【海外における最注目のマーケティング動向 #07】 ライブ動画がブログを超える
最終更新日:2019/03/13
昨年頃から、日本でも少しずつ普及してきた「ライブ動画」。
ライブ動画といえば、YouTubeやニコニコ動画などの動画サイトが定番ですが、最近では17Live(イチナナライブ)やLive.me(ライブミー)といった“ライブ配信アプリ”が若者の間で流行しています。
リアルタイムで動画を配信する「ライブ動画」は、今後ブログよりも多くユーザーに見られるようになると米国cona dna社は予測しています。
今回は「ライブ動画」が拡大していく背景について、米国core dna社のレポートを含むいくつかの調査データを元に解説します。
1.動画コンテンツはブログよりも見られるようになる
Back in 2016, the digital world took note of the rapid growth of live video and over the past 2 years, this has only intensified. Currently, 80% of consumers would rather watch a live video than read a blog post. In a survey conducted by Livestream, 82% of the respondents said they preferred tuning into a brand’s live video to reading its social media posts.
デジタル業界では、2016年にライブ動画の急成長が注目されていたが、ここ2年でその勢いは更に増している。現在、80%のユーザーはブログ投稿を読むよりライブ動画を視聴する。LIVESTREAM社が行ったアンケート調査だと、82%の回答者は企業(ブランド)のSNS投稿を読むより企業のライブ動画を視聴することを好むと回答している。
米国のマーケティング担当者たちは2018年を“動画マーケティング元年”と表現しており、中でも、若い世代を中心にブームを起こしている“ライブ動画”が今後急速に伸びると予測しています。
LIVESTREAM社の調査では、「デスクトップパソコンでの動画の視聴(米国)」ついて、録画された動画(VOD)の平均視聴時間が約2.6分であるのに対して、ライブ配信は約34分となっており、なんと13倍も長く見られているという結果が出ています。
そして2019年には、米国でのインターネット上の情報量の85%が動画になり、SNSをはじめとするブログ投稿の情報量を上回ると言われています。(参考:https://livestream.com/blog/62-must-know-stats-live-video-streaming)
2.ユーザーは動画に”リアリティ”と”コミュニケーション”を求める
Facebook, one of the most used platforms for live video in 2017, reports that users are spending up to 3 times more time watching live videos than watching traditional/recorded videos. The comments are also 10 times higher during the livestream.
フェイスブックユーザーは、「録画された動画」に比べて「ライブ動画」は約3倍以上も長く視聴していると述べている。また、ライブ動画のコメント数は録画された動画よりも約10倍多くなるという結果も出ている。
なぜ、ユーザーは動画の中でも特に“ライブ動画”を好むのか?
その大きな理由は、録画された動画とは異なり、リアルタイムに配信される“編集が加えられていない”動画に以下の魅力を感じているためです。
- リアリティ
- 相互的なコミュニケーション
ライブ動画のユーザー層で最も多いのは20代前半の世代であり、彼らが携帯端末を持ち始めた頃には、既にFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが一般化されていました。ソーシャルメディアを通じて、“インターネット上でも相互的なコミュニケーションをとることが日常的となっている”世代は、観られるタイミングが“今しかない”ライブ動画をコミュニケーションツールの1つとして捉えています。
事実、Facebook Liveのライブ動画は録画動画よりも10倍以上も多くコメントが投稿されています。
ライブ動画は、テレビ番組の“生放送”に感じるリアリティと、ソーシャルメディアが持つ相互的なコミュニケーションの両方を併せ持つことで若者の人気を得ています
3.ライブ動画の視聴者の多くは、商品購入やイベント参加に積極的になる
67% of live viewers say they are more likely to purchase a concert ticket to see a band or attend an event if they’ve seen a live stream of a similar event online.
