KPI(指標)とKGI(目標)はともにビジネス上の目標をあらわす指標で、デジタルマーケティングの分野に限らずあらゆる業界・業種で活用されています。
KGI(Key Goal Indicator)は「重要業績評価指標」「経営目標達成指標」などと訳され、企業の経営戦略やビジネス戦略を達成するうえでゴールとなる目標を指します。
KPI(Key Performance Indicator)は「重要目標達成指標」と訳され、KGIの達成度を評価するための各プロセスにおける中間的な指標です。
KPI・KGIはともに具体的な数値を以て設定する必要があり、その進捗を定期的に確認することで、効率的にPDCA(Plan Do Check Act)サイクルを回すことが可能です。ですが、実際にどのような数値を設定すればよいのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、KPI・KGIそれぞれの定義を改めて確認し、より効果的な設定のしかたを解説するとともに実例をご紹介します。OKRやKSFなど、関連する言葉の意味もご紹介しておりますので、ぜひお役立てください。
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さっそく、KPIとKGIのそれぞれの定義を改めて確認しましょう。
KGI(Key Goal Indicator)は「重要業績評価指標」「経営目標達成指標」などと訳され、企業の経営戦略やビジネス戦略を達成するうえで何をもってゴールとするのかを定める指標です。
KGIは漠然とした目標ではなく、達成できたか否かを客観的に判断できる具体的な数値を設定する必要があります。たとえば「売り上げを上げる」ではなく「半期で売り上げ1,000万円達成」、「顧客満足度を上げる」ではなく「既存顧客へのメールアンケートで満足度85%を獲得」というように、「いつまでに」「どれだけの数字を達成するのか」を明確にします。
最終的なKPIやKSFを設定する際にも、KGIから逆算した数値や施策を設計することになりますので、必ず定量的な数値を設定するようにしましょう。
KPI(Key Performance Indicator:「重要目標達成指標」)は、企業における目標の達成度を評価するための主要業績評価指標であり、KGIを達成するための中間指標です。
KPIはKGIに至るまでの各段階での目標なので、KGIへとつながる指標を具体的な数値で設定する必要があります。
KPIが「過程」を見る指標であるのに対し、KGIが「結果」を評価する指標だとイメージするとわかりやすいでしょう。つまり、KGIを設定したら、それを達成できるよう逆算してKPIを設定していきます。仮にKPIをすべて達成してもKGIが達成されない場合は、見直しの必要があるかもしれません。
>デジマケひよっこ担当者のメールマーケティング 第6回 メールマーケティングのKPI・KGI例
OKRは「Objective and Key Result」の略で、「達成すべき目標と、目標達成のための主要な成果」と訳されます。
アメリカのIntel社が初めて採用し、GoogleやFacebook、日本ではメルカリやサイバーエージェントなどのグローバルな成長企業が次々と取り入れたことで注目されているフレームワークです。
KPIは「目標に対して、現在の状況が順調であるかどうか」を客観的に測定するための指標です。一方でOKRは、「組織や個人の目標設定・管理」を行うための手法であり、一般的には人事評価の文脈で活用ケースが多いフレームワークです。
OKRは目標(Objective)と成果指標(Key Results)の2点を設定し、「最終目標を達成するためのプロセスや方向性」を見える化・整合化してチームで共有しながら運用していくので、会社・チーム・個人の目標を連動させやすいという特長があります。
さらに、KPIとKGIは基本的に一度目標設定をしたら変更が利かず、経営環境の変化が激しい状況下では柔軟性が低い評価指標となる場合もありますが、OKRは、四半期を目処に見直すのが一般的なので、より柔軟性があり、ビジネスの変化に対応しやすいというメリットもあります。
KSF(Key Success Factorの略:)は「重要成功要因」と訳され、目標を達成するために必要な重要項目を指します。
KSFはKGIやKPIを達成するための具体的な行動項目であり、優先的に取り組むべき施策です。KSFを達成することによってKPIを達成でき、その後のKGIの達成へと繋がっていきます。
たとえば「3年後にWebサイトからの売上を1,000万円にする」という目標を立てる場合、次のように考えます。
つまり、「サイト構造の最適化と新規ページ作成」を達成することにより「お問い合わせ数」が増加し、結果的に「売上」がアップして、「3年後にWebサイトからの売上を1,000万円にする」という目標を達成する……という流れです。
