリで行われる万博の使節団に選ばれ、ヨーロッパをまわり、西欧の先進的な経済制度や産業の仕組みを学びます。
大政奉還に伴い、帰国した渋沢栄一は、大隈重信の求めに応じて当時の大蔵省へ仕官。
ヨーロッパで学んだ株式会社の制度を取り入れ、日本初の株式会社となる「商法会所」を設立します(ちなみに、NHK大河ドラマ『青天を衝け』の序盤では、このような若き渋沢栄一が、幕末から明治へ向けて時代を切り拓く姿が描かれるようです)。
その後、大蔵省を辞職した渋沢栄一は、日本最初の銀行である第一国立銀行(現・みずほ銀行)、東京株式取引所を設立。
民間の実業家として、株式会社組織としての企業の創設・育成に尽力しました。
その結果、東京瓦斯(現・東京ガス)、王子製紙(現・王子製紙・日本製紙)、田園都市(現・東急)、麒麟麦酒(現・キリンホールディングス)、サッポロビール(現・サッポロホールディングス)など、現代にもつながる数々の企業が設立されています。
目標計画の参考になる渋沢栄一の思想
数々の偉大な功績とともに、渋沢栄一がその支持を高めているのが、個人や会社の利益を追求するだけでなく、道徳にもとづき、広く社会に利益をもたらすことを追求するという彼の思想です。
このような渋沢栄一の思想は、彼の代表的著書である『論語と算盤(そろばん)』にまとめられています。
著:渋沢 栄一 翻訳:守屋 淳 出版:ちくま新書(2010/2/8)
【目次の一例】
第1章:処世と信条
第2章:立志と学問
第3章:常識と習慣
第4章:仁義と富貴
第5章:理想と迷信
第6章:人格と修養
第7章:算盤と権利 など
引用元:ちくま新書
ここでは、現代のビジネスの目標設定やビジョン設計の参考にもなる渋沢栄一の考え方をご紹介します。
利益と道徳のバランスをとる
渋沢栄一は前述の『論語と算盤』のなかで「道徳経済合一説」という理念を打ち出しました。
これは、端的に言えば、仁義道徳を伴ったうえで、利益を追求せよという教えです。
当時、商売に学問はいらないと考えられていたなかで、渋沢栄一は論語の教えを探求し、その考えをビジネスに取り込みました。
この考え方は、「利益をあげても仁義道徳に基づいていなければ長続きできない」「利益を追求することと、仁義・道徳を重んじることの均衡(バランス)が重要である」といった、普遍的な思想として多くの著名な経営者にも影響を与えていると言います。
より良い社会を実現するために人とお金を集める
このような考え方は「合本主義(がっぽんしゅぎ)」と呼ばれ、狭義の意味では株式会社制度のことと捉えられています。
しかし、その本来の意味は、私益のために資本を集中するのではなく、より良い社会の実現(公益)のために、人とお金を集めることが重要であるという考え方だと言われています。
一部の経営者だけが富むのではなく、広く社会から資本を集め、その利益を多くの人に還元することが公益につながるという、現代の株式会社の考え方につながるものです。
まとめ
このように、渋沢栄一は日本初の銀行や株式会社の設立などの歴史に残る功績だけでなく、そのビジネスマインドでも、日本の経済・産業を牽引してきたことがわかります。
新一万円札の肖像への採用、大河ドラマの題材への採用などを機に、渋沢栄一の教えは、今、改めて見直されています。
より良い社会を求め、道徳を守りながら利益を追求するという渋沢栄一の考え方は、SDGs(持続可能な開発目標)やソーシャルマーケティングが注目される現代にも通じる視点であるとも言えます。
渋沢栄一が駆け抜けた幕末・明治・大正の激動の時代に、変化に富んだ現代を重ね、時代を切り拓くその情熱に想いをはせながらドラマを楽しむ…というのも、またおもしろいかもしれません。
番外編:番外編:渋沢栄一の名言
最後に、番外編として経営者やビジネスマンや仕事で悩みをもつ人に役立つ渋沢栄一の名言をご紹介します。
事業には信用が第一である。世間の信用を得るには、世間を信用することだ。
個人も同じである。自分が相手を疑いながら、自分を信用せよとは虫のいい話だ。
もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である。
たとえその事業が微々たるものであろうと、自分の利益は少額であろうと、
国家必要の事業を合理的に経営すれば、心は常に楽しんで仕事にあたることができる。
ただそれを知っただけでは上手くいかない。好きになればその道に向かって進む。
もしそれを心から楽しむことが出来れば、いかなる困難にもくじけることなく進むことができるのだ。
どんなに勉強し、勤勉であっても、上手くいかないこともある。
これは機がまだ熟していないからであるから、ますます自らを鼓舞して耐えなければならない。