「中国EC最大手アリババ「独身の日」最新データ&トレンド事例から学ぶ越境EC必勝法と今からやるべき2020年W11売上アップ術」レポート 第三回「2019年W11最新プロモーション事例の解説と今から始める2020年W11に向けた必勝ロードマップ」

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2019年11月11日(月)、中国でEC最大手のアリババグループが2009年に開始した「独身の日セール(W11)」は、11年目を迎え、開始から1分で取扱高が65億元(約1,000億円)を、16時間半で昨年の流通総額で過去最高だった2,135億元を突破し、最終的に2,684億元(約4.16兆円)を記録し、約26%の伸びとなりました。

同セールの輸入額で首位の日本からは、美容器具のヤーマン、紙おむつのムーニーなどがブランドベスト10入りしました。国内での販売が伸び悩むなか、小売最大手のイオンの取扱高の半年分をわずか1日で記録した同セールの影響力は無視できません。

この独身の日セールをテーマとするセミナーが2019年11月27日(水)、ソーシャルテクノロジーによるマーケティング支援事業を行うアライドアーキテクツ株式会社の主催で開催されました。

「エムタメ!」では、当日の様子を数回にわたりレポートしていきます。第三回は、主催のアライドアーキテクツ株式会社のグローバル事業部 部長であり、WeiboMCNに加入し、中国SNSプラットフォームと連携、日本タレント・クリエイターの中国展開支援を行っているVstar Japan株式会社の代表取締役でもある番匠 達也氏が登壇した「2019年W11最新プロモーション事例の解説と今から始める2020年W11に向けた必勝ロードマップ」の模様をお届けします。

※本コラムでは、1元=15.5円で計算しています。

「中国EC最大手アリババ「独身の日」最新データ&トレンド事例から学ぶ越境EC必勝法と今からやるべき2020年W11売上アップ術」レポート

第一回「ここでしか聞けない!W11を支えたアリババクラウドから解説する独身の日(W11)最速レポート」

第二回「2019年天猫(Tmall) W11最新情報・事例のご紹介と中国越境ECの必勝法」

■第三回「2019年W11最新プロモーション事例の解説と今から始める2020年W11に向けた必勝ロードマップ」【※本記事】

独身の日に売上が伸びた企業の特徴とSNSプロモーション事例

番匠 達也氏(アライドアーキテクツ株式会社 グローバル事業部 部長/Vstar Japan株式会社 代表取締役)

冒頭で自己紹介と会社紹介が行われた後、2019年の独身の日に売上が伸びた企業の特徴とSNSプロモーション事例について解説がありました。

番匠氏がプロモーションに携わるなかで強く感じているのが、中国においては、友人やKOL(Key Opinion Leader/キーオピニオンリーダー…販売促進に大きな影響力を持つ専門家)、バイヤーなどの口コミが消費行動に与える影響が大きい点だといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

認知から検討、購入、感想の口コミ発信という一連の流れのなかでSNSやWebメディアと密接な結びつきが見られるといい、中国で利用されている主要なSNSの一覧が投影されました。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

天猫国際における独身の日セールの特徴

天猫国際における独身の日セールの購入者の特徴として、90年生まれの層が約60%を占めており、なかでも2019年は95年生まれの24歳以下が増加し33%を占めているといいます。90年代生まれに続いて多いのが80年代生まれとなり、若い世代が購買層の中心になっていると解説しました。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

人気ブランドとしては、美顔器ブランドの「ドクターアリーヴォ」のほか、最近は「ほぼ日手帳」が人気を集めているそう。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

今年、天猫国際新店舗部門の売上ランキングの首位は「ドクターアリーヴォ」で、トップ10のなかに中国の国産ブランドが3ブランドもランクインしたことから、今後は競合として中国企業も視野に入れるべきだと述べました。

つづいて、天猫国際新店舗部門1位の「ドクターアリーヴォ」と、天猫全体(本土EC)の美容部門において9位をマークした「完美日記(PERFECT DIARY)」について、その取り組み事例が紹介されました。

ドクターアリーヴォのプロモーション事例

画像引用元:当日の登壇資料より引用

ドクターアリーヴォは、岐阜県の株式会社ARTISTIC&CO.が展開している美顔器のブランドで、1台当たり10万円ほどの価格帯。独身の日セールでの販売実績は4,000万元で、グローバル・アンバサダーに台湾出身のモデルで女優の林志玲(リン・チーリン)を起用しました。林志玲は微博(Weibo)でフォロワーを1,200万人持つなど影響力が大きいといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

独身の日セールでは当日(11月11日)だけでなく、10月中旬の予約時期からのプロモーションが必要になるといい、ドクターアリーヴォでも口コミを意識したプロモーションが展開されたそうです。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

具体的には、男性の美容KOLを含む複数名のKOLが微博(Weibo)上で商品を紹介したり、プレゼントキャンペーンを行うといった施策を行ったそうです。

また、番組放送中にそのまま購入できるメリットを持つ生放送を使ったプロモーションにも積極的に取り組んでいるといいます。中国では、インフルエンサーが大きく2種類に分けられ、e-コマース系インフルエンサーと、日本でいうYouTuberに近い動画系インフルエンサーがいるといいます。
ドクターアリーヴォでは、前者のトップインフルエンサーの淘宝(タオバオ)上の生放送番組で、1回に紹介される約20~30商品のうちの一つとして5~10分程度の紹介をしたそうで、閲覧者数は約520万人。

