リスティング広告の予算は、「目標コンバージョン数 × 許容CPA」で逆算するのが基本です。月10件の問い合わせが欲しくて、1件あたり3万円までなら払えるなら、必要な広告費は月30万円。この記事では、この逆算をはじめとする3つの決め方と、予算を決める前に確かめておきたい前提を整理します。
あわせて、多くの記事が触れていない点も書きました。広告費が月20万円を下回ると、代理店に依頼するという選択肢がほぼ消えます。主要な代理店が最低出稿額と最低手数料を設けているためです。予算を決めるということは、運用体制を決めることでもあります。
予算を組むときに考える費目は3つあります。
| 費目 | 内容 | 支払先 |
|---|---|---|
| 広告費 | クリックされた分だけ発生する媒体への支払い | Google・LINEヤフーなどの媒体 |
| 運用コスト | 代理店の手数料、ツールの利用料、または担当者の人件費 | 代理店・ツール提供元・自社 |
| 制作費 | ランディングページ、バナー、計測タグの設定 | 制作会社・自社 |
このうち、社内で「広告予算」と呼ばれているのはたいてい1つ目の広告費だけです。残り2つが抜けたまま稟議が通り、配信を始めてから追加の予算申請が必要になる。よくある流れです。
とくに抜けやすいのが制作費です。リスティング広告は、クリックした先に用意したページがあって初めて成果になります。既存のサービスページをそのまま使える場合は追加の費用がかかりませんが、広告専用のページを作るなら制作費が必要です。
調査した代理店の公開情報では、LPの制作費は1本あたり25万円から100万円程度、公開後に改善を続ける場合は月10万円から15万円程度が示されています。広告費が月30万円の計画に対して、初月だけLP制作費が50万円乗る、といったことが起こります。
運用コストも同じです。代理店に依頼するなら広告費の20%、ツールを使うならその利用料、自社だけで回すなら担当者の時間。どの体制を取っても、広告費の外側に必ず何かがかかります。
※本章の金額は、主要代理店および比較メディアが公開している情報(2026年9月時点)をもとにしています。
Google広告には最低出稿額がありません。1日あたり数百円の設定でも配信は始められます。「月1万円から」と書かれている記事が多いのは、この意味です。
ただし、配信できることと、成果を判断できることは別です。クリック単価が200円の商材で月1万円の予算を組むと、月に取れるクリックは50回。コンバージョン率が2%なら、期待できる件数は月1件です。この数字では、広告文を変えたときに成果が良くなったのか悪くなったのかを判断できません。
予算を決めるときは「出せる金額」ではなく、「判断できるだけのデータが集まる金額」から考えてください。次章以降の逆算は、そのための計算です。
同じ1万円でも、取れるクリック数は商材によって10倍以上変わります。競合が多く、1件あたりの利益が大きい業種ほどクリック単価は高くなります。不動産、人材、金融、弁護士といった領域は高い側です。
自社のクリック単価の目安は、Google広告のキーワードプランナーで確認できます。対策したいキーワードを入力すると、ページ上部に掲載された広告の入札単価の範囲が表示されます。相場の記事を探すより、この数字を見るほうが早く、正確です。
もっとも実務的な決め方です。欲しい成果の件数と、1件あたりに払える上限が決まれば、必要な予算は自動的に決まります。
CPAは、コンバージョン1件を獲得するのにかかった費用のことです。広告費をコンバージョン数で割って求めます。「許容CPA」は、1件あたりここまでなら払ってよいという上限を指します。
許容CPAは、粗利から逆算します。
1件の受注で得られる粗利が10万円、問い合わせから受注に至る率が20%だとします。このとき問い合わせ1件あたりの期待粗利は2万円です。ここから広告以外にかけたい費用と、残したい利益を差し引いた金額が許容CPAになります。
仮に期待粗利2万円のうち、半分を利益として残したいなら許容CPAは1万円です。受注率を掛け忘れて「粗利10万円だから10万円までOK」とすると、大幅に赤字になります。問い合わせの段階と受注の段階を分けて計算してください。
自社の数字に近いところを見てください。
| 許容CPA \ 月の目標CV数 | 5件 | 10件 | 20件 | 50件 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000円 | 2.5万円 | 5万円 | 10万円 | 25万円 |
| 10,000円 | 5万円 | 10万円 | 20万円 | 50万円 |
| 30,000円 | 15万円 | 30万円 | 60万円 | 150万円 |
| 50,000円 | 25万円 | 50万円 | 100万円 | 250万円 |
| 100,000円 | 50万円 | 100万円 | 200万円 | 500万円 |
この表で出た金額が、媒体に支払う広告費です。運用コストと制作費は別に必要になります。
