「宣伝会議 AdverTimes Days 2019 Spring」レポート セッション「もうデータ分析は怖くない!マーケター必須のデータマーケティング総まとめ」

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2019年4月24日(水)、東京国際フォーラムにおいて、宣伝会議のイベント「AdverTimes Days 2019 Spring」が開催されました。AdverTimes Daysとして7回目の今回、サブタイトルを「HOPE―広告界の新しい希望を議論する2日間」と掲げ、広告・マーケティング分野に関連のある展示や講演が催されました。

「エムタメ!」では、当日のセッションのなかからデータマーケター内野 明彦氏による「もうデータ分析は怖くない!マーケター必須のデータマーケティング総まとめ」の模様をご紹介します。

1.マーケターこそデータマーケティングの適任者である

内野 明彦氏(データマーケター)

内野氏は、ISID、電通、ネットイヤーグループ、ネットエイジなどで、数多くのマーケティングプロジェクトに関わったのち、ウォルト・ディズニー・ジャパンにてEコマースの立ち上げ、オーリック・システムズの取締役としてアクセス解析の新規事業構築といった経歴を持つデータマーケターです。2015年からはフリーランスとして活動しています。
最近はMA(マーケティングオートメーション)の導入支援にも関わっているそう。

「データ分析」というと、最近では専門職として「データサイエンティスト」なども現れてきていますが、データマーケティングの適任者はマーケターであり、怖がらずにデータ分析に取り組んで欲しいと内野氏はいいます。内野氏自身も高度なデータ分析は行わず、Excelのクロス集計のみで十分な効果を出しているそうです。

かつてのデータは、Web領域かつ短期的視点に偏っており、アクセス解析ツールや広告効果測定ツールなどによって最適化される領域に閉じていましたが、現在は飽和してしまったためそれだけでは通用しない時代になってきているといいます。

次第に「全体最適」「顧客志向」が求められるようになってきたため、データ分析が重要になってきたという背景の説明がなされました。

消費者行動も断片化しているもののトラッキングしやすくなってきているため、データ分析の敷居は下がってきているそうです。データを取得しやすいだけでなく、分析手法も充実してきており、ネックとなっていた「最終的なデータを価値に変えるための施策」についてもさまざまな手法が現れ、好材料が揃ってきているといいます。

ここで、アメリカのマーケティングツールのカオスマップが掲示されました。3年前のもので7,040点もあるそうです。2011年から見ると毎年2倍ずつ増えてきて、近年は少しスピードがゆるやかになってはいるものの、猛スピードで増えてきたということです。日本でも同様の状況で、マーケターが利用できるツールが豊富にあるということがいえるそうです。

競争環境で低価格し、機能も同質化してきているため、どれを選んでも大きな問題はないともいえる状況で、マーケターにとって実行手段が増えている状態だといいます。総じて、マーケターがデータマーケティングを行う敷居が下がってきているといえると内野氏は述べました。

2.データマーケティングにおいてマーケターが担うべき役割

データマーケティングで価値を創造しようとした場合、「データ設計→データ確保・蓄積→データ統合・集積→データ加工→分析用データ確保→データ分析→データ可視化・意味化→施策設計→実行→効果検証→仕組化・体制化」という手順を踏むそうですが、前半までは、システムエンジニアやデータサイエンティストが行い、実際にマーケターが役割を担うのは、後半の「データ化工」以降だといいます。

ただし、マーケターが上流工程へ範囲を広げていく意識は大切で、システムエンジニアやデータサイエンティストがデータを扱う上でどんな点に苦労しているかなどを知り、部門間のコミュニケーションを活性化することも求められる役割のひとつだといいます

4~5年前までは、システムエンジニアが下流工程まで手を広げることがよしとされていましたが、最近は事情が変わってデータを扱うハードルが下がってきたため、マーケターこそがデータマーケティング担当として適任であるということです。