またKSFは、市場の動向や競合の参入・撤退といった「外部要因の分析」と、自社の強みなどの「内部要因の分析」の2つの分析によって特定でき、分析結果を具体的な戦略に落とし込んでいくことで、現実的かつ効果的な事業計画を策定できます。
技術のアップデートや顧客ニーズなどの外的環境によって日々変化するので、事業を成功させるためには、KSFの内容を定期的に精査し、機能的な要素であるかどうかを継続的にチェックする必要があります。
>Webサイトの運用は、具体的な目標を設定をする事で成果をさらに上げる事ができます
KPIとKGIの設定方法を紹介します。
まず初めに、最終目標となるKGIの指標を決定します。
次のKPIはKGIから逆算して設定しなければならないため、KGIは定量的・客観的な評価ができる具体的な数値を設定する必要があります。
具体的には以下のような指標をKGIに設定するのが一般的です。
・売上高、営業利益など:(例)「売上600億円を達成」
・売上総利益、成約数など:(例)「前年度比150%を達成」
・市場シェア
また、以下ではKGIを設定する際に有用なフレームワーク「SMART」について紹介します。
「SMART」とは、明確な目標を立てるために欠かせない以下の5つの要素の頭文字から取った言葉で、目標設定のためのフレームワークを指します。具体的な数値にした目標を設定することで、PDCA(後述)サイクルを回しやすくなり、パフォーマンスの向上が見込めます。
①Specific(明確性):曖昧ではなく、具体的でわかりやすい目標を設定します。
(例)×→「顧客満足度向上」、○→「リピート率80%」
②Measurable(測定可能):目標までの進捗を定量的に計測できる指標かどうかを意識して設定します。
(例)目標を「売上を前年比125%にする」と設定することで、KPIで「◯カ月後に前年比90%達成を目指す」と設定でき、目標までの進捗を定量的に測ることができます。
③Achievable(達成可能):達成できる現実的な内容になっているかどうかを確認します。目標が低すぎると企業の成長・発展に繋がらず、高すぎて達成不可能であると感じた瞬間、モチベーション・パフォーマンスの低下に繋がります。努力・工夫をすれば達成できる指標を定めましょう。
④Related(関連性):企業の目指すべき姿や経営戦略に沿った目標になっているかどうかをチェックします。
(例)「オンライン商談比率を上げて、業務効率を改善する」という目標を定めた場合、「毎日2件訪問商談をして、250万円の売上予算を達成する」という目標ではいくら定量化できる目標でも関連性がありません。この場合、「オンライン商談比率80%、250万円の売上予算を達成する」などの目標が、関連性を持った適切な目標といえます。
⑤Time-bound(期限を定める):KGIを達成する期間を定めます。期間を有限にしないと、明確な行動計画を立てられません。1年後から半年、3ヶ月、1ヶ月、1週間、1日と複数の期限を設定し、短期的・中長期的な行動計画を設定するとよいでしょう。
KPIもSMARTを意識した上で、以下のようにKGIから逆算して定めるのが基本です。
KGI=「売上600億円を達成」 のために、
KPI=「コンバージョン率8%を目指す」「集客数30万件を目指す」など
KPI=「自然検索流入数100万件を目指す」「社名検索流入数10万件を目指す」など
このように、KPIを設定するにはあらかじめKGIが設定されている必要があり、ひとつひとつのKPIを達成していくことが最終的にKGIの達成となるような相関関係がなければなりません。段階的に明確なKPIを設定することで、適切な戦略策定につながります。
ここで大切になる考え方が「KPIツリー」です。
KPIツリーとは、組織や企業の大目標であるKGIを頂点とし、その実現のために設定された複数のKPIとの関係性を枝葉のように樹木状(ツリーの形状)に図示して可視化したものです。
KPIツリーはKGI達成のための手法のひとつです。
KPIツリーの枝葉となっている具体的なKPIから考察すると、各施策の検討や実行がKGIにもたらす効果検証にも役立てることができるでしょう。
KPIツリーの策定には、企業や組織の目標とそれを達成するための思考やアクションが一目瞭然になる、ボトルネックとなっている問題が把握しやすくなる、施策の効果検証がしやすくなるといったメリットが挙げられます。
下図はWebサイトのマーケティング施策におけるKPIツリーの組み立て例です。
なお、他分野の例として、採用や営業における一般的なKGI・KPIは次の通りです。
KGI=内定承諾数
KPI=求人のエントリー数、説明会の申込者数/特に採用したい「優秀層」の人数 など
KGI=新規顧客(社)数
KPI=問い合わせ数、アポイント数、面談数、提案数/成約率 など
