レビューマーケティング(Review Marketing)とは、ユーザーから寄せられる商品やサービスのレビュー(口コミ)を活用するマーケティング手法です。
レビュー(口コミ)の内容をすでにマーケティングや商品の開発・改善に活かしているという人も、貴重で有益なコンテンツとして改めて注目してみてはいかがでしょうか。
レビューマーケティングのメリットとデメリット、SNSとの関連性や便利なツールを紹介します。
目次
11まとめ
レビューマーケティング(Review Marketing)とは、ユーザーから寄せられるレビュー(商品やサービスの感想・評価)をコンテンツとして活用するマーケティング手法を指し、「口コミマーケティング」とも呼ばれます。
ユーザーから寄せられたレビューがSNSで拡散されれば、商品のPRや新規顧客の獲得を低コストで実現することも可能である点で注目されています。
ユーザーが作成したレビューはUGC(User Generated Contents、ユーザー生成コンテンツ)の一部と言えるので、レビューマーケティングは「UGCマーケティング」と似た意味で使われることもあります。
ただしUGCマーケティングのほうが広義です。
参考記事:
>UGCとは?ユーザー作成コンテンツはサブスクリプションサービスの拡販に不可欠!
一般ユーザーは実際のところレビューをどの程度参考にしているのでしょうか。
NTTレゾナント株式会社運営のインターネットアンケートサービス「gooリサーチ」が実施したアンケート「購買行動においてクチコミが与える影響」によると、商品・サービス購入の際に「クチコミが気になる」人は全体の81.6%で「クチコミを参考にして購入を決める」人は全体の39.3%、特に女性の46.5%が「クチコミを参考にして購入を決めることが多い」と回答しています。
また、総務省の「平成28年度 情報通信白書」によると、ECサイトで買い物をする際にレビュー(口コミ)を参考にする人は20代から60代のどの年代でも6割強であり、レビューを読んで購入する商品を決定したことがあるという人は同じくどの年代でも8割強となっています。
商品を選ぶ際に口コミを参考にする人が多いことと、商品レビューが購買意欲に与える影響が大きいことがわかります。
出典:
>「購買行動におけるクチコミの影響」に関する調査(NTTコム リサーチ)
サブスクリプションとは、定期・定額の利用料を支払うことで商品やサービスの利用権を得るサービスを指し、消費者の購買プロセスの変化などによって急速に拡大しています。
ユーザーの価値観はミレニアル世代を中心に「所有から共有」に移行し、「共感・共鳴できる物事にお金を使う」「共感できる人の情報を重視する」という傾向が進んでいます。
ユーザーが作成したコンテンツであるレビュー(口コミ)は企業が発信するコンテンツよりもユーザーの共感を得やすく、SNSでの拡散もされやすいことから、さまざまな企業のプロモーション手法として活用されるようになりました。
出典:
>ミレニアル世代の消費行動は「共感できる情報」がカギ-ミレニアル世代の消費意識に関する国際調査より-(株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント)
参考記事:
>UGCとは?ユーザー作成コンテンツはサブスクリプションサービスの拡販に不可欠!
レビューを収集しているWebサイトでリッチスニペットを導入すると、検索結果にレビューの概要を表示させることができます。
リッチスニペットとはGoogleが採用しているスニペット(英語で「断片」の意)を発展させたもので、ユーザーからのレビュー評価や写真、ダウンロード用のリンクなどテキスト以外の情報を含むものです(例、下図)。
レビューの概要が表示されたリッチスニペット(「レビュースニペット」とも)はユーザーが求めるページを効率的に探せる点でユーザビリティが高く、自然検索からの流入数アップとクリック率アップを見込めます。
このようなリッチスニペットを設定するには、構造化データのマークアップが必要です。
リッチスニペットは通常のスニペットとは異なり、Webサイト管理者の意図通りに表示させることはできません。
リッチスニペットの表示内容はGoogleのシステムによって判定されます。
既存ユーザーによるレビュー(口コミ)をプロモーションに活用することで得られるメリットは主に次の通りです。
売り込み型の広告は敬遠される傾向がありますが、ユーザー自身により近い人が発信するレビュー(口コミ)はユーザーの共感を得ることができ、より信頼性の高い状態で購買行動につなげることができます。
ユーザーの立場からすると、レビュー(口コミ)を閲覧することで等身大のリアルな情報を得られる点がメリットです。
参考記事:
>BtoB企業におけるTwitterの活用方法とおすすめのアカウントをまとめました!
