「Inside Sales Conference 2019」レポート 第一回 セッション「国産MAツールベンダー競合3社が語る!成果を生み出すインサイドセールスの仕組みとは?」

カテゴリ
マーケティング入門 
タグ
人気  イベントレポート  インサイドセールス  おすすめ 
B!

欧米では営業職の40%が専業でインサイドセールスに従事しているといわれています。日本でも近年、インサイドセールス部門を立ち上げる企業が増えてきており、いずれは日本でも当たり前の営業手法になっていくと考えられます。

人材領域でインターネットを活用したWebサービスを展開している株式会社ビズリーチは、インサイドセールスのイベント「Inside Sales Conference」を主催しています。2018年12月に開催された第一回につづき、2019年6月5日(水)に二回目となる「Inside Sales Conference 2019」が虎ノ門ヒルズにおいて開催されました。

エムタメ!では三回にわたり、当日のセッション内容をレポートしていきます。

第一回は、セッション「国産MAツールベンダー競合3社が語る!成果を生み出すインサイドセールスの仕組みとは?」の模様をお届けいたします。

 

「Inside Sales Conference 2019」レポート

国産MAツールベンダー3社の企業概要と登壇者の自己紹介

セッションはパネルディスカッション形式で行われました。

モレデーター:

toBeマーケティング株式会社

代表取締役 小池 智和氏

登壇者:※会社名 五十音順

Mtame株式会社(当社)

MAコンサルティング部 部長 田中 次郎

SATORI株式会社

マーケティング営業部 マーケティンググループ グループ長 豊川 瑠子氏

株式会社シャノン

マーケティング部 部長 村尾 慶尚氏

(以下、敬称略)

セッションのメインテーマである各社が取り組んでいるIS(インサイドセールス)におけるMA(マーケティングオートメーション)活用の前提条件として、まず、各社の事業概要と登壇者の自己紹介が行われました。

2017年にIS組織を立ち上げ(Mtame株式会社)

田中 次郎(Mtame株式会社 MAコンサルティング部 部長)

田中:Mtameは、2018年にスターティアラボから独立した会社で、OA機器などを扱うスターティアホールディングスの連結子会社で、主にデジタルマーケティングのコンサルティングとMAなどのツール提供、Webサイト制作を手がけています。最近、新たにISのコンサルティング事業もスタートしました。

マーケティングツールのベンダーでコンサルも提供している企業は数多くありますが、コンテンツも作れるというのは国内でも当社ぐらいでしょう。お客様はBtoB企業が多いです。

私自身は、営業職として入社し、ゴリゴリのテレアポをしていました(笑)。営業部門のマネージャーや支店長など何度か組織をマネジメントする経験をしています。その後、自社のマーケティングを担当し、2017年にIS組織立ち上げに関わり、営業、コンサル、マーケティング、CS(カスタマー・サクセス)の全部門を統括しています。

MAを活用した商談創出の仕組化に成功(SATORI株式会社)

豊川 瑠子氏(SATORI株式会社 マーケティング営業部 マーケティンググループ グループ長)

豊川:当社は、MA「SATORI」の開発、販売、導入支援、運用支援までを社内で手がけており、現在、BtoB企業様を中心に約450社以上の企業様にご利用いただいています。当社内でも「SATORI」を活用し、3年連続で150%成長を実現しています。

私自身は、初期メンバーとしてSATORIに関わり、現在はマーケティング部門に所属しています。当社のマーケティング部門は、ゴールが「商談獲得」なので、認知から商談獲得までのすべてを担っています。

当初は営業1名、マーケ1名の体制でスタートし、私自身がマーケとISを兼任していました。現在では、インサイドセールス組織拡大×MA活用で大量の商談創出の仕組化に成功し、年間で2,000商談以上を創出しております。1ユーザーとして皆様のヒントになるお話ができればと思っています。

発展途上のIS組織を持つ(株式会社シャノン)

村尾 慶尚氏(株式会社シャノン マーケティング部 部長)

