米国発祥のマーケティングオートメーション(MA)も日本に浸透し始め、国内の導入社数は18万社といわれています。
しかし、MAの活用がうまく回っているからこそ起こる問題があり、それを解決するための手法「セールス・イネーブルメント」にいま米国で注目が集まっています。
 
セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とは営業活動の改善をするための考え方の一つで、営業活動に関するすべての取り組みをトータルに設計し、取り組みにたいする成果を数値で測定することを指します。
たとえば、営業マンの採用・育成・研修、アプローチから受注までの商談のプロセス設計、営業ツールの開発といったことを、それぞれ、人事部、営業部、情報システム部と縦割りで個別に担当し改善していくのではなく、統合的に見てもっとも効果的なプランニングを行っていくということです。
かつ、各施策が営業活動に対してどれだけ貢献し、成果を残しているかを、施策単位で数値で計測することを特徴とします。
具体的には、以下のような施策が挙げられます。
 
冒頭でもお伝えしたように、米国でセールス・イネーブルメントが取り上げられるようになった背景には、MAツールの普及があります。
MAツールの活用により、マーケティング部門で大量のリード(見込客)が確保できるようになると、それを渡す先の営業部門での生産性を上げなければ、せっかくのリードもとりこぼされてしまいます。
これでは、いくらマーケティング部門にコストをかけても費用対効果は上がりません。
これが、営業力の弱い企業では特に顕著に現れ、営業体制の改善を迫られるようになりました。
これまでのように、「マーケティングはリードをパスする仕事」「営業は受け取ったリードに提案をする仕事」のように各部門がそれぞれ独立したなかでは、最適化を目指すのは難しいと言わざるを得ません。
そこで、「営業」を軸としたセールス・イネーブルメントという概念にもとづき、一連の流れを総合的に構築する必要が出てきたのです。
セールス・イネーブルメントの施策がうまく働いた場合、以下のような効果が期待できます。
 
 
もともとマーケティング部門が創出したリードの取りこぼしをなくし、顧客化するために盛り上がってきたセールス・イネーブルメントですが、これをきっかけに会社全体で「営業」に対する認識を統一し、意識を高められれば、会社の売上が向上するだけにはとどまらないでしょう。
直接的に営業業務と関わらない他部門のスタッフの営業感覚も養われ、全社的なCRM力アップが期待できます。
日本ではまだなじみのないセールス・イネーブルメントですが、米国で取り組みが本格化していることを考えると、その波はいずれ日本にもやってきそうです。
本格的に取り組みがスタートする前の下準備として、部署の垣根を取り払って「営業」の高生産性・効率化のために連携をとれる体制を整えるなど、できる部分から着手しておくと競合他社に差をつけられるのではないでしょうか。
企業経営において事業の根幹を支える「営業」が、情報セキュリティやマーケティングに一歩遅れて今やっと高度化が進んだ結果、「セールス・イネーブルメント」という概念が重視されるようになったようにも思えます。
CIO(Chief Information Officer/最高情報責任者)やCMO(Chief Marketing Officer/最高マーケティング責任者)のように、「CSO(Chief Sales Officer/最高営業責任者)」を置く企業が珍しくなくなる日がいずれ来るかもしれません。