レビューマーケティングにはさまざまなメリットがある一方、次のようなリスクが発生し企業側のコントロールが必要となることがデメリットだと言えます。
レビュー(口コミ)はユーザー側が自発的に発信するものゆえに、企業側が意図しない情報やマイナスイメージを与える情報、事実とは異なる情報を掲載される可能性があります。
また、いわゆる「ステマ」ととられるものが掲載されると企業やブランドの信頼が致命的なダメージをこうむるほか、景品表示法や健康増進法などの法律に抵触するおそれがあるので要注意です。
「ステマ(ステルスマーケティング)」とは、広告であることを明示せずに非営利の高評価レビューを装ったものを指します。消費者を欺く「サクラ行為」であり、ネット炎上に陥った事例もあります。
「ステマ」によるネット炎上を防止して信頼性を保つためには、一般消費者であるアンバサダーやインフルエンサーに依頼して口コミを書いてもらう場合には「広告」「宣伝」などと明記することが必要です。
参考記事:
ECサイトなどにおけるレビューマーケティングのKPI・KGIはどのように設定されるのでしょうか。
KPI(Key Performance Indicator)は主要業績評価指標と呼ばれ、最終目標であるKGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)を達成するまでの過程を定量・定性的に計測し評価する中間指標を指します。
KPI・KGIをどのように設定するかは企業やブランドが設定するゴールによって変わりますが、特にKPIについては関連ツールベンダーの活用事例における具体的な成果が参考になるでしょう。
たとえばYOTPOの「活用事例」をみると、「コンバージョン率アップ」「Q&A投稿数増加」「レビュー獲得数増加」「レビュー収集スピード」「月間にシェアされるレビュー数」などが具体的な成果の指標として挙げられています。
引用:
先述の通り、レビューマーケティングの主流はBtoC分野であり、主に商品の販促に活用されています。
しかし近年では米国の先進事例にならい、ITreview社などを中心にBtoB分野でのレビューマーケティング活用が進んでいます。
他のマーケティング手法と同様、BtoCでは心理面での訴求やひとりひとりのユーザーの趣向の多様性への対応がポイントになりますが、BtoBでも商品やサービスの選定を実行するのは人なのでアプローチには共通する部分があります。
しかしBtoBでは商材の単価が高額となる、複数人の意思決定がかかわるといったことから、第三者視点でのより説得力ある訴求が必要となる点でBtoCとはアプローチが異なります。
購買プロセスの手順の多さと取引にかかる時間の長さもBtoCとは異なる点です。
BtoB分野でのレビューマーケティング活用が進むにあたり、こうした課題の解決とともに営業部門との連携強化、カスタマーサクセス強化などのメリットが見られるようになりました。
参考記事:
>レビューマーケティングのイノベーターたちが一堂に集結、 「ITreview 2019」開催 B2B SaaS企業のマーケター、カスタマーサクセスマネージャーによる登壇内容を一挙紹介
レビューマーケティングの実践に必須となるユーザーレビュー(口コミ)は、次のようなプラットフォームを通じて収集することができます。
レビューマーケティングを一から始める際には、レビューサイトを活用するのが効率的でしょう。
Amazon、楽天、Shopify、aiship、 BASE
ECサイト(ECプラットフォーム)のレビューシステムやレビュー機能を利用してレビューを収集することができる。
拡張機能として提供しているサイトも。
@cosme(アットコスメ)、食べログ、Trustpilot
レビューを書くことで得られるメリット(プレゼント企画やポイント制など)がプラットフォーム側から提供される、レビュー投稿が会員制になっているなどのシステムにより、一定の量と質が見込めるのがメリット。
レビューの収集では最も効率が良いとされる。
ITreview、イプロス
BtoBのECプラットフォームやマッチングサイトに掲載されていないレビューを見ることができる。
商品やサービスの業界内での位置や競合優位性を客観的に把握できるので、ブランド力の強化の材料にも最適。
参考記事:
>【社長対談】アイティクラウド代表 黒野氏に聞く、SaaSベンダーのカスタマーサクセスに求められる役割とは?
