ROASとは、かけた広告費に対して得られた売上を%で表したもので、ROASを見れば、広告費の何%の売上が立ったかを知ることができます。 ROASを正確に計測することで、費用対効果の高い広告は予算を増やしたり、効果の低い広告は受け皿となっているWebページの改善をしたり、戦略的な判断ができるようになります。
 「どの広告が、どのくらいの割合で売上につながっているのか」を把握しておくことは、マーケティング計画を立てる上で重要です。広告にも、CM、展示会、雑誌、インターネットと、さまざまな媒体が存在するので、翌年の予算編成には媒体ごとの費用対効果をまとめる必要があります。
 
今回は、費用対効果の高い広告を見極める指標として「ROAS」を中心に、「ROI」「CPA」の3つについてそれぞれ解説します。「これからWeb広告をはじめたい」「Web広告の成果を知りたい」とお考えの方はぜひお役立てください。
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目次
ROAS(Return On Advertising Spend・ロアス)とは、広告費に対して得られた売上を%で表したものです。
最近では、Web広告に注力する企業が増え、「広告費の何%売上が得られたか」といった効果を検証するためにROASが広く利用されるようになりました。算出することで、どのサイトに広告を出すのが最も効果的なのかを比較検討しやすくなります。
計算式は「ROAS=広告経由の売上÷広告費用×100(%)」となります。
たとえば、雑誌広告に50万円あて、そこからの商談で150万円の売上が得られた場合、ROASは300%となります。
また、ROASは100%を基準にして、広告費にどのくらいの効果があったのかを確認することも可能です。先ほどの例で考えると、広告1円に対して3円の利益が出たと判断できます。
各値を求める場合はこうなります。
ROAS = 広告経由の売上÷広告費用×100(%)
広告経由の売上 = 広告費用×ROAS÷100(%)
広告費 = 広告経由の売上÷ROAS÷100(%)
 
 
(参考:必要な売り上げの求め方)
ROASをKPIにする場合、目安となる損益分岐点ROASを把握しておくと設定しやすくなります。計算式は以下のとおりです。
損益分岐点ROAS =顧客単価÷(顧客単価-原価)×100(%)
たとえば、顧客単価が200万円で原価が100万円とすると、「200万÷(200万−100万)×100%=200%」となり、ROASが200%以上なら、広告費を上回る売上があるといえます。反対に200%を下回ってしまうと利益は出ません。
このように、損益分岐点を算出しておくと、どの程度で売上がプラスになるか把握でき、目標が明確になります。
ROASのメリットは、売上と広告費が把握できれば、広告の費用対効果を簡単に比較できることです。たとえば、広告AのROASが150%で、広告Bが200%の場合なら、Bの方が効果が出ているとすぐに判断できます。ROASが高いほど「広告から得られた売上が高い」ということです。
売上に対する貢献度がわかるため、ROASの高い広告の予算配分を増やしたり、低い場合はリンク先のWebページや導線を見直すなど、広告改善にもつなげやすくなります。
ただし、いくらROASと売上金額が高くても、利益はマイナスという場合もあるため、ROASだけを見て喜ぶのは早計です。次に解説するROIも同時に算出して、利益もチェックする必要があります。
ROI(Return on Investment)とは、かけた広告費に対して得られた利益を%で表したものです。ROASが「売上」、ROIが「利益」と考えるとわかりやすいでしょう。
計算式は「ROI=広告経由の利益÷広告費用×100(%)」となります。
たとえば、雑誌広告に50万円あて、そこから得られた売上のうち、利益が70万円だった場合、ROIは140%となります。プラスなら利益が発生しており、マイナスなら損益が生じていることがわかります。
ROIは利益を見るため、どれだけ採算が取れているかを判断できます。ただし、ROIは「その時点で利益が出ているかどうか」を見る短期的な指標のため、長期的な施策には向きません。
また、割合を算出するので「どれだけ利益が発生しているか」といった細かい数値もわかりません。投資金額が少なければ、いくらROIが高くても利益額は少なくなってしまいます。実際の利益額もチェックする必要があることを覚えておきましょう。
 
企業では、売上をベースとしたROASよりROIを重視する傾向があります。利益が伴わなければ成長にはつながらないからです。仮にROASの割合が100%以上と高くても、ROIが100%以下で広告費を回収できていないということは大いにあり得ます。先に解説したROASとROIを組み合わせて、全体的な広告投資対効果を測っていきましょう。
CPA(Cost Per Acquisition/Action)とは、顧客やコンバージョンを獲得するのにかかった費用のことです。コンバージョンとは、Webサイトの成果を表す言葉で、BtoB企業では「資料請求」「問い合わせ」「メールマガジン登録」などを設定することが多く、ECサイトでは購入をコンバージョンとする場合があります。
 
