営業活動を効率化させるためのツールとして、SFAやMAを導入する企業が増えてきています。しかし、うまく活用して成果をあげられるところと、そうではないところで明暗が分かれてしまっているのが現状です。そして、両者の違いは新しいシステムやそれを運用するための組織体制の変化を柔軟に受け入れられるかどうかにあるといえます。
今回は、AI搭載営業支援ツール「Senses(センシーズ)」を提供する株式会社マツリカの代表取締役である黒佐 英司氏に、時代の変化に合わせて変革できる営業組織に必要なこととは何かをうかがいました。
株式会社マツリカ 代表取締役Co-CEO
ニューヨーク州立大学バッファロー校卒業。大手ハウスメーカーにて個人向けの企画提案、法人・資産家向けの資産活用提案、海外事業開発において企画営業に携わったのち、ベンチャー企業の創業期に入社、営業開発チームの立ち上げを担当。
営業部門、マーケティング部門および顧客サポート部門の統括責任者を歴任。
2015年に株式会社 マツリカ(mazrica,inc.)を共同設立。代表取締役Co-CEOに就任。
スターティアラボ株式会社 取締役
クラウドサーカス株式会社 代表取締役
2006年スターティアに新卒として入社。2009年にスターティアラボ立ち上げに参画。
2014年にWebプロモーション事業部を立ち上げ、同事業部を2018年にクラウドサーカス株式会社として分社化、代表取締役に就任。
近年のマーケティングテクノロジーの高度化に伴い、マーケティング効率が飛躍的に高まっている一方、多くの企業がまだまだそれらを使いこなせていないのが現状。それらをシンプル化することで多くのマーケターがより高い成果を生むしくみの普及に努めている。
金井:黒佐さんは、大手ハウスメーカーから、創業期のベンチャー企業へと転職された経歴をお持ちですが、両社の営業組織にはどんな違いがありましたか?
黒佐:前職のベンチャー企業は私が入社したときは社員十数人くらいの企業規模でした。製品はできていましたが、どこにどうやって売るか決めるところからだったので、本当に何もない状態からのスタートでした。
一方、大手企業は、会社規模が大きいとか創業年数が長いとかベンチャーとの違いはいろいろありますが、営業組織としてもすでに確立されているんですよね。「このタイミングなら何をするか」という方法論が決まっていて、そのなかでどう成果を最大化するかというのがミッションであることが多い。
とはいえ、私のいたハウスメーカーでは、個人の裁量に任される部分も大きくて、それぞれが個人事業主みたいな感じでした。多分、不動産業界とか保険業界はそういったところが多いのではないかと思います。「組織をどうしよう」とか、そういったことはあまり考えなかったですね。
金井:チームで動くことは少ないのですか?
黒佐:チームはありました。ただ、BtoCの特性かもしれませんが、チームとして一緒に動こう、みたいなのはなかったですね。インセンティブもあり、成果を出しても個人にしか報酬が入らないので、人のことを手伝う余裕がないという。
企業のステージにもよりますが、歴史の浅いベンチャー企業の場合、大手企業が持っているようなノウハウや組織のあり方とかを自ら作りながら進んでいくんですね。「何回訪問するのが最適なのか」とか「どの順番で提案すれば最適なのか」とか。大手企業は、先人たちが培った一通りのノウハウを基本の型として、営業マンがそれぞれのカラーを出している場合が多いですが、ベンチャーには先人たちもいないので、何もない状態から作る必要があります。
金井:BtoCからBtoBへ、企業規模も大企業から創業期のベンチャー企業へと、マトリックスでいうと対角線上にキャリアチェンジされて、前職で培ったノウハウがなかなか活かせなかったのではないかなと思うのですが。営業組織立ち上げの際に何を重視されましたか?