高評価の口コミを収集する方法のひとつとしてFacebookやtwitter、インスタグラムなどSNSの活用も有効です。
SNSに商品の写真や情報を掲載して「いいね!」や「フォロー」などのリアクションを獲得し、リアクションしたユーザーからフォロワーへ情報を拡散してもらうにあたり「レビュー投稿で50ポイントプレゼント!」など投稿者にメリットのあるキャンペーンを打てば良質なレビューの収集につながります。
ユーザーの目に止まるフレーズを含むハッシュタグの作成も効果的です。
各社が提供するツールを使って口コミ機能を新たに設定、あるいは機能拡張することが可能。(「Googleカスタマーレビュー」でレビューを収集する、「Wordpressレビュープラグイン(拡張機能)」を利用するなど)
レビューマーケティングのためのレビューシステム構築やレビュー収集に役立つツールを目的別にご紹介します。
自社のニーズにあわせて利用してみてください。
運営会社名:株式会社ギャプライズ
運営会社名:https://www.yotpo.jp/
特長:イスラエル発のUGCマーケティングツール。ユーザーのレビュー(口コミ)やQ&Aを収集・活用してECサイトの売り上げ向上を目指す機能が充実。GoogleやSNSとの連携も便利です。YOTPO.日本公式サイトにはECビジネスを加速させるノウハウ集も掲載されています。有料版と無料版あり。
運営会社名:株式会社サブスパイア
公式サイトURL:u-komi.com
特長:ECサイト運営に必須の機能が揃ったレビューツール。レビュー獲得率アップからレビュー関連の解析データの確認、AIによるレビューコンテンツの分析などにより、ユーザーにとっても使いやすいレビューシステムを構築します。ニーズに合わせて複数プランあり。
運営会社名:コマースデザイン株式会社
特長:中小企業を中心にECコンサルティングを行う企業が提供するECツール。楽天市場の店舗を対象に、該当商品の高評価レビューだけを楽天店舗ページに自動掲載できます。レビューの選定や画像加工の手間が不要なので、個人経営や小規模店舗にもおすすめです。
運営会社名:株式会社プラスアルファ・コンサルティング
公式サイトURL:https://www.pa-consul.co.jp/mieruka/
特長:独自の解析処理による高精度な「テキストマイニング」手法で顧客の声を分析するツール。感情分析や発言ワードの出現頻度、ポジネガの把握など、緻密な分析で顧客のニーズと自社商品の評価を「見える化」します。外部にある顧客の声の収集・分析も可能。
運営会社名:株式会社トライハッチ
特長:実際に来店・来院した顧客にオンライン上で口コミを依頼できるGoogleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)口コミ促進ツール。Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)以外の媒体も口コミ促進・管理が可能、口コミ内のネガポジを自動判定してアラートを出すなど、ローカルビジネスに嬉しい機能が充実しています。無料ベータ版もあり。
レビューマーケティングを活用して新規顧客獲得や広告の効率化を実現した企業の成功事例を紹介します。
「口コミ分析強化で商品戦略の効率化に成功」
「ポッキー&プリッツの日(11月11日)」には、わずか1日でWeb上の口コミが約6万件集まるという同社は口コミ分析ツールをフル活用し、膨大な口コミ分析の内製化に成功。テレビCM露出量と口コミ数の因果関係から緻密な効果測定を行えるようになった。
「友だちを招待すると無料で容量アップ」
無料プランを利用中のユーザーは友だち1人を招待するごとに500MB(最大32名で16GBまで)、有料プランの場合は1人あたり1GB(最大32名で32GBまで)を無料で獲得できるキャンペーンを展開。リピート客の口コミで新規顧客の獲得を狙った。
「口コミの活用が企業間での気づきに貢献」
データマネージメント事業を展開する同社では、自社プロダクトへの口コミを最重要フィードバックとして活用。ユーザー企業への事例インタビューやユーザー会での事例発表会を実践することで先進事例を可視化し、企業間のディスカッションの深さにつなげている。
著:株式会社サウスポー セールス・プロモーション支援チーム 出版:みらいパブリッシング(2019年8月)
年間2,000回以上のセールス・プロモーション支援を行うチームが蓄積したノウハウを詰め込んだ一冊。スマホ時代の消費者たちに訴求する「口コミ」を有効活用し販促活動を最大化する新たなマーケティング手法「多馬力マーケティング」の極意を紹介します。
【内容の一例】
- 「一人十色」時代の消費者ニーズの吸い上げ方
- 売り手と買い手の間に起こっている「目に見えない食い違い」
- 多くの企業で口コミ対策ができていない理由
- マーケティング施策を加速させる口コミの重要性
- 多馬力マーケティングはネット、店舗、メディアすべてで使える
- 消費者から信頼される口コミづくりの方法
- 「多馬力マーケティング」実現のためのアプローチ
- 多馬力マーケティング実践時によくあるFAQ
引用元:みらいパブリッシング
著:藤山 守重 出版:コスモトゥーワン(2018年11月)
1987年に株式会社七田チャイルドアカデミーを創業した藤山守重氏の著書。画期的なクチコミ応援サイト「ユーワード」を中心に独自論を展開し、広告を使わず人と人とのつながりを大切にすることで究極の「街おこし」を実現する経営戦略を紹介しています。
【目次の一例】
序章 まったく新しい口コミ応援サイトが出現した!