ライブ動画の視聴者の67%は、興味があるイベントのライブストリームをオンラインで見た場合、コンサートチケットを購入してバンドを見たり、イベントに出席する可能性が高いと答えています。
ライブ動画はユーザーを呼び込むだけではなく、視聴したユーザーからの商品購入やサービス申し込みを増やす効果も期待できます。
MEDIATIVという海外の情報メディアによれば、米国のマーケティング専門家の50%が、「ソーシャルメディアにおいては、ブログ投稿よりもライブ動画の方がROI(投資対効果)は高い」と答えています。
(参考:http://www.mediative.com/2018-digital-trends-10-live-streaming-video/)
実際に2021年までに、ライブ動画は700億米ドル(日本円で7兆8千億円)以上の産業に成長すると予測されています。これは、2017年における日本の総広告費「6兆3,907億円」を大きく上回る規模です。
4.ライブ動画に投資している企業は既に米国全体の60%以上
while almost 60% of marketers are currently investing in live video, less than 15% are actively using the medium. However, marketers have been interested in live video for a while as a study conducted by Buffer in 2016 suggests that up to 42% of marketers had a particular interest in live video at the time.
60%のマーケターは現在ライブ動画に予算を割いており、さらにその内15%以下のマーケターは既に積極的に活用している。また、2016年Buffer社が行った動画に取り組んでいない企業を対象にした調査(下図)によると、42%のマーケターはライブ動画に対して何かしらの興味を示していることがわかった。
今後取り組みたいと考えている企業も合わせると、米国企業の2社に1社がライブ動画の活用を進めている、もしくは強い関心を持っているということになります。
このようなライブ動画の活用状況をうけて、先に紹介したLIVESTREAM社同様に米国Cisco社でも、米国の各社が「2019年にはインターネットトラフィックのほとんどが動画になる」と予測しています。また、米国の調査会社もSocial reportでも「2019年にはインターネット動画の視聴時間がテレビの視聴時間に追いつく」と予測しています。
(参考:http://www.mediative.com/2018-digital-trends-10-live-streaming-video/ https://www.recode.net/2017/6/8/15757594/future-internet-traffic-watch-live-video-facebook-google-netflix)
5.まとめ
今回はライブ動画が拡大していく背景について紹介しました。
~ライブ動画が拡大していく背景~
- リアリティ
- 相互的なコミュニケーション
ライブ動画が拡大してきた背景を考えると、「海外で注目度が高いから」や「競合も始めたから」などの理由で安易にライブ配信に踏み切るのは危険だと考えます。
なぜなら、ユーザーが求めているリアリティは企業が『こう見せたい』と考えるブランディングと時として逆行する可能性がありますし、リアルタイムかつ相互的なコミュニケーションは、多くの日本企業が気にする炎上を生み出しやすいからです。
ユーザーがライブ動画に求める価値を提供できなければ、当然ですが成果を出すことは難しいでしょう。
ユーザーがライブ動画に求める価値を既に提供できる素地のある企業は良いですが、そうでない企業は以下のような企業文化の醸成から取り組む必要がありそうです。
- 失敗すること(上手くいかなかった時)を責めない文化
- 仮に炎上が起こったとしても、起きた後の対応が一番重要だという共通認識での運用
- Writing By
- 金井 章浩
-
スターティアラボ株式会社 取締役
クラウドサーカス株式会社 代表取締役- プロフィール :
-
2006年スターティアに新卒として入社。2009年にスターティアラボ立ち上げに参画。
2014年にWebプロモーション事業部を立ち上げ、同事業部を2018年にクラウドサーカス株式会社として分社化、代表取締役に就任。
近年のマーケティングテクノロジーの高度化に伴い、マーケティング効率が飛躍的に高まっている一方、多くの企業ではまだまだそれらを使いこなせていないのが現状。それらをシンプル化することで多くのマーケターがより高い成果を生むしくみの普及に努めている。
ライブ動画の活用シーンはB to Cだけではありません。B to B企業の96%が『オンラインマーケティングの一環として今後動画を使用する予定がある』と回答している調査結果も出ています。