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キンコン西野『革命のファンファーレ』から読み解くWEBマーケティング ~彼は嫌われる天才ではなく、好かれる天才なのかもしれない~

記事公開日:2017/10/25
最終更新日:2023/11/21
キンコン西野『革命のファンファーレ』から読み解くWEBマーケティング ~彼は嫌われる天才ではなく、好かれる天才なのかもしれない~
お笑い芸人キングコングの西野亮廣氏は、常に世の中に新しい価値観を提供し続けています。

自身の作品『えんとつ町のプペル』をネット上で全ページ無料公開し、物議を醸したたのは記憶に新しいのではないでしょうか。

そして10月4日、西野氏が新たな著書『革命のファンファーレ』を発表しました。

著書の中では、これまで行ってきたマーケティング戦略や彼の考え方などが詳しく書かれています。

本記事では、西野氏のマーケティング戦略の中から私たち企業のマーケターが参考にすべきものをまとめて紹介します。

フリーミアム戦略

入口でお金を取るな。マネタイズのタイミングを後ろにズラして可能性を増やせ

その作品を守る為に、「著作権」は本当に必要か?

西野氏自身が実践されているフリーミアム戦略は「お金をもらうことをやめる」のではなく、「マネタイズのタイミングを後ろにズラしている」のだそうです。

先述したように、彼は『えんとつ町のプペル』という絵本をネット上で全ページ無料公開し、それだけでなく著作権も限りなくフリーに近い状態にしました。

「無料で公開してしまうとクリエイターにお金が回らなくなる」などの批判も多くありましたが、結果的に発行部数は30万部を超え、絵本業界では異例の大ヒット作品となりました。

大ヒットとなればそのコンテンツを使う人が増え、そのコンテンツに触れる人も圧倒的に多くなります。

その連鎖や購入までの導線まで含めて設計したという点が西野氏が稀代のマーケッターと呼ばれる要因ではないでしょうか?

では、なぜ無料公開したのにもかかわらずお金を払って作品を買った人がこんなにも多くいたのでしょうか。

人は全く内容を知らないものにお金を払うことは多くありません。

漫画や雑誌の立ち読み、家電量販店に置いてある試用品、挙げればキリがありませんが、多くの人は何かしらのモノの購入を検討しているときにはある程度の“情報”を集め、その情報が自分の購買基準に達していた場合にのみ購入します。

先に挙げた例はすべて有料版のモノ・サービスを購入してもらうために無料で提供しているものです。

単純に考えれば無料版自体にはコストしかかかっていませんが、今の時代はその情報や内容を事前に提供することに意味があるのです。

そして、フリーミアム戦略のもう一つ大切な留意点は、「無料版と有料版で提供できる価値を明確に区別すること」です。

先ほどの例で説明すると、漫画の立ち読み場合は有料版を買うことで、無料版で得ることが出来なかった、その先の内容を手に入れることが出来ます。

家電量販店の場合は、実際に物理的に商品を自分のものにする、というところに有料版の価値があります。

これらのように、有料版でないと経験できない体験・価値が明確に区別されているからこそ、無料版の先にある有料版の購入に至ります。

えんとつ町のプペルに関しては絵本だったので「読み聞かせ」という価値はデジタルでは得られない価値と判断しその価値を得る為の購入導線としています。 

これらはWEBマーケティングの場合でも同じことが言えます。

せっかくのモノ・サービスを「無料で提供するのはもったいない」という時代は終わりました。

例えばIT業界では、自社製品であるツールのデモ版やフリープランを提供している会社が多くあります。

これは、まず無料版を“知ってもらう”“使ってもらう”人数を増やすことで、結果的に有料版を購入してもらうという導線を描いた戦略です。(購入率は変わらなくとも、まずは知っている人数=母数を増やすことで購入者数を増やす)

そしてその導線を作るうえで最も大切な要素の1つは、「マネタイズするポイント」を見誤らないことです。

お客様が購入に至るまでに提供すべき情報は何か=どこまで無料にするのか、有料版で提供できる価値は何か、この2点を明確に区別し、自社の場合はどうなのか慎重に検討する必要があります。

革命のファンファーレでは、フリーミアム戦略についての概念やテクニックも非常に分かりやすく書かれております。

圧倒的なクラウドファンディングの活用法

今の時代を生きたいのなら、お金とクラウドファンディングの正体を正確に捉えろ

絵本市場は1万部売れれば大ベストセラーと言われる業界です。

売り上げが見込めないため、絵本作家はアシスタントを頼むこともできず、すべての作業を一人で行っているという現状があります。

西野氏も絵本を制作する際にこの壁にぶつかりました。

そして、この壁を乗り越えるために選んだのが「クラウドファンディング」という方法です。

彼は絵本制作の第1段階として、まず制作費用をクラウドファンディングで募るところからスタートしました。

制作費用を“先に”集めることで、「売り上げが見込めないから分業制にできない」という今までの絵本業界の当たり前を壊したのです。

結果的にクラウドファンディングは大成功し、2度のクラウドファンディングで約1万人の支援者から約5650万円の支援が集まりました。

そして西野氏は、その資金を使って「絵本の制作作業の分業」を実現しました。

「空のプロフェッショナル」「キャラクターデザインのプロフェッショナル」「色塗りのプロフェッショナル」などそれぞれの分野の専門家を集め、自身の負担を減らすだけでなく作品自体のクオリティを格段に上げることで、他の作品との差別化にも成功しました。