CPAの数値は、高ければ高いほどコンバージョンを獲得するための費用がかかっていることになります。ROASやROIとは違って、CPAは低いほどコンバージョン獲得にかかるコストが安く、費用対効果が高いといえます。
計算式は「CPA=広告費用÷コンバージョン数」となります。
たとえば、雑誌広告に30万円あて、そこから10件がお問い合わせにつながった場合、CPAは3万円となります。これが同じ雑誌広告に同額の30万円をあて、そこから5件しかお問い合わせにつながらなかった場合だと、CPAは6万円となります。
複数の広告を運用している場合、CPAの変化を比較すれば、どちらの方が費用対効果が高いのかを一目で判断できます。
ただし、CPAだけを見て判断すると広告運用を失敗してしまう恐れがあるので注意しましょう。CPAを抑えることばかりに集中して広告費を削減した結果、コンバージョン数が削減してしまうケースもあるからです。
早く成果につなげたいときなど、CPAが高くてもコンバージョン獲得を優先すべき場合もあります。コスト面も大切ですが、広告の目的を確認して適切な出稿先を選ぶことが重要です。
CPAは「顧客やコンバージョンを獲得するためにかかった広告費用」ですので、「かけた広告費に対して得られた売上(%表示)」であるROASとは使用シーンが異なります。
 
たとえば、複数価格の商品を取り扱っているWebサイトで購入まで完結させたい場合は、コンバージョン当たりの獲得単価はあまり意味をなさないため「ROAS」を指標とします。
 
逆に、Webサイトでは会員登録や資料請求などを行うだけで直接商談で行うケースや、サイト上で購入まで完結させるが単一価格の商品しか扱っていない場合は、1件のコンバージョンの売り上げや利益がすべて等しいため「CPA」を指標とします。
 
これに対し、1クリックあたりの投資効果を表すROIは、100%で損益が±0なので、100%未満の場合は損失が出ていることになります。「売れば売るほど広告費による損益が大きくなる」状態のため、広告費や販売単価、あるいは商品・サービスそのものの見直しが必要となるでしょう。
 
次章では、この3つの指標の使い分けについてイメージしやすいように、具体的な例を挙げて解説します。
上記でご説明した各用語について、架空のサービスを用いて説明していきます。
ROAS、ROI、CPAの数値を比較するため、リスティング広告でキャンペーンを行ったとします。
概要は下記の通りです。
この結果から、広告経由の売上は17,400,000円÷2,000,000円×100%なので「ROASは870%」となります。
広告経由の利益は、8,000,000円÷2,000,000円×100%なので「ROIは400%」となります。
商品を1個売るためにかかった費用は2,000,000円÷2,000個なので「CPAは1,000円」となります。
今回は、リスティング広告を出稿した場合を想定しているので、出稿したキーワードを仮定してより細かくシミュレーションしてみます。
表を見ると、最も広告費用をかけたキーワードと売上個数が多いのは「ブランド名_新製品」です。
しかし、CPAは3つの出稿キーワードの中で最も単価が高く、ROAS 、ROIはパーセンテージが最も低い結果となりました。
このことから、最も広告費が高く、売上個数が多いキーワードが、実は投資対効果が最も低かったということがわかりました。
また、「ファンデーション_新作」というキーワードのROAS、ROI、CPAは先に算出している全体結果を受けての数値とまったく一緒だということがわかります。
このことから、ROAS、ROI、CPAを計算することは、リスティング広告キャンペーンの成果だけを見る指標となるだけでなく、その中のどのキーワードが最も投資対効果が高かったのかを深く把握できます。
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ROASの数値を改善するには、広告からの売上を増やすことが必要です。最後に、具体的な改善ポイントについて紹介します。
コンバージョン率(CVR)とは、広告からコンバージョンに至った人の割合です。広告からコンバージョンにつながれば、売上向上も期待できます。
CVRを上げるにはさまざまな手法がありますが、まずはランディングページや入力フォームを見直すのが近道です。ユーザーが申し込みや問い合わせをしたくなるような、スムーズな導線作りを目指しましょう。
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広告からの売上が低い場合は、ターゲットを見直すことも必要です。広告ごとのROASを比較して、成果の高い媒体を確認しましょう。
自社で想定していたターゲットと実際のターゲットに相違があるかもしれません。ユーザーのニーズが変化している可能性もあります。早めにターゲットが閲覧している媒体を把握して、予算を増やしたり、キーワードを変更するなど修正を行いましょう。
Google広告やYahoo!広告など、広告の掲載先にもそれぞれ特徴があります。スマートフォン中心の若い世代を狙うならGoogle広告やSNS広告が有効です。一方、40代以上のPCユーザーにはYahoo!広告が適しています。
サイトを閲覧しているユーザーの年齢層や特徴を確認し、自社のターゲットが多くアクセスしている媒体を探しましょう。
広告のリンク先であるWebサイトの構成を見直すことも改善方法のひとつです。「もっと見たい」と思わせるサイトはコンバージョンにつながりやすくなります。「興味を引くキャッチコピーになっているか」「選択肢を与えすぎていないか」など、見やすく、ユーザーを誘導する設計になっているかを見直してみましょう。
バナーやキャッチコピーなどクリエイティブの見直しは、どこで離脱しているのか分析して、何度も検討・確認を繰り返すことが大切です。
リスティング広告の場合でも、スプリングキャンペーンやサマーキャンペーンなど、広告費が異なる手法をとることがあります。今回解説したROAS、ROI、CPAの計算方法を覚えておけば、「どのキャンペーンのときの効果が高いか」といった売上と利益に左右されない、客観的な成果が把握できます。
また、リスティング広告と雑誌広告のどちらの投資対効果が高いかなど、費用をあてている広告ごとの貢献度を示すこともできます。いままで体感的に効果を判断していた広告があれば、数値化して比較してみましょう。より戦略的なWebマーケティングにつながるはずです。
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