黒佐:BtoCからBtoBという軸でいうと、結論としてはそんなに大きくは変わらないと思います。BtoBでよくいわれるのが、意思決定のプロセスが複雑とか、意思決定者の人数が多いといったことですが、BtoCでも意思決定者が複数いる場合もあるので変わらないですね。
金井:「妻に聞いてみないと」とかですね(笑)。
黒佐:そうです(笑)。BtoBほど複雑ではないにしても、意思決定者がご主人だと思っていたら実は奥さんだった、とかはけっこうありました。結局、営業のすべきことは、潜在的なことも含め「お客様のニーズ」に対して、自社が持っているソリューションをどう当てはめるか、どう伝えていくかだと思います。だから、結果的にBtoBでもBtoCでも変わらないと思っています。
そのために必要なのは、まず「己を知る」…自社の製品を理解し、引き出しを多く作って準備すること。そのうえで、「相手を知る」…顕在化しているニーズだけではなく、潜在的な課題も知ること。これができて初めて、的確なタイミングと伝え方で提案できる。本質がわかれば、営業相手が個人か法人かを問わず、スムーズに営業活動を進めていけます。
金井:先ほど、ハウスメーカーでは個人で動くことが多かったとおっしゃいましたが、ベンチャー企業の営業では、チームで動くこともあったんですか?
黒佐:そうですね。インセンティブがなかったというのも大きいと思います。「インセンティブをつけようか?」という話も出ましたが、私が却下し続けたんです(笑)。なぜかというと「チームで戦う」ことを維持できないと思ったからです。
金井:インセンティブがなかったんですか?!
黒佐:なかったですね。
金井:それは、意外ですね。ベンチャー企業って、それこそインセンティブの見返りの多さをアピールして、中途でバリバリの営業マンを採用するイメージが強いですが。黒佐:インセンティブって、営業でいうと世界で一番成功している報酬体系だと思うし、その方が経営もやりやすいんです。売り上げに応じて報酬をコントロールできるので、経営的にはリスクも少なくて理にかなっていると思います。ですが、前職では「チームで戦う」ことを意識したかったですし、営業以外の間接部門との兼ね合いもあり、インセンティブはつけない方がいいと。技術系部門にインセンティブをつけるというのはなかなか難しいので、定量的に成果の出る営業だけがインセンティブを受けるのは不公平があると思っていました。
金井:なるほど。
黒佐:社内では何度も議題には上がっていました。それこそ、新しい人が入ってくると「インセンティブないんですか?」みたいな話も出てくるので、そのたびに却下していました。
ベンチャー企業では、業種ごとにチームを分けていました。そのときに提供していたサービスは、コンサルティングファームとか金融機関とか、幅広い業種に使われていて、業種ごとにハマるソリューションがそれぞれあるんですよね。だから、一人がある業界を極めたら、そのナレッジを共有して横展開するのが効率が良くて。元コンサルタントだからコンサルティングファームが得意とか、営業マンの得意・不得意もあったので、一人ひとりが全業界をやるっていうのではなくて、「ターゲットを分類してチームで取りに行く」という方法を取っていましたね。
金井:僕らは営業部で「ヨミ会」をやっているんですが、ヨミ会をやることで、1つの案件をみんなで疑似体験して、それを自分の案件に当てはめられるかどうかを考えていくので、まさにSensesの管理画面みたいなかたちでそれをどうするというのを話したりするのを重視しています。
黒佐さんはベンチャー企業へ移られてからそういったことを意識するようになったという感じですか?
黒佐:そうですね。ハウスメーカー時代も、マネージャーと数名のメンバーがいるようなチームはありましたが、マネージャーがメンバーに向けて個人的にナレッジを共有することはあっても、チーム全体ではなかったですね。
金井:なるほど。あえて全体でやるのは時間の無駄といわれればそうなんですが、みんなからガンガン言われるとか、上司だけではなく後輩から言われるとかっていうのを経験すると、いろんな視点で考えられるようになるし、ほかの人が言われていることを聞くことで、自分の案件以外からも吸収していかないと、ナレッジとしては溜まっていかないかなと思うので、そこが重要ということですね。
金井:インセンティブの話に興味があるので戻ってしまうんですが、インセンティブがないときのメリットには、どんなことがあるんですか?