KPIツリーが完成したら、それぞれのKPIについて具体的な数値を設定していきましょう。KGIを達成できる、現実的な数値を設定することが大切です。
例えば、KGIが「売上」の場合、KPIはそれを達成できる「新規客数」「リピート客数」「客単価」の数値設定が必要です。現実的に達成できそうな数値をKPIとして設定するため、具体的な数字を当てはめながら検討することをおすすめします。
・売上 = 客数 (新規客数 + リピート客数) × 客単価
KPI・KGIを設定する際にはいくつかの注意点があります。ここでは一般的なポイントをご紹介します。
KGI・KPIを設定するときによくある間違いが、定量的でないものになってしまうということです。
たとえば飲食店で、「売上をアップさせる」といった定量的でない目標をKGIとすると、KPIとなる人気メニューの注文数やリピーター客数も「とにかく増やす」となり、どのような状態をもってKGIやKPIが達成されているとみなすかがわからなくなってしまいます。
KGIとKPIは、施策の効果検証を見据えて、定量的で計測可能な数値を伴うものとしましょう。
KPIはあらゆるサービスに対して設定することが可能ですが、複数のKPIを設定するうちにKPIツリーの構造が複雑化し、効果を追いづらくなる場合もあります。
KPIの要素を検討する際には「その項目(その数字)は日々追う必要があるか」をひとつの判断基準としても良いでしょう。
また、同じ階層のKPI間で内容的な重複があると、重複業務による生産性の低下を招き、無駄な重複投資が発生するおそれがあります。
逆に、KPIに含めるべき内容に漏れがある場合は、KGI達成までのロジックに見落としがあることを示します。
見落としが戦略上致命的なものである場合、ビジネスはスタートから失敗しかねません。
KPIツリーを策定する際にはロジカルシンキングの考え方のひとつである「MECE」※に則り、重複が無く、かつ、漏れが無い状態を目指しましょう。
※「MECE」(ミーシー、ミッシーとも)……「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で直訳すると「お互いに重複せず、全体に漏れが無い」の意。一般的には「もれなく、ダブりなく」との意味で用いられる。もともとはマッキンゼー・アンド・カンパニーの社内用語として使われていたもので、近年ではロジカルシンキングに不可欠な概念とされている。
KPIは最終的な目標であるKGIと連動したものでなければならず、両者間には因果関係が求められます。
KPIツリーを策定する場合は、KGIに向けたKPIにつき、四則演算によってKGIとの因果関係を証明できるよう設計しなければなりません。
因果関係が必要となるのは上層のKPIと下層のKPI間でも同様です。
たとえばスマートフォンアプリやゲームのKPIの場合、「ログイン率やシェア数が増えれば継続率が上がる」という因果関係は定かではありません。
この場合、ログイン率やシェア数はあくまでも「継続率が上がることに影響を及ぼすかもしれない因子」に過ぎません。
このような因子(ここでは「ログイン回数」や「シェア率」など)をツリー状に挙げ連ねたものを「ロジックツリー」と呼び、四則演算を以て仮説検証を重ね、上層KPIとなる因子(ここでは「継続率」)との因果関係を証明できれば新たなKPIとして追うべき数値だと判断できます。
KPIツリーとロジックツリーは似ている要素もありますが、区別して理解しましょう。
Webマーケティング関連のKGI・KPIは営業や関連部署にも大きく関わってくることがあります。そのため、主担当の部署だけではなく、関連の部署も指標には関心を持ち、時には意見をぶつけて改善をしていきましょう。
特にコンテンツの中身については、お客様の声をよく知っている営業やカスタマーサポートの意見が役に立ちます。どういったコンテンツであれば読まれるのか、ダウンロードを促せるかなど、積極的に意見を取り入れて改善をしていくことをおすすめします。
マーケティング分野でのKPI・KGI設定の事例をご紹介します。
以下はイベントマーケティングの一環として展示会を開催する場合の例です。
広告の費用対効果を見極める指標である「ROAS」をもとに目標売上の金額を決定します。
部門別の設定については、下記のようにKGIから逆算した数値にプラスした指標とします。
営業責任者 …… 売上(円)
営業 …… アポイント数(Aランク名刺数)(件)、訪問数(件)、案件化数(件)、受注数(件)
インサイドセールス …… 有効アポイント数(B・Cランク名刺数)(件)
マーケティング …… 有効名刺枚数(枚)、お礼メールの開封率/お礼メールのクリック率(%)、アクション件数(件)
【関連記事】イベントマーケティングとは?メリット・デメリット、セミナー、参考本などまとめました!
