【社長対談】ランドスケイプ代表 長竹氏に聞く、ABMを実践するために必要なマーケティング施策と営業活動とは?
最終更新日:2025/10/17

【この記事の要約】
日本最大級の企業データベースを保有し、企業のデータ活用を支援する株式会社ランドスケイプへのインタビュー記事です。テーマは、ABM(アカウントベースドマーケティング)におけるデータ活用の重要性です。
ABMを成功させるには、まずターゲットとすべき優良企業(アカウント)を正確に定義することが不可欠であり、その土台となるのが精度の高い企業データです。ランドスケイプ社は、独自のデータベース「LBC」を活用し、顧客企業が持つバラバラの顧客データを名寄せ・クレンジングし、豊富な企業属性情報を付与します。これにより、データに基づいた客観的なターゲティングが可能になり、ABMの成果を最大化させることができると語られています。
【よくある質問と回答】
Q1. ABM(アカウントベースドマーケティング)を始めたいのですが、何から手をつければ良いですか?
A1. まずは、社内に散在している顧客データの「データクレンジング」から始めることが最も重要です。企業名の表記ゆれ(例:「株式会社〇〇」と「(株)〇〇」)や部署名の変更などを整理・統一し、精度の高いデータベースを構築することがABM成功の第一歩です。この土台がなければ、どんなに高機能なツールを導入しても効果を最大化できません。
Q2. SFAやMAツールを導入したのに、期待した成果が出ません。何が原因だと考えられますか?
A2. 原因の一つとして、ツールに取り込んでいる元のデータの「質」に課題がある可能性が高いです。SFAやMAは、正確で整理されたデータがあって初めて、顧客の分析や適切なアプローチの自動化といった真価を発揮します。データが不正確だと、間違った相手にアプローチしたり、分析結果が実態と異なったりするため、まずはデータの質を見直すことをお勧めします。
Q3. 成果につながる営業リストは、どのように作成すれば良いですか?
A3. 最も効果的な方法は、まず自社の「優良顧客」はどのような企業かをデータから分析することです。過去の受注実績などから、売上が大きい顧客の業種、企業規模、所在地などの共通点を洗い出します。そして、その特徴と類似した企業をターゲットとしてリストアップすることで、成約確度の高い営業リストを作成できます。個々の営業担当者の経験や勘だけに頼るのではなく、データに基づいたアプローチが重要です。
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かつて、データを活用する業界といえば、製造の現場や金融の与信・決済などと限られていましたが、ICTやセンサーなどの技術向上とともに低価格化も進み、業界・業種を問わず、どの企業にとっても本格的なデータ活用に取り組める環境が整いつつあります。
マーケティングやセールスの領域も例外ではなく、「データドリブンマーケティング」「データドリブンセールス」といった言葉が浸透し、これらに必要なデータを扱うセールスフォースオートメーション(SFA)、マーケティングオートメーション(MA)といったツールの導入率が上昇しています。
今回の社長対談では、いち早くデータベースマーケティングの重要性に気づき、企業情報を中心とするデータベースサービスを提供してきた株式会社ランドスケイプの代表取締役である長竹 克仁氏に、現代のマーケティングにおいて欠かせない手法の一つとなったアカウントベースドマーケティング(ABM)に取り組む際の注意点やポイントを伺いました。
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「Inside Sales Conference 2019」レポート
第二回 セッション「データドリブンセールスはどこまでできている?“営業の質”を高めるデータ戦略の秘訣とは」

