OKRとは、「Objectives and Key Results」の略で、日本語では「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」と表すことができます。アメリカのIntel社が初めて採用し、GoogleやFacebook、LinkedIn、メルカリなどのグローバルな成長企業が次々と取り入れたことで、非常に話題となりました。
 
OKRには、組織全体やチームの大きな目標に複数の中規模・小規模な目標をひもづけるという目標設定の仕方、従来の方法に比べてレビュー頻度が多く評価のスパンが短いこと、個人の人事評価(報酬)とは切り離して考えるという、従来の目標管理方法と異なる3つの大きな特長があります。
 
今回の記事では、組織の目標と個人の目標を連動させるOKRの考え方と、KPIやMBOとの違いについて、詳しく解説していきます。
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OKRは「Objectives and Key Results」の略で、日本語では「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」と表すことができます。
アメリカのIntel社が初めて採用し、GoogleやFacebook、LinkedIn、メルカリなどのグローバルな成長企業が次々と取り入れたことで、非常に話題となりました。
OKRには、従来の目標管理方法と異なる、3つの大きな特長があります。
1つは、目標設定の仕方です。OKRでは、まず組織全体やチームの大きな目標を掲げ、その目標にひもづいた複数の中規模・小規模な成果を「個人(またはチームなどの下位組織)の指標」として設定します。
こうすることで、企業・チーム・個人の方向性を統一し、具体的に取り組むべきタスクの優先順位を明確にすることができます。
2つめは、従来の方法に比べてレビュー頻度が多く、評価のスパンが短いことです。
そして3つめの特長は、求める達成度が100%ではなく、個人の評価(報酬)と切り離して考える点です。
では、それぞれの特長について詳しく見ていきましょう。下記の図はOKRの目標設定方法をわかりやすく表した図です。
下図のように、まず会社組織全体として達成すべきゴールが掲げられ、その下に部署・チーム単位、個人単位の目標と成果がぶら下がります。
このようにOCRは、ひとつのO(目標)に対し、複数のKR(主要な結果)がひもづく形で成り立っています。
 
OCRのObjective (目標)とKey Results(目標達成ための主要な成果)は、下記のような条件で設定します。
 
OKRは、1カ月~四半期ほどの短期間でレビューを繰り返し、目標の見直しや評価をすることが推奨されています。
また、評価の方法は、各社によって異なりますが、達成度をスコアリングする方法が一般的です。
ひとつひとつのKR(Key Results)に対して、達成度を0~1.0の点数や、%で採点し、その平均点をO(Objective)のスコアとします。
また、運用のなかで、決定した目標や評価を社内に共有し、各々の役割や進捗状況を明確化するのもOKRの特長です。
これらの特長から、OKRは組織全体のコミュニケーションを活発化させ、同じ目標を皆で追う一体感を高める効果もあります。
OKRが他の目標管理方法ともっとも大きく異なるのが、目標に対し、60~70%の達成度を成功とみなすことです。
従来型のMBO方式(後述)のように、必ず100%を達成することが個人の報酬を左右するような評価方式では、「達成するための低い目標しか設定できない」「経済動向など、自身でコントロールができない事情に配慮できない」「達成できないときに『高すぎる目標』が言い訳となる」などの問題が生じがちでした。
その点でOKRは、OKRの達成度と個人評価(報酬)と切り離して考えることが基本のため、社員一人ひとりの目を組織全体の「高い目標」に向けさせることができます。
それでは、OKRでは具体的にどのような指標を設定すればよいのでしょうか。エムタメ!運営会社を行う企業を例に考えてみましょう。
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上記のように、OKRを設定する際に注意しなければならないのは、「チームや個人のOKR」と「組織の OKR 」との整合性です。
チームや個人の優先事項が、組織の目標達成の可能性を高めるものでなければなりません。
OKRより以前に、一般的によく知られた業績管理の方法としてKPI(Key Performance Indicator)があります。
KPIは「最終目標を達成するための経過目標」を管理する方法で、設定したマイルストーンにおいて、重要な成果が確実に実行されているかどうかをチェックすることが目的です。
KPIが「目標に対して、現在の状況が順調であるかどうか」を客観的に測定するための「診断書」なのに対し、OKRは「最終目標を達成するための道のり(プロセス)」をチームで共有したり、「見える化」したりするフレームワークであることが大きな違いです。
また、もうひとつ、従来からの評価手法のひとつとしてMBO(Management By Objective)があります。
これは、1954年にピーター・ドラッカーが提唱したメソッドで、従業員が目標を達成するためのタスクを自分で設定する「セルフマネジメント」の手法のひとつです。
MBOは成果主義のさきがけとして、多くの日本企業に人事考課の手法として活用されてきました。
OKRとは異なり、目標に対して100%達成を成功とみなし、1年に1度、報酬を決定するために評価されるのが一般的です。
横スクロールでご覧いただけます。
  | OKR | KPI | MBO |
---|---|---|---|
目的 | 目標達成までのプロセスの管理 チーム力や生産性の向上 |
目標に対する現状の進捗状況のチェック | 人事考課 (報酬を決定する評価) |
目標の共有範囲 | 全社員 | 部署、チーム単位 | 本人と上司 |
なにをもって成功とみなすか | 60~70%の達成 | 100%の達成 | 100%の達成 |
レビュー、評価の頻度 | 1カ月~四半期に1回 | 逐次 | 一般的に年に1回 |
 