さらに、生放送を視聴できなかったユーザーも取り込むため、キャンペーンに関するKOLのリツイートを対象としたプレゼントキャンペーンを微博(Weibo)上で展開し、拡散を図ったといいます。

同時にSNS公式アカウント運用にも取り組んでおり、微博(Weibo)で認知拡大を図り、微信(WeChat)で利用者やコアな層とのコミュニケーションを取ったうえでリピート購入を促進と、それぞれのSNSの特徴を活かしたプロモーションを行っていると番匠氏は分析しました。

完美日記のプロモーション事例

画像引用元:当日の登壇資料より引用

つづいて、9位にランクインした「完美日記(PERFECT DIARY)」でのプロモーション事例が紹介されました。
同ブランドは、若い女性を中心に人気を集めているブランドで、2018年の売上高は6億元。もともとオンライン販売からスタートし、2019年中に40店舗、2022年までに300店舗を展開予定だそう。

プロモーションの特徴として、ユーザーとのコミュニケーションを重視しており、微信(WeChat)上にグループを作り、購入者とのコミュニケーションや商品のサンプリングを実施しているといいます。総グループ数は6,000以上もあり、カスタマーサポートや新商品情報の提供などを行っているそうです。1グループ当たり500名規模、全体で数百万人規模にもなるといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

微信(WeChat)では、ミニプログラムの活用でECサイトへの誘導を行い、サンプリングや商品購入が可能になっており、1記事当たりの閲覧者数が10万以上にもなるといいます。

微信(WeChat)以外にも、微博(Weibo)、小紅書(RED)、哔哩哔哩(ビリビリ)、抖音(ドウイン)の公式アカウントを運用しており、フォロワーをそれぞれ、36万人、234万人、4万人、134万人も保有しているそうです。

特に動画の投稿に注力しており、抖音(ドウイン)では累計390本以上の動画を投稿し、それらの動画投稿に対する「いいね」を1,630万獲得しているほか、動画を閲覧すると天猫へのリンクがポップアップで表示され、そのまま購入できるような導線設計になっているといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

独身の日セールでは、ハッシュタグの閲覧数が4,100万あり、コメント数は1.2万だったそうです。

2020年W11に向けたプロモーション施策について

つづいて、2020年の独身の日セールに向けたプロモーション施策のロードマップが紹介されました。

独身の日セールで売上を作るためには、それまでにEC上で開催されるキャンペーンで実績を作っていくことが重要で、まずは閑散期の3/8にある女王節(婦人の日)で売上を作ることが重要なポイントになるといいます。

キャンペーン開始前の1~2月から口コミを作っていき、3/8の女王節で売上と新規顧客を獲得し、独身の日セールに向けてリレーションを作っていくという流れがセオリーなのだそう。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

口コミを展開するプラットフォームとしては、オープンなプラットフォームとクローズドのプラットフォームがあり、オープンなプラットフォームの代表格である小紅書(RED)は、ここ数ヵ月で新規でのアプリインストールができなかったり、投稿内容が検閲されて半数近くが削除されるなど不安定になっており、影響力は変わらず大きいものの扱いが難しくなってきているとのことです。

オープンなプラットフォームのもう一つの代表格である微博(Weibo)から今秋、新アプリ「緑州」がリリースされた点も加味してプロモーションを行う必要があるといいます。緑州のMAU(Monthly Active Users/月間アクティブユーザー)は4.6億人でタレントやインフルエンサーを中心に利用者が増加傾向にあり、この影響も加味し、複数のプラットフォームに分散させてプロモーション戦略を立てる必要があるといいます。

一方、クローズドのプラットフォームについては、微信(WeChat)のモーメンツ(タイムライン)が中国では1日の利用者数が7.5億人と大きな影響力を持っており、ここで口コミとして紹介されるような施策が重要になってくるといいます。

事例紹介:雪肌精(コーセー)

画像引用元:当日の登壇資料より引用

最後に、アライドアーキテクツの顧客事例として株式会社コーセーの美白化粧品「雪肌精」の中国プロモーションが紹介されました。

「消える乳液」というキャッチコピーのついた商品「エッセンシャル スフレ」で、日本で2019年9月に先行発売、11月に中国で発売スタートしました。
施策としては、オンラインでのサンプリング、在日中国人を集めての座談会の2つを柱とし、オンライン・オフラインでの口コミを醸成したといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

中国本土の中国人は日本の情報を在日中国人から得ていることから、在日中国人から口コミを発信することで、商品の未体験者にも拡散するという狙いになっているそうです。

まとめとして全体を総括したうえで、引き続き動画によるプロモーションが有効である点、アンバサダー活用については中国本土の有名人のほか日本人も影響力を持っている点に触れてセッションは幕を閉じました。

「中国EC最大手アリババ「独身の日」最新データ&トレンド事例から学ぶ越境EC必勝法と今からやるべき2020年W11売上アップ術」レポート

第一回「ここでしか聞けない!W11を支えたアリババクラウドから解説する独身の日(W11)最速レポート」

第二回「2019年天猫(Tmall) W11最新情報・事例のご紹介と中国越境ECの必勝法」

■第三回「2019年W11最新プロモーション事例の解説と今から始める2020年W11に向けた必勝ロードマップ」【※本記事】

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