【#成功のバトン】経費精算システム「楽楽精算」を提供するラクスは、 ユーザーインサイトを知ることでカンファレンスを成功させている
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近年、企業がテーマに沿って自ら主催するカンファレンスやフォーラム等のイベントが増えています。
カンファレンスを行う企業の多くが、実施の目的を「ブランディング」や「企業・製品の認知拡大」、もしくは直接的な「リード獲得」と据えているなか、経費精算システム「楽楽精算」を提供する株式会社ラクスは回を重ねるごとに、潜在層・ユーザー層それぞれの課題に寄り添い、解決の手助けをすることで、包括的に財務効果に結び付けていく戦略に移行していったそうです。
大型カンファレンスを継続的に成功に導く同社の仮説~戦略・KPIの組み立て方、ターゲット層に寄り添う姿勢をどう具体的に施策に落とし込むかなど、たくさんの貴重なお話しをうかがいました。
1.楽楽精算のターゲット
まず、楽楽精算のターゲット像を教えていただけますか?
楽楽精算は、従業員規模でいうと50~1,000人ほどの中小・中堅企業を対象にしています。交通費・経費精算システムのため、部門としては経理部門の担当者がターゲットです。
これらのターゲット層を
「課題感のあり・なし」「導入意向のあり・なし」の4つの心理ステージに分け、「課題感あり・導入意向あり」の状態まで持っていくのがマーケティング部門の仕事です。それ以降はインサイドセールス部門や営業部門が、各お客様の課題やニーズをメールや電話でヒアリングし、商談・受注に結びつけていきます。
「なし・なし」の状態から「あり・あり」の状態に変えていくというポジショニングの発想はとてもわかりやすいですね!
ターゲット層の方の課題には具体的にどんなものがあるのでしょうか?
細かく分ければ課題の種類はいくつかありますが、大別して言えば「アナログ作業をなくし、業務を効率化したい」という1点につきます。
しかし、経理部門の業務改善は、課題は明確になっていても予算が取れなかったり、ご担当者様が稟議を通すプロセスに慣れていなかったりなど、導入上のハードルもあるのが実情です。
そのような場合は、当社の営業部隊が他社の導入時のやり方をお伝えするなど、コンサル的にサポートに入らせていただく場合もあります。
2.カンファレンスの目的
ラクスさんが開催されているカンファレンス「RAKUS Cloud Forum」はすでに3回目を迎えたそうですね。
カンファレンスの目的はどのように設定されているのでしょうか?
初回から現在までの経験を通じて、カンファレンスの目的は徐々に変わってきています。
初回のカンファレンスではリード獲得を目標としていました。
というのも、これまで展示会に出展してきた経験では、展示会で獲得した名刺からセミナーやデモ体験に誘導することが、受注につながるという実績があったからです。
カンファレンスの内容も、当初はセミナーとほぼ同様の立ち位置で、かつ他社のカンファレンスにならって「経理部門は未来に向けて変わるべき!」というような、啓発的なメッセージになっていました。
しかし実際のところ、カンファレンスに来客した層にとってテーマを自分ごと化できず、リード獲得の施策として分析した際にも、他の施策よりコストパフォーマンスが悪いということがわかりました。
マーケの施策として集客するからには「リード獲得」を目指そうと考えるのは、多くの企業に当てはまることだと思います。
では、初回以降のカンファレンスではどのように目的を転換していったのでしょうか?
アンケートの結果などを分析した結果、カンファレンスは直接のリードや受注獲得というより、まだリード化していない、潜在層の検討意欲の引き上げに効果があることがわかりました。
そのため直近のカンファレンスでは、課題感や検討意欲のない人をどれだけ引き上げられるかという点に目的を置きました。
3.カンファレンスの内容
課題感や検討意欲のない人の興味・関心を高めるために、カンファレンスの内容はどのように工夫したのですか?
まず、ユーザーに限らず、広く経理部門の担当者を対象にした市場調査(アンケート)を行い、ユーザーインサイトを回収しました。
その結果、経理部門の方々は「情報収集や勉強のために社外に出にくい部署である」「社内で評価されにくい」「成果を認められたい」などの悩みや課題を感じていらっしゃることがわかりました。そのため、直近で行ったカンファレンスでは、学びの場となるセッションを用意したり、ユーザー同士が課題を話し合えるコーナーを用意したりしました。
そういったところに「ターゲットのインサイトに徹底的に寄り添う」というコンセプトが表れているのですね!
ターゲット層の各心理ステージに合わせた施策としては、どんなものがあったのでしょうか?