村尾:当社は2000年に創業し、19年間、脇目もふらずマーケティング支援システム、いまでいうMAに当たるマーケティングプラットフォームを作り続けています。特徴は「デジタルとアナログを組み合わせる」点にあり、双方を組み合わせることで成果を上げられるようなツールです。

私自身はマーケティング部門を見ていますが、部内には、マーケティング・コミュニケーション、いわゆるマーコムとISの2つのチームがあります。「インサイドセールス」という名前ではありますが、位置づけとしては「1to1マーケティング」を行うチームです。

ISに取り組み出したのは3年前で、部門長、マーコム、ISが各1名体制からスタートして徐々に増え、現在は、マーコム3名、IS4名の体制となっています。

当社でもまだ立ち上げ途中ともいえる組織なので、これからISを立ち上げる、立ち上げたばかりという皆様のお役に立てる話ができるのではないかと思っています。

国産MAツールベンダーが自社で取り組むISとは?

国産MAツールベンダーが自社で取り組むISとは?

小池:各社の自己紹介からおわかりの通り、3方ともマーケティング部門で会社の成長を支えてきた方たちです。ツールベンダーの3社が自社でどのようにISに取り組まれているのかについてまず、お話しいただきたいと思います。

小池 智和氏(toBeマーケティング株式会社 代表取締役)

田中:弊社の取り組みについてお話する前に、インサイドセールスについて、前提条件の擦り合わせをさせてください。まずISには大きく3つの役割が存在しており、それに伴って3つの組織体制のモデルがあると言われています。(次のスライドの通り)

IS組織の紹介をさせていただくと、当社のISは、「独立型」です。事業部制を取っているので、本日お話するのはMA事業のIS組織での取り組みです。

役割と組織体制のモデル以外にも、関連している組織やアプローチ種別が存在します。

うちの場合は、ほぼSDR(反響型)のみを行っています。(次のスライドの通り)

具体的には、MAの無料プランの申し込みや資料請求をしてくれたアツいリードから順にフォローコールを行っています。また、コンタクトがなくてもアツいログがたまっている田当社や企業を抽出してコールしています。

ただ、これだけだとなかなかリードを育成できないので、ABM観点からポテンシャルが高く検討度は低いユーザーとの接点を作っていく活動も行っています。こうしたナーチャリング(育成)業務にも点数を設け、きちんと成績がつくような工夫を行っています。

「アツさ」の定義は、ステータスとポテンシャルの両軸から見ています。ステータスが検討度の高さで、ポテンシャルお付き合いできる確率の高い自社にとって条件が良いお客様かどうかという観点です。

コールの優先度は、反響型の方はアツいリードから順にかけるのですが、リード育成は逆で、検討度の低い方からアプローチしています。

こうしたIS活動で、一人ひとりがリード獲得からリードフォローへ、商談化、有料化、クロスセルと順に転換させていく件数目標を追っています。

CSもISで行っているので、活用支援のなかでWebサイトを充実させる必要がある場合はアドバイスを行い、Webサイト制作のクロスセルにつながるケースが多いです。

小池:月間でリードが700件というのは強いですね。MAの活用については、先ほど、ステータスのところでも少しお話いただきましたが、ほかにもありますか?

田中:リードを獲得できている要因としては、オウンドメディア(エムタメ!)を運営してマーケティング関連の情報を掲載しているのですが、中間コンバージョンでホワイトペーパーを20本ほど設置していて、そのダウンロードが大きいです。700件といってもアツいリードばかりではなく、検討度の低いものも含みます。

小池:シャノンさんはいかがですか?

