テクノロジーの進化やコロナ禍における価値観の多様化に伴って、経営環境も急速に変化している現在、「SDGs」や「サステナビリティ」など持続可能な範囲での成長を重視し、「共存性」に価値を置く「ゼブラ企業」が国内外で注目を浴びています。
これまで創業年数が浅いながらも多額の利益を生む「ユニコーン企業」が話題になっていましたが、利益獲得のために社会との共存や企業倫理を犠牲にすることで様々な弊害が生まれました。そこで、利益を最優先するのではなく社会貢献に尽力する「ゼブラ企業」が登場し、新しい企業の形として世界中で支持を得つつあります。
日本でも「持続的成長を実現している企業」がすでに数多く存在し、「SDGs」が重要視されてきていることから、今後ますます「ゼブラ企業」に注目が集まることが予想されます。
本記事ではユニコーン企業と比較しながら、ゼブラ企業の特徴や、注目される背景などをご紹介します。
ゼブラ企業とは、「SDGs」や「サステナビリティ」など持続可能な範囲での成長を重視し、「共存性」に価値を置く企業の総称です。利益を最優先するのではなく、より良い社会の構築に尽力することを目指す企業を指します。
ゼブラ企業は「ゼブラ(シマウマ)」の群れで行動するという習性に由来しており、「社会貢献」と「企業利益」という相反する理念を両立する企業を、白黒模様のゼブラに例えられることから「ゼブラ企業」と呼称されるようになりました。
もともと社会的意義よりも利益を最優先に考えて事業拡大を急速に進め、創業年数が浅いながらも多額の収益を上げる可能性のあるベンチャー企業を、単独で行動する一本角の生えた幻獣になぞらえて「ユニコーン企業」と呼んでおり、それに対するアンチテーゼとして「ゼブラ企業」が登場したと言われています。
ではなぜゼブラ企業は今現在こんなにも注目を集めているのでしょうか。次章ではその背景をご説明します。
ゼブラ企業が注目される背景を理解するには、称賛されたユニコーン企業の裏側について知る必要があります。
起業10年以内でありながら多額の評価額を生み出すユニコーン企業は、資金調達を繰り返すことで急成長を実現し、圧倒的な存在感を放つようになりました。大企業もユニコーン企業に対し協業や投資を求めるようになり、世界中で称賛されるようになったのです。
しかし、その実態には数々の問題がありました。自社の利益や成長のみを求めていたユニコーン企業は、ライバル企業を含む既存の社会基盤を破壊し、独占による利益最大化を目的とした無責任な経営を行なっていたのです。次第にユニコーンの経営手法は悪評を呼びました。
そこで注目されたのが「ゼブラ企業」です。企業が社会に対して果たす役割を再考しようという流れが生まれ、ユニコーン企業が軽視した「社会的意義」や「持続可能性」などに重きを置き、他者との共存を大切にするゼブラ企業の経営姿勢に、現在は世界的な支持が集まっています。
ゼブラ企業についてより深く理解するため、次章ではゼブラ企業とユニコーン企業のそれぞれの特徴をご紹介します。
「短期間における自社のみの急成長・利潤最大化」を目的とするユニコーン企業と、「持続可能な範囲での成長や共存」に価値を置くゼブラ企業には、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。詳しくご紹介します。
「ユニコーン企業」は2013年にアメリカのベンチャーキャピタリスト、アイリーン・リーによって提唱されました。近年人気のタクシー配車サービスのUber社や宿泊サイトのAirbnb社が代表格です。大きく3つの特徴を挙ることができます。
起業後10年以上経つ企業は、これまでの事業で充分利益を上げていることもあり、リスクの高い新規市場への参入が困難です。しかし急成長するためには未開拓領域で新規事業を開設し、大量の資本投下で市場を一気に占有していく必要があります。
これを実現するには、リスクを取っても実行・決定を迅速に行える若い企業が適しており、「起業10年以内である」という特徴がみられます。
ユニコーン企業には「多額な利潤を上げるポテンシャルがあるかどうか」という点が重要な基準になっており、それを示す1つの目安として「業価値(評価額)が10億ドル以上」という特徴があります。
ベンチャーキャピタルから見た投資対象として、魅力的か否かというのは非常に重要な基準となるため、未上場であることはユニコーン企業の一つの要素として考えられています。
これらの条件は絶対的なものではなく、「テクノロジー企業であること」を条件に含む考え方もあります。
持続可能な範囲での成長を重視し、共存性に価値を置く「ゼブラ企業」は、単独で行動するユニコーン企業と相反する存在として提唱されました。ユニコーン企業と照らし合わせながら、その特徴をみていきましょう。
