「Google Cloud Next '19 in Tokyo」レポート 第三回 セッション:AI と量子コンピュータで開く、新たなビジネスの可能性

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2018年7月31日(水)・8月1日(木)の2日間、ザ・プリンスパ-クタワー東京/東京プリンスホテルにおいて、Google社が主催する過去最大級の総合イベント「Google Cloud Next'19 in Tokyo」が開催されました。

今年は「かつてないクラウドを体験しよう。」をテーマに、展示会場とセッションルーム、ハンズオンラボなどで構成されました。

「エムタメ!」では、当日のセッションからマーケター向けのものを厳選し、数回にわたりレポートしていきます。

第三回は、専門的な知識なしに誰でも手軽に機械学習を利用できるクラウドサービス「MAGELLAN BLOCKS」を提供する株式会社グルーヴノーツの代表取締役社長 最首 英裕氏が登壇したセッション「AI と量子コンピュータで開く、新たなビジネスの可能性」の模様をお届けします。

「Google Cloud Next '19 in Tokyo」レポート

グルーヴノーツがAIを活用して解決した課題事例

最首 英裕氏(株式会社グルーヴノーツ 代表取締役社長)

世論では「量子コンピュータは、まだまだ実用化にはほど遠い」といわれているなかで、同社では今年(2019年)、量子コンピュータを活用したサービスをリリースし、すでに顧客がついて実運用を開始しているといいます。商用の量子コンピュータをリリースしているのは、世界で同社が唯一だそう。

同社では、もともと、機械学習を活用して主に将来の数値的な予測するサービスを提供しており、顧客の課題解決に取り組むなかで「組み合わせ最適化」を解く必要性に迫られたことが量子コンピュータ活用を始めるきっかけになったといいます。

当日の登壇資料より引用

ここで、同社の提供する機械学習を手軽に利用できるクラウドサービス「MAGELLAN BLOCKS」の活用事例として「ファミリーマート」「JCB」「アルフレッサ」「佐世保航海測器社」の4つの事例が紹介されました。

当日の登壇資料より引用

ファミリーマートの事例では、初めての場所に出店した際の初年度の売上予測に成功したそうです。

当日の登壇資料より引用

JCBの事例では、コールセンターにかかってくる電話の本数を予測し、最適な人員配置に貢献したといいます。

当日の登壇資料より引用

アルフレッサの事例では、どの薬がどれだけ売れるかを予測し、余剰在庫・欠品の回避に貢献したといいます。

当日の登壇資料より引用

佐世保航海測器社の事例では、どの漁場に行けばどれくらいの魚が獲れるかを予測し、ノウハウのデータ化に成功したといいます。

いずれも、数百~千項目超ものさまざまな因子が影響する予測であり、自社開発によるAIによって対応してきたそうです。
また、現在、開発に取り組む新しい機能としては、機械学習に十分なサンプルデータがない医療分野などのケースで画像と数値から結果を予測する「マルチモーダル」や、AIに深層学習させた直後の「特徴ベクトル」を活用した分類、目や鼻などの位置を地図化することで判断する「顔認証」などがあるといいます。

精度の高いAIを実現した先にあった課題「組み合わせ最適化」

これまで、企業が抱える課題を機械学習で解決するなかで、新たな課題が現れてきたと最首氏はいいます。

たとえば、コールセンターで最適な人員配置を行うための受電予測には成功したが、次のフェーズとしてオペレータのシフトを変えようとしたときに、どのように組み合わせるのが最適なのか?という課題。

組み合わせの数は膨大になり、組み合わせ爆発が起きて計算ができなくなるのだといいいます。計算できないものを計算しようとすれば、確率的に計算することになるため、工数がかかり、この精度を高めようとすると1日のシフトを組むために1日以上計算しなければならなくなってしまうのだそうです。短時間(現実的な1時間など)で計算しようとすれば精度が低くなり、実用に絶えない解になるのだそう。
このため、組み合わせ最適化はコンピュータに頼らず、ベテランスタッフが勘と経験に基づいで作っているのが現状だといいます。

精度の高いAIを実現するほどに、その先にある壁にぶち当たるといい、その解決策として期待を寄せているのが、量子アニーリングタイプの量子コンピュータで、同社で取り組みをスタートしたのだといいます。AIによる「予測」と量子コンピュータによる「最適化」の両方の解が得られるようになれば、幅広い課題に対応できるようになるといいます。

当日の登壇資料より引用

量子アニーリングコンピュータによる課題解決の手法

量子アニーリングタイプの量子コンピュータは、一般的なコンピュータと異なり、プログラムはなく、デジタルでもなく、物理現象を観測する装置のようなものだといいます。
エネルギー状態を設定してから量子効果を弱めると、位置エネルギーの一番低い状態に量子ビットが安定するので、それを観測することで解が得られるそうです。エネルギー状態が一番低い組み合わせが解だといいます。

当日の登壇資料より引用

この方法で組み合わせ最適化を解くためには、解きたい現象をエネルギー式に変換する必要があり、同社のエンジニアは、コーディングを行っている時間よりも紙に式を書いている時間の方が長いといいます。これだという式ができて初めてコーディングを行うのだそうです。

ここで、エネルギー式の一例として、量子アニーリングタイプのコンピュータの話でよく取り上げられるという巡回セールスマン問題が紹介されました。

当日の登壇資料より引用

これは、セールスマンが1回ずつ複数の都市を回るときに、一番、移動コストの低いものはどれかという問題で、組み合わせ合計数がわからないながらも式を一つのモデルとしてデータ化すると、コンピュータが解を返してくれるのだといいます。制約条件の追加があれば、多項式を追加すれば良いのだといいます。

このような数式を用いて、たとえば、シフトの最適化を行う場合、単純に「コストが安い組み合わせ」を求めると「全員が新入社員」といった解になりかねないため、「能力」も考慮し、コストと能力のバランスを決めて設定するのだそう。このバランスの部分で微妙なニュアンスを盛り込める点がメリットだといいます。

当日の登壇資料より引用

現在、同社が取り組む最適化を突き詰めていくと、最終的には都市やある地域全体の最適化につながるのだといいます。それを踏まえると、現在、業種・業態を再構成する動きが始まっていると捉えることができるのではないかとのことです。

最後に、同社が手がける子ども向けに展開するテクノロジーのスクール「TECH PARK」についての紹介がなされ、セッションは幕を閉じました。

当日の登壇資料より引用

「Google Cloud Next '19 in Tokyo」レポート

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