インサイドセールスを根付かせる方法は「ヒーロー」をつくること

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内勤型の営業組織として、近年、注目を集める「インサイドセールス」。しかし、日本での成功事例はまだ少なく、インサイドセールスにかかわる多くの人が知識や経験談を求めています。

今回の記事では、そんなインサイドセールスの最新の事例とノウハウを解説した『インサイドセールス究極の営業術』の著者であり、グローバルインサイト合同会社代表である水嶋 玲以仁氏への取材記事「インサイドセールス究極の営業術」の水嶋氏とMAベンダーが考える、インサイドセールスを成功させる秘訣」の中から、一部のテーマを抜粋してまとめました。

 

 

水嶋 玲以仁氏インタビュー

 

インタビューのテーマ別抜粋記事

 

 

 

 

 

 

水嶋 玲以仁氏 プロフィール

水嶋 玲以仁氏
  • Profile
  • 水嶋 玲以仁氏
  • グローバルインサイト合同会社 代表

    水嶋 玲以仁氏は、デルコンピュータ コンシューマー部ジェネラル・マネージャーを経て、以降インサイドセールスの実務全般について20年以上の経験を持っています。その後、マイクロソフト、Googleなど、世界有数のIT企業でインサイドセールスや営業チームの管理に携わり、いずれも売り上げ目標を上回る成果を達成。近年では、スタートアップ系企業の営業チームの再編成にコンサルタントとしてかかわり、シナジーを生み出した経験を豊富に持っています。
    2018年ダイヤモンド社より出版された著書『インサイドセールス究極の営業術』は、昨今、インサイドセールスが注目されていながら、ケーススタディや日本の最先端のモデルケースに関する情報が少ないことがきっかけとなり、執筆されました。著書のなかでは、株式会社ユーザベースのISチームの成長ヒストリーや、セールスフォース・ドットコム、マルケト、ベルフェイスなどベンダー会社のインタビューも掲載されています。

     

    参考リンク:水嶋氏の書籍紹介サイト(amazon)

 

 

 

なぜ、組織にインサイドセールスが根付かないのか?

インサイドセールス部門を立ち上げた企業のなかには、新しい営業の仕組みがうまく回せなかったり、思うような成果が出せなかったりして、苦戦していることも多いと聞きます。ではなぜ、日本の組織にインサイドセールスを根付かせるのは難しいのでしょうか。

 

水嶋氏:インサイドセールスは、見込み客から、新規の顧客や商談を生み出すために活動することが多いですが、一般的に、フィールドセールス(従来の外勤型の営業)が強い組織では、フィールドセールスは新規開拓をあまりやりたがりません。営業にとっては、既存顧客を追っていた方が、効率がいいからです。それは、大手企業でも同じです。
この問題は、たとえば「既存顧客なら×100、新規顧客なら×102⇒120」など、人事の評価方法を変えればいいのではないかと考えますが、ご存じのように、まだやってもいないインサイドセールス(IS)の施策のために、評価制度を簡単に変えることなんてできません。 そのため、ISチームの立ち上げ時には、フィールドセールスからの理解を得る仕掛けが必要だと思います。

 

 

 

インサイドセールス成功のカギはフィールドセールスからの理解

インサイドセールスを活用した営業フローの再編について、水嶋氏は、フィールドセールスからの理解は欠かせないといいます。

 

水嶋氏:組織のなかで、マーケティング担当や営業部長などには、マーケティングやリード活用が、これからの営業組織には必要だということについて理解してもらえます。しかし、フィールドセールスの現場の人は、さきほどの人事評価制度の問題もあり、直接自分に、すぐにメリットのあることではないため、なかなか理解が進みません
私の経験では、フィールドセールスが強い会社ほど、インサイドセールスが浸透しにくいという傾向もあり、フィールドセールスからの理解は非常に大切です。

 

グローバルインサイト合同会社 代表 水嶋 玲以仁氏

 

 

 

フィールドセールスを納得させるには「ヒーロー」という存在が重要

この解説策として、水嶋氏は、ISチームのメンバーがフィールドセールスから「認められる」「一目置かれる」成果を生むことがきっかけになるといいます。

 

