「Salesforce World Tour Tokyo 2018」レポート 第三回 セッション「製造業向け:デジタルによる顧客接点革命」

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2018年12月5日(水)、東京ビッグサイトにおいて、Salesforce社のイベント「Salesforce World Tour Tokyo」が開催されました。このイベントは毎年開催されており、Salesforce社主催のイベント規模としては国内最大規模です。

「エムタメ!」では、当日の様子からマーケター向けの情報を厳選し、数回にわたりレポートしていきます。

第三回は、「製造業向け:デジタルによる顧客接点革命 ~Eコマースからサービスまで全てがつながる~」と題し、デモンストレーションを中心に展開されたセッションの模様をお届けします。

■第一回・第二回はこちらをご覧ください。

1.製造業のプロセスのなかで購買に時間をかけたくないのが「技術調査」と「アフター」

株式会社セールスフォース・ドットコム 
エンタープライズセールスエンジニアリング本部
製造ソリューション 
アソシエイトソリューションエンジニア
吉井 平八郎氏

ECショップなど、BtoCでは当たり前の「過去の購入履歴からの製品推奨」といったインテリジェンスな顧客体験も、製造業、とくにBtoBにおいてはまだまだ一般的ではありません。たとえば、部品交換は実際に部品が壊れて初めて行われ、製造ラインで使用する原料調達も社内の別部門に確認を取らずには行えないところが多いでしょう。

しかし、顧客はBtoCにおける顧客体験と同等のものを求め始めていると吉井氏はいいます。

まずは、製造業における一般的な製造プロセスが掲示されました。

これらのプロセス一つひとつにおいて販売チャンスがありますが、それぞれに顧客が求めるもの、必要な営業担当との対面時間は異なるといいます。

たとえば、「試作」~「量産」の段階では、「予算」「納期」「カスタマイズ」といった顧客に特有の要件があるので、対面による打ち合わせのうえ時間をかけてまとめていく必要があります。

一方で、「技術調査」「アフター」においてはもっと単純で、必要なときに必要なものが手に入れば良い、といった具合に差があります。

一連のプロセスを提供する側の視点で見た場合、「試作」~「量産」ではやはり時間をかけたいプロセスです。「技術調査」については、技術情報やサンプルの提供は次以降のプロセスにつながる大事なものなので、「顧客から情報は拾っていきたいが、時間はあまりかけたくない」部分です。今回のセッションでは、ここにクローズアップされました。

2.【デモンストレーション】Eコマースによる購買の流れ(購買者視点)

「技術調査」フェーズにおける購入者と販売者のやりとりをデモンストレーションしてみましょう。購買者を、六本木ディスプレイ株式会社の製品開発部:五十嵐さん、販売者を素材メーカーのシーラス化学株式会社の営業担当とし、購買はシーラス化学のWebサイト上でEコマースによって行うものとします。

まずは、その流れを購買者側の視点で見てみます。

これから新しいディスプレイを開発していこうと考えている五十嵐さんは、早速、有機EL用素材のサンプルの一覧を見に行きます。

そして、強度や厚さといった希望の条件で製品を絞り込んで表示させ、複数製品を比較検討していきます。そして、最終的に一番スペックの合う製品をカートに追加して購買します。

さらに、チャットボトによる製品推奨サービスを利用し、推奨された製品もカートに追加したとします。

そして、カートを確認し、支払画面に進むと、初回購入者に発行されるクーポンが表示されます。これを利用して支払いを済ませ、購買を終了します。

3.【デモンストレーション】Eコマースによる販売の流れ(販売者視点)

今度は販売者側の視点で、Eコマースサイトの裏側の仕掛けが紹介されました。

製品を購入してくれた五十嵐さんに、事例コンテンツのホワイトペーパーダウンロードURLなどをメール送付することで、興味関心が薄れないように働きかけていきます。

その結果、メールが開封され、ホワイトペーパーがダウンロードされたことが確認できれば、関心が高まっていることがわかります。さらに、追加でサンプル依頼をしたことがわかると、ますます関心が高まっているため、このタイミングで営業部門にパスすれば「見込の高いリード」としてコンタクトを取らせることができます。

