「CONTENT MARKETING DAY 2019」レポート 第二回「色とりどり、多様な形の花が咲く美しいコラボレーションの花畑へ~Tableau Communityが辿った5年間の軌跡~」

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アメリカでインバウンドマーケティングが提唱されてから日本でもコンテンツマーケティングが注目を浴び、企業はこぞってブログ型のオウンドメディアサイトを立ち上げ、潜在層や見込客に情報を提供するようになりました。

SNSマーケティングが活発に行われるようになると、テキストや画像以外にホワイトペーパーや動画、アニメーションなど、ユーザーに求められるようなコンテンツを制作する重要性がさらに増しました。
そして、コンテンツマーケティングに限らず、施策の効果測定をはじめとするデータ分析やコンテンツ制作など、さまざまな場面でマーケターがデジタルツールに触れる機会も確実に増えています。

こうしたマーケターを取り巻く状況を受けて、2019年11月28日(木)、株式会社日本SPセンターが運営するメディア「CONTENT MARKETING LAB」主催、コンテンツマーケティング支援などを手がける株式会社クマベイス共催で、コンテンツマーケティングに特化した専門カンファレンス「CONTENT MARKETING DAY 2019」が開催されました。

「エムタメ!」では、当日の様子を数回にわたりレポートしていきます。第二回は、ビジネスインテリジェンスツールやデータ分析のプラットフォームを提供するTableau Japan株式会社 Associate Sales Consultant 兼 Grand Master of DATA Saber Kaori Tanaka氏(Twitter:@DATA_Saber)が登壇した「色とりどり、多様な形の花が咲く美しいコラボレーションの花畑へ~Tableau Communityが辿った5年間の軌跡~」の模様をお届けします。

企業のデータドリブン化にはコミュニティが重要

Kaori Tanaka氏(Tableau Japan株式会社 Associate Sales Consultant 兼 Grand Master of DATA Saber)

冒頭でTanaka氏は、Tableau社が掲げるミッション「We help people see and understand data」を紹介し、すべての人がデータを見て理解できるような社会を作りたいという思いで事業に取り組んでいると述べ、自身の業務を、目で見た瞬間に理解できる人間の脳の仕組みを活用し、データをビジュアライズすることでより深い洞察をデータから得られるような開発への取り組みだと紹介しました。

同社では、製品を導入したユーザー企業を分析し、企業や人の文化がデータドリブン化する過程がどのようなもので、そのために必要な要素は何かを探り、この結果を「Tableau Blueprint」としてまとめ、提供しているといいます。この分析のなかで、サーバ環境やスキル以外に、コミュニティが重要であることがわかってきたといいます。

同社のコミュニティプラットフォームには、オフラインではユーザー会や有志のコミュニティがあり、オンラインでは「Tableau Public」「Tableau Community Forums」を立ち上げているほか、Twitter上でもコミュニティを設けているそうです。
Tableau Publicは、いわばデータビジュアライゼーションのSNSで、75万人以上の会員を抱え、世界中から各ユーザーが自作したデータビジュアライゼーションをアップロードし、共有できるプラットフォームだといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

Tableau Public上には200万以上のデータビジュアライゼーションが投稿されており、さらに会員数・投稿数とも増え続け、週平均で1万3,000を超えるデータビジュアライゼーションが投稿され、累計のビュー数は25億ビューを超えているといいます。

このデータビジュアライゼーションもコンテンツであり、Tableau側で制作しているわけではなく、コミュニティ上でユーザーがコンテンツを制作するという状況が生まれていると紹介しました。

さまざまな人が発信するコンテンツはまるで花畑のよう

Kaori Tanaka氏(Tableau Japan株式会社 Associate Sales Consultant 兼 Grand Master of DATA Saber)

Tanaka氏は、Twitter上でさまざまな人のつぶやきを見たり、Tableau Publicに投稿されたデータビジュアライゼーションを眺めていると非常に豊かな気持ちになり、まるで花畑の中を心地良い風に吹かれながら歩いているような気分になるといいます。

ここで、Tanaka氏の経歴について紹介がありました。Tanaka氏は入社前からTableauのファンの一人としてコミュニティに参加しており、2015年にTableau Japan株式会社に入社して以来、日本のコミュニティのリーダーとして活動してきたそうです。

マーケティング部に在籍した経験はないものの、どのようにコンテンツを伝えれば役に立つのだろうということをずっと考えてきたといいます。また、趣味のコスプレを行うとき、自分自身がコンテンツ化していることを実感するといい、仕掛け人でありながら、表現者・発信者であり、複数の視点からアプローチできる点が自身の特徴だろうと述べました。

コミュニティがコンテンツを作り、コンテンツがコミュニティを作る

2019年11月にラスベガスで開催された「Tableau Conference 2019」では、2万人近い参加者が集まり、このイベントに関するツイートを公式ハッシュタグ「#data19」をつけた英語のツイートが増加したそうです。
時勢的に盛り上がっているキーワードにあやかりながら、日本のコミュニティの盛り上がりを見せるため、あえて日本語のひらがなを含んだハッシュタグ「#data19しゅごい」を提案したところ、ユーザー達から多数のつぶやきがあり、トップ入りしたといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

Tanaka氏は、コンテンツを作るのはコミュニティだと考えているといい、コミュニティには発信者がさまざまであるがゆえにコンテンツにはバリエーションが出るといいます。
一方、受け取る側の好みや理解できる言葉に違いがあることから、一人の発信者がリーチできる層には限界があると述べました。