WebマーケティングにおけるKPIは、最終的な目標であるKGIの達成に必要なプロセスを具体的かつ定量的に細分化し、具体的な期限や数値を以て具体的に設定します。
たとえばKGI=「売上600億円を達成」であれば
①KPI=「コンバージョン率8%を目指す」「集客数30万件を目指す」
②KPI=「自然検索流入数100万件を目指す」「社名検索流入数10万件を目指す」
など、最終的な目的を達成するために、相関するような指標を置く必要があります。
また、KPIを整理する際に便利なフレームがKPIツリーです。
KPIツリーの策定には、企業や組織の目標とそれを達成するための思考やアクションが一目瞭然になる、ボトルネックとなっている問題が把握しやすくなる、施策の効果検証がしやすくなるといったメリットが挙げられます。
下図はWebサイトのマーケティング施策におけるKPIツリーの組み立て例です。
よくある失敗例として、最終的なゴールを意識せずに「検索順位〇位」「セッション数〇%アップ」といったわかりやすい指標に逃げてしまうことです。これ自体が間違っているわけではないのですが、目的が手段になってしまう可能性もあるため、どうしてそのKPIを設定する必要があるのかをしっかり考えたうえで、設定するようにしましょう。
例えばWebサイトからの売り上げ目標が決まっているのであれば、下記の図のようにWebサイト関連のKPIまで結びつけていく必要があります。
参考図:WebマーケティングのKPI設計例
KPI・KGIを達成するためのポイントを3つ紹介します。
KPI・KGIを設定したら、目標に加え、営業日進捗や達成率などの現状を可視化することが大切です。
例えば、「自動レポート機能を活用して、どの指標をどれくらい数値改善できたのか把握する」「掲示板を使って達成率をリアルタイムで表示する」「常にグループ内で目標・現状を確認できるファイルを共有する」などの方法があります。
達成すべき目標とそこに達するまでの進捗を常に意識できるよう、社内でシェアする仕組みを整えることは、モチベーションやKPIの達成意欲向上にもつながります。
設定したKPI・KGIを達成するためには、必要な行動を明確にして実行に移すことが非常に重要です。どんなに最適な目標を設定しても、具体的な行動へと落とし込まなければ意味がありません。
たとえば「月間受注数を20%増やす」というKPIを設定した場合は、そのためにできることを明確にし、「1日における架電数を20件から40件に増やす」など具体的に定めて実行する必要があります。
効果がありそうなことでも、ただ手当たり次第にやっているだけでは確実な達成は見込めないため、行動を明確にして取り組むことが何より大切です。
KPIやKGIを達成させるにはPDCAを回す取り組みが重要です。「Plan-Do-Check-Action」の頭文字をとった「PDCA」は、経営やプロジェクト管理、品質改善などの分野で用いられるフレームワークです。
4つのフェーズ「Plan(計画」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」から成るサイクルを繰り返すことで、業務改善やパフォーマンス向上が見込めます。このPDCAをベースに回していくことで、目標に向けて効率よく進むことができ、軌道修正も行いやすくなるため、KPI・KGI達成においても非常に重要とされています。
以下ではそれぞれのフェーズについて紹介します。
・Plan(計画):「何を達成するか」という目標や、それを達成するための方法を計画します。
・Do(実行):事前に決めた計画に従って活動を進めます。
・Check(評価):活動した内容や実行した施策の結果を評価し、目標に対する進捗や成果、計画との差異などを明らかにします。
・Action(改善):評価した内容を元に、計画の修正点や弱みを特定し、改善できるよう次回のサイクルでの計画にフィードバックします。次の「Plan」で立案する計画のクオリティを高められるようにすることが大切です。
本記事では、効率的に事業目標を達成するために欠かせない計測指標であるKPIとKGIについて紹介しました。
基礎的な知識や、マーケティング分野での設定方法を解説しましたが、KPI・KGIはマーケティングに限らずあらゆる業界・業種で活用されている重要な指標です。適切なKPIの設定・達成は、KGIの確実な達成へと貢献し、PDCAを回していくことで企業の意思統一や戦略の実現、さらなる利益拡大へとつながっていきます。
自社の状況に当てはめながら、適切かつ効果的なKGI・KPI設計を行い、それにもとづいたPDCAサイクルを確立して、自社の発展を目指しましょう。
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