- Profile
- 長竹 克仁
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ランドスケイプ株式会社 代表取締役社長兼COO
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2000年に新卒でランドスケイプ入社。営業企画職などを経て2014年7月に営業本部企画グループ執行役員に就任。2019年2月に代表取締役社長兼COOに就任。
営業職の頃には、多くのラグジュアリブランドや大手メーカーに対して、データベースマーケティングやCRMの企画、構築、運営コンサルティングに従事。業界などに区別なく、幅広くデータ整備から販促での活用までトータルソリューションを提供。社長就任後は、営業本部全体の管理、カスタマーサクセスプロジェクトも推進。
多くの企業が持つデータベースの課題を1社でも多く解決するため、日々社内外の関係者とコミュニケーションを取りながら、サービス向上に努めている。
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- Profile
- 金井 章浩
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スターティアラボ株式会社 取締役
クラウドサーカス株式会社 代表取締役-
2006年スターティアに新卒として入社。2009年にスターティアラボ立ち上げに参画。
2014年にWebプロモーション事業部を立ち上げ、同事業部を2018年にクラウドサーカス株式会社として分社化、代表取締役に就任。
近年のマーケティングテクノロジーの高度化に伴い、マーケティング効率が飛躍的に高まっている一方、多くの企業がまだまだそれらを使いこなせていないのが現状。それらをシンプル化することで多くのマーケターがより高い成果を生むしくみの普及に努めている。
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1.営業リストを上手く活用するには、データの精査が必須


Mtame(株)
金井

ランドスケイプ(株)
長竹氏
ABMが進んでいる企業での最近の悩みは、セグメント項目をどうするか。業種や規模、売上高などでセグメントするのは標準的な項目ですが、どの規模や規模を選べば良いかがわかっていません。営業部門の管理職は、それまでに培った感覚で「これを選べば良い」とアドバイスしますが、感覚値であるがゆえ再現性がありません。
これを解決するためには「分析」が必要です。といっても難しいことではなく、売れている企業がどんな規模感でどんな傾向を示しているかを捉えるのです。売上の実績情報から企業一覧を出し、傾向値を出せば良いのです。
これはもともと、BtoCで使われていたテクニックです。誰に売れるかわからないから、一番買ってくれているSランクの顧客と相似性のある顧客を、データベースのなかからピックアップする。同様にBtoBでも、一番売れている企業の業種規模や売上高をピックアップしてセグメントすると良いでしょう。
そして、これを実施するためにはデータの精度が求められます。データの精度が高くないと、分析ができません。そろそろ、このことに皆が気づき始めています。当社ではこの部分を担い、サービス提供していますし、自社でも営業に活用しています。
当時からランドスケイプさんのデータベースを導入していて、テレアポでWebサイト制作を受注していたのですが、もっと受注をあげるためにはコール数が大事だと感じ、上司に「電話帳を上から下までかけさせてくれ」と頼んだところ「ダメだ。ちゃんとリストを作ってから電話しろ」と言われた。そこで、業種や規模、そのほかの条件で絞り込んでリストを作ってかけるようになり、成果を出していました。これはABMの走りだったのではないかと。

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長竹氏
昔、人力で目視でリストを作成して成果をあげていた営業マンが、今の管理職になっているはずなので、「ツールを入れたならもっと受注があがるはずなのに、あがらない」と悩んでいる場合は、データ整備ができていない、元のデータに課題がある可能性が高いですね。

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長竹氏
ツールもたくさん出てきましたが、専門性が高い特化型のものが多い。企業の中で部署もたくさんあり、個別に導入をしているケースがあるゆえに、散在しているデータがたくさんあるという状態です。これら社内に散らばったデータを一元化して管理することが課題になっている。スペシャリストが増えて全体を俯瞰できる人がいなくなっている。

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2.データベースが精査されていないと担当者情報と突合できない


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長竹氏
たとえば、担当者の役職やリテラシーなどが商談を左右したりもしますよね。企業の属性データと担当者個人の属性データが整備されていなければうまくABMが回らないでしょうし、この二つを分けて考えるためには、システム上でも分けられる環境が必要でしょうし…。