黒佐:インセンティブがあることで対価がわかりやすくなり、対価へのモチベーションが上がります。そうすると自然に競争環境ができます。ですが、私がつくりたい競争意識は、「健全さ」がポイントなので、インセンティブがない方が作りやすいと考えています。
あとは、チームワークを形成しやすくなることだと思います。スタートアップの場合、人数が増えていくにつれ、自社に対する理解度の平均値が下がってくる。だから、何もしないでいると基本的には生産性が落ちていく。それをいかに落とさないようにするかというのを考えています。
インセンティブは個人の成果に対しての報酬なので、基本的にナレッジやノウハウも個人にとどまってしまう。「他人のことをあまり気に掛ける余裕がない」状態なんです。なので、個人の成果やノウハウをチームに還元しようという意識を強く働かせて、チームとしてナレッジがどんどん溜まっていくことを確立していく状態を確立していくには、個人に対してのインセンティブがない方がいい。新しい人が入っても、チームにナレッジがあると受け継がれやすいわけですよね。そこが一番大きいと思います。
金井:前職のベンチャー企業時代は、チームというよりは個人単位で動くけれど、ナレッジの共有という意味ではチーム単位ということなんですね。
黒佐:そうですね。
金井:当社の顧客企業でも「属人化しない営業組織を作る」という方向になってきていて。今までは、それこそ優秀な営業マンが一人いれば、予算に対して必要な売り上げの大部分を取ってこられるというのがあった。でも、会社としてはそういう力技ではなくて、組織でいかに体系化されていくかというのを作っていきたいので。そうすると、インセンティブがなくなることに対して、営業個人からすると真逆というか。「ようやく受注できるようになったのに、インセンティブがどんどん減っていく」という感覚になると思うので、その変化がきっとどこの会社にとっても大変なのかなと思います。
黒佐:現在の会社、マツリカでもインセンティブは置いていません。結局は「チームが大事」「ナレッジの共有が大事」「継続的な成長が大事」ということが伝わっている状態であればいいとは思いますね。
金井:マツリカさんは、Sensesを提供するなかでいろいろな会社の営業組織を見てこられたと思うんですが、そこに対して単にツールの提供だけではなく営業組織改革まで踏み込んでいると伺っています。それが比較的スムーズに進むところと、そうではないところがあるかと思いますが、そこの違いは何ですか?
黒佐:その違いが生まれるには、いくつかの明確な基準があります。一つはトップの意思があるかどうかですね。トップがどうしたいか、組織を変えるつもりがあるのか、その強度が高いのかどうか。結局、ツ-ルとかテクノロジーは手段の一つでしかないので、目的がないと活きません。メンバーの何人かが集まって「こういうのも使ってみた方が良いんじゃない?」とか、「トップが言っているんだけど、最近、流行ってるから導入しようよ」くらいの温度感だったりすると効果が出にくいですね。
トップが本気で組織を変えるために「こういうツールが必要だ」と明確に考えていて、それが全体に伝わっているとすごく良いですね。
Sensesの導入目的や温度感は企業によって違うので、お話を伺えばだいたいその後どうなっていくかは読めてきます。
金井:トップが営業畑の人と技術畑の人といると思うんですが、どちらの方が効果が出ますか?僕は、営業畑の人の方が営業に課題を抱えていて「変えたい」というニーズが強いのかなと思うんですが。
黒佐:多様なケースがあるので一概には言えませんが、逆の方がうまくいきやすい気がします。
金井:技術畑出身の方が導入が成功しやすい?