村尾:本日のセッションタイトルに「仕組み」と入っていますが、私たちがISの仕組として大事だと考えているのが「目標達成」「チームワーク」「自己成長」の3つです。

目標達成は基本的なことですが、日々の行動のKPIを設定することです。何件電話をかける、何件応答するといったことと、何件アポイントが取れたか、何件の商談を生み出せたか、何件受注したかといった「行動の結果のKPI」も毎日チェックします。

チームワークについては、人数が増えるほど大切になってきます。テレアポをしているオフィスでもない限り、静まり返ったなかで電話をかけ続けることには大きなプレッシャーがかかるもの。そのなかでアポイントが取れたら、称賛して認めることでモチベーションを保つことを意識しています。

自己成長では、仮説を立てて、結果を検証・分析することを重視しています。ISというと電話だけのイメージがありますが、当社ではメールやDMなどを含むマルチチャネルで顧客フォローを行っています。マルチチャネルを組み合わせた仮説を立て、それをMAのシナリオ機能で抽出し、結果検証を行っています。

また、ISを運営するとどうしてもFS(訪問営業)との連携で問題になってくるのが「アポイントの質」ですが、当社の場合、初訪ロストで質を判断しています。ISがFSにリードをパスした後まで追って、初訪したがターゲット外だった場合などを初訪ロストとして、担当者別にロスト率をチェックしています。

小池: IS立ち上げ期のお話も聞きたいですね。評価などはどのようにしていたのですか?

村尾:私と新卒2人で立ち上げたこともあり、初期の評価基準は行動KPIです。最初からアウトバンドはハードルが高いだろうと考え、反響型から始めました。成果が出て商談が上がるようになってきてから商談数など行動結果をKPIにしました。現在は、商談数に加え、そこからどれだけ受注しているかを金額で見ています。立ち上げから3年が経ちますが、KPIが毎年変わっているような状況です。

小池:SATORIさんの取り組みはいかがですか?

豊川:組織としては、少し前まではマーケティング部門のなかにセールス部門があり、その直下にIS とFSが存在していました。最近では、スピード感のある意思決定を実現できる組織にしようとチームが細分化され、ISもマーケやCSと同列になりました。

KPIは「商談」で変わりません。

ISの体制は7~8名で、過去に実績のある方がメンバーを中心に、最近では未経験のメンバーも受け入れて育成しています。週2~3日勤務のメンバーは主にナーチャリングコールを担当しており、他メンバーはMAで抽出したホットリードにアプローチし商談につなげています。マーケティングチームにとどまらず、ISチームでも「SATORI」をフルに使い倒して失敗例・成功例を作っていこうという心がけで日々の業務に当たっています。

「リード獲得」から「全体最適化」までの流れのなかで、ISは「リード育成」から「商談化・追客」までを担っています。

どんなにMAで細かくセグメントして「ホットリード」として抽出したリストでも、ホットではないリードも発生するものです。その場合は、無理にアポイントを取るのではなくシナリオメールによる情報提供やセミナー誘導などを実施しています。

また、マーケティングからパスされたリード育成の領域を、ISチーム自ら施策を考えて実行することもあります。実際にいま行っているのが、ISチームの企画で調査レポートを作成してメール送信し、それをトリガーに電話をかけるという施策です。さらに、これをマーケがダウンロードコンテンツとして、ウェブサイトへ掲載し新規リード獲得につなげるために活用する流れもあり、常に情報共有するなど連携して動いています。

現在は約45名体制の組織ですが、1~2年前までは20名にも満たない人数で、ISも2名でした。少人数ということもあり、日々、リーダー同士がコミュニケーションを取り合い細かい調整を行いながら業務を行っていました。

小池:マーケや営業の配下にあったときと、現在のように同列になったのとでは、それぞれメリット、デメリットなど変わりましたか?

豊川:最初は、そもそも私がマーケとISを兼務していたので、ほかの業務をやりながら電話をかけることがなかなか難しく、たとえば「14~16時は電話をかける時間」などと決めて取り組んでいたものの、イベント前や他業務が立て込むと電話をかける時間の確保が難しくなり、後回しになってしまうこともありました。

こうした状況を打破するため、IS経験のある人材を専任で1名迎え入れ、“IS”というポジションを組織の中に確立したという経緯があります。

小池:IS立ち上げ当初は、FSが兼任したりマーケが兼任したりというのはよくあるケースだと思いますが、それぞれリズムも違いますし、やはり、専任者を置いた方が良いということですね。

シャノンさんも組織が大きく変わってきたかと思いますが、そのあたりはどうでしたか?