水嶋氏:本来であれば、人事評価制度から変えることができれば理想的ですが、そう簡単には変えられません。それであれば、現行の制度を利用して、ISチームの成果が最大限、評価されることを狙おうと考えました。
日本企業は、明確に歩合給で評価される会社は少なく、多くの会社は、「年間の評価」や「目立った功績」など定性的な成果に対する評価があります。つまり「さじ加減」の部分が多いということです。
その定性的な評価の部分を狙って、私は、ISチームにまず「ヒーローを作る」ことを大切にしています。どのようにやるかというと、「インサイドセールス部門が難易度の高いリードを発掘して、フィールドセールスに渡す」ことを狙います。ここでのポイントは、フィールドセールスチームでも、なかなか開拓できなかった大手企業や、ずっと口座だけ開設して動いていない有力企業など、その会社にとって重要な相手であることです。
「営業にホットリードを渡す」ことも大切ですが、ただ「ホットリード」なだけでは、フィールドセールスに「それは簡単な案件だから獲れたんだ」などといわれてしまうこともあります。そのため、誰もが納得する難しい案件を、インサイドセールスから渡すことが、ISチームを評価し、理解するきっかけになると思うのです。

 

フィールドセールスを納得させるには「ヒーロー」という存在が重要

 

 

 

「ヒーロー」になり得る素質とは

では、ISチームの「ヒーロー」になる人材とは、どのような素質を持った人なのでしょうか?

 

水嶋氏:一番にいえるのは、「素直な人」ですね。インサイドセールスは、マーケティングの理屈や、ホットリードの定義など、全部理解してからやろうとすれば、非常に時間もかかります。また、戦略の当たり外れなども、いくらでもあります。そのため、理屈も大切ですが、「まずは、やってみよう」と素直に挑戦してくれる人がとても重要です。
また、成績がNo.1ではなく、No.2、No.3くらいだけど、チームの面倒見はいい人、熱い想いや、隠れた野心を持っている人なども向いていると思います。ほかにも、インサイドセールスの仕事はやることが多いため、マメな人にも合っていますね。
インサイドセールスはチームプレイです。自分のやり方を押し通したり、自分の成績が有利になるように案件を隠したりするような人では、うまくいきません。フィールドセールスに求められる素質とは、まったく違うことを理解しておかなければなりません。
また、一般的に、優秀な人ほど辞めるリスクは高まります。なぜ彼らが辞めるかというと、経営や、人事考課で評価されている成績No.1の人の「個人主義の成果」に不満があるからです。そのため、前述のような素質を持った人に、インサイドセールスで、現在の人事評価で最大限の評価を得られる仕組みをつくりませんか?と誘うと、一気にやる気を奮い立たせてくれることがあります。

 

 

 

本当に大事なのは「ヒーロー」の後継者を育成できるか

有力な人材を「ヒーロー」として成功させたら、「そのあとが重要」と水嶋氏は語ります。

 

水嶋氏:インサイドセールスの本当のゴールは、ヒーローを作ることではなく、成果の出る仕組みを確立し、その後継者をどんどん増やしていくことです。さきほども、マメな人が合っているという話をしましたが、自分の計画や結果を記録としてきちんと残し、再現性が高いやり方を、工夫して構築できることは大切です。 また、すぐに変えることは難しくても、人事評価を見直すことも大切です。近年では、外資系企業でも、成果主義だけでなく、企業全体の将来の利益に影響を与える貢献を、定性的に評価する動きも出てきています。これは「ビジネスインパクト」といい、これから新しい取り組みを取り入れる企業では、必要になってくる評価基準だと思います。

 

 

 

まとめ

「ISチームからヒーローを生む」。
今回のインタビューでは、数々の企業のISチームの立ち上げに携わってきた水嶋氏だからこそわかる、リアルな「つまずきのポイント」や、現行制度の範囲内で、どうやってその課題をクリアしていくかなど、多くの気づきを与えていただきました。
ISチームの立ち上げや、組織への浸透に悩みを持った方の少しでもヒントになることを願っています。

 

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