「相利共生」というテーマのもと、あらゆる利害関係者にメリットのある組織づくりの取り組みが「革新的」であることがゼブラ企業の特徴の1つです。既存市場を破壊してしまうユニコーン企業の「革新性」とは対称的です。
「自社の利益」を第一優先に考えるユニコーン企業に対して、「社会貢献」を最優先に考えるゼブラ企業。コロナ禍で様々な業界において価値観が変容し、組織のあり方が問われる現在、「組織で働く意味とは何か」という問いに真摯に取り組む姿勢が大きな注目を集めています。
ゼブラ企業は、顧客や公共機関など、あらゆる関係者が利益を受け取ることのできる組織です。「勝者のみが利益を獲得できる」システムのユニコーン企業とは真逆の理念を掲げています。
「社会貢献」を第一に掲げるゼブラ企業は、事業の「透明性」が求められるのが特徴です。自社が得た資源や利益などを、あらゆる関係者にシェアし、「相利共生」を目指します。
このような特徴を持つゼブラ企業ですが、世界にはどのようなゼブラ企業が存在するのでしょうか?次章ではゼブラ企業の例をご紹介します。
日本でも1998年のNPO法(特定非営利活動促進法)の施行を皮切りに、社会貢献を重視する企業が増えてきています。ここでは国内でゼブラ企業として注目されている例及び、世界で注目を集めるゼブラ企業代表例をご紹介します。
ゼブラ企業の代表例といえば最初に挙げられるのが、ミュージシャン、YouTubeコンテンツ制作者、ウェブコミッククリエイター向けのクラウドファンディングプラットフォームであるPatreonです。
「お金が何回も循環する経済」というテーマを掲げ、600万人以上のPatreon(パトロン)が、20万人を超えるクリエイターに毎月定額の投げ銭を行なうシステムを構築。Patreonが決済を仲介することで、「クリエイターがお金を使用して創作活動を行う」ことを維持し、「パトロンが定期的にそれを楽しめる」という新しい仕組みを創り出しました。
ゼブラ企業的な成功を収めているToya(Toya play)は、女性主導のゲームスタジオ。女性や少女をヒーローとして設定したゲームを提供することで少女たちを勇気づけ、成人した際に才能をフルに発揮できることを目標としています。
キャラクターの役割設定も、常識や既存の美の基準・女性らしさにとらわれないものになっており、「コンテンツを通してジェンダーの平等を実現する」という社会貢献を行なっています。
「ソーシャルビジネスで世界を変える」がテーマの株式会社ボーダレス・ジャパンは、ソーシャルビジネスを通じて社会問題の解決に取り組む社会起業家集団です。ゼブラ企業として注目を集め、メディアでも取り上げられています。
環境問題、差別・偏見、貧困など、世界のあらゆる問題を解決するため走り続ける社会起業家のサポートを行っており、CO2を排出しない自然エネルギーを使って事業を運営するなど、地球温暖化への取り組みも積極的に行なっています。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」がコンセプトの株式会社マザーハウスは、途上国の発展をサポートするための事業を行い、注目を集めているゼブラ企業の1つです。2006年にバングラデュから事業を開始した同社は途上国の可能性を形にすることを目指し、現在は6つの生産国と4つの販売国に拡大しています。
また国内で日本人顧客と途上国の現地スタッフの交流会を行うなど、様々な関係者に対する「相利共生」を実現し、独自の視点で事業を展開する企業として話題を集めています。
本記事ではゼブラ企業の特徴や注目される背景、国内の例をご紹介しました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、世界中でこれまでの価値観・常識が見直され、あらゆる業界における企業が変化を求められています。「企業にとって、利益を得ることが最優先事項なのか」という本質的な問いを投げかけるゼブラ企業は、「SDGs」や「サステナビリティ」、「社会貢献」が重視されつつある社会において、今後ますます存在感を示していくでしょう。
世界規模の経済変化が起きている今、ゼブラ企業を通して「企業の存在意義」について見直すべき時がきています。
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クラウドサーカス株式会社 マーケティング課
2006年よりWeb制作事業を展開し、これまでBtoB企業を中心に2,300社以上のデジタルマーケティング支援をしてきたクラウドサーカス株式会社のメディア編集部。53,000以上のユーザーを抱える「Cloud CIRCUS」も保有し、そこから得たデータを元にマーケティング活動も行う。SEOやMAツールをはじめとするWebマーケティングのコンサルティングが得意。
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