すでに配信した実績がある場合や、キーワードプランナーで単価の目安が取れている場合は、こちらのほうが精度が出ます。
クリック単価が300円で、月に1,000クリック集めたいなら、必要な広告費は月30万円。単純な掛け算です。問題は「何クリック必要か」をどう決めるかで、これはコンバージョン率から求めます。
必要クリック数 = 目標コンバージョン数 ÷ コンバージョン率、です。
月20件の問い合わせが欲しくて、LPのコンバージョン率が2%なら、必要なクリック数は1,000回。クリック単価が300円なら広告費は月30万円になります。
| 目標CV数 | CVR | 必要クリック数 | CPC 100円 | CPC 300円 | CPC 800円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10件 | 1% | 1,000回 | 10万円 | 30万円 | 80万円 |
| 10件 | 3% | 334回 | 3.4万円 | 10万円 | 26.7万円 |
| 20件 | 1% | 2,000回 | 20万円 | 60万円 | 160万円 |
| 20件 | 3% | 667回 | 6.7万円 | 20万円 | 53.4万円 |
この表から分かるのは、コンバージョン率が1%から3%に上がるだけで、必要な広告費は3分の1になるということです。広告費を増やす前に、LPの改善で得られるものがないかを確認する価値があります。
配信実績がなく、コンバージョン率の見当がつかない場合は、まず1%で計算してください。そのうえで、最初の1〜2か月を「数値を取るための期間」と位置づけ、実績が出てから予算を組み直します。
この期間に必要な広告費は、コンバージョンが数十件たまる規模が目安です。1件や2件では、たまたま良かったのか悪かったのかを見分けられません。
経営側から売上目標が降りてくる場合の決め方です。
広告経由で年6,000万円の売上が必要、客単価が100万円なら、必要な受注件数は60件。受注率が20%なら必要な問い合わせは300件。許容CPAが2万円なら、年間の広告費は600万円、月あたり50万円という計算になります。
この順番で計算すると、売上目標に対して広告費が現実的かどうかを、配信前に確かめられます。必要な問い合わせ件数が、そのキーワードの検索ボリュームを超えている場合は、広告だけでは目標に届きません。
継続課金の商材では、初回の売上ではなく、顧客が生涯にわたってもたらす売上(LTV)で許容CPAを決めることがあります。月額5万円のサービスで平均24か月続くなら、LTVは120万円。初回だけを見るより、はるかに大きな許容CPAを設定できます。
ただし、この計算には条件があります。平均継続月数の実績データが社内にあることです。実績がないまま希望的な数字を置くと、回収できない広告費を使い続けることになります。データがない場合は、初回の売上をもとに保守的に計算し、実績が出てから見直してください。
計算して出た金額が、そもそも成立しないことがあります。配信を始める前に、次の2つを確かめてください。
許容CPAが5,000円、キーワードのクリック単価が800円、コンバージョン率が1%だとします。このとき実際のCPAは8万円になります。許容CPAの16倍です。
この状態では、入札を調整しても広告文を変えても、目標には届きません。打ち手は、コンバージョン率を大きく上げるか、より安いキーワードに絞るか、許容CPAの前提そのものを見直すかのいずれかです。配信してから気づくと、その間の広告費が丸ごと無駄になります。
月2,000クリックが必要なのに、対象キーワードの月間検索数が合計500しかない、というケースがあります。ニッチな商材ではよく起こります。
キーワードプランナーで、対策したいキーワード群の検索数を合計してください。その数に想定クリック率(検索広告なら数%から10%程度)を掛けた値が、現実的に取れるクリック数の上限です。ここが必要数を下回るなら、リスティング広告だけで目標を満たすことはできません。
どれを選ぶにしても、成立しないと分かった時点で止められることに価値があります。この判定に必要なのは、目的・予算・目標コンバージョン数の3つだけです。
予算の金額が決まると、次に決まるのが運用体制です。ここに、あまり語られない線引きがあります。
主要な代理店の公開情報を確認すると、多くが最低出稿額を設けています。月30万円から100万円という水準です。この金額に届かない場合、そもそも契約の対象になりません。
最低出稿額を設けていない代理店も存在しますが、その場合は次の最低手数料が効いてきます。
手数料の料率は広告費の20%が相場ですが、それとは別に「これ以下にはならない」という下限が設定されています。調査した範囲では月5万円から20万円でした。
広告費が月20万円なら、料率20%で計算した手数料は4万円です。しかし最低手数料が10万円なら、支払うのは10万円になります。
| 月の広告費 | 料率20%での手数料 | 最低手数料10万円が適用された場合 | 広告費に対する実質の比率 |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 2万円 | 10万円 | 100% |