3.【データマーケティング事例】ゴルフのポータルサイトのCRM

ここで、データマーケティング事例として、ゴルフのポータルサイト運営を営む企業におけるデータマーケティングの取り組みを例に挙げながら、データマーケティングのポイントが紹介されました。

事例企業では、ポータルサイトからゴルフ場への送客やEコマースによるゴルフグッズの小売などの事業を手がけており、各事業部による部分最適化はかなり進んでいたものの、全体最適ができていないという課題を抱えていたといいます。

内野氏はまず顧客管理のフレームワークを作成し、収益性との関連性を見ながら顧客管理を行い、経営的な視点で顧客価値を評価できるように進めていったそうです。
顧客評価を行うだけでは意味がないため、顧客を育成し優良化していくための具体的なプラン作成、さらには運用体制を構築し継続的に利益を出していくための仕組みづくりまで手がけたといいます。

フレームワークは、顧客を切り口にしてすべての事業部を横断してデータ分析できるように設計されました。ミクロ視点の「顧表(こひょう)」とマクロ視点の「星取表(ほしとりひょう)」から成り、顧表では顧客ごとの動きを細かく見ていく方式で定着と収益性の分析を行い、星取表では顧客ごとに3ヵ月単位の時系列で受注状況を●、○、□(空欄)の3つのマークで識別する形式がとられました。

「顧表」では、ある顧客を見たときに、初回のゴルフ場予約までの動きは鈍く、競合他社との相見積などがあったと考えられるが、初回のプレー後、2回目の予約まではスムーズだとすると、そこで顧客との距離がかなり縮んだという事実がわかるといいます。さらに、ゴルフ用品購入もしていると優良顧客であると判断できます。
また、予約や購入まで至らない顧客が、なぜ予約しなかったのかについても、複数の顧表を横断してチェックすることでおぼろげながら見えてくることも多いそうです。

「星取表」では、何も取引がない状態を「□(空欄)」、一定の取り引きがあれば「○」、それより取引状態が良い場合は「●」とし、各顧客の3ヵ月ごとの取引状態を一定期間(2年間など)でチェックします。

この●、○、□(空欄)の並びごとに平均または中央値を取ることで、LTV(Life Time Value)の顧客平均など自社の顧客の概要が掴めるといいます。
LTVを考えると、すべて「●」がつくのがもっとも優良な顧客で離脱防止していくべきですが、重要なのは一定期間「●」が連続してついているのにその後、「□(空欄)」になってしまった顧客、つまり、離脱しかかっている優良顧客のフォローだといいます。購入や申し込みがないだけではなく、Webサイトに訪れていないなど、離脱の定義を決め、対策すべきだといいます。

対策法としては、DMやメール、電話でフォローしたり、場合によっては訪問しても元が取れるケースもあるといい、それを判断するためにもデータから自社のLTVを把握し、いくらまでコストをかけられるかを検討した方が良いといいます。

こうしたデータ分析は、丹念にフラグを整理する必要はあるが、Excelでも十分可能だと内野氏はいいます。どの企業でも、こうした顧客に関するデータ自体は保有しているものの、上記のような見方でデータを解析する機会がないことが多く、ぜひやるべきと述べました。

4.データ分析の限界とテストマーケティング

最後に総まとめとして、データ分析では「どういう定義で抽出される顧客に、どういうタイミングで、どういうコミュニケーションをして、どういう反応と行動を期待して、その結果、顧客のCJ状態が進行して、その結果ビジネスインパクトを生み出し、どのくらいの投資をしても回収できるか、運営のためにどういう体制が必要か」を考えることが重要であると述べました。

ただし、データはあくまでも過去の事実を伝えてくれるに過ぎないため、データ分析だけでは施策の成功パターンは掴めないと内野氏はいいます。ある程度のデータ分析を行ったら、テストマーケティングのフェーズに移していくことが大切で、「テストマーケティングの精度を上げるためにデータ分析を行う」ことを意識して欲しいとまとめ、セッションは幕を閉じました。

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