SaaSベンダー界隈では、すでに定着した感のある「カスタマーサクセス」。米国発の営業プロセスの一つとして日本で紹介された書籍として有名なのは『THE MODEL(ザ・モデル)』ですが、「カスタマーサクセスのバイブル」とよばれ、カスタマーサクセスを学ぶなら必読といわれているのが「青本」こと、『カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』。
 
同書を翻訳したのが、コンサルティング・テクノロジー・アウトソーシングのサービスを提供するバーチャレクス・コンサルティング株式会社です。 同社では、同書を手がけたのを機に、日本においてカスタマーサクセスに関するコンサルティングや啓蒙活動を行っているといいます。
 
今回は、同社のコンサルタント4名に、カスタマーサクセスの組織づくりや運営上のポイントについて伺いました。
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バーチャレクス・コンサルティング株式会社 常務執行役員
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長
2013年に中途で入社。前職よりCRM関連に限らず、新規事業策定・戦略立案案件や、システム構築案件など、幅広いテーマのコンサルティング案件に従事。現在は、コンサルティング案件全般を所管するとともに、自社デジタルマーケティング領域の事業拡大のほか、RPAソリューション等新規事業開発にも従事。2018年6月に出版した『カスタマーサクセス―サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の訳者であり、カスタマーサクセスに関するコンサルティングや講演なども行っている。
バーチャレクス・コンサルティング株式会社
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント
新卒で入社以降、顧客の保有する膨大なデータを一元管理し、BIツールでの可視化/活用から経営課題を解決するITコンサルティングプロジェクト及び、複数メーカーのIoT戦略方向性検討支援や事業戦略立案支援を行うコンサルティングプロジェクトに従事。現在は、カスタマーサクセスを活用した顧客の事業改革支援も推進中。
バーチャレクス・コンサルティング株式会社
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント
新卒入社以降、ITを活用した業務効率化のコンサルティング案件に従事。RPA導入というバズワードから始まることで視野が狭くなりがちな業務効率化施策を、RPA活用の観点だけでなく、それ以外のテクノロジー活用、業務オペレーション変更、現場のマインドセット変革まで含めゴールシークにプロジェクトを推進してきた。現在は最適化ソリューションのサービス企画に従事。
バーチャレクス・コンサルティング株式会社
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント
新卒で入社以降、ITヘルプデスクの課題解決プロジェクトに参画。自社アウトソーシング部門と協業し、顧客視点に立ったサービス改善および現場オペレーション改善を支援。現在は継続的な顧客接点の最適化を目標としたヘルプデスク運営の委託化・自立運営に向けた企画および実行支援を行っている。
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編集部
バーチャレクス
森田様
 
さらに、当コンサルティング部門の強みを一言でいうと「変革力」です。これを3つに分解すると「コンサルティング力」「IT力」「カスタマーサクセス力」になります。 
「コンサルティング力」については、創業から22年、CRM領域を中心に構想・企画といった上流のレイヤーから、実際の業務オペレーション、IT等の下流レイヤーまでコンサルティングを提供してきました。 
「IT力」については、「描いたものを形にする力」とも言い換えられます。昨今、課題解決の手段として「テクノロジー」は避けて通れません。弊社では、コンサルタントが自分の手でRPAやAI-OCRなどを作り込むことができます。別部門にエンジニアはいますが、顧客から見ればコンサルタントとエンジニアという棲み分けに意味はなく、課題解決を早く、余計な負担なく達成することこそが顧客にとっての我々の存在価値になりますので、今後は、この部分でもっとボーダレス化・マルチ化していきたいと考えています。 
「カスタマーサクセス力」については、弊社はタグラインとして「Succession with You」を掲げているのですが、これは「お客様の継続的な成功に寄り添い続ける」という意味です。一言でいうと「カスタマーサクセス」であり、顧客の成功を「描いて終わり」ではなく、「実行」「完了」まで担います。たとえば、システムなら、作って終わりではなく、運用からお客様の達成したい「ゴール」まで伴走することを前提としています。エムタメ!
編集部
バーチャレクス
森田様
常務執行役員 ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 部長 森田 智史さん
 
 
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編集部
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森田様
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ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント 金井 昴さん
 
 
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編集部
バーチャレクス
金井様
 
たとえば、立ち上げ時期は専任の担当者が1人いるくらいだったり、少人数で立ち上げようとする企業が多いです。このような組織の場合はオンボーディングや契約更新といった業務をすべてカスタマーサクセス部門が担っていくので、一気通貫でできるというメリットはある反面、組織が大きくなっていくと、すべての業務をこなさなくてはならないので、スケーラビリティがなくなるという課題が出てきます。 
プロダクトにカスタマイズがあまり必要なかったり、導入負荷がかからない商材を持つ企業の場合、そこまで顧客との接点が発生しないので、営業部門の中にカスタマーサクセスを置いているというケースもあります。そうすることで営業部隊が新規を取りに行き、カスタマーサクセス部隊は、更新やアップセルに注力できるようになるのです。 
逆に、プロダクトが複雑だったりカスタマイズが多かったりすると、カスタマーサクセスのサービス機能や顧客のフェーズごとに担当チームを分けているお客様も多いです。具体的にはオンボーディング専門、トレーニング専門、契約更新専門、といったように、それぞれ責任者とスペシャリストを配置するところが多いですね。ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 コンサルタント 加藤 一樹さん
 