| 20万円 | 4万円 | 10万円 | 50% |
| 30万円 | 6万円 | 10万円 | 33% |
| 50万円 | 10万円 | 10万円 | 20% |
| 100万円 | 20万円 | 20万円 | 20% |
広告費10万円の会社が代理店に依頼すると、媒体に払う金額と同額を代理店に払うことになります。予算の半分が運用費に消える構造では、広告そのものに使えるお金が足りません。
※本章の最低出稿額・最低手数料は、主要代理店12社および比較メディアの公開情報(2026年9月時点)をもとに整理しています。条件は変更されることがあるため、問い合わせの際に最新の内容をご確認ください。
| 選択肢 | 費用の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 定額制の代理店 | 月3万〜5万円程度 | 運用は任せたいが広告費は小さい |
| 広告運用ツールを使って自社で運用 | 広告費連動型なら広告費の3〜5%程度、定額型なら月5,000円〜 | 週2〜3時間の確認時間が取れる |
| 完全に自社だけで運用 | 担当者の時間のみ | 学習する時間を確保できる |
| 予算を貯めて出稿を先送りする | — | 成果を測れる規模まで待てる |
予算が限られているときに最初にやるのは、範囲を絞ることです。
いずれも、無駄な表示を減らして予算を成果の出る場所に寄せる調整です。削っても成果は下がりにくく、むしろCPAが改善することがあります。
予算が苦しいときに「LPは既存ページを流用すればいい」と考えたくなりますが、ここは削ると跳ね返ってきます。
Google広告の品質スコアは、推定クリック率・広告の関連性・ランディングページの利便性という3つの要素で構成されています。遷移先のページが広告の内容と合っていないと、この3つ目の評価が下がり、同じ掲載順位を取るためのクリック単価が上がります。
つまりLPを手抜きすると、広告費の効率そのものが落ちます。予算を切り詰めたはずが、1クリックの単価が上がって結果的に取れるクリック数が減る、という形で戻ってきます。
広告文で打ち出している訴求が、遷移先のファーストビューに書かれているか。これだけでも確認してから配信を始めてください。
平均額を基準にしても自社の適正額は出ません。業種・地域・目標件数で必要な金額が変わるためです。目標コンバージョン数と許容CPAを掛ける方法で、自社の数字から逆算してください。
代理店に依頼する場合の見積もりは、広告費・運用手数料・初期費用の3つで構成されます。広告費は自社で決める金額なので、実質的に比較するのは手数料と初期費用です。手数料は広告費の20%が相場です。
業種と競合状況で変わります。キーワードプランナーに対策したいキーワードを入力すると、ページ上部掲載の入札単価の目安が表示されます。相場の記事より、この数字を見るほうが正確です。
配信自体は可能です。ただし、クリック単価が300円なら月に取れるクリックは約167回。コンバージョン率2%で期待できる件数は月3件程度です。改善の判断ができる件数かどうかを先に計算してください。代理店に依頼する場合は、最低出稿額と最低手数料の条件を満たせない可能性が高くなります。
変更できます。ただし自動入札を使っている場合、予算を大きく動かすと学習が一時的にリセットされ、成果が不安定になることがあります。変更は段階的に行い、変更後1〜2週間は数値の振れ幅を見込んでおいてください。
入札単価が低くて広告が表示されていない、キーワードの検索ボリュームが予算に対して足りない、広告が審査を通っていない、といった原因が考えられます。まず管理画面で表示回数を確認し、そもそも表示されているかを切り分けてください。
入れてください。調査した代理店の公開情報では、LP制作費は1本25万円から100万円程度、継続的な改善は月10万円から15万円程度が示されています。広告費とは別枠で見積もる必要があります。
ある水準までは増えますが、どこかで頭打ちになります。対策キーワードの検索数には上限があるためです。頭打ちが見えたら、広告費を足すのではなく、キーワードの範囲を広げるか、LPの改善でコンバージョン率を上げるほうに投資先を移してください。
リスティング広告の予算は、目標コンバージョン数と許容CPAを掛けて求めます。この2つが決まっていない状態で「とりあえず月30万円」と置くと、成果が出たのかどうかを判断する基準を持たないまま配信することになります。
計算した金額に対して、クリック単価の相場と検索ボリュームが見合っているか。この2点を配信前に確かめておくと、成立しない計画に予算を投じずに済みます。
そして、決めた予算がそのまま運用体制を決めます。月20万円を下回るなら、主要な代理店の条件には届きません。定額制の代理店か、ツールを使った自社運用か、規模が整うまで待つか。予算の議論は、いくら使うかだけでなく、誰が運用するかまで含めて一度に決めたほうが、後戻りが少なくなります。