これらの違いを比較してみると、OKRが「変化へのすばやい対応」や「組織の方向性を統一して生産性を高めること」が求められる現代の事情にあわせて開発された考え方であることがよくわかります。
ただし、これらの目標管理方法、評価手法は、一概に「どれが一番いい」というものではありません。
次の項目では、OKRのメリット・デメリットを見ていきましょう。
 
短いサイクルで目標を更新・管理していくことを考えると、マネジメント部門の体制に余力があることが重要なようです。
では、OKRはどのように導入・運用するのがよいのでしょうか。その手順の例を見ていきましょう。
 
(1)企業(組織全体)OKRの設定
(2)チーム(部署)OKRの設定
(3)個人OKRの設定
(4)週に1度短いミーティングを行い、進捗を確認
今週の優先事項、達成の自信度、阻害要因などを確認し、1週間のKRをコミット。
「チェックイン・ミーティング」といわれる場合もあります。
(5)週に1度、チームで成果を報告
小さな進捗でもよいので、1週間の成果を発表しあい、チームで祝いあう。
「ウィン(Win)・セッション」といわれる場合もあります。
(6)全体レビューを行う
わかりやすい成果を設定していることが特長のため、評価に時間をかけすぎないこともポイントです。
→次の四半期に向けて(1)にもどる
前項からもわかるように、OKRは運用してこそ成果があがる仕組みです。
しかし、現実には、これらの管理は手間のかかるものであることは事実。
OKRのよくある課題をまとめました。
 
OKRは、はじめて導入する企業は「たいてい失敗する」というほど、最初から完璧な運用はむずかしいといわれています。
しかし、大切なのは、1度の失敗であきらめないこと。
理想のフレームワークにとらわれすぎず、自社の事情に合わせてカスタマイズやブラッシュアップを繰り返しながら、柔軟に取り組むのがいいようです。
「せっかくOKRを導入したのに失敗に終わってしまった」という企業もあります。
先人たちの失敗を糧にして、OKRを成功させましょう。
ここでは、OKRが失敗する主な理由・原因を3つご紹介いたします。
チーム目標や個人目標の大元となるのは、会社の目標です。
目標を立てた時点では時流やビジネス環境にマッチしたものであっても、業界によっては変化のスピードが速く、すぐに陳腐化してしまいます。
ズレてしまった目標を達成するために、紐づく目標を立てても意味がありませんし、モチベーション低下にもつながりかねません。
会社の目標は、最低1年から数年間以上の期間、変えない企業が多いかと思いますが、現実との間でズレが生じた場合は、すみやかに修正しましょう。
定性的なO(Objective)に対し、KR(Key Results)では、具体的な数値で目標を定めます。
KRを設定するとき、仮説検証を行わずに、なんとなくの感覚値で決めてしまうと、目標が高過ぎる・低過ぎるといったことが起こってきます。
高過ぎる・低過ぎる目標背定も、やはりモチベーション低下につながってしまいます。
KR設定に当たっては、現状の分析や仮説検証を行い、合理的な根拠のある数値に設定してください。
OKRの達成率を、直接的に人事評価や報酬と連動させてしまうと、個人目標を立てる際に評価の低下を恐れて保守的な目標設定しかできなくなる従業員が増えてしまいます。
OKRでは、2.OKRの階層イメージと設定・評価方法でもお伝えしたように、KRは達成可能性50%程度の難易度で立てることが一つのポイントとなります。
高い目標を立てて、達成のために意欲高く行動するためにも、人事評価や報酬との連動は一部分のみにとどめましょう。
では、すでにOKRを導入しているのは、どのような企業でしょうか。
外資系企業と日本企業の例をご紹介します。
 
外資系企業
日本企業
 
 
ここからは、国内のOKRツールベンダーの導入事例から、具体的な事例をご紹介します。
NTTコミュニケーションズ株式会社では、早くからデザイン経営に着手してきました。2010年にはプロジェクトチームを発足。同チームでは、プロセス(Process)、プレイス(Place)、ピープル(People)、プリンシプル(Principle)の4つの領域で具体的な施策を立て、3ヵ年で進めていたそうですが、メンバーの入れ替わりや増減もある中、メンバーからは「プロジェクト全体が俯瞰できない」「3ヶ年全体の中での進捗がわからない」「自分が何に貢献しているのかわからない」といった声が挙がっていたといいます。
また、新しく入ったメンバーにこれまでのプロジェクトの動きを上手く伝える方法を模索していました。 こうした課題解決の手段として、OKRの導入を行い、併せてツールも導入したといいます。
 