まず、
課題感・導入意向のどちらかでもある層に向けては、デモ体験を重視しました。
デモコーナーは、あまりに台数が多すぎても、セールスのアピールが強すぎるため最低限の台数にし、回転率を上げる工夫をしました。
営業部門にも協力してもらい、お客様の状況に応じてトークスクリプトを作成。お客様お一人につき約15分という目安を設けてアポ獲得につながる対応をしてもらいました。
デモを体験しようか迷っている方には、お声がけする専門のスタッフも用意し、体験率を上げることに努めました。
その結果、
デモ体験コーナーに参加していただいた方のほぼ100%をSQL化(※1)する結果を得ることができました。
また
装飾では、会社名やサービス名だけを大きくアピールするのではなく、楽楽精算を使って何ができるかを端的にわかりやすく表現するようにしました。会場では、協賛企業など同様のクラウドサービスを提供する他社のブースもあるため、サービス名だけでなく、何ができるかを印象付けるのが大切だと考えました。
課題感も・検討意欲もどちらもない層に対しては、ビジュアル的な仕掛けを考えました。
紙書類がいっぱい積み重なった「昭和のオフィス」ブースとスタイリッシュな「令和のオフィス」ブースを設けて、見た目から楽楽精算を入れるとどのように変わるのか、興味を持ってもらえるようにしました。
さらに
ユーザー層に対しては、ユーザーしか入れないエリアを設け、VIP感を演出しました。
その中では、経理部門の課題としてあがったテーマについて、ユーザー同士が話し合えるコーナーを設けました。
ユーザーエリアには、当社のCS部門のスタッフも常駐し、ふだん聞けない疑問などについて、対面かつ時間無制限で聞けるコーナーも設置し、大変好評をいただきました。
※1:SQLはSales Qualified Leadの略。顧客側のほしいもの、要望が明確になり、営業案件化したリードのこと。これに対しMQLはMarketing Qualified Leadの略で、マーケティング活動によって獲得し、一定の興味度合いとなったリードのことを指します。
4.カンファレンス運営で大変だったこと
「顧客の課題に寄り添う」というコンセプトを具体的に落とし込んだ施策が盛りだくさんだったのですね。
制作や運営は大変だったのではないかと思いますが、苦労したのはどんなところでしょうか?
やはり、プロジェクト管理全般ですね。
初回のカンファレンスでは、協力会社(広告代理店)と私が1人で担当していたのですが、直近では、基調講演・展示・各セッションと大きく3つのパートに分け、各担当者と協力してプロジェクトを進めています。
各セッションのテーマは、コンセプトに沿ってマーケ部門である程度決め、営業にも相談したうえで決定しています。
基調講演は会の最初と最後にあり、はじめの基調講演ではカンファレンス全体のゴールや目的を揃えられるようなテーマについて、弊社代表がお話ししたほか、集客力の高い著名人にも登壇いただきました。
最後の特別講演は、参加者の方に最後までいただけるよう著名な方であることと、イベントで得た知識を明日から実践するワクワク感を感じていただけるよう、フランクで耳なじみがいいテーマをコンセプトに選定しています。
リスティングとハウスリストへのメールを中心に、直近ではFacebook広告も取り入れています。
リスティングでは、楽楽精算の既存の広告のキーワードと食い合わないようにすることを気を付けました。
5.カンファレンスのKGI・KPI
多くの企業が関心のある部分かと思いますが、カンファレンスのKGI・KPIは具体的にどのような指標を設けているのでしょうか?
当社の場合、カンファレンスの成果達成は3年ほどのスパンで見ていますが、実際には半期、1年目、2年目のタイミングでサブゴールを立てています。
まず、KGIはシンプルに「受注の獲得」であり、半期、1年目、2年目、3年目で何件かつ貢献額でどのくらいあげられるかを目標として設定します。
KPIは、これに紐づく申し込み者数・参加者数・SQL数・MQL数・検討度の前進・満足度などの指標でそれぞれ目標値を算出します。
また、投資対効果については、当社ではCAC(※2)を設定しているため、それを超えない投資額と必要な受注数を割り出しています。
※2:CACはCustomer Acquisition Costの略で「顧客獲得費用」の意味。顧客1社を獲得するために必要となるマーケや営業のコストのことを指し、顧客1人当たりの採算性を計るために用いられます。
6.これからカンファレンスを企画する方へ
カンファレンスの目的の設計から施策への落とし込み方まで、さまざまなノウハウを教えていただきました。
今後、カンファレンス開催に挑戦していみたいという企業の方へ、何かアドバイスをいただけないでしょうか?
カンファレンス開催の目的が「ブランディングである」と割り切っている企業も多いかもしれませんが、そうはいってもカンファレンスは大きなコストをかけて行う施策のため、何らかの財務効果を求めるのが普通だと思います。
そのため、これからカンファレンスを行おうと考えている方は、何らかの財務効果まで導ける仮説を立てたうえで実施することをおすすめします。
当社の場合は、カンファレンスがすぐにSQL化はできないことがわかっていたので、MQLからどうやって引き上げればSQLに行くのか、転換率を細かく見て、SQL・MQLはこのくらい必要だから、参加者数はこのくらい必要、申し込み数はこのくらい必要…などと逆算し、成果を上げるまでの仮説を立てました。
また、仮説の精度を上げるためには、他社のイベントに参加し、なぜこの施策をやっているのか等を研究するといいと思います。
先行している企業を研究し、仮設を立て、自社だったらどう成功するのかを考えることが大切です。
7.今後の展望
最後に、今後の貴社のマーケティングやプロモーションに関する展望をお聞かせください。
楽楽精算という商品の認知に関しては、おかげさまで定着してきていると思いますが、楽楽精算を使って「何ができるのか」「どう楽になるのか」という点に対しては、まだまだ理解が不足していると感じています。
そのため今後は「経理に寄り添い、課題を解決する」という点をPRの施策も交えて訴求して行きたいと考えています。
これらの新たな訴求ポイントを知ることができたのは、大規模イベントによってユーザーのより深いインサイトが理解できたことが生きていると思います。
カンファレンスを通して仮説の検証ができているのですね。
この度は、経験に基づいた貴重なノウハウを聞かせていただき、ありがとうございました!