- 章 まさかの集客コスト0円!? なぜそんなことが可能なのか?
- 章 広告ナシでお客様数・売上が右肩上がり! 人気店が続々と
- 章 ユーワードで変わった! 街・人・未来
- 章 もう広告はいらない! SNS口コミこそ現代の最強メディア
- 章 運がいい人になる、たったひとつの確実な方法
引用元:Amazon
著:神田 昌典 出版:フォレスト出版(2001年3月)
「感情マーケティングのカリスマ・マーケッター」とも称される実践マーケッター・神田昌典氏の著書。「口コミ」という一見つかみどころのない現象を、ビジネスで活用するための実践プログラム形式で解説しています。500社を超える成功実績も参考になります。
【目次の一例】
第2章「口コミ五つの常識」を大研究する!
- 口コミに関する一般教養テスト
- 口コミの脱・常識その1
顧客満足が得られれば、口コミしてくれる
期待させないという高度テクニック
- 口コミの脱・常識その2
商品がよければ、口コミする
- 口コミの脱・常識その3
悪い口コミほど、早く伝わる
- 口コミの脱・常識その4
口コミは、お客がするものである
- 口コミの脱・常識その5
口コミは、最高の宣伝媒体である
引用元:フォレスト出版
【主催】宣伝会議
【日時】2020年08月07日(金)
【会場】東京・南青山周辺
【受講価格】¥ 49,000(税別)
【URL】https://www.sendenkaigi.com/class/detail/influence_ambassador.php#pid21742
マーケターやプランナーを対象に、口コミをどのように起こし、どのように活用するかを実践的かつ詳細に学べるセミナー。「インフルエンサー」や「アンバサダー」が発信する情報のひとつである「クチコミ」がマス広告では届かない層にリーチすることをふまえ、高い信頼度で購買につなげる戦略を紹介します。
【主催】株式会社ギャプライズ(YOTPO.日本公式サイト)
【日時】2020年5月27日(水)11:00-11:45
【会場】ウェビナー
【URL】https://www.yotpo.jp/seminar/webinar/
レビューツール・YOTPO.(ヨットポ)の日本正規代理店が主催するセミナー。主に自社ECを強化したい方を対象に、UGCの収集・掲載からさまざまなチャネルでの活用方法を事例をまじえて解説します。UGCマーケティングに加え、動画マーケティング、インフルエンサーマーケティングについても紹介。
【主催】株式会社ギャプライズ(YOTPO.日本公式サイト)
【日時】 ※近日開催予定なし
【会場】株式会社ギャプライズ 御茶ノ水オフィス(東京都)
【URL】https://www.yotpo.jp/seminar/
上記のセミナーと同じく、レビューツール・YOTPO.(ヨットポ)の日本正規代理店が主催。レビュー活用の新しい考え方から具体的なレビューマーケティング施策まで解説します。「ユーザーレビューがなかなか集まらない」「自社サイトへの新しい導線を作りたい」「SEOも考えたレビュー戦略に取り組みたい」といった悩みを持つ方におすすめのセミナーです。
ユーザーレビュー(口コミ)は身近で個人的なものであるがゆえに、漠然と、あるいは感覚的にとらえてしまうことがあるかもしれません。
ステマや炎上などのリスクもあり、SNSへの広がりにも注意を要しますが、トラブルを未然に防ぎつつレビューをコントロールすることが大切です。
その際には企業としてのモラルが問われ、また、商品やサービスそのものに力があることが大前提になります。
ユーザーレビューの有用性を改めて認識し、分析の対象としてフル活用していく機会となれば幸いです。