つまり、多くの人がコンテンツを作り発信する文化を作ることで、良質なコンテンツが増え、コンテンツを閲覧するユーザーも増加するといいます。

Tanaka氏がコンテンツを作るようになったきっかけ

Tanaka氏は自身がデータの最高の使い手として唯一無二の存在になりたいと考えて、Tableau Japan株式会社に入社したといいます。自身が一輪だけ咲く大輪のバラのような存在を目指していたそうです。
そのために、通常は1年半ほどかけて取得する社内資格を最速の74日間でパスしたり、最上級の公式認定資格を日本で初めて取得したり、通称的に呼ばれる憧れの存在「Tableau Jedi(ジェダイ)」になるなど。こうして、周囲のお墨付きを獲得し、目標を達成する過程で得た満足感・達成感を周囲に還元すべく、次は自分自身が他者にお墨付きを与える側になりたいと思うようになり、これがコンテンツ作りのきっかけになったといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

Tableau製品のハンズオンセミナーで、中・上級者向けの内容を作ったり、地方在住のユーザー向けにウェビナーを実施したり、ブログを書くなど、初心者から中級者・上級者にステップアップするために必要な情報を提供するべくさまざまな取り組みをしたといいます。
結果としてコンテンツは増えたものの、ユーザー側の成長が見えず、壁にぶち当たったそう。売上など直接的な成果への結びつきも見えず、これまで中上級者向けに広く提供していたオンサイトの無償トレーニングをすべて停止したといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

その後、断片的だったコンテンツを体系立て、もっとも効率的と思われる順番通りにユーザーにコンテンツを受け取ってもらう方法を模索したといいます。結果として、Tanaka氏自身が講師となり、顧客のなかから選出した一部のユーザー向け提供する、3ヵ月間・全8回、欠席・遅刻・早退はすべて厳禁、毎回宿題の提出が課されるというハードルの高い育成カリキュラムを作成したそうです。

これだけ厳しい試練に挑んでもらうため、絶対に卒業したいと思わせるモチベーションが必要でした。そのため、卒業生を「Tableau Jedi」と呼ぶことにしたといいます。「Tableau Jedi」はまさに、自身が入社直後に目指していた憧れの存在。参加する人もきっと大きな動機付けを持つだろうと確信していたそうです。こうして「Tableau Jedi Boot Camp(※現:DATA Saber(データセイバー))」を開講するに至ったそう。

グループディスカッションも交えた講義を行い、第一期が終了する頃には、10名の受講生同士で強い仲間意識が醸成されたそうです。さらに、卒業生が次の受講者に事例発表を行う場を設け、Tanaka氏の理論が卒業生の言葉でより具体化されて表現され、新たな受講生に伝播していく様子を目の当たりにしたといいます。

この経験により、かつて目指していた自身が一人で咲き誇る大輪のバラであるよりも、大勢がそれぞれの花を咲かせている色とりどりでさまざまな形の花が咲き乱れる花畑の方がはるかに素晴らしいことに気づいたそうです。そこで、どんな環境なら皆がもっと咲きやすいか、そういう場を作る方法を考えるように変化していったといいます。Tanaka氏はたしかに最初、コンテンツを作っていましたが、いつの間にかコンテンツを媒介としてコミュニティを育てていたといえます。

「Tableau Jedi Boot Camp」を開講した一年後には、卒業生たちが自社のTableau製品活用を進めて事例を作り、ユーザー会のリーダーになるなど目覚ましい活躍を見せてくれるようになったそう。同時に、対外的な発信力が増し、セミナーに講師として登壇したり、ブログやメディア記事、TwitterなどでTableauに関する日本語のコンテンツが爆発的に増加したといいます。

画像引用元:当日の登壇資料より引用

卒業生たちのコミュニティもあり、日ごろのデータ分析に関する悩みなどを共有・共感し、癒されたり力を得たりする場となっているといいます。「Tableau Jedi Boot Camp」をオンラインで認定制度化して「DATA Saber認定制度」に引き継ぐという方向性も、卒業生コミュニティでキャンプへ行った際に決まったそう。

「DATA Saber認定制度」が稼働して約2ヵ月が経った現在、DATA Saberとして必要な素養が何であるかがより明確になり、受講者も激増したそうです。Tableau Jedi Boot Campは対面であったこともあり1ヵ月あたり3~4名しか育成できなかったのが、DATA Saberでは40名と10倍以上にもなっているといいます。

こうして育ったコミュニティのメンバーが良質なコンテンツを作成し続けてくれているそうです。ただし、コンテンツがたくさんあることは大切なことであるものの、一方で同社が伝えたいこととあまりにかけ離れたメッセージのコンテンツが大量に生まれてしまうとこれから入ってくるユーザーをミスリードしてしまう可能性があると指摘。

コミュニティを構成するメンバーにとっての「大事なこと」が同社のメッセージと合っており、それぞれのバックグラウンドで違いはあれど、芯を同じくし、重なる部分が大きいほどコミュニティから良質なコンテンツが生まれていくといいます。作られるコンテンツはさまざまな視点や風味でバラエティに富んでいるものの、一つの真理に基づいたまとまりのあるものになり、伝えるべきメッセージがより強力になっていくのだそうです。

Kaori Tanaka氏(Tableau Japan株式会社 Associate Sales Consultant 兼 Grand Master of DATA Saber)

まとめとして、

の三点を挙げ、「コンテンツマーケティングをするなら、誰かに伝えたいコンテンツを作り、かけがえのない仲間(コミュニティ)と出会ってください」と総括してセッションは幕を閉じました。

2020年も開催決定!

2020年の開催も既に決定していて、11月20日(金)に昨年と同会場の恵比寿でおこなわれます。

三年目となる今回は「直感と理性のマーケティング」をテーマに、実用的なコンテンツマーケティングを学ぶ機会、そしてコンテンツマーケティングに取り組む人々同士をつなぐイベントとなるようです。

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