黒佐:営業畑の人って、多くのケースでご自身がスーパー営業マンじゃないですか。なので、「売れないデキない営業マン」の気持ちがすべてわかるわけではないと思うんですよね。なので、手段としてこういうツールにお金をかけようと思いにくい傾向にあるのかもしれないです。「なんで、できないんだ!?」みたいな(笑)。
金井:自然とできていたことをロジックとして分析しようとは思わないかもしれないですね。
黒佐:そうですね。先ほど言ったトップというのは必ずしも社長じゃなくて、営業本部長だったりもしますが。
もう一つは、営業部門が強すぎる会社というのは少し難しかったりします。 「ザ・営業会社」によくあるのですが、社内のパワーバランスが営業マンに偏っていると、ツールを導入したいと思っていても、ユーザーである営業が言うことを聞かないんですよね。「ツールを入れて、こう変えていきましょう」と言っても「いやいや、自分には自分のやり方があるから」と。変革が起きるのを嫌がる人も多いので、精神的なハードルがけっこう高い。
金井:わかります。ツールへ「入力しろ」って言われるのも嫌がりますね。特に、成績の良い営業マンほど入力しないですし。
黒佐:そうですね。なので、営業部門も間接部門もバランスの良い会社は成果が出やすいですね。
金井:既存のSFAは入力ありきですよね。ツールのおかげで売り上げられるとなれば、営業マンも入力してどんどん情報が溜まっていきますが、その情報が活きるのって1年後ぐらいに新人が入ってきて、先輩方が過去に入力してくれた失注案件の情報を元に受注して売り上げられるという感じですよね。その大切さはどの会社も痛感しているから「情報を入力しろ!」と言っていると思うんですが、どうしてもデータベース発想になってしまっていて。
Sensesにももちろん、そういう側面はあるんですが、どちらかというと「今」の案件管理、受注率を最大化するための「ヨミ会」的な視点でつくられているので、ゴリゴリの営業会社がやっていることをツールで実現できる。だから導入しやすいのかなと思いました。
黒佐:ありがとうございます。それには二つ理由があって、一つはデータを蓄積するためではなく解析して示唆を出すことを目的として設計していること。もう一つは、営業会議など現場での使いやすさを意識して設計していることが、導入しやすさにつながっていると思います。
20年以上前に既存のSFAが作られた目的は、まさにデータの蓄積と管理。データをためるだけためて、活かせるかどうかは「自分たちで考えてね」なんですよ。活かせるかわからないデータに対して、ビジネスインテリジェンスツールとか解析ツールを入れても、何も出ないんですよね。
金井:そうですね。
黒佐:我々の目的は蓄積ではなく、データベースから解析をして示唆を出す。このデータはこう活かしたらこう使えるんじゃないかというところまで踏み込んで最初から設計をしています。
もう一つのすぐにヨミ会などの現場で使えるという点は、創業時からずっと「現場にフォーカス」と言い続けているんです。既存のSFAは、蓄積管理が目的なので、管理者のためのツールでした。でも、実際に毎日入力するのは現場なんです。入力すればするほど、自分は別に得もしないけど管理者は喜ぶという、使っている人と利益を享受する人が違うアンバランスさにすごく違和感がありました。現場にとにかくフォーカスして、現場が使いたいと思うツール、現場にもちゃんとメリットがあるツールをと考えて作っています。
金井:既存のSFAは、情報が活きるのが半年後~1年後とかなので、自分はメリットを享受できないかもしれないけど、後輩たちが得する。そうすると、トップセールスマンは入力しなくなるんですよね。