西野氏はクラウドファンディングとクラウドソーシングを用いて、重要な経営資源の要素である「ヒト、モノ、カネ」を入手する新たな手法を実現したのです。

企業活動としてはなかなか直ぐに真似できないかもしれませんが、ブルーオーシャンを狙いにいくような新規事業でも「カネがない前提」の計画ではなく見方を変えれば突破口があることを証明してくれたように感じます。

SNS、オンラインサロン、オフラインイベントを使ったエンゲージメントマーケティング

お金を稼ぐな。信用を稼げ。「信用持ち」は現代の錬金術師だ。

西野氏はオンラインサロンを運営しています。

6,000円で半年間参加する権利を購入でき、彼が考えていることや今後の作戦会議、意見や悩み相談を話し合う場でとして提供されています。

インターネットの普及により、世の中には様々な情報が常に溢れている時代です。

消費者は自らの手で情報の取捨選択を行うようになり、新聞・雑誌やテレビCMなどのマス媒体での広告は以前ほど影響が大きいものではなくなってきました。

そこで企業の新たなマーケティング手法として今後必要となってくるのが「コミュニティ化」です。

「コミュニティ・マーケティング」とは、企業と顧客、顧客と顧客が双方向でコミュニケーションが出来る場を設けてプロモーションや商品開発を行う手法で、顧客をファンへと育成していくことが目的です。

一般的にビジネスはファン(リピーター)が増えることで経営が安定します。

逆に言うと、ファンがいないと常に新規顧客の開拓をしなければならず、経営が苦しくなってしまいます。

西野氏は、この「ファンを増やしていく、エンゲージメントを高める活動」としてSNSやオンラインサロン、オフラインイベントの役割を明確に切り分けて運用しています。

ファンを増やしていくためには、①独自の世界観、価値に共鳴させる ②関係性を強化させる仕組み・場を用意するという2点が重要です。

西野氏は「自分の考え方や行動の軸はこうだ」と明確に打ち出しており、それは全ての活動で繋がっています。

活動を世の中に発信し続けていることで①を満たし、そして②の場として毎日更新しているブログやFacebook、オンラインサロンなどが用意されています。

また、“オフ会”としてサロンメンバーとBBQや打ち上げも行ったり、サロンメンバーにならなければ得られない価値や先行者利益を提供しています。

オンラインサロンの“皆が意見を発信できる”という特長は、よりターゲット(=西野氏に共鳴して集まった人たち)と自身の距離感を縮める要因となっていると想定できます。

実際に企業でエンゲージメントマーケティングやコミュニティ作りをする際にも、西野氏のように①自社独自の世界観や価値観を発信し②そこに共鳴してくれたユーザーとの関係性を深めるために提供すべきコンテンツや場所を考える、というスキームを参考にできそうです。

価値や情報収集手法の変化

次の時代を獲るのは「信用持ち」だ

西野氏いわく、現代は信用をお金に変換できる時代だそうです。著書の中でも「信頼・信用」という言葉が頻繁に出てきます。

例えばインターネットやSNSの普及により、ある程度の嘘は調べればすぐに分かる時代になりました。

つまり、人は信頼できる人や会社からでないとものを買わない時代に向かっていきます。

お金や人気を集めるためには、まずは人々から信頼を得なければなりません。

そこで西野氏は、「嘘をつかないこと」を徹底しました。

芸能人という仕事の特性上、嘘をつかなければならない場面はたくさんありますが、視聴者はテレビを見ながら「この芸能人は嘘を言っている」ということが簡単に調べられる時代です。

西野氏は嘘をつかないことで、「この人は絶対に嘘を言わない人だ」という信頼を得たほうが良いと考えたのです。

「セカンドクリエイター」を味方につけろ

そしてもう1つ、モノを売るうえで大事な考え方が「セカンドクリエイターを味方につける」ということです。

西野氏曰く「本業として、クリエイティブの世界に軸足を置くわけでもないが、ときどきクリエイティブの世界に片足を突っ込んでみたい(ラジオでいう、ハガキ職人のような)人」は今後確実に増えていきます。

加えて、旅行に行ったときにお土産が欲しくなるように、自分が時間や費用を費やして作った作品が欲しくなるように、人は自分が体験したモノや一緒に作ったモノは必ず欲しくなります。

このような「セカンドクリエイターの増加傾向」と「体験購入の理論」を応用し、西野氏はクラウドファンディングで資金とともに一緒に絵本を製作した“協力者”や“体験者”を増やし、そしてそれがそのまま消費者や支援者(ファン)となるように設計したプロモーションを行っているのです。

これからの時代でビジネスを行っていくためには、まずお客様からの信頼を積むことと、ターゲットに自社製品を体験させる、もしくは製作者の一人となってもらうという新しい概念も活用できる場面が来そうです。

まとめ

キングコング西野亮廣氏は、SNS活用やフリーミアム戦略、エンゲージメントマーケティングといった意味で稀代のマーケッターだと私たちは考えています。

既存概念を塗り替える新しい価値観を提供し続け、世の中に一石を投じ、結果も残しています。

今回の記事では「革命のファンファーレ」に書かれている具体的な内容には深く触れておりません。本書は西野氏の考え方や実践した内容が体系的にまとめてられている良書ですので気になった方は読まれてみてはいかがでしょうか?

西野氏の考え方には、実際に企業で活用できる要素が多くあります。

私たちも既存概念に捉われず、常に新しい価値をお客様に提供できるように、戦略的にマーケティング活動を行っていきましょう。

“嫌われ者”というイメージがある西野氏。しかし彼は、エンゲージマーケティングという視点から見ると“嫌われる天才”ではなく“好かれる天才”なのかもしれません。

追記

なんと!ご本人からリツイート頂きました!

キンコン西野『革命のファンファーレ』から読み解くWEBマーケティング

ありがとうございます!

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