村尾:当社のISの成り立ちはちょっと変わっていて、もともとFSの一組織だったんです。マーケの下に配置して良かったと思うのは、マネージャーによっては営業マンと一緒に外へ出てしまうので、誰もISを見てくれない状態になってしまうんです。マーケは基本的に社内にいるので、ISが放置されることがなくなりました(笑)。

また、先ほど小池さんがおっしゃったように、立ち上げフェーズでは仕方がないことだと思いますが、どこかで専任に踏み切らないと、組織を大きくしていくうえでは難しいと思います。

小池:Mtameさんはどうですか?

田中:僕は、自分で「ISを作りたい!」と手を挙げて、FSからISに合いそうな人を引っ張ってきてスタートしたんです。そこから、FSとマーケとCSとをもらってそのまま事業部になりました。事業部制で良かったと思うのは、マーケが取ってきたリードに対する受注率を一人ひとり把握でき、ISからFSへパスしたリードの受注率をKPI設定できる点です。

当社の社員は仲が良くて、FSが「あいつのために受注してやる」と自発的にコミュニケーションを取る雰囲気が自然と生まれてきています。こうした状況は、縦割りでは実現し得なかったのではいかと思います。

国産MAツールベンダー3社が明かすISへのMA活用のコツ

小池:各社のIS組織についてお伺いしましたが、MAツールベンダーということで、自社で取り組んでいるISへのMA活用について教えてください。では、シャノンさんからお願いします。

村尾:MAにはスコアリング機能があり、ISでよく「スコアが何点以上になったら架電しましょう」というのがありますが、当社で実施してみたところやりづらくて(笑)。なぜかと考えてみると、リードとの過去の履歴を見て、どんな話をするかを考えてから電話をかけるわけですが、スコアが一定以上だからといってそのパターンはバラバラで、脳のスイッチングコストが高まるからなんですね。

そこで、架電先の抽出にMAの条件設定を使い、スコアはその優先順位付けに使っています。

田中:村尾さんがおっしゃった話とよく似ているんですが、私はISのテーマは「リストとリソースのコントロール」だと考えていて、リストの割り振りと優先順位をどのようにつけるかという点でMAを活用すると、より円滑に回っていくと思っています。

仮にISのリソースが少ない場合は、SDRで検討度の高いところからフォローした方が良いし、かつ、アポ件数が目標達成できそうなら検討レベルの低い実名リストのフォローに時間をかけた方が良いです。逆に、リソースが多い場合は、先ほどのような活動に加えてBDRとして匿名・コールドリストにもアプローチができるようになります。

この活動を行うにあたり、MAでリード抽出と優先順位付けを行うのですが、SDRとしては中間コンバージョンのあったリードであることに加え、以下の図のような条件抽出を設定しています。

潜在層から順顕在層、顕在層へと右へいくほどリードの検討度が高まることを表しています。それぞれの段階で閲覧するであろうコンテンツを用意し、ログ情報で判断しています。たとえば、料金表を製品ページから分離して別ページに用意することで、「料金表を見ているということは検討レベルが高い」と判断できます。顕在層を優先してフォローし、そのリストが終わったら準顕在層にかけるといった指示を出すことが多いですね。

小池:リスティング広告やSEOでWebサイトに誘導してコンバージョンをかけ、個人情報を取ることは非常に重要ですが、ISが個人情報しか持たないなかでアウトバンドしたりニーズをつかむことはかなり難しいわけです。そこにMAがあればCookieが紐づくので、リードの興味関心やステージがわかります。逆にMAがなければ不明なままなので、そこにMAの存在意義があります。

田中:顕在層で、さらにセミナーに来てくれているなどの条件が重なるとアポ率が40%くらいに上がります。そういった抽出ができるのはMAならではですね。

小池:当社のお客様でも、MAを導入してエンドのお客様のWebコードを把握できるとアポ率が上がるという声があります。SATORIさんは、いかがでしょうか?