導入後、コミュニケーションの取り方が変化し始め、「OKRに取り組むことで、今の取り組みとプロジェクト全体との関連が明確になった」という感想も出てきたそうです。
 
詳細は、Resilyの事例ページをご覧ください。
 
デザイン経営については、こちらの記事もご覧ください。
【関連記事】
デザイン経営とは?経産省・特許庁も重視する「経営とデザイン」の新しい関係
宿泊施設の予約サービスや事前決済・キャッシュレス決済などを手がける株式会社JTBビジネスイノベーターズでは、システム開発部門において、「具体的な数値目標を立てにくい」「チーム内で職務のフォローし合う意識が芽生えにくい」「メンバーと上司での進捗確認の機会が少ない」といった課題を抱えていたといいます。
 
そこでOKRの概念とツールを導入したところ、コミュニケーションのスピードが向上。ツール上で意見を募ると、すぐに複数のアイデアが返ってくるようになったそうです。
 
詳細は、Goalousの事例ページをご覧ください。
OKR
「Objectives and Key Results」の略。「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」を表す、企業の目標管理の手法。
組織の目標と個人の目標を連動させるフレームワークであることが特長。
Objectives
目標
Key Results
目標を達成するために必要な、主要な成果
MBO
「Management By Objectives」の略で、目標管理制度と訳される。従業員が自ら目標を管理するセルフマネジメントの考え方で、日本では多くの企業で人事評価に取り入れられている。
KPI
「Key Performance Indicator」の略で、重要業績指標などと訳される。目標に対する、現在の好調・不調を表す指標。
ムーンショット
「月に届くほどのショット」の意味で、非常に挑戦的な、高い目標を表す比喩。60~70%の達成度で成功とみなす。
ルーフショット
「屋根に届くくらいのショット」の意味。ムーンショットより現実的な、実現可能な目標の比喩。100%達成で成功となみなす。
SMART
OKRの目標を設定する際に意識すべき5つの要素の頭文字をとったもの。Specific=具体的であること、Measurable=測定可能であること、Attainable=達成可能であること、Relevant=関連性があること、Time-bound=期限があること。
1on1
上司と部下が定期的に行う1対1の面談のこと。OKRの過程でも、個人の目標管理や成長促進のために取り入れられることが多い。
・チェックイン・ミーティング:OKRを解説した書籍「OKR:シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」の中で推奨されている週に1度のミーティング。同書のなかでは月曜日に実施することが勧められており、その週の優先事項、達成の自信度、チームに知らせるべき今後4週間の予定、業務の健康状態などを評価する。
Winセッション
その週の業務の進捗を報告し、各チームが見せられるものをなんでも見せ合い、褒めあうミーティング。上記書籍では、毎週金曜日に行うことが推奨されている。
P1、P2
OKRの進捗確認に使われるタスクの優先度を示すラベル。今週やるべき最重要事項を、P1=やらなければならないこと、P2=やるべきこととし、優先順位順に記載する。
OKRの導入にあたっては、各社からリリースされる管理システムを活用することも有効です。いくつかのツールをご紹介します。
 
日々の1on1ミーティング、フィードバックを即時に人事評価に活用できるパフォーマンスマネジメントシステム。OKR進捗管理機能あり。
チーム力をたのしく上げるをコンセプトとした社内SNS。OKRの考え方をベースに「GKA(Goal-Key Result-Action)」というモデルを開発しています。
OKRの管理ツールベンダーが主催するセミナーを中心に、OKRを学ぶことができるセミナーをご紹介します。
OKR導入コンサルティングを手がける株式会社タバネルでは、不定期でOKR導入に関するセミナーを開催しています。
セミナーページをチェックしてみてください。
クラウドOKRシステム「Resily OKR Cloud」を提供するResily株式会社では、毎月1回、OKRに関するセミナー(ウェビナー)を開催しています。参加費は無料です。
ニュースページをチェックしてみてください。
OKRの考え方をベースに「チーム力をたのしく上げる」をコンセプトとした社内SNS「Goalous(ゴーラス)」を提供する株式会社Colorkrewでは、毎月1回、無料で組織改善セミナー(オンライン)を開催しています。
セミナーページをチェックしてみてください。
画像引用:Amazon
OKRの考え方を前半は物語、後半はノウハウで解説した書籍。
画像引用:Amazon
Amazon、Googleなどに初期から投資したシリコンバレーの伝説的なベンチャーキャピタリスト、ジョン・ドーア氏が説くOKRの手法が解説されています。
画像引用:Amazon
「OKRとは?」からの初心者でもわかりやすく、体系的に解説された入門書。
画像引用:Amazon
Google社のOKRの取り組み方法と、生産性を上げる仕組みのつくり方が書かれています。
これまでまとめてきたように、OKRは、変化に富んだ時代に、組織と従業員の意識を合わせ、より高いパフォーマンスを発揮させるための目標管理方法です。
日本企業がこの新しいメソッドを活用するには、OKRのよいところと、従来型の評価方法のよいところをうまく組み合わせ、柔軟に運用することが、成功の秘訣といえそうです。
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