製造業に欠かせないCPQとは?今注目される理由や導入メリット、ツールの選び方まで解説
最終更新日:2023/10/27
CPQ(Configure,Price,Quote)とは、営業マンが製品販売の際、顧客のニーズにあわせて製造可能な仕様の確定と正確な見積もりをその場で提示できる、見積もり業務支援システムです。デジタルツールのためWebサイトにも設置でき、顧客自らがニーズや仕様を入力し、事前に見積もりシミュレーションを行うことも可能です。
主にオーダーメイドやカスタマイズ性の高い構成が複雑な製品に用いられており、従来の見積書作成よりも正確かつスピーディーに作成できることから、製造業の営業活動の効率化を図るツールのひとつとして注目を集めています。
そこで本記事ではCPQを取り入れるメリット・デメリットをはじめ、CPQツールの選定ポイント、実際に現場で活用されている3つのCPQツールについて解説します。
目次
CPQとは
「Configure(部品構成)」、「Price(価格)」、「Quote(見積書)」の頭文字を取って名付けられた言葉で、製品仕様・構成の選定から見積もりまでの一連の流れを指します。営業現場で欠かせない見積もり業務の工数削減・時間短縮に寄与し、営業プロセスの最適化を図ります。
CPQには主に4つの機能が備わっています。
・部品構成
顧客の要件にあわせて提供可能な製品の提案をはじめ、部品や仕様の組み合わせ、オプションの有無などを自由にカスタマイズできます。
・正確な価格計算
製品仕様をもとに見積もり金額を自動で算出します。製造ボリュームや仕様によって値引きルールが適用され、正確な見積もり金額が表示されます。
・見積書の自動作成・管理
製品仕様と価格を記載した見積書を自動で作成します。見積書の内容を反映した提案書や契約書もすぐに作成可能です。書類作成の手間が軽減されるほか、担当者によってばらつきが生じていたフォーマットも統一できます。
・ワークフロー機能
ワークフロー機能により、時間や手間がかかっていた社内承認をスムーズにできます。
このようにCPQツールを活用することで、顧客からの製品受注から製品価格の決定、見積書の提示といった一連の流れが迅速にできるようになり、営業活動の効率化や受注獲得の自動化が図れるなどさまざまなメリットを得られます。
CPQが今注目されている理由
ひとつには製造業DXの浸透が挙げられます。これまで製造業の生産性向上を図る手段として「現場の効率化」が重視されてきました。ゆえに現場の効率化は長年にわたりさまざまな手段や方法が実施されており、これ以上の改善を求めるには限界が来ているのが実情です。
そこで近年は現場の効率化ではなく、デジタルツールを活用し新規販路の開拓や販売チャネルの工夫で売り上げを増やす顧客接点改革に取り組む企業が増えています。なかでもCPQは見積もりミスによる設計・製造手戻りを防ぎ、顧客接点の強化が見込めることから製造業の営業活動に欠かせないツールとして認知され始めています。
もうひとつはSaaS(サース)として提供されているCPQツールが増えていることです。SaaSとはクラウド上にあるソフトウェアをインターネット上で利用できるサービスのことで、料金体系が「必要なときに必要な分だけ利用できる」サブスプリクション方式を採用していることから、低コストかつ手軽に利用できるのが特徴です。従来はオンプレミス型という自社サーバーにシステムを構築して自社で運用する手段がスタンダードだったため、導入費用が高額なうえに稼働までに時間がかかっていました。
しかしSaaSはアカウントを発行し、ログインするだけですぐに利用できます。また場所を問わずどこでも利用できるメリットを有しており、複数人のメンバーとの同時利用も可能です。利用料金が低く導入までのスピードが早いSaaSの台頭により、企業がデジタルツールを取り入れやすくなったのもCPQが話題を集めている要因のひとつといえるでしょう。
CPQのメリット
CPQを導入するメリットについて4つの観点から解説します。
1.見積もり業務の効率化
見積もり作成の工程は企業によってさまざまですが、基本的には下記の流れで進みます。
営業マンが商談時に顧客の要望をヒアリング
↓
商談後、技術者や設計者へ確認を取り、
製造可能な部品の組み合わせを確定
↓
他部署に見積書の作成を依頼
↓
作成した見積書を顧客へ提示
このように見積書の作成までに多大な工数と時間がかかります。特に個別の見積もりが必要な製品は、部品の組み合わせの数も膨大です。料金も取引先によっては価格の変動や割引が発生するため、正しい見積書の作成は豊富な製品知識と経験を積んだ各部署のベテラン社員ではないと対応できず、営業マンだけでのスピーディーな商談や受注契約はできずにいました。
CPQの導入により、特定の社員の勘や経験値に頼ることなく、営業担当だけで正確な見積書を作成することが可能です。業務の標準化で特定の人物のみに業務が集中していた属人化の解消やこれまで見積もり業務に割いていたリソースを他業務に充てることができ、業務効率化につながります。
2.営業活動の強化
CPQを導入することで、競合他社よりも優位な営業活動を展開できます。たとえば顧客が複数社に相見積もりを取っていた場合、いち早く見積書を提出できるため、他社よりも素早い提案とアプローチが可能になり、受注率を高めることができます。
顧客獲得のためには迅速かつ正確な対応が不可欠です。従来の方法による見積書作成は時間や手間が非常にかかってしまい、対応遅れによる失注リスクが高くなります。CPQを取り入れることで、スピーディーな顧客対応が実現し、商談数の増加や売上増大が期待できます。
3.顧客満足度の向上
従来の人の経験や知識による見積もり作成は、どんなに気をつけていても金額計算の間違いや製造できない仕様での受注ミスといったヒューマンエラーが起きやすくなります。見積もり(受注仕様)が正確ではないと、製造部門のチェックの段階で仕様が変更になったり、製品出荷後にクレームが発生してしまい、顧客からの信頼を損ねてしまいます。
CPQではあらかじめシステムに条件ルールを設定することで、製造不可能な組み合わせを選択できないようにしたり、キャンペーン価格、期間限定価格、代理店価格などの複雑な価格体系にも対応できる機能を備えています。従来の見積もり作成で生じるミスを防げるだけでなく、希望条件を営業マンに伝えるだけですぐに正確な見積書が作成できるため、顧客満足度の向上が見込めます。
4.マス・カスタマイゼーションの実現に貢献
マス・カスタマイゼーションとは、「大量生産(マスプロダクション)」と「受注生産(カスタマイゼーション)」の両方を掛け合わせた言葉で、大量生産に近い生産性を保ちつつ、個々の顧客のニーズに合う商品やサービスを販売する生産方式を指します。
マスプロダクションとカスタマイゼーションには下記のようなメリット・デメリットが存在します。
大量生産(マスプロダクション):生産コストを最小限に抑えられるが、細かい製品仕様の変更には対応不可
受注生産(カスタマイゼーション):顧客の要望に応じた製品のカスタマイズが可能だが、そのぶん生産コストが高くなる
この2つのメリットを組み合わせたのが、マス・カスタマイゼーションという概念です。顧客の需要に応じて複雑な製品構成を自由に選べるCPQを取り入れることで、このマス・カスタマイゼーションが実現します。
CPQのデメリット
複雑な見積もり業務を効率化できるCPQですが、導入によるデメリットもいくつかあります。本項では代表的な2つのデメリットをご紹介します。
1.業務体制の構築やマニュアルの整備が必要
ひとつめはCPQをスムーズに活用するための環境整備です。CPQ導入による混乱を回避するためにも、業務フロー体制の構築や従業員向けマニュアルの作成は必須です。またツールの中には高度なITリテラシーが求められるものもあり、企業によってはかえって従業員への負担が大きくなるケースもあります。ITリテラシーがそれほど浸透していない企業の場合は、まずは従業員のITリテラシーレベルを把握し、自社にとって適切なツールかどうかを判断する必要があります。
2.導入コストがかかる
ふたつめは導入コストの問題です。CPQを取り入れることで初期費用および継続使用によるランニングコストが発生します。近年では製造業DXの興隆に伴い、CPQのSaaSが数多くリリースされています。SaaSは比較的安価で導入できますが、長期利用になるとトータルコストが高額になる恐れがあります。導入時は利用するツールの料金が自社の予算に見合っているかどうかを確認することが大切です。
CPQツールの選ぶ際のポイント
ここまでCPQのメリットとデメリットをお伝えしてきました。それでは具体的にどのようなCPQツールを選んだらいいのでしょうか。ツールを選定するうえでの3つのポイントをご紹介します。
1.他システムとの連携
導入候補のCPQが他システムと連携できるかどうかしっかり確認しておきましょう。たとえばCRMツール(顧客管理システム)との連携が可能であれば、過去の商談データをもとにより顧客のニーズに合った提案が可能になり、営業効率アップが見込めます。
そのほかにもCADシステムと連携し、CAD図面の自動生成によって製品イメージを顧客と確認したり、仕様情報をBOM(部品管理システム)に落とし込み生産管理システムと連携することも可能です。連携によって制作指示が自動で行われるため、機動力の高いものづくり体制が実現します。
他システムと連携できるCPQツールを選ぶことで、効率的な営業活動や生産体制の構築ができます。CPQを有効活用し利益の最大化を図るためにも、さまざまなシステムと連携できるツールを選びましょう。
2.テレワークに対応できるものを選ぶ
新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけに、日本だけでなく世界中でテレワークが普及しました。コロナ収束後も多様な働き方の可能性を考慮し、テレワークに対応できるCPQツールを選ぶことをおすすめします。具体的には先述したSaaSサービスのCPQツールです。インターネット環境が整っている場所であれば、在宅での作業や社外でのリモートワークでも見積書の作成を行うことができます。特に外回り営業などで社外での業務が多い営業マンにとっては、帰社せずに見積り作成ができるのは大きなメリットです。
3.運用方法やサポート体制の確認
ツールの導入にあたり、運用方法やサポート体制についてもチェックすべきポイントです。特に企業でデジタルツールの導入が初めての場合は、システムに関する知識がない営業マンに過度な作業負担がかからないよう、導入後誰がメインで運用していくのか、使い方をどのように浸透・共有させていくのかなど、運用の方針を決めておく必要があります。また使い方で困った際に問い合わせできる、カスタマーサービスの有無についても確認しておきましょう。
CPQツールの紹介
本章では、現場で活用されている3つのCPQツールについてご紹介します。
「Salesforce CPQ」
画像引用:Salesforce CPQ
「Salesforce CPQ」は、株式会社セールスフォース・ジャパンが提供する営業活動支援SaaSです。
クリックするだけで複雑な製品構成の価格設定から割引、承認までをスピーディーに行うことができます。CRMで圧倒的なシェアを誇る「Salesforce Sales Cloud」との連携も可能。顧客情報をベースにした見積書作成から受注までのプロセスをシームレスに行えます。
そのほかにもブランド名を入れた見積書・提案書の作成や予測機能が備わっています。予測機能では見積もり対応を行っていない案件を通知し、見積もり遅れによる受注ロスを防ぎます。
また提供方法がパッケージ製品ではなくSaaSのため、価格が月額9000円(1ユーザーあたり)と安価で導入できるのも特徴です。
「Cimcom CPQ」
画像引用:Cimcom CPQ
「Cimcom CPQ」は、シンコム・システムズ・ジャパン株式会社が提供しているCPQシステムです。複雑な製品やサービスの構成仕様を決定し、価格設定から見積書・提案書の作成までの一連のプロセスをサポートします。
Microsoft DynamicsやSalesforceなどの主要CRMシステムとの連携が可能で、企業体制に合わせた自由度の高いカスタマイズができるのも特長です。またBOM(部品表)や3Dモデルの自動生成機能を搭載しています。選択した製品仕様のイメージをその場でクライアントに提案し、迅速に受注・生産作業を進めるといった営業アプローチが可能です。
「Oracle CPQ Cloud」
画像引用:Oracle CPQ
「Oracle CPQ Cloud」は日本オラクル株式会社が提供するSaaSのCPQツールです。直接販売、代理店販売、自社サイトを活用した見積もりなどさまざまな販売チャネルに柔軟に対応し、製品マスターやルールもチャネル間で共有できます。
特筆すべきは、多彩なツールの連携ができる点です。同社が販売するサーバーやデータベース、ストレージなどをクラウド上で利用できる「Oracle Cloud」はもちろん、20種類以上のERP(統合基幹業務システム)やCRM、Webサービス、デジタル・コマースなどと連携でき、営業活動のさらなる効率化が見込めます。
まとめ
本記事ではCPQの基礎知識をはじめ、今注目される理由やメリット・デメリット、すでに現場で活用されているCPQツールなどを網羅的に解説しました。
製造業で取り扱う製品の種類は多種多様で、部品やオプション機能も含めれば膨大な量になります。それらを製造不可能な仕様にならず、かつ割引料金などを反映した正確な見積書を算出するにはかなりの時間と労力がかかるため、これまで見積書の作成は責任が重く複雑な業務とされてきました。
CPQツールを取り入れることで、見積もり作成に伴う業務負担を軽減し、そのぶんの顧客との商談に時間をかけたり、新規顧客開拓に力を注いだりと有意義な営業活動を展開できます。
また最近は少子高齢化によりさまざまな業界で人手不足が叫ばれています。なかでも製造業の人手不足は深刻で、デジタルツールを取り入れた業務改善や生産性の向上が急務とされています。売上に直結するCPQツールを取り入れることで、限られたリソースの中でも生産性向上や売上アップを図ることが可能です。「自社の製品の見積りに対応できない」「見積り作成に時間がかかる」といったお悩みを持つ方はぜひCPQツールの導入を検討されることをおすすめします。
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- この記事を書いた人
- エムタメ!編集部
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クラウドサーカス株式会社 マーケティング課
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2006年よりWeb制作事業を展開し、これまでBtoB企業を中心に2,300社以上のデジタルマーケティング支援をしてきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。53,000以上のユーザーを抱える「Cloud CIRCUS」も保有し、そこから得たデータを元にマーケティング活動も行う。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意。
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