豊川:当社でもISがアプローチするリストの優先順位を決めています。「料金表を5日以内に2回以上閲覧していて、なおかつ他社との比較ページを7日以内2回以上閲覧している」など、ホットリードと定義するWebページの閲覧条件がいくつかあるのですが、それらをMAに設定しておいて、条件を満たすとISの担当者へアラートが出るようにしています。日々、アラートの出たリードへ優先して対応しています。

当社のお客様の事例なのですが、営業担当の方に、契約後のお客様が検討時に欲しがった資料をヒアリングしてみると「比較表」という答えが多かったので、グローバルメニューに比較表ページへの導線を設置しました。

こういった「このページを見ているリードはアポが取れる」というコンテンツを弊社ではキラーコンテンツと呼んでいますが、キラーコンテンツとその他のリストへコールした結果を比較すると、アポ率はキラーコンテンツの方がおよそ8倍高くなるという成果を出しています。

それ以外に、私自身の経験で「スーパーキラーコンテンツ」というものがありまして(笑)。他社のメディア記事で「MA比較○選」といったコンテンツなのですが、それと当社の料金表の両方を閲覧しているリードは、一定期間でアポ率が8割という奇跡的な数値を叩き出したこともあります。このように外部のコンテンツもうまく活用しながらMAでホットリードを抽出するという使い方もできます。

小池:コンテンツ自体ももちろん重要ですし、コンテンツが閲覧されているかどうかを把握することも重要で、MAならそれができるというわけですね。

Mtameさんのように、月間700リードも獲得できていればそこでCookieが取れるわけですが、Cookieが不明な保有リストにアプローチする場合、メール内のURLがクリックされるとCookieの紐づけができるので、クリック数をKPIの一つにしているISもよくあります。そういった手法や目標が可能なのもMAならではです。

ここで、会場からの豊川さんご指名で質問が届いています。

「コールNGからのメールアポ獲得には、どのような工夫をして取り組みましたか?コールNGになるとあきらめていたので、秘策を伺いたいです」とあります。

豊川:資料請求などのアクションがあったリードはホットなので、皆さんも必ずコ-ルするでしょう。ただ、いまは携帯電話だと固定電話からの電話に出てもらえなかったり、会社によっては秘書サービスを利用していて、かけても担当者につながらなかったりということも多いです。何度かけてもつながらないと「コールNG」をつけることになります。そういったリードには“メール” という手段を活用して、ホットなうちに資料などの追加情報を送付するなどきめ細やかに対応されている会社も多いと思いますが、MAがあれば、それをシナリオ機能で簡単に仕組化できる点がメリットです。

当社の場合、「3回電話がつながらなかったらフォローメールのシナリオ発火させる」といった施策を、MAを活用して運用しています。電話がつながらなかった相手にメールでフォローの連絡することは、当たり前のことともいえますが、限られた時間やリソースの中でISが負うべきKPIを達成するためには、“たったの1分”でも貴重なはずです。きちんとこのような作業を仕組み化していくことが1件でも多くの商談や契約創出につながっていくと思います。

また、実際に弊社が本施策を1ヵ月実施したところ、送ったメールに対して自社の課題や商談の候補日時を書かれた返信メールが届くなどの反応があり、結果として“返信メールが17件、そのなかから商談が9件、受注が2件”という成果が出ています。地味な取り組みですが、ホットなリードを取りこぼさずに確実に獲得していくためには欠かせない施策だと思っています。

小池:「電話をかけて不在だったらメールを送るという手法なら、昔から行っていた」という方もいるかと思いますが、「不在をつけたらメールを送信する」というシナリオ設定での自動化や、送ったメールのURLがクリックされたか、どのWebページを閲覧してくれたかの把握はMAがないとできないことですね。

各MAの特徴は?