Eコマースサイトは、営業担当者も活用できます。画面中央には五十嵐さんの購買行動に関する情報、左下には五十嵐さんの関心のある情報カテゴリが表示されています。そして、右上にSalesforceのAIである「Einstein(アインシュタイン)」の画面があります。Einsteinは、五十嵐さんのこれまでの行動を分析して「曲面型タブレットの開発の動きの可能性あり」といった示唆を、根拠とともに示してくれます。

営業担当者は、この示唆をもとに営業アプローチをかけることができます。 今回は、アインシュタインの示唆から、受注確度を上げるために製品開発部門の人員に同行してもらうことを決定します。

製品開発部門への同行依頼連絡も、この画面上でできます(Einsteinの下部画面)。

4.【検証】「技術調査」フェーズでEコマースサイトを活用する双方のメリット

上記のデモンストレーションからわかる「技術調査」においてEコマースサイトを活用する双方のメリットをまとめると以下のようになります。

【購買側のメリット】

【販売側のメリット】

5.【デモンストレーション】「アフター」フェーズでのEコマース活用による流れ

株式会社セールスフォース・ドットコム
エンタープライズセールスエンジニアリング本部
製造ソリューション 
ジュニアアソシエイトソリューションエンジニア
川久保 隆亮氏

次に、「アフター」のフェーズについてもデモンストレーションが行われました。 「アフター」は、メンテナンスを提供するとともに定期受注を受けるチャンスにもつながる大切なフェーズとなります。

このフェーズをEコマースによってやりとりする流れを、工作機械メーカーから代理店を通して購買するケースで見ていきます。

代理店を経由して製品供給を行うメーカーは多いですが、この場合、そもそもエンドユーザー(デモでは恵比寿製作所)が誰かをメーカー(デモではBPS株式会社)側で把握していません。

また、エンドユーザーの方では、消耗品の購買で発生する煩雑なやりとりを省略したいと思っています。さらに、生産性を上げるような提案をして欲しいというニーズも持っているとします。

一方で、代理店(デモでは株式会社アストロ)は、複数メーカーの膨大な商品を扱っているため、お客様に合った個別の提案ができていないことにジレンマを感じています。

BPS株式会社は、機械につけたセンサーを使ったIoTにより、エンドユーザーはわからないまでも、機械の使われ方などの情報は取得できています。そこで、お客様用ポータルサイトを構築して、IoTで取得したデータをお客様に還元することを企画します。

まずは、恵比寿製作所のマシンキーパー鈴木さんが、お客様用ポータルサイトにログインします。

このポータルサイトからは、保有機械の一覧や次回メンテナンス予定の確認、点検依頼などを行うことができます。

また、機械の稼働率が低下するとアラートを出してくれる機能も付いています。このアラートは、単にIoTから得られた稼働状況データだけでなく、次回のメンテナンス予定日や過去のメンテナンス情報を加味したうえでAIのEinsteinが出したもので、パーツの交換を推奨してくれます。

そこで、鈴木さんはパーツの販売ページを参照、発注までをこのEコマースサイト上で完結することができるのです。このEコマースサイトはSalesforceのCRMとも連動しており、顧客に関するさまざまな情報と紐づけることができます。さらに、代理店が独自に展開しているサービス情報との連携も可能となっており、代理店の販売機会を向上させることもできるといいます。

「アフター」フェーズのやりとりが、営業担当者を挟まずにここまでできることが示されました。

以上、2つのデモンストレーションにより、BtoB領域の製造業を顧客とした原材料提供企業がAIのEinsteinを搭載したEコマースサイトを活用して、販売機会を増やす方法についてのまとめがなされ、セッションは幕を閉じました。

第一回・第二回はこちらをご覧ください。

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