2020年9月24日(木)、オンラインにて「カスタマーサクセステック博覧会2020」が開催されました。同イベントでは、近年、重要度が増しているマーケティング施策の「カスタマーサクセス」をサポートするツールを運営する5社が登壇。それぞれの特徴やツールの簡単な使い方などを紹介しました。
「エムタメ!」では、このイベントの様子を5回にわたってレポート。当日、使用された資料とともに振り返ってみたいと思います。最後となる第5回は、企業とユーザーをつなげるコミュニティタッチツール「コミューン」を提供するコミューン株式会社の代表取締役CEO・高田氏(@belgrou)のセッションをお届けします。
高田 優哉(コミューン株式会社 代表取締役CEO)
パリ農工大学留学を経て東京大学農学部卒業。卒業後ボストンコンサルティンググループに入社し、東京、ロサンゼルス、上海オフィスで戦略コンサルティング業務に従事。リードコンサルタントとして活躍後退職し、コミューン株式会社を共同創業。
冒頭、コミューンは顧客体験を最適化するコミュニティタッチツールであると紹介した高田氏。加えて、企業とユーザーが双方向でやり取りするコミュニティを簡単に作れて、効果的にコミュニティタッチの運用ができるサービスであるとも述べ、これにより、カスタマーサクセスをスケーラブルなものにし、さらに高い顧客エンゲージメントを実現できるとも説明しました。
次に、キーワードとなるコミュニティタッチについて触れました。カスタマーサクセスには「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」「コミュニティタッチ」の4つのタッチがあるとしたうえで、それぞれについて詳しく説明がありました。
とくに「テックタッチ」と「コミュニティタッチ」をまとめて語られることがあると述べ、「テックタッチ」は1対Nのアプローチとし、例としてはメルマガやヘルプページを挙げました。一方、「コミュニティタッチ」はN対Nで双方向性のアプローチである点が「テックタッチ」との違いとして語られました。
同社ではコミュニティタッチは企業とユーザーの距離を縮め、垣根をなくすアプローチであると考えているとのことでした。
コミュニティタッチの概要が分かったところで、続いてはコミュニティタッチが求められる背景について、2つのニーズについて説明がありました。
1つ目はコミュニティ施策を通じてカスタマーサクセスやカスタマーマーケティングにおけるユニークな効果を創出したい場合。2つ目が「解けないパズル問題」を解消し、スケーラブルなカスタマーサクセスを実現したい場合。
まず1つ目については、コミュニティ施策を通じて3つの効果を創出していると説明した高田氏。最初の価値としては、コミュニティを通じて顧客と企業のコミュニケーションが円滑になり、双方向性が生まれることで、プロダクト進化の効率性が生まれ、さらには情報提供がよりスムーズになると述べ、サクセスサポートのコストの効率化と効果最大化につながるとのことでした。
2つ目の価値としては、既存顧客の中のコミュニティのやり取りを通じ、たとえば成功体験が共有されたり、相談し合ったりすることでサポートコストが削減されると共に、効率化が可能になり、さらには口コミ効果によってアップセルの機会にもつながると説明しました。
3つ目の価値としては、潜在顧客へのリーチの効果だと述べた高田氏。たとえば、セールスフォースなどが積極的に「コミュニティが存在すること」を訴求しているのは、それ自体がユーザーにとっては付加価値であり、イコール、受注率アップにつながるとも説明しました。さらには、コミュニティの中の情報やコミュニティの存在がリード創出につながるだけでなく、サービスに対しての正しい期待値を持つためのプレオンボーディングにもつながるなどといった効果も期待できるとのことでした。
このようにコミュニティはかなり多面的な機能価値を持つことから、顧客接点の基盤として認識するべきだと付け加えました。
続いては、2つ目のニーズである「解けないパズル問題」について説明がありました。そもそも「解けないパズル問題」とは、ハイタッチに取り組んでいる企業が直面することが多いとし、基本的にハイタッチに取り組む場合、単価が高い顧客でないとペイしないだけでなく、リソース不足の問題に陥ると説明。
この場合、金額のリーズナブルなプランの顧客が多く、この層に対してカスタマーサクセスに取り組んでいたら割に合わなかったり、あるいはすごく成長している企業で、そもそも単価うんぬんの話ではなく、サポートしなければいけない顧客が莫大で、ハイタッチだとリソースを割けなかったりなどといった問題に直面するといいます。
とはいえ、リーズナブルなプランの顧客に対してカスタマーサクセスの取り組みを行わなくていいわけではなく、一般論でいうと、そういった顧客ほどチャーンレートは高くなりがちであると指摘しました。そういった顧客にもしっかりとカスタマーサクセスの取り組みを行う必要があるものの、ハイタッチでアプローチしていたら割に合わない。このような状態が往往にしてあると述べました。
利益を損ないながらもハイタッチでアプローチして解約率を改善するのか。それとも、ある程度割り切ったうえで、解約率は高止まりするものの、カスタマーサクセスの取り組みをせずにコストを下げることで利益を維持していくのか……これを「解けないパズル問題」だと説明し、いずれの場合も利益率が限定的になり、SaaSにおける課題であると述べました。
では、この「解けないパズル問題」を先駆者たちはどう乗り越えていったのか──これに対して高田氏は、コミュニティタッチの運用をすることで解決していたと説明しました。
アメリカのSaaS上場企業の時価総額トップ50のうち、95%にあたる45社がコミュニティタッチに取り組んでいるとのことでした。
次のパートでは、コミュニティタッチに抱きがちな疑問を高田氏自身が出し、答えていきました。
1つ目はコミュニティタッチの結果が出るタイミングについて。これに対して高田氏は、「中長期的な視座を持って取り組む施策」とアンサー。コミュニティタッチに今日取り組み、明日の解約率が改善するわけではなく、半年や1年後、2年後を考えて取り組む施策になると答えました。
続いて、コミュニティタッチは全社的なコミットメントが非常に重要だと強調。カスタマーサクセスが会社の思想として本来あるべきであると同様に、コミュニティや既存顧客との関係性も重要とのことでした。片手間で取り組むとその価値が狭まってしまうので、社内全体でコミットメントして価値を高めていくべきだとも付け加えました。
3つ目は、コミュニティタッチに取り組むタイミングについて。これに対しては、部門を立ち上げるなどし、責任の所在をはっきりしたうえで「今すぐ」と即答しました。なお、コミュニティタッチはフロー型の施策ではなく、ストック型の施策であるとも説明。施策自体が会社の資産になるので、今すぐに始めて資産的な価値を蓄積し、狙ったタイミングで効果最大化するのが良いとのことでした。
最後にコミューンの簡単なデモをし、このセッションは終了しました。