小池:では、ここで、各社のMAについて特徴などをご紹介いただきます。

豊川:「SATORI」を使うメリットは、リストが増える点です。一般的にリストというと展示会や資料請求のあったリード情報を指すかと思いますが、「SATORI」では個人情報を特定できている“実名”の見込顧客に加えて“匿名”の見込顧客のデータベースを持ち、アプローチできる仕組みが搭載されています。

通常のMAではメール施策がメインになるかと思いますが、それに加え、Web接客の機能やプッシュ通知配信、パーソナライズ機能まで使えるので、匿名状態のリードにもナーチャリングが可能です。

Webサイトに訪れるユーザーのうち、97%は自社に対して個人情報開示に至っていない“匿名見込顧客”だといわれています。ここにアプローチできるということは、見込顧客の母数が圧倒的に増えということです。1件でも多く商談や受注獲得したいという企業様にはぜひ取り組んでいただきたいですね。

小池:Mtameさんの場合は、MAだけでなくWebサイト制作など周辺ツールもカバーしていますね。

田中:MAもISもそうなんですが、導入したての頃、ベンダーなどから「自動化した方が良いですよ」「ナーチャリングした方が良いですよ」「点数化した方が良いですよ」といわれることが多いかと思います。たしかに取り組んだ方が良いのですが、日本のマーケティング現場ではまだまだ兼任の担当者が多く、手が回らないのが現状です。

BowNowは、「リストアプローチをどう最適化していくか」「いかにアツいリードを簡単に抽出するか」という2つの観点で作られたMAです。

MA導入当初は、保有しているリードの検討レベルがわからないので、リードへのメールは一斉配信が多くなります。その中でアツい動きをしているリードを抽出し、営業やISが電話することで受注につながるのですが、検討レベルが低いリードはマーケが育成するというシンプルなリストアプローチができることが重要です。

営業とマーケそれぞれの観点でアツさの定義を見直したり試したりするために抽出条件をいかに簡単に変更できるかにもこだわっています。

営業担当者やマーケが「この条件の方がアツいんじゃないか?」と思い立ったときに、後から条件を書き換えて抽出し直せます。

先ほどお話したような「このページを閲覧している」という条件のほか、メール内のURLを何回クリックしてくれているか、といった行動の条件と別軸で、企業のポテンシャルで条件設定をしてリードを抽出できます。

アツさの定義をリアルタイムに変更しながら、アツいリードは

ISやFSがアプローチして、それ以下はマーケが育成するというリストのマネジメントがしやすいUIになっています。

小池:わかりやすい画面ということですが、お客様によっては「それでも、わからない」ということもあるかと思います。そのあたりのフォローもしていただけるんですか?

田中:はい。そのまま使えるテンプレートも用意していますし、CSに力を入れています。BowNowを使って、どういった目標をいつまでにどんな方法でやりましょうというところまで無料サポートを提供しています。また、有料サポートでは、実際にお客様企業のなかに入って、誰にどんなトークスクリプトを使ってISを実施するかというところまでサポートします。

小池:サポートは遠隔ですか?それとも、対面ですか?

田中:無料サポートの場合は遠隔です。勉強会にお越しいただければ、対面でも対応させていただいています。

小池:シャノンさんは、この世界では老舗ですが、どういった特徴をお持ちですか?

村尾:詳しくは、この後、ブースに来ていただきたいのですが(笑)、大きく2つの特徴があります。一つは、デジタルとアナログの融合です。MAでシナリオを設定する際に、たとえば「メールを送って3日間クリックされなければDMを送る」という具合で、紙のDMもメールと同じようにシナリオを使って印刷から発送まで自動化されます。

もう一つは、当社では「リード管理」と「企業管理」の2つの軸を持っていることです。企業様によっては、ターゲットがニッチだったりインバウンドとなじまなかったりということもあります。そういったときに、保有リストや購入した企業リストなどをインポートして、「まだリードではないけれどターゲット企業だ」というところへDMを送るといった施策の管理が行えます。そのなかから、Webサイトに訪れた企業があれば、IPアドレスからログが取得できます。そこからさらに、A/Bテストを行ってDMをブラッシュアップすることも可能です。

小池:ありがとうございます。当社でよくご案内しているセールスフォースさんもそうなんですが、MAがだんだんCRMの機能を持ち始めていると感じます。外資系MAにはない強みはどんな点でしょうか。

