マルカン大食堂の奇跡 ~小友康広氏が考える良質な繋がりとは~
最終更新日:2023/10/26
エムタメ初のインタビューです!
初回インタビューのお相手は、一度は閉店したマルカン百貨店の6階にあった大食堂を2017年2月にマルカンビル大食堂(以下、マルカン大食堂)として復活させた小友康広さんです!
実は小友さん、このエムタメを運営しているスターティアラボの役員としてActiBookやCOCOARなどヒットプロダクトの開発責任者を担当しながら、地元の岩手県花巻市で複数社経営しています。
今回は、マルカン大食堂の復活とその要因についてインタビューしました。
プロフィール
氏名:小友康広(おともやすひろ)
■生年月日:1983年2月13日
■出生地:岩手県花巻市
■職歴:
2005年 大学卒業後 スターティア株式会社(東京都新宿区) 入社
2009年 スターティア株式会社の100%子会社として
スターティアラボ株式会社(東京都新宿区) 設立、執行役員就任
2011年 スターティアラボ株式会社 取締役就任(現職)
2013年 株式会社小友木材店(岩手県花巻市) 専務取締役就任
2014年 株式会社小友木材店 代表取締役就任(現職)
2015年 株式会社花巻家守舎 設立 代表取締役就任(現職)
2016年 株式会社上町家守舎 設立 代表取締役就任(現職)
マルカン百貨店とは
1973年にオープンした岩手県花巻市にある百貨店。2016年6月、時代の移り変わり、建物の老朽化を理由に閉店しました。
しかし、地元高校生の署名活動、株式会社花巻家守舎の運営引継ぎ検討を経て、2017年2月に1階フロアと6階の大食堂のみ運営再開しました。
この一連の復活劇の立役者となったのが今回インタビュー相手の小友康広さんです。
インタビュー
マルカン大食堂に対する想い
記者 : まず初めに、マルカン百貨店が閉店を発表した際に、大食堂の運営引継ぎに立候補した理由を教えてください。
小友氏 : 自分にとって大切な場所だったからです。マルカン百貨店が家から5分の場所にあり、30年間毎年通う身近な場所だったんです。また、県外から来る知人は必ずマルカン大食堂に連れていっていました。そのような思い入れのある大切な場所が無くなるのは単純に寂しかったですね。正直最初の方は、再建できるかどうかわからなかったのですが、「自分が残せるかもしれないと少しでも可能性を感じているならやってみよう」と思い、取り組みました。
マルカン大食堂再建の見通しとは
記者 : 再建後のマルカンビル(元百貨店の建物)で以前と変えたところを教えてください。
小友氏 : 以前は1~5階が物販店舗、6階に食堂という構成でしたが、現在は1階をカフェ、物販店舗、マッサージ店、6階の食堂のみ運営しています。以前から食堂はいつも賑わっていたので、食堂はできる限りそのまま残すようにしています。他の階は初期投資と運営コストを落とすためにあえて閉鎖しています。
記者 : それでは以前より収益源が減っているように思えるのですが?
小友氏 : マルカンビルの建物で稼ぐ額は減っています。百貨店として再建し収益を上げていくことは計画の段階で厳しいことが分かっていたので、店舗運営ではない方法で収益を上げていくことにしました。具体的には、レストラン(大食堂)事業、不動産転貸業、ライセンス事業です。
不動産転貸業とは、マルカン大食堂の集客力を活かし、マルカンビル周辺の遊休化した土地建物に事業者を誘致することで収益を上げることです。
具体的には、今まで無料駐車場だった土地を駐車場運営会社に貸し出し、有料駐車場として運営を任せ稼いでもらう。その駐車場運営会社から家賃をもらっています。
また、ライセンス事業では、マルカン大食堂のブランド力を活かしたグッズ開発などを地元企業と共同で手掛けています。
例えば、地元の老舗豆腐屋さんから「マルカンラーメンのレトルトバージョンをうちで開発したい」という依頼がありました。老舗豆腐屋さんとしてはジャンルがまったく違う挑戦でしたが、結果的に1か月で3,800食販売するヒット商品となりました。このように良いものを作る力がある企業にマルカン大食堂というブランド力を付与して一緒に価値を作っていくようなことをしています。
小友氏の考える継続的な集客戦略とは
記者 : なるほど。マルカン大食堂の集客力、ブランド力を活かしたビジネスを展開しているんですね。すると重要になってくるのがマルカン大食堂の集客をいかに継続的にやっていけるかだと思います。何か新しい施策は行われているのですか?
小友氏 : まずは「あえて変えないこと」ですね。 元々百貨店時代から大食堂は常に賑わっていて、平日約1,500人、土日祝日は約3,000人の方が利用していたのです。
そのため「可能な限り変えないこと」が重要だと思い、雰囲気、料理など可能な限りそのまま残しています。
そうすることによって、昔から利用している方は「あの時のまま」と感じ継続的な利用につながり、新しく来る方には「こんな空間がまだ日本に残っていたのか!」と驚いてくれます。
またSNSでの発信を積極的に行うことによって良質な繋がりを作れる新規顧客を獲得しています。
例えば、資金調達の1つの手法として実施したクラウドファンディングも実は資金調達よりも、支援者とマルカン大食堂が繋がりを持つことに一番の意味を感じています。
支援者の名前を食堂の壁に刻むことで、「自分がこの食堂の再建をした一員なんだ」という繋がりができると考えたのです。 「その場所に何があるか」よりも、「その場所で誰とどんな思い出があるか」がリピートの鍵であると考え、一度来た方が良質な繋がりを持ちファンになって帰ってもらえるようにしています。
これからの展望
記者 : 最後に今後の展望を教えてください。
小友氏 : 今後はマルカン大食堂を軸にした上町(マルカン大食堂がある商店街)を「花巻の産業が育つまち」にしていきます。 上町に多くの花巻ならではの魅力的を提供できる事業者が集積し「このまちで商売すると、儲かるし楽しい」と言ってもらえるような場所になるのが理想形ですね。
そのためにもやはり良質な繋がりが必要と考えています。自分の価値観を共有できる人と出会ったり、一緒にいたりするのって楽しいですよね。その繋がりを上町に来た人と事業する人とを結びつけながら、まち全体で作っていきたいです。
まとめ
小友さんはインタビュー中、「モノや場所ではなく、人の繋がりに価値がある」と何度もおっしゃっていました。
インターネットが発達し、誰とでも容易につながることのできる現代は、逆に一つ一つの繋がりを薄くしているように感じます。
だからこそ小友さんの言う「良質な繋がり」が今後必要になっていくのではないでしょうか。
関連リンク
■マルカンビル大食堂
facebook:https://www.facebook.com/marukanshokudo/
twitter:https://twitter.com/MarukanShokudo
■花巻家守舎
facebook:https://www.facebook.com/hanamakiyamorisha
■小友氏によるマルカン存続PJブログ
http://www.otomoku.co.jp/media/category/marukan
■いしわり(クラウドファンディングサイト)
マルカン大食堂 運営存続プロジェクト:http://ishiwari.iwate.jp/pj/IswV0766812
関連書籍
■マルカン大食堂の奇跡 岩手・花巻発! 昭和なデパート大食堂復活までの市民とファンの1年間
双葉社:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/smp/book/bookview/978-4-575-31254-6.html?&mode=3