 
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編集部
バーチャレクス
加藤様
 
たとえば、「LTVの最大化」の場合、チャーンの削減や追加受注(アップセル、クロスセル)といった、KGIとするべき成果指標があります。さらに、これを達成するために追うべき行動指標として、ログイン数やアクティブアカウント数といったヘルススコアや、顧客の状況などがあります。定量的なヘルススコア管理だけでなく、アンケート調査やヒアリング調査で顧客の声を聞き状態を把握することもカスタマーサクセス部門の役割の一つです。
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編集部
バーチャレクス
加藤様
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加藤様
 
まず、自分たちがカスタマーサクセスを実践する上でのKGI、KPIを明らかにするというフェーズ(カスタマーサクセス0.0)があり、自分たちの状況が明らかになった上で次にカスタマ―サクセス1.0として「解約を阻止しよう」となります。 もしそこで、自分たちの打ち手に対してきちんと解約率が下がり、リテンションできていることがわかれば、「カスタマーサクセス1.0」は終了となり、より積極的にアップセルやクロスセルを取りに行く「カスタマーサクセス2.0」のフェーズへ進めるようになります。 
 
このように、自分たちの実力値をきちんと見極めて、今はどこにフォーカスすべきなのかを考えなければいけないと思っています。仮に、リソースが潤沢にあれば「カスタマーサクセス1.0」「カスタマーサクセス2.0」を同時に進めるといったこともできるかもしれませんが、そういった組織はなかなかないと思います。まずは優先順位を見極めて、リソースをそこへ集中投下していく必要があるということです。
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編集部
バーチャレクス
加藤様
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編集部
バーチャレクス
金井様
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編集部
バーチャレクス
金井様
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金井様
バーチャレクス
森田様
 
先ほど出たような「達成度」「進捗度」を、上司がどれだけ見てサポートしているかという部分とも比例するかと思いますし、普段からどれだけコミュニケーションが取れているかにかかってくるでしょう。 
従来のMBO(Management By Objective)型のマネジメントを行っている企業に対しては、コミュニケーションに関するアドバイスを行うこともあります。バーチャレクス
金井様
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編集部
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金井様
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バーチャレクス
金井様
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編集部
バーチャレクス
加藤様
以上を前提として、顧客セグメントには3つの軸があって、一つ目が「ライフサイクル(利用期間)」。オンボーディングや更新のタイミングでそれぞれ、担当者が対応することになります。二つ目が「ヘルススコア(顧客の健康状態)」。三つ目が「グレーディング(売上規模や従業員数など)」です。ハイタッチなのかロータッチなのか、それともテックタッチなのかというタッチポイントを決める時に、参考にします。 これら三つの軸を商材の種類や価格帯ごとに組み合わせを変えつつ、さらにフェーズによっても掛け算しながら、セグメント化していく方法を基本としています。
バーチャレクス
森田様
エムタメ!
編集部
バーチャレクス
加藤様
エムタメ!
編集部
バーチャレクス
加藤様
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編集部
バーチャレクス
金井様
バーチャレクス
祢津様
 
一方で、早期フェーズから入り込めていないような、たとえば、導入フェーズから参画する場合は、オンボーディングまでのコンサルティング提案はもちろんしますが、「そんなに予算は取れないよ」と返されれば「わかりました」と引き下がるしかありません。ただ、それで運用に失敗してしまうお客様はけっこう多いですね。 
私の場合、小規模なITツール導入案件の担当が多く、提案から実行までずっと関わり続けますので、提案前のネゴシエーションに注力しています。予算まで伺えればシステムに必要な機能の実装とその機能活用のオンボーディングまで含めた計画をお伝えします。必然的にオンボーディングまで計画に含めると実装できる機能が減ってしまうのですが、それに予算をさかずに失敗されたお客様の事例などもお伝えしながら膝を詰めてお話させていただきます。エムタメ!
編集部
バーチャレクス
金井様
 
CRMができていてカスタマーサクセスに積極的に取り組みたいというお客様は、カスタマーサクセスの老舗であるGainsight(ゲインサイト)社のツールや、国産だと「HiCustomer(ハイカスタマー)」などを導入して本格的に取り組まれると良いと思います。ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 シニアコンサルタント 祢津 邦賢さん
 
 
エムタメ!
編集部
バーチャレクス
祢津様
 
つまり、まずは新規顧客を増やし、増やした顧客からさらにデータを集め、データを分析することで、現在、自分たちの顧客が求めているのに足りていないものをあぶり出す。そしてサービスをエンハンスしたり、活用のためのアドバイスを行うことで顧客にとっての価値を高めていく、その結果として契約を継続してもらったり追加購入してもらう。データドリブンなのがカスタマーサクセスです。データを得る仕組みを整えることも重要です。 
これを実施する上での大前提が、正しい顧客を見極めること。森田が話した通り、いくら売上があがっていてもコストが大きすぎれば利益は出ません。正しい顧客を見極めるためにもまずは、自分たちがどんな顧客のどんな課題を解決したいのか、提供価値を考え、さらにどんな予算感を持った顧客が理想的なのかを考えていく。その上で、正しい顧客を増やすための施策を考えることになります。 
この度は、貴重なノウハウを聞かせていただき、ありがとうございました!エムタメ!
編集部
 
 
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書籍:カスタマーサクセス ー サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
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