村尾:シャノンでは、ユーザー会を開催しているのですが、ユーザーの皆様からいただいた声を製品に反映しながら開発を進めているという点が大きいです。先ほどご紹介した「企業管理」の機能もユーザーの声から生まれました。

【質疑応答】来場者からの質問に国産MAツールベンダーが回答

小池:最後に、会場にお集りいただいた皆様から寄せられた質問のなかで、「いいね」が多かったものにご回答いただきます。

「リード創出件数を目標にすると受注件数が下がり、売上額を目標にするとリード創出件数が落ち、バランスに悩んでいます」という質問が届いています。

豊川:獲得目標のリード数や契約数を追いかけることは大事ですが、結局はその間が重要で、一番難しいところだと思います。当社ではリードの「転換率」の改善に注力し始めました。当社の現時点の改善策として、当たり前ですが「リードナーチャリングをもっと手厚くしていく」という方向です。

豊川 瑠子氏(SATORI株式会社 マーケティング営業部 マーケティンググループ グループ長)

小池:施策ごとに、リード創出目標件数は変えていますか?

豊川:施策ごとというよりはクオーターや年間で目標を定めていました。たとえば、展示会施策やイベント経由でのリード獲得数からの受注転換率は1桁だったのですが、これを2桁に改善すべく、コンテンツももっと充実させたいと考えています。

小池:Mtameさんは、月間獲得リード数が700件ということですが、受注率や転換率もマーケやISとして目標を掲げているのですか?

田中:チャネルや中間コンバージョンごとに目標設定をしています。それに加えて当社では、FSの空き具合で質と量をコントロールしています。FSのリソースが空いていれば、多少質が低くても数を供給ますし、リソースが少ないときは質を重視して供給量をコントロールします。リソースやアポ質は定期的にミーティングで確認しています。

村尾:当社の場合は、『THE MODEL(ザ・モデル)』(福田 康隆著)に基づいています。リードからの転換率と商談率を見ていて、ヘッドレートや初訪ロストも0にするのではなく20~30%は許容しながら、細かく率の目標を決めて追い続けるしかないのかなと思っています。

小池:先ほどのセッションでセールスフォースさんが登壇していましたが、同社のISでは、件数も大事ですが、商談金額や受注金額を重要なKPIとして設定しているそうです。どちらかだけではなく両方追うというのが正しいのかもしれません。

「ISのリソースが潤沢なため、MAを導入しているもののナーチャリングであたためるまでもなく、全件にアプローチしてしまっている。この状況でもMAをうまく活用する方法は?」という質問が届いていますが。

村尾:素晴らしい環境ですね。中長期的に「半年後・1年後に受注する」という前提であたためた結果としての目標値を設定するとMAの活用につながるのではないかと思います。

あとは、BDR、アウトバンドに近いところからアプローチを進めることにチャレンジされると良いのではないでしょうか。

小池:アウトバンドは少し大変な仕事になりますが、ポテンシャルが高い企業も多いので、ぜひ取り組んでみていただきたいと思います。

田中:いまお話があった通り、アウトバンドは大事です。ただ、エンゲージメントも大切で、ヘタなテレアポをたくさんしてしまうと嫌われてしまうので、自社のテレアポの質が低いのであれば、無理に取り組まない方が良いかもしれません。

BDRの組織を強化したいなら営業力と行動量が重要になるし、SDRを強化したいならマーケ力と情報資産が重要になるので、自社ではどちらを強化したいのかを考えてリソースを振り分けると良いと思います。

小池:あっという間の60分間でした。ご来場の皆様も感じられていると思いますが、今後、ISに取り組まないという選択肢はないでしょうし、そのときに何らかのMAは必要になると感じました。

皆さん、ありがとうございました。

 

「Inside Sales Conference 2019」レポート

関連記事

製造業デジタルマーケティングの特徴とおすすめ施策5選【セミナーレポート / 後編】

製造業におけるデジタルマーケティングの必要性と成功企業の共通点【セミナーレポート / 前編】

競合サイト分析方法を解説!無料・有料のおすすめツールや見るべきポイントも紹介