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長竹氏
ABMの切り口となる属性情報は企業情報以外にもインテントデータなどの示唆データがあります。当社のコアビジネスは、ABMを行うためのセグメントキーを切ることではなく、そのためのベースデータを作ることなので、企業が個別にリッチなデータベースを作成するために必要な整理されたデータベースを提供したいと考えています。
データベースの母数が少ないと意味がないでしょう。たとえば、100件のデータベースに名刺情報が何千件もあったらマッチングなんてできないわけです。ABMを行う前段階を整えてあげるのが当社の役割なのです。
この前段階をしっかり行わないで「ABMに取り組もう」と動いてみたところで、マッチングはできないしデータは古いし、セグメントしようとしてもいつも同じ企業しか出てこない…となって、管理職は「昔、人手でリストを作っていたときの方が効果があった。ABMは費用対効果が出ない」といってやめてしまうケースが多いです。

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長竹氏
もう少し事業を広げようとしたときに、リードが足りなくなって初めて外部データを利用すれば良いのです。
それよりも、自社の商品・サービスを購入してくれるのがどんな企業なのか、自社顧客の把握をすることの方が大切でしょう。

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長竹氏
大切なのは、自社で集めた名刺情報と突合したときに、どれだけ属性を掴み、自社顧客がどんな企業なのかを把握・管理することです。
3.ツールを導入したら、管理職は「何かできるか?」を把握すべし

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あと、もしツールを導入されているのであれば、上司がツールを把握することも大事です。よくあるのが、導入イメージと効果は把握しているが、そのツールで何ができるのかを知らないで部下に任せてしまうケース。すると、部下から上がってくる成果でしか判断できないので、成果があがらないときに対策ができません。

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4.既存顧客のフォローでも、優良顧客のモデルをデータから探る


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そのために必要なのがデータの統合で、同じ企業のなかで別部門が異なるサービスを導入していたり、子会社など系列企業で複数の購入がある場合、それを把握していないとロイヤル顧客として認識できません。

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長竹氏
5.MAやSFAを活用するためには、整備されたデータのインポートを


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長竹氏
ありがとうございます。営業プロセスのファネルの図があったときに、見込度の低い「C」のフェーズで展示会からのリードや休眠顧客、紹介などのリストが入ってきて、ここでセグメントするのがセオリーです。

ただ、このとき、もともと持っているデータが整理されていなければ、きちんとマッチングできる件数は減ります。マッチングできた案件からしか受注があがらないため、歩留まりはかなり悪くなります。逆にいえば、単純にマッチングデータ数が増えれば、受注も増えるということです。
また、企業名の表記揺れがあると、同じ企業が別の営業担当者で二重登録された結果、取り合いになることもあります。
きちんと整備されたデータを使うことは、ABMを進めるうえでも重要ですし、SFAやMAを活用するうえでも大切です。
当社で提供しているMAのBowNowはABMの考え方で作っていて、長竹さんが描かれた見込度C~Sを「ステータス」と呼んでいます。展示会や休眠顧客のリストの条件(ポテンシャル)が一目で見られるようになっているんです。


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長竹氏
私自身がずっとテレアポして営業していたので、こういう管理の方が使いやすいのではないかと思い、このようなツールにしました。

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長竹氏
ただ、データがなくてはどうしようもないので、ランドスケイプさんのデータベースのように整備されたものだったり、展示会で集めた名刺などをインポートする必要があります。

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長竹氏

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金井

株式会社ランドスケイプ
1990年09月大阪府で創業。中堅・大手企業向けデータベースマーケティング支援事業を行う。独自構築した日本最大のデータベース(消費者9,500万件・企業情報820万拠点)をもとにしたデータドリブンマーケティングの支援とCRM戦略立案を提供している。
【企業サイト】https://www.landscape.co.jp/

【English summary】
This article is an interview with Landscape Co., Ltd., a company that supports corporate data utilization with Japan's largest corporate database. The theme is the importance of data utilization in ABM (Account-Based Marketing).
To succeed in ABM, it is essential to first accurately define the high-value companies (accounts) to be targeted, and high-precision corporate data is the foundation for this. Landscape Co., Ltd. utilizes its proprietary database, "LBC," to consolidate and cleanse the disparate customer data that client companies possess, and enriches it with abundant corporate attribute information. It is explained that this enables objective, data-driven targeting, which can maximize the results of ABM.