僕らが提供しているマーケティングオートメーションツールもそういう考え方で作っているところがあって。MAツールってどうしてもマーケター側のツールになりがちなんです。でも最終的にリードを受け取って営業活動するのは営業部門なので、営業側がちゃんと使えるツールでないといけないと思います。
営業が「アツい」リストが欲しいと思ったらそこだけを抽出して表示してくれるような、営業も使えるツールにしていきたいなと思っているんです。そうでないと、現場にツールを浸透させるのはなかなか難しいですよね。
黒佐:最近では、決裁権者が上にいて、下から稟議を上げて進めていくような意思決定方法も変わってきたように思います。
スタートアップ企業では、現場で決めるというスタイルが取り入れられてきていて、上が関与せずに「現場で使うものは現場が決めれば良い」というケースが増えてきているように思います。使う人が使いたいものを選ぶように意思決定フローが変わってきているかなと。
金井:ITツールだと、サブスクリプションモデルになってきているので、今までだと単価の高いパッケージソフトをドーンと導入していましたが、フリーミアムも増えてきていますし、現場の方の決裁権でも導入できるようになってきているかもしれないですね。
僕らの提供しているBowNowもフリーミアムでまずは使ってもらって、使っていくなかで「もっとこういうこともしたい」という要望が出たところで課金していただくスタイルです。MAツールはIT業界には認知されているんですが、メーカーの営業部門などにはまだ知られていないので、経営層がキャッチアップするのってなかなか難しい。まずは現場で使ってもらって成果を出してもらって「こんなに成果が出ているので」と有料化に向けて上を説得してもらう感じですね。
金井:御社のツールはMAとの絡みがけっこう多くなってくるのかなと思います。
黒佐:そうですね、MAとSFAって絶対に切り離せないものだと考えています。マーケティングが担うリードジェネレーション、トップファネルから始まって、営業が受注してクローズするまでの顧客活動がありますよね。受注後もカスタマーサクセスが継続して関係を構築していくと思いますが、組織としてはもちろん、ツールでもつながっていないことはサービスとしてあり得ないと思うので。
金井:なるほど。
黒佐:つなげずに別々で使っているところとか、どちらかしか使っていないところは、本当の成果が出せていないし、できていないことが多くあると思います。
金井:MAを導入しているところは増えてきてはいるんですが、使いこなせているところというと本当に少なくて。何百万円、何千万円と高い費用をかけていながら「メール配信でしか使っていません」というところがけっこう多い。黒佐:SFAも同じですね。「使いこなせていますか?」と聞くと「いや、ちゃんと運用できていないんですよ」と返ってくるところが多いですね。
金井:となると、MAとSFAを組み合わせたところで…となってしまいますか?
黒佐:個人的には組み合わせた方が運用に乗りやすいと思います。その方がファネルがトップからボトムまで全部つながるので、MAとしてもSFAとしても成果が見えやすくなると思うんですよね。つなげた方が活用できると思います。
金井:そうですよね。本来は、広告や展示会などで獲得したリードがどうなっていって、営業に渡してからどうなっているのか、これが一気通貫して見えないといけないんですけど。
ただ、今はまだMAとSFAが別のツールなので、たとえ同じ企業が作ったツールだとしても、新たにBIツールを入れないと可視化できないような状態なので、実際にできている会社があるかというと、ほとんどないと思いますね。
黒佐:そうですね。そこに関してはベンダーとしてもっともっとやれることがあると思います。
金井:今後、Sensesではどんな新機能を開発していかれるんですか?
黒佐:創業してからリソースを増やしながら開発を続けていますが、私が当初に思い描いていたものはまだできていないんですね。もちろん、製品としてご提供させていただけるレベルには完成しているんですが、現場にフォーカスして現場のためになるという意味で、できることはまだまだたくさんあると思っています。
イノベーションとは「今までにないまったく新しいものを作ること」、もしくは「今まで当たり前のようにあったものをなくすこと」だと思いますが、私は後者が好きなんですよ。Sensesを開発した時の最初の発想は、「管理業務だけしているマネージャーって必要ないんじゃないか」というものでした。なのでSensesの究極のかたちは、管理業務しかしないマネージャーがいなくなること。そのために、いま多くのマネージャーがやっている管理業務や役割の補完として機能化できることは、まだまだたくさんあると思っています。
その一つが、ヨミ会の管理。ヨミ会では、案件の精度を上げるために「このヨミで大丈夫なの?」とか「このままじゃ契約にならないよ」とか「もっとこうすれはヨミの確度が上がるよね」という話をすると思います。なぜマネージャーはこういう話ができるかというと、彼自身の経験やナレッジに基づいて「過去、こうだったからこのパターンに当てはまる」と判断しているわけです。これは、ちゃんと情報さえインプットされていれば機械でできることなので代替していこうと。
直近では、契約の可能性を過去のデータから分析して受注率を割り出すという機能を開発していこうと考えています。
他にも、案件の掘り起しをする場合、失注理由を人間の頭で覚えているのには限界がありますよね。ある見込み客の受注の決め手が、過去に失注した顧客に刺さるかもしれないので、顧客情報や受注・失注理由を解析してアラートを出すようにするとか。
人間の頭で覚えておく限界を超えたものや、マネージャーの役割の代替をどんどん機能化していきたいですね。
金井:マネージャーが要らなくなるというのはすごいですね。
黒佐:もちろん、チームの継続的な成長のために戦略を作れるマネージャーは必要だと思うので、管理だけをしているようなマネージャーはいらなくなるという意味です(笑)。
金井:マネージャーの本来の仕事は、戦略を考えて新しいことを生み出していくことですからね。本当はマネージャーもそこに専念したいのに、案件管理に時間が取られてしまってできていないという可能性もありますね。
黒佐:今の時代は、市場と顧客の変化に伴い、営業方法にも変化が求められます。従来、営業はクロージングにフォーカスしてきたと思いますが、これからは「ラーニング」、つまり学ぶことにフォーカスすべきです。市場も顧客も絶えず変化しているので、学習し続けることで、成長し続けられる組織を作るべきだと考えています。
クローズだけに集中していると、時代やターゲットが変わった瞬間にクローズできなくなってしまう。当社は創業当初からナレッジのシェアだったり「型化」みたいなことにこだわってきたのですが、「セールスイネーブルメント」といわれるようなことがSensesでもできるようになるといいと思っています。Sensesを使うことで、個人も組織も学び続けられるようにしたいんです。
金井:ラーニングというのは、現場のやり方などをセールスイネーブルメントで向上させていこうとか、営業マン同士の技術のシェアというところですか?
黒佐:そうですね。ほかにも「この提案書がベストなのか?」とか、マーケティング視点で「この業界がベストなのか?」というのもそうだし、どんどん変化する環境に対応し続けられる、学習し続けられる組織づくりをSensesで手助けできるように機能を作っていきたいです。
金井:それは楽しみですね。セールスイネーブルメントには御社としても注目されていて、そこに合わせて開発していこうという感じですか?
黒佐:あれはすごく時代に合っていると思いますね。 とはいえ、導入にあたっては「何件クロージングして何件受注したかを集計したい」という要望がまだまだ多いので、「いや、そうじゃないですよね」というところから入っています。
金井:ヨミ会も、数字を読むというところから来ていると思うんですが、それよりも、たとえば僕らはABCでランク付けをして、CをBに上げるにはどうしたら良いのかというのを一生懸命みんなで考えてアイデアを出し合って、実際にやってみて、結果どうなったかっていうのをシェアするところに意味があるものだと思うので。
黒佐:本当の価値はそこにありますよね。
営業支援プラットフォームSensesの開発・運営および営業活動におけるコンサルティング業務を行う。Sensesは一般的にSFA・CRMと呼ばれる顧客管理、案件管理といった管理機能に加え、蓄積された営業情報からAIアルゴリズムが成功・失敗事例を解析する機能を有しているため、営業パーソンは過去の成功・失敗事例を参考に「いつ」「誰に」「何を」「どのように」行うか、Sensesからサポートを受けることが可能。社名の由来は「世界を祭り化する」から。
【プロフィール】https://mazrica.com/