Withコロナの日々がはじまり半年以上。その間に企業の業務のあり方や私たちの働き方はすっかり様変わりしました。
今後も続くであろうリモートワークやテレワーク。オンライン商談の日常化。
ニューノーマルと呼ばれる時代に、マーケターはどのようなキャリアを描いていけばよいのでしょうか。
この記事では、変わりゆく時代を生き抜くうえで、これからのマーケターに求められるスキルについて考えてみましょう。
新型コロナウイルスの流行以来、私たちの働き方は大きく変化しました。
2020年4月には緊急事態宣言を受け、出勤者を7割削減する目標のもと在宅勤務が推進。
多くの企業が、急遽リモートワークやテレワークの体制を整えなければならない状態となりました。
しかし、このような「やらざるを得ない」状況が、多様な働き方が受け入れられる環境を劇的に前進させたのも事実です。
「働き方改革」は、コロナ以前から重要なキーワードとして認識されていましたが、このような事態に陥っていなければ、改革のスピードはもっと緩やかなものだったでしょう。
コロナ期を表す言葉も、月日の経過に応じて変化してきました。
危機的状況を表す「コロナ禍」から、コロナと共に生きることを表す「Withコロナ」へ、そしてそれらを新しい日常ととらえる「ニューノーマル」という意識も高まってきています。
ニューノマール時代は、短い間に人々の働く意識に大きな変化をもたらしました。
リモートワークが日常化し、それでも大きな支障なく業務が進められるということが証明されたことは、「仕事のために都市部に住み続けなくてもよいのではないか?」という発想を生みました。
その結果、現在ではUターン・Iターンが活発に行われるようになっています。
多様な働き方が受け入れられる土壌が形成されはじめるなか、パラレルワークや副業に注目が集まることで、人々の働く意識にも大きな変化が生じています。
「この会社で働き続けたい」「会社の目標のために成長したい」という意識は薄れ、人々はより個人としてのキャリア形成や成長を重視するようになっています。
社員の帰属意識が低下するなか、転職や独立、起業は以前ほど困難なものとはとらえられなくなり、キャリア決断のハードルは下がりました。
このような従業員の働く意識の変化に対応するため、企業側には特定の個人に依存せず、すべての仕組みを非属人的にすることが推奨されています。
では、人々の働き方の変化とそれに対応する企業側の姿勢の変化によって、今後、私たちの働く環境にはどのような影響が出てくるのでしょうか。
リモートワークの恒常化により、企業(管理する側)は従業員の業務内容やプロセスを把握しづらくなります。
目の前で仕事をしていたこれまでは、「かかった時間に対して成果が適正か」などプロセスも含めた評価が行われていましたが、今後は時間やタスクを管理するのではなく、より成果にフォーカスした「成果管理」の人事考課が進んでいくと思われます。
組織のなかで、これまで以上に明確な「成果」が問われるなか、マーケティングに関わる人材はどのようなスキルを磨き、どのような方向性でキャリアを築いていけばよいのでしょうか。
変化のスピードの速いこれからの時代を生き抜くマーケターの進む道には、2つの選択肢があると考えます。
ひとつは、特定分野のエキスパートになって人の倍の成果を残す人材になる道。
もうひとつは、組織に属して全体を改善・向上させるような体系化スキルを発揮する人材になる道です。
前者のメリットは、特定分野のスペシャリストになることで組織のなかでも唯一無二のスキルを持った自在として必要とされること。
仮に転職や独立などをする場合にも、専門分野のスキルがあることはアピールしやすく、有利に働くと思われます。
しかし、特定のスキルで人より秀でるためには、人並以上の知識の習得が必要です。
自身で「この分野を極めたい」というものを見つけられる人にとっては、このようなキャリアの描き方が向いているでしょう。
一方、後者のメリットは、組織に属しながら、組織のなかでの経験を自身のキャリアに活かせるということです。
しかし、漫然と組織に属するだけではいけません。
前述したように、働き方が多様化するなか、組織のあり方を柔軟に変化させていくことは企業にとっても大きな課題です。
そのため、人と人がともに働く相乗効果を最大化し、なおかつそれらの効果を仕組み化して他の人もできるようにするなどの「体系化スキル」は組織のなかでも重宝されるでしょう。
>オウンドメディア責任者のキャリアはスロー化する!?なぜメディア責任者は成長しにくいのか?
上記で述べたように、特定分野のエキスパートとして人並み以上の成果も残せず、組織の成長にも貢献できない人材が、厳しい言い方をすれば今後「窓際族」になってしまう恐れがあります。
とはいえ、「体系化スキル」はひとりの学習で習得できるものではなく、人と人との関りや数々のトライ&エラーを通して身につくものです。
なかでも体系化スキルを身につけるために簡単に実行でき、重要だと思われるのが「アウトプット能力」です。
アウトプット能力の高い人は、日々、自身の得意分野、得られた経験や成果を外に向かって発信しているため、「この人は〇〇に詳しい」「この人は〇〇に熱意を持っている」「聞いたら、必要な答えをくれるだろう」などと認識されます。
一方、アウトプット能力が低い人(アウトプットをしない人)は、しだいに上司・同僚・部下から仕事の質問や相談をされることがなくなります。
身に覚えがある方は、ぜひ自身の日々の姿勢を振り返ってみましょう。
最後に、これからの時代を生き抜くマーケターが身に付けたい具体的なスキルをいくつかご紹介します。
(1)部門をまたいだ指揮力
マーケティングの手法を用いて組織を変えていくことは、マーケティング部門だけでできるものではありません。
営業、インサイドセールス、情報システム、法務など、さまざまな部門と連携し、組織をまたいで陣頭指揮をとれるスキルが求められています。
(2)エンジニア脳
システムを実装するためのコーディングスキルがあるのが理想的です。
自身でできなくとも、これらの技術を理解できる知識があることで、開発にかかる期間やコストを予測したり、業務を仕組み化したりするためのシステムを構想することができるようになります。
(3)データドリブンな視点
データ活用は、データを収集、整理するだけではなく、データが表す意味を読み取ったり、データとデータの相関性から新たな法則を発見したりできるスキルが必要です。
この分野は、日本ではまだ専門家が少ないものの、ニーズの高い分野のため、習得できればキャリア形成に優位となるでしょう。
(4)外注先のディレクション能力
マーケティング施策を自社のリソースだけでまかなうのは難しいため、施策をスピーディにまわすためにはWeb、広告、デザイン、コンサルティングなど外部委託をする必要があります。
自身の得意分野ではない領域を外注し、やりたいことを実現するには、高度なディレクション能力が不可欠です。
(5)常に新しい情報をキャッチアップできる習慣
デジタルマーケティングの技術やトレンドの変化は非常に早く、新しい用語も次々と出てきます。
マーケターは得意分野だけでなく、常に新しい情報を幅広く取りに行く意識を持つことが大切です。
参考記事:「これからのマーケターに求められるスキルは、部署をまたいで新しい仕組みを定着させる「指揮力」」
定年延長が段階的に進められるなか、2025年には全企業に65歳定年制が適用されます。
これと同時に厚生年金の受給開始年齢も全世代で65歳~に引き上げられるわけですが、昨今メディアなどで議論されている通り、今、この記事を読んでいただいている多くの現役世代の皆さんが年金を受給するころには、この制度も変わっている可能性があります。
日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳(2019年・厚生労働省のまとめ)。
女性の過半数が90歳まで生きるというデータが出ており、「人生100年時代」もおおげさではなくなってきました。
そしてもし65歳で定年する場合、100歳までには35年もあります。
定年退職で仕事から離れるという常識が壊れつつある今、資産を維持し、長い人生を豊かに生きるためにも「一生現役」という選択肢が出てきています。
このような未来を見え据えるうえでも、長いキャリアを常に求められる人材でいるために必要なスキルを磨く必要がありそうです。
今回の記事では、変わりゆく働き方にスポットを当て、これからの時代を生き抜くマーケターのキャリアの道筋や求められるスキルを考察しました。
マーケティングに関わる読者の皆様は、ビジネスのオンライン化や非属人化が急激に進む現代において、きっと求められるスキルやポテンシャルをお持ちだと思います。
時代の変化を前向きにとらえ、ぜひ長く、生き生きと